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七十九話 大きな才能が、他の才能を喰らう
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「クランド様、珍しく苛立っていましたね」
「何と言うか……冒険者になれば、あぁいう輩がいるのは解っていた。貴族の間でも、似た様な連中はいたからな」
面倒な輩に絡まれる。
それは冒険者という職業に就いてから始まったことではない。
「き、貴族の中でもクランドにあぁいった絡みをする者がいたのかい?」
先程、苛立ち百パーセントのクランドの圧によって、片腕詐欺師とそのパーティーメンバー、全員が失禁した。
その圧を向けられていない青年でさえ、身震いを抑えきれなかった。
「俺の家は槍の名家だったんですよ。ただ、俺は槍技のスキルを一向に習得出来なかった。鍛錬は積んでたんですけどね」
まだクランドと関わって一日も経っていないが、その言葉が嘘とは思えない四人。
(鍛錬を積んだという言葉に、嘘はない筈。クランドが真面目に鍛錬を積んでも習得出来ないとは……少し想像できないな)
何故槍技のスキルを習得出来なかったのか。
その疑問は、直ぐに正解……かもしれない答えが浮かんだ。
「もしや、クランドの素手による才能、センスが本来持っていた筈の槍に関する才を、喰ってしまったのか?」
青年は自分でも少々何を言っているのか解らなかった。
それでも、クランドとワイバーンとの戦闘光景や、鍛え上げた肉体を見る限り、扱おうと思えば槍を十分に扱えると……直感ではあるが、確信していた。
「私としては、その可能性は十分にあると思っています。クランド様は武器全般を高水準で扱えますが、徒手格闘の腕前は更に数歩先まで進んでいますので」
「よせよ。そんな褒めたって何も出ないぞ」
「そんなもの期待してません。ただ、純然たる事実です」
これまた、リーゼの言葉から嘘は感じられない。
つもり……その言葉通り、クランドは武器全般を高水準のレベルで扱うことが出来る。
その技術力に、青年はほんの少し嫉妬した。
とはいえ、そんな小さなことで晩飯を奢ると決めた約束を反抗することはなく、そのまま少々メニューのお値段が高い酒場へ直行。
値段が他店と比べて少し高いだけあり、味は二人が満足いく内容だった。
「クランド、リーゼ。二人は、次の目的地について、既に考えてたりするかい?」
「いや、全く考えてませんね。今日、アブスタへ来た目的が終わったんで、二日か三日かけて次の目的地を探そうと思ってます」
これに関しては、青年たちを含む大半の冒険者たちが同じことを考えていた。
アブスタは悪くない街ではあるが、決して冒険者にとって実りが良い街でもない。
ワイバーンが街からそう遠くない場所で現れていたため、他の街に滞在していた冒険者が「我こそは!!」と訪れていた。
その標的が消えてしまえば、もう留まる必要はない。
「俺たちも、次の目的地について明日から考えようと思っているが、選択肢の一つにダンジョンを入れている」
「ダンジョン、ですか」
勿論知らないわけがない。
クランドからすれば、倒しても倒しても敵が増え続ける理想の実戦鍛錬場である。
「上手くいけば、今よりも稼ぎが増えるからな。二人は選択肢に入れているか?」
「いえ、まだ入れてません。興味はありますけど、人数が人数なんで」
「人数が人数、ねぇ……そうね、ダンジョンに潜る時、人数は大事よね」
斥候の女性は、クランドの言葉に対して「あまりにも謙虚過ぎでは?」という思いを持ったが、一人の戦力だけではどうにもならない場面がある。
「そうですね。お二人はとても優秀な戦闘力を持っていますが、野営の見張りなどを考えると、少し厳しい部分がありますね」
「まっ、そこら辺の課題をクリアしたら、挑もうとは思ってますよ」
互いの目標や、興味を持つ点などを話し合いながら呑んで食べ、全員無事に吐くことなく宿へ戻った。
そして翌日、予定通り二人は次の目的地を決める為に、情報を集め始めた。
「ん~~~……人数と、今の実力を考えると、少し不安だな」
クランド的には好奇心がそそられる場所の情報を手に入れたが、現在……一人で行動している訳ではない。
リーゼという大切な仲間が傍に居ることを考えると、却下せざるを得なかった。
翌日、その日は午前中だけギルドの訓練場を使って体を動かし、午後からは先日と同じく情報収集を行う。
「中々これだ! って場所が見つからないな。移動距離の問題もありますからね」
明日明後日まででは、丁度良い目的地が見つからないかもしれない。
とはいえ、何かを急いでいる訳ではない為、特に焦る必要はない。
(次は……俺一人だけじゃなくて、リーゼと二人で倒せるレベルの相手もありかもしれないな)
自分一人ではなく、従者で仲間であるリーゼとタッグで倒す。
そんな強敵が相手というのも悪くない。
「おい、聞いたか。またワイバーンが現れたらしいぞ」
「聞いた聞いた。確か、普通のワイバーンじゃないんだよな」
「らしいぜ。しかもよ、そいつは一瞬でCランク冒険者パーティーを壊滅させる力を持ってるらしいぞ」
「ま、マジかよ……どう考えても、Bランクは確実だよな」
偶々……本当に偶々耳に入ってきた情報に、クランドは心を躍らせた。
「何と言うか……冒険者になれば、あぁいう輩がいるのは解っていた。貴族の間でも、似た様な連中はいたからな」
面倒な輩に絡まれる。
それは冒険者という職業に就いてから始まったことではない。
「き、貴族の中でもクランドにあぁいった絡みをする者がいたのかい?」
先程、苛立ち百パーセントのクランドの圧によって、片腕詐欺師とそのパーティーメンバー、全員が失禁した。
その圧を向けられていない青年でさえ、身震いを抑えきれなかった。
「俺の家は槍の名家だったんですよ。ただ、俺は槍技のスキルを一向に習得出来なかった。鍛錬は積んでたんですけどね」
まだクランドと関わって一日も経っていないが、その言葉が嘘とは思えない四人。
(鍛錬を積んだという言葉に、嘘はない筈。クランドが真面目に鍛錬を積んでも習得出来ないとは……少し想像できないな)
何故槍技のスキルを習得出来なかったのか。
その疑問は、直ぐに正解……かもしれない答えが浮かんだ。
「もしや、クランドの素手による才能、センスが本来持っていた筈の槍に関する才を、喰ってしまったのか?」
青年は自分でも少々何を言っているのか解らなかった。
それでも、クランドとワイバーンとの戦闘光景や、鍛え上げた肉体を見る限り、扱おうと思えば槍を十分に扱えると……直感ではあるが、確信していた。
「私としては、その可能性は十分にあると思っています。クランド様は武器全般を高水準で扱えますが、徒手格闘の腕前は更に数歩先まで進んでいますので」
「よせよ。そんな褒めたって何も出ないぞ」
「そんなもの期待してません。ただ、純然たる事実です」
これまた、リーゼの言葉から嘘は感じられない。
つもり……その言葉通り、クランドは武器全般を高水準のレベルで扱うことが出来る。
その技術力に、青年はほんの少し嫉妬した。
とはいえ、そんな小さなことで晩飯を奢ると決めた約束を反抗することはなく、そのまま少々メニューのお値段が高い酒場へ直行。
値段が他店と比べて少し高いだけあり、味は二人が満足いく内容だった。
「クランド、リーゼ。二人は、次の目的地について、既に考えてたりするかい?」
「いや、全く考えてませんね。今日、アブスタへ来た目的が終わったんで、二日か三日かけて次の目的地を探そうと思ってます」
これに関しては、青年たちを含む大半の冒険者たちが同じことを考えていた。
アブスタは悪くない街ではあるが、決して冒険者にとって実りが良い街でもない。
ワイバーンが街からそう遠くない場所で現れていたため、他の街に滞在していた冒険者が「我こそは!!」と訪れていた。
その標的が消えてしまえば、もう留まる必要はない。
「俺たちも、次の目的地について明日から考えようと思っているが、選択肢の一つにダンジョンを入れている」
「ダンジョン、ですか」
勿論知らないわけがない。
クランドからすれば、倒しても倒しても敵が増え続ける理想の実戦鍛錬場である。
「上手くいけば、今よりも稼ぎが増えるからな。二人は選択肢に入れているか?」
「いえ、まだ入れてません。興味はありますけど、人数が人数なんで」
「人数が人数、ねぇ……そうね、ダンジョンに潜る時、人数は大事よね」
斥候の女性は、クランドの言葉に対して「あまりにも謙虚過ぎでは?」という思いを持ったが、一人の戦力だけではどうにもならない場面がある。
「そうですね。お二人はとても優秀な戦闘力を持っていますが、野営の見張りなどを考えると、少し厳しい部分がありますね」
「まっ、そこら辺の課題をクリアしたら、挑もうとは思ってますよ」
互いの目標や、興味を持つ点などを話し合いながら呑んで食べ、全員無事に吐くことなく宿へ戻った。
そして翌日、予定通り二人は次の目的地を決める為に、情報を集め始めた。
「ん~~~……人数と、今の実力を考えると、少し不安だな」
クランド的には好奇心がそそられる場所の情報を手に入れたが、現在……一人で行動している訳ではない。
リーゼという大切な仲間が傍に居ることを考えると、却下せざるを得なかった。
翌日、その日は午前中だけギルドの訓練場を使って体を動かし、午後からは先日と同じく情報収集を行う。
「中々これだ! って場所が見つからないな。移動距離の問題もありますからね」
明日明後日まででは、丁度良い目的地が見つからないかもしれない。
とはいえ、何かを急いでいる訳ではない為、特に焦る必要はない。
(次は……俺一人だけじゃなくて、リーゼと二人で倒せるレベルの相手もありかもしれないな)
自分一人ではなく、従者で仲間であるリーゼとタッグで倒す。
そんな強敵が相手というのも悪くない。
「おい、聞いたか。またワイバーンが現れたらしいぞ」
「聞いた聞いた。確か、普通のワイバーンじゃないんだよな」
「らしいぜ。しかもよ、そいつは一瞬でCランク冒険者パーティーを壊滅させる力を持ってるらしいぞ」
「ま、マジかよ……どう考えても、Bランクは確実だよな」
偶々……本当に偶々耳に入ってきた情報に、クランドは心を躍らせた。
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