78 / 92
七十八話 一度だけで十分
しおりを挟む
下級のドラゴン、亜竜であってもその状態になれば、街を一つ滅ぼしかねない狂暴な状態。
決してドラゴンをその状態にさせてはならない。
先輩冒険者が後輩に教える内容の一つ。
手負いとはいえ、その状態になったワイバーンを一人で倒した。
本当にそうなのか? そもそも逆鱗状態になったという話は本当なのか?
同業者たちはそういった疑問で頭が一杯になる。
「……っ、その話。どうやら本当みたいね」
後輩に頼まれてワイバーンの魔石をもう一度鑑定した受付嬢は、青年の言葉が本当だと宣言した。
鑑定のスキルレベルが上がれば、素材からモンスターが死ぬ前の情報も得ることが出来る。
「マジかよ、一人で倒しただけじゃなくて、逆鱗状態のワイバーンを……」
「お前、倒せる自信あるか?」
「いや、一人じゃさすがに……てか、パーティーで挑んでも逆鱗状態の相手に勝てるわけなくないか?」
「ワイバーンって元々Cランクでしょ。逆鱗状態になったら、少なくともBランククラスって話だけど……」
青年、受付嬢たちの言葉が事実であれば、既にBランク相当の実力を有していることになる。
戦闘力だけを考慮するのであれば、現時点でBランク冒険者の中でトップクラスに位置すると言っても過言ではない。
(あのクランド様なのですから、既に戦闘力だけであればBランク相当……戦い方次第であれば、Aランククラスでもおかしくありません)
従者であるリーゼにとって、周囲の反応は特に驚く内容ではなく、至極当然だった。
「クランドさん、こちらの魔石を買い取らせていただくことは」
「すいません、今回は遠慮させていただきます」
「か、畏まりました」
逆鱗状態の魔石ともなれば、同じモンスターの魔石であっても、買取値段が跳ね上がる。
錬金術の素材等として扱うには難易度が高いが、それでも高品質な素材であることに変わりはない。
「クランドさん。こちらがワイバーンを討伐して頂いた特別報酬になります」
「どうも」
冒険者ギルドとしては、なるべく早く冒険者たちに討伐してほしいと思っていた個体。
故に、討伐した者……パーティーには特別報酬を用意していた。
そして他の内臓や骨、鱗などを売却した後、青年はクランドとリーゼを夕食に誘った。
儲けの金額的にはクランドが奢る流れではあるが、命の恩人である二人にそんな真似をさせるわけがなく、青年は自分たちが奢ると譲らない。
二人もその変わらない意志に折れ、奢られることにした。
だが、クランドたちが冒険者ギルドを出る前に、一人の男とパーティーメンバーの者たちから立ちふさがった。
「ふざけんなよ!!! てめぇみたいな嘗め腐ったガキが、ワイバーンに一人で勝てるわけねぇだろ!!!!」
そう……以前クランドに名指しではないが、詐欺師と言われた男。
運良く、もしくは運悪くワイバーンに遭遇し、結果的に左腕を失った。
冒険者として完全に機能しなくなったわけではないが、戦力は半減。
青年と同じくCランクであはあるが……現時点では、そのランクに相応しい実力を持っているかは怪しいところ。
「クランドが一人でワイバーンを倒した。俺たち全員が証人だ」
クランドとリーゼを守る様に、青年たちが一歩前に出た壁の様に立ちふさがる。
「どけ。俺は後ろのクソガキに用があるんだよ」
「どかない。お前らは用があっても、クランドがそれに応える義理はないだろ。一度負けたくせに、そんなデカい態度でイキってもダサいだけだぞ」
「んだと!! てめぇから潰されてぇか!!!!」
青年はわざと挑発し、男たちの意識を自分たちに向けた。
実力では下でも、先輩として面倒な輩から守る。
そんな良い意味な意地を見せる青年。
当然、他三人も同じ気持ちでクランドとリーゼの前に、二人を守る様に立つ。
(……良い先輩だな)
(こういった方々たちだけであれば、先輩という相手を無条件に尊敬できそうですが……)
青年たちと相対する男たちも、一応二人の先輩にあたる。
(にしても、そろそろウザいな)
仏の顔も三度まで。
前世が日本人であったクランドには、馴染みのある言葉。
三度以上怒らせれば、鉄拳制裁が下る。
仏だからこそ、三度まで我慢する……であれば、ただの人間である自分が、三度も我慢する必要はあるのか?
そう思ったことが過去にあったクランド。
前回の一件は、クランドの中で鉄拳制裁には入っておらず、忠告の枠に定まっている。
「ありがとう、先輩。でも、こいつの相手は自分がします」
「く、クランド」
自分を守ろうとしてくれた青年に敬意を持ちながらも、一歩前に出て右腕だけ詐欺師の間に出た。
「俺に喧嘩売ってくるなら、それ相応の実力を身に付けてからにしてくれ」
それだけ言うと、クランドは八割ほどの力を込めて、右腕だけ詐欺師の胸骨や肋骨を砕いた。
「ぐっ、ぼぁっ!!!???」
突然の鉄拳制裁に反応出来ず、文字通り鉄拳を食らった右腕だけ詐欺師は、その場から膝を付き、地面に血を吐き出した。
「り、リーダー!!! て、てめぇこのクソガキ!!! いきなり何しやがんだ!!!」
「先に喧嘩を吹っ掛けてきたのはそっちだろ。先にゴングを慣らしたのは、お前らの方なんだよ」
「ひっ!!!???」
そこには、珍しく苛立ち百パーセントの修羅が怒りを撒き散らしていた。
当然、愚かな先輩たちがその圧に耐えられるわけがなく、右腕だけ詐欺師も含めて失禁してしまった。
決してドラゴンをその状態にさせてはならない。
先輩冒険者が後輩に教える内容の一つ。
手負いとはいえ、その状態になったワイバーンを一人で倒した。
本当にそうなのか? そもそも逆鱗状態になったという話は本当なのか?
同業者たちはそういった疑問で頭が一杯になる。
「……っ、その話。どうやら本当みたいね」
後輩に頼まれてワイバーンの魔石をもう一度鑑定した受付嬢は、青年の言葉が本当だと宣言した。
鑑定のスキルレベルが上がれば、素材からモンスターが死ぬ前の情報も得ることが出来る。
「マジかよ、一人で倒しただけじゃなくて、逆鱗状態のワイバーンを……」
「お前、倒せる自信あるか?」
「いや、一人じゃさすがに……てか、パーティーで挑んでも逆鱗状態の相手に勝てるわけなくないか?」
「ワイバーンって元々Cランクでしょ。逆鱗状態になったら、少なくともBランククラスって話だけど……」
青年、受付嬢たちの言葉が事実であれば、既にBランク相当の実力を有していることになる。
戦闘力だけを考慮するのであれば、現時点でBランク冒険者の中でトップクラスに位置すると言っても過言ではない。
(あのクランド様なのですから、既に戦闘力だけであればBランク相当……戦い方次第であれば、Aランククラスでもおかしくありません)
従者であるリーゼにとって、周囲の反応は特に驚く内容ではなく、至極当然だった。
「クランドさん、こちらの魔石を買い取らせていただくことは」
「すいません、今回は遠慮させていただきます」
「か、畏まりました」
逆鱗状態の魔石ともなれば、同じモンスターの魔石であっても、買取値段が跳ね上がる。
錬金術の素材等として扱うには難易度が高いが、それでも高品質な素材であることに変わりはない。
「クランドさん。こちらがワイバーンを討伐して頂いた特別報酬になります」
「どうも」
冒険者ギルドとしては、なるべく早く冒険者たちに討伐してほしいと思っていた個体。
故に、討伐した者……パーティーには特別報酬を用意していた。
そして他の内臓や骨、鱗などを売却した後、青年はクランドとリーゼを夕食に誘った。
儲けの金額的にはクランドが奢る流れではあるが、命の恩人である二人にそんな真似をさせるわけがなく、青年は自分たちが奢ると譲らない。
二人もその変わらない意志に折れ、奢られることにした。
だが、クランドたちが冒険者ギルドを出る前に、一人の男とパーティーメンバーの者たちから立ちふさがった。
「ふざけんなよ!!! てめぇみたいな嘗め腐ったガキが、ワイバーンに一人で勝てるわけねぇだろ!!!!」
そう……以前クランドに名指しではないが、詐欺師と言われた男。
運良く、もしくは運悪くワイバーンに遭遇し、結果的に左腕を失った。
冒険者として完全に機能しなくなったわけではないが、戦力は半減。
青年と同じくCランクであはあるが……現時点では、そのランクに相応しい実力を持っているかは怪しいところ。
「クランドが一人でワイバーンを倒した。俺たち全員が証人だ」
クランドとリーゼを守る様に、青年たちが一歩前に出た壁の様に立ちふさがる。
「どけ。俺は後ろのクソガキに用があるんだよ」
「どかない。お前らは用があっても、クランドがそれに応える義理はないだろ。一度負けたくせに、そんなデカい態度でイキってもダサいだけだぞ」
「んだと!! てめぇから潰されてぇか!!!!」
青年はわざと挑発し、男たちの意識を自分たちに向けた。
実力では下でも、先輩として面倒な輩から守る。
そんな良い意味な意地を見せる青年。
当然、他三人も同じ気持ちでクランドとリーゼの前に、二人を守る様に立つ。
(……良い先輩だな)
(こういった方々たちだけであれば、先輩という相手を無条件に尊敬できそうですが……)
青年たちと相対する男たちも、一応二人の先輩にあたる。
(にしても、そろそろウザいな)
仏の顔も三度まで。
前世が日本人であったクランドには、馴染みのある言葉。
三度以上怒らせれば、鉄拳制裁が下る。
仏だからこそ、三度まで我慢する……であれば、ただの人間である自分が、三度も我慢する必要はあるのか?
そう思ったことが過去にあったクランド。
前回の一件は、クランドの中で鉄拳制裁には入っておらず、忠告の枠に定まっている。
「ありがとう、先輩。でも、こいつの相手は自分がします」
「く、クランド」
自分を守ろうとしてくれた青年に敬意を持ちながらも、一歩前に出て右腕だけ詐欺師の間に出た。
「俺に喧嘩売ってくるなら、それ相応の実力を身に付けてからにしてくれ」
それだけ言うと、クランドは八割ほどの力を込めて、右腕だけ詐欺師の胸骨や肋骨を砕いた。
「ぐっ、ぼぁっ!!!???」
突然の鉄拳制裁に反応出来ず、文字通り鉄拳を食らった右腕だけ詐欺師は、その場から膝を付き、地面に血を吐き出した。
「り、リーダー!!! て、てめぇこのクソガキ!!! いきなり何しやがんだ!!!」
「先に喧嘩を吹っ掛けてきたのはそっちだろ。先にゴングを慣らしたのは、お前らの方なんだよ」
「ひっ!!!???」
そこには、珍しく苛立ち百パーセントの修羅が怒りを撒き散らしていた。
当然、愚かな先輩たちがその圧に耐えられるわけがなく、右腕だけ詐欺師も含めて失禁してしまった。
21
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる