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七十六話 増々笑みが怖くなる
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ワイバーンの顎を蹴り上げたクランドは、その後即座に移動。
そして人にはない武器にもなる固い尾を両手で持ち……そのまま背負った。
「カバディ!」
「っ!? ギャっ!!!???」
カバディ……とは全く関係無い動きではある。
ただ、その攻撃は非常に強力。
変則的な一本背負いは、体を大きく動かすことで成功。
ワイバーンの体はその攻撃から逃れる前に半回転し、背中から地面に叩きつけられた。
体を斬り裂かれてはおらず、一応骨も砕けていない。
しかし、攻撃の仕方……ワイバーンの体も影響して、ほぼ体全体に強烈な打撃が与えられた。
モンスターといえど、生きるためには基本的に呼吸が必要。
一本背負いで肺の中の酸素が全て外に出され、今まで感じたことがない痛みに襲われる。
「な、なんだあの攻撃は」
先程までワイバーンと戦っていたパーティーのリーダーである青年は、クランドが行った攻撃を見て、思わず目が点になった。
体術ではなく、ロングソードがメイン武器。
しかし……そんなことは関係無しに、クランドが行った攻撃に目を奪われた。
「一本背負い、という攻撃らしいですよ」
「さ、先程の尾を背負って投げた攻撃のことか?」
「えぇ、その攻撃です。本来は違うのですが……今回は変則一本背負いといったところでしょうか」
この世界に柔道はないため、青年含めてパーティーの全員が、初めて聞く攻撃の名前だった。
「強いとは聞いていたが、まだ十五歳であそこまでワイバーンと戦えるとは……恐ろしいの一言だな」
タンクの大男は、才能という言葉に関して口にしなかった。
様々な理由があるが……大男がその言葉を口にしなかった一番大きな理由は、クランドが鍛錬と実戦の末に身に付けた筋肉。
筋肉こそ強さの全て! という脳筋頭ではないが、男は筋肉を鍛え上げてこそ、なんぼのものという考えを持っていた。
クランドの筋肉、体格は決して筋骨隆々のゴリマッチョではない。
だが、大男はその筋密度を一目で理解していた。
「うわっ! ワイバーンの爪撃刃を拳で弾いてる……もしかして鋼を纏ってるの?」
「そうみたいですね。岩であれば、斬り裂かれてしまいそうですが、鋼であればワイバーンの爪撃刃にも耐えられるでしょう……ですが」
「その衝撃に一切怯まず殴って弾く、掻き消すなんて……ねぇ、リーゼさん。貴族って人種は、あぁいった桁外れな実力者ばかりなの?」
クランドと共に行動しているリーゼの名も同時に広まっている為、斥候の女性がリーゼの名前を知っていてもおかしくないが、本人はいきなり名前を呼ばれたことに、少々驚いた。
「いえ、そんなことはありません」
しかし、そこはプロの従者。
驚きという感情を表に出さず、質問に答える。
「クランド様は同世代の令息、令嬢……数世代上の方たちよりも優れた実力を有しています。クランド様の同世代で現在、学生の中で最強と謳われているブラハム・ダグラスに勝利できる方々は、まずいないでしょう」
エキシビションマッチでブラハム・ダグラスと戦った頃よりも、僅かにクランドは成長している。
まだまだ成長中のクランドではあるが、ブラハム・ダグラスは当時、クランドが全力中の全力で戦わなければ敗北の可能性があると感じた超強敵。
「クランド様は才能もピカイチですが、一番の強味は飽くなき向上心でしょう」
次の瞬間、ワイバーンの体に裂傷が生まれ、少なくない血が噴き出す
リーゼがクランドの強さの秘訣を軽く話している間にも……ワイバーンとの勝負は確実に終わりへ近づいていた。
(悪くない斬撃だと思ったが、逆鱗状態故か……筋肉の圧だけで止血してしまうとはな)
そういった芸当が出来る人間がいるのは知っている。
ただ、モンスターに限ってはそういった無茶な止血方法があるという知識などなく、大概は自身の高い治癒力に頼ることが多い。
しかし、目の前のワイバーンは無茶な止血方法を実行した。
それだけの知能も兼ね備えていると解かり、クランドの笑みは増々凶悪になる。
「カバディ」
そもそも逆鱗状態となったワイバーンの攻撃は、どれも鋭く脅威となる一撃。
通常の強化スキルや、キャントで身体能力を強化しているクランドだが、鋼を纏った拳や蹴りで弾けない状態では……紙一重で躱すが精一杯。
余裕を持って躱すことは出来ず、鋼を纏っている以外の部分に当たれば、大ダメージは免れない。
「ギィアアアアアアッ!!!!」
拡散タイプのブレスを吐きだし、クランドを焼き尽くさんとするワイバーン。
本能で、このブレスだけでは殺せないと解っている。
逆鱗状態であっても、ただ暴れるだけでは終わらせようとしない。
後方からその様子を見ていたリーゼは、非常に厄介なワイバーンだと思いながらも、自分たちの方向にも飛んでくるブレスの対処に終われる。
「あ、あいつを守らないのか!?」
自分たちを火のブレスから守ろうとしてくれているのは有難い。
非常に有難いが、現在一番ヤバい状況に置かれているのは、一対一で戦っているクランド。
「必要ありません……クランド様ですから」
主人を心配してくれるのは、素直に嬉しい。
ただ……ブレスごときで追い込まれるクランドではなかった。
「……カバディ」
そして人にはない武器にもなる固い尾を両手で持ち……そのまま背負った。
「カバディ!」
「っ!? ギャっ!!!???」
カバディ……とは全く関係無い動きではある。
ただ、その攻撃は非常に強力。
変則的な一本背負いは、体を大きく動かすことで成功。
ワイバーンの体はその攻撃から逃れる前に半回転し、背中から地面に叩きつけられた。
体を斬り裂かれてはおらず、一応骨も砕けていない。
しかし、攻撃の仕方……ワイバーンの体も影響して、ほぼ体全体に強烈な打撃が与えられた。
モンスターといえど、生きるためには基本的に呼吸が必要。
一本背負いで肺の中の酸素が全て外に出され、今まで感じたことがない痛みに襲われる。
「な、なんだあの攻撃は」
先程までワイバーンと戦っていたパーティーのリーダーである青年は、クランドが行った攻撃を見て、思わず目が点になった。
体術ではなく、ロングソードがメイン武器。
しかし……そんなことは関係無しに、クランドが行った攻撃に目を奪われた。
「一本背負い、という攻撃らしいですよ」
「さ、先程の尾を背負って投げた攻撃のことか?」
「えぇ、その攻撃です。本来は違うのですが……今回は変則一本背負いといったところでしょうか」
この世界に柔道はないため、青年含めてパーティーの全員が、初めて聞く攻撃の名前だった。
「強いとは聞いていたが、まだ十五歳であそこまでワイバーンと戦えるとは……恐ろしいの一言だな」
タンクの大男は、才能という言葉に関して口にしなかった。
様々な理由があるが……大男がその言葉を口にしなかった一番大きな理由は、クランドが鍛錬と実戦の末に身に付けた筋肉。
筋肉こそ強さの全て! という脳筋頭ではないが、男は筋肉を鍛え上げてこそ、なんぼのものという考えを持っていた。
クランドの筋肉、体格は決して筋骨隆々のゴリマッチョではない。
だが、大男はその筋密度を一目で理解していた。
「うわっ! ワイバーンの爪撃刃を拳で弾いてる……もしかして鋼を纏ってるの?」
「そうみたいですね。岩であれば、斬り裂かれてしまいそうですが、鋼であればワイバーンの爪撃刃にも耐えられるでしょう……ですが」
「その衝撃に一切怯まず殴って弾く、掻き消すなんて……ねぇ、リーゼさん。貴族って人種は、あぁいった桁外れな実力者ばかりなの?」
クランドと共に行動しているリーゼの名も同時に広まっている為、斥候の女性がリーゼの名前を知っていてもおかしくないが、本人はいきなり名前を呼ばれたことに、少々驚いた。
「いえ、そんなことはありません」
しかし、そこはプロの従者。
驚きという感情を表に出さず、質問に答える。
「クランド様は同世代の令息、令嬢……数世代上の方たちよりも優れた実力を有しています。クランド様の同世代で現在、学生の中で最強と謳われているブラハム・ダグラスに勝利できる方々は、まずいないでしょう」
エキシビションマッチでブラハム・ダグラスと戦った頃よりも、僅かにクランドは成長している。
まだまだ成長中のクランドではあるが、ブラハム・ダグラスは当時、クランドが全力中の全力で戦わなければ敗北の可能性があると感じた超強敵。
「クランド様は才能もピカイチですが、一番の強味は飽くなき向上心でしょう」
次の瞬間、ワイバーンの体に裂傷が生まれ、少なくない血が噴き出す
リーゼがクランドの強さの秘訣を軽く話している間にも……ワイバーンとの勝負は確実に終わりへ近づいていた。
(悪くない斬撃だと思ったが、逆鱗状態故か……筋肉の圧だけで止血してしまうとはな)
そういった芸当が出来る人間がいるのは知っている。
ただ、モンスターに限ってはそういった無茶な止血方法があるという知識などなく、大概は自身の高い治癒力に頼ることが多い。
しかし、目の前のワイバーンは無茶な止血方法を実行した。
それだけの知能も兼ね備えていると解かり、クランドの笑みは増々凶悪になる。
「カバディ」
そもそも逆鱗状態となったワイバーンの攻撃は、どれも鋭く脅威となる一撃。
通常の強化スキルや、キャントで身体能力を強化しているクランドだが、鋼を纏った拳や蹴りで弾けない状態では……紙一重で躱すが精一杯。
余裕を持って躱すことは出来ず、鋼を纏っている以外の部分に当たれば、大ダメージは免れない。
「ギィアアアアアアッ!!!!」
拡散タイプのブレスを吐きだし、クランドを焼き尽くさんとするワイバーン。
本能で、このブレスだけでは殺せないと解っている。
逆鱗状態であっても、ただ暴れるだけでは終わらせようとしない。
後方からその様子を見ていたリーゼは、非常に厄介なワイバーンだと思いながらも、自分たちの方向にも飛んでくるブレスの対処に終われる。
「あ、あいつを守らないのか!?」
自分たちを火のブレスから守ろうとしてくれているのは有難い。
非常に有難いが、現在一番ヤバい状況に置かれているのは、一対一で戦っているクランド。
「必要ありません……クランド様ですから」
主人を心配してくれるのは、素直に嬉しい。
ただ……ブレスごときで追い込まれるクランドではなかった。
「……カバディ」
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