カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

文字の大きさ
79 / 92

七十九話 大きな才能が、他の才能を喰らう

しおりを挟む
「クランド様、珍しく苛立っていましたね」

「何と言うか……冒険者になれば、あぁいう輩がいるのは解っていた。貴族の間でも、似た様な連中はいたからな」

面倒な輩に絡まれる。
それは冒険者という職業に就いてから始まったことではない。

「き、貴族の中でもクランドにあぁいった絡みをする者がいたのかい?」

先程、苛立ち百パーセントのクランドの圧によって、片腕詐欺師とそのパーティーメンバー、全員が失禁した。

その圧を向けられていない青年でさえ、身震いを抑えきれなかった。

「俺の家は槍の名家だったんですよ。ただ、俺は槍技のスキルを一向に習得出来なかった。鍛錬は積んでたんですけどね」

まだクランドと関わって一日も経っていないが、その言葉が嘘とは思えない四人。

(鍛錬を積んだという言葉に、嘘はない筈。クランドが真面目に鍛錬を積んでも習得出来ないとは……少し想像できないな)

何故槍技のスキルを習得出来なかったのか。
その疑問は、直ぐに正解……かもしれない答えが浮かんだ。

「もしや、クランドの素手による才能、センスが本来持っていた筈の槍に関する才を、喰ってしまったのか?」

青年は自分でも少々何を言っているのか解らなかった。

それでも、クランドとワイバーンとの戦闘光景や、鍛え上げた肉体を見る限り、扱おうと思えば槍を十分に扱えると……直感ではあるが、確信していた。

「私としては、その可能性は十分にあると思っています。クランド様は武器全般を高水準で扱えますが、徒手格闘の腕前は更に数歩先まで進んでいますので」

「よせよ。そんな褒めたって何も出ないぞ」

「そんなもの期待してません。ただ、純然たる事実です」

これまた、リーゼの言葉から嘘は感じられない。
つもり……その言葉通り、クランドは武器全般を高水準のレベルで扱うことが出来る。

その技術力に、青年はほんの少し嫉妬した。
とはいえ、そんな小さなことで晩飯を奢ると決めた約束を反抗することはなく、そのまま少々メニューのお値段が高い酒場へ直行。

値段が他店と比べて少し高いだけあり、味は二人が満足いく内容だった。

「クランド、リーゼ。二人は、次の目的地について、既に考えてたりするかい?」

「いや、全く考えてませんね。今日、アブスタへ来た目的が終わったんで、二日か三日かけて次の目的地を探そうと思ってます」

これに関しては、青年たちを含む大半の冒険者たちが同じことを考えていた。

アブスタは悪くない街ではあるが、決して冒険者にとって実りが良い街でもない。
ワイバーンが街からそう遠くない場所で現れていたため、他の街に滞在していた冒険者が「我こそは!!」と訪れていた。

その標的が消えてしまえば、もう留まる必要はない。

「俺たちも、次の目的地について明日から考えようと思っているが、選択肢の一つにダンジョンを入れている」

「ダンジョン、ですか」

勿論知らないわけがない。
クランドからすれば、倒しても倒しても敵が増え続ける理想の実戦鍛錬場である。

「上手くいけば、今よりも稼ぎが増えるからな。二人は選択肢に入れているか?」

「いえ、まだ入れてません。興味はありますけど、人数が人数なんで」

「人数が人数、ねぇ……そうね、ダンジョンに潜る時、人数は大事よね」

斥候の女性は、クランドの言葉に対して「あまりにも謙虚過ぎでは?」という思いを持ったが、一人の戦力だけではどうにもならない場面がある。

「そうですね。お二人はとても優秀な戦闘力を持っていますが、野営の見張りなどを考えると、少し厳しい部分がありますね」

「まっ、そこら辺の課題をクリアしたら、挑もうとは思ってますよ」

互いの目標や、興味を持つ点などを話し合いながら呑んで食べ、全員無事に吐くことなく宿へ戻った。

そして翌日、予定通り二人は次の目的地を決める為に、情報を集め始めた。

「ん~~~……人数と、今の実力を考えると、少し不安だな」

クランド的には好奇心がそそられる場所の情報を手に入れたが、現在……一人で行動している訳ではない。
リーゼという大切な仲間が傍に居ることを考えると、却下せざるを得なかった。

翌日、その日は午前中だけギルドの訓練場を使って体を動かし、午後からは先日と同じく情報収集を行う。

「中々これだ! って場所が見つからないな。移動距離の問題もありますからね」

明日明後日まででは、丁度良い目的地が見つからないかもしれない。

とはいえ、何かを急いでいる訳ではない為、特に焦る必要はない。

(次は……俺一人だけじゃなくて、リーゼと二人で倒せるレベルの相手もありかもしれないな)

自分一人ではなく、従者で仲間であるリーゼとタッグで倒す。
そんな強敵が相手というのも悪くない。

「おい、聞いたか。またワイバーンが現れたらしいぞ」

「聞いた聞いた。確か、普通のワイバーンじゃないんだよな」

「らしいぜ。しかもよ、そいつは一瞬でCランク冒険者パーティーを壊滅させる力を持ってるらしいぞ」

「ま、マジかよ……どう考えても、Bランクは確実だよな」

偶々……本当に偶々耳に入ってきた情報に、クランドは心を躍らせた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...