カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

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六十七話 詐欺では?

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「今更ですが、二人だけのパーティーって……狙われやすいですよね」

「そうだな」

軽く会話をする二人の周りには、五つの死体が転がっていた。

転がっている死体の正体は、盗賊。
クランドとリーゼの二人……装備は整っているのに、人数は少ない。

こちらがきっちり人数を揃えていれば、負ける筈がない。
そう油断してしまう程、盗賊たちにとって二人は格好の獲物に見えてしまう。

クランドの見た目は決して軟弱ではない。
それどころか、若干ではあるが強面の部類に入る。
体格も優れており、ぱっと見弱そうには視えない。

盗賊たちも、それなりに戦えるだろうとは思っていた。
それでも……クランドに三人も使えば、負けることはない……数の有利とは、本当に人から考える力を失わせてしまう。

ただ、盗賊たちが油断していた要因は、それだけではない。
寧ろこちらが大本命。

リーゼをパッと見て……ベテラン冒険者並み、もしくはそれ以上の実力を持ってるとは思えない。
盗賊たちは人殺しのプロではあるが、鑑定のプロではない。

普通ではない雰囲気はあるものの、その美しい見た目から戦闘力はあまり高くないと……どこか油断させてしまう魅力がある。

「なんだ、パーティーメンバーを増やしたいのか?」

「いえ、そうは思いません。第一、増えたところで……同世代の者たちが、私たちの強さや行動範囲に付いてこれるとは思えません」

「……それはそうだな」

明らかに自慢話ではあるが、二人の実力は将来有望なルーキーであるウルガラたちであっても、実際のところ……足手纏いになってしまう。

「それとも、クランド様はこういった人物なら、パーティーに入れても良いと思える理想像があるのですか?」

「ん~~~~……ないな。強いて言えば、回復に特化した人材が欲しいと思わなくもないけど、最低限自己防衛は出来るってのが条件になるし」

果てしなくも無茶な条件を言っている自覚はある。

そもそも回復魔法に特化した人材など、誰もが放っておかない超貴重な人材。
数が少なく、戦闘に向いていない役割の人物に、そこまで求めるのは……もはや酷と言える。

「……簡単に見つけられる人材ではありませんね」

「だよな。いたとても、どっかのパーティーが既に抱え込んでるだろ」

自分が思い描くヒーラーなど、いるわけがないと思いながら死体を埋葬し、再び目的地へ歩を進める。

「この街、で合ってるよな?」

「えぇ、そうですね」

基本走って走って移動した甲斐があり、その日の内に目的の街……アブスタに到着。

街中に入り、二人は直ぐに部屋が空いてる宿へ向かい、寝床を確保。
その後は軽く情報を集める為、冒険者が多く集まる酒場へ向かった。

「なぁ、事前に集めていた情報よりも、冒険者の質が高くないか?」

「そうですね。もしかしたらですが、ワイバーンの目撃情報がそれなりに広まり、ドラゴンスレイヤーの称号を得ようと、アブスタにやって来る冒険者が増えているのかもしれません」

リーゼは決して冗談を言ったつもりはない。
一ミリもそんなつもりはないのだが……クランドはそう思えてしまった。

「ワイバーンを討伐したからドラゴンスレイヤーって、冗談だろ。さすがに無理があるって」

注文したエールを半分ほど吞みながら、はっはっは! と小さ過ぎず大き過ぎない声で笑うクランド。

数秒後……リーゼがくすりとも笑わない。
変わらず真面目な表情を見て、右手に持つエールが入ったコップをテーブルに置いた。

「……本当か」

「一応、ワイバーンはドラゴンの一種ですからね」

「そうだな。ワームも分類的にはドラゴンの一種らしいが……一応だぞ」

リーゼが冗談ではなく、本気で話していることは解った。
解ったが、到底納得出来る内容ではない。

「そりゃ他のモンスターと比べれば恐ろしい存在だろう。ただ、それはCランクでの話だ。亜種や希少種であれば、まだそういう流れになるのも解るが……今回の目撃情報のワイバーンは、通常種だろ」

「えぇ、通常種ですね」

「…………マジか。いくらなんでもせこいと言うか、目標が低すぎる……いや、別に低くはないか。低くはないと思うが……そいつらは、詐欺でもしたいのか?」

この言葉に、酒場に居た多くの冒険者が、様々な反応を見せた。

呑んでいたエールを吹き出す者や、小さく笑う者。
当然……中には詐欺と口にしたクランドに敵意を持つ者もいた。

人によっては、ワイバーンもドラゴンに変わりない。
そう思う者の気持ちを否定するつもりはないクランドだが、通常のワイバーンを倒しただけでドラゴンスレイヤーを名乗るのは、どう考えて悩んでも詐欺師にしか思えない。

この考えに関しては、誰にどう言われても変わることはない。

「それは……どうでしょうか?」

「いや、だって絶対に武勇伝のように、ワイバーンを倒しただけなのに、あたかも属性持ちドラゴンを倒した風に自分はドラゴンスレイヤーだって語るつもりだろ」

一拍置いて、もう一言……再度同じ爆弾を投下。

「どう考えても嘘でイキり散らかす詐欺師じゃないか」
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