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八十六話 証明出来たから、それで良い
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「カバディ!!!」
鬼心開放の使用は、クランドにとって非常に不本意。
出来ることなら、奥の手を使わずにエクセルフワイバーンという強敵を倒したかった。
それが出来れば、また一つ……大きな壁を超えられる予感がした。
しかし、そんな事ばかり考えている戦闘狂も、命は惜しい。
もう何年も野生という戦場でやり取りをしていることもあり、その辺りの判断は敏感になっていた。
一方で、エクセルフワイバーンは……自身の子供であった一体のワイバーンを倒した存在は、今自身と戦っている人間だと、本能的に気付いてしまった。
希少種のワイバーン、エクセルフワイバーンという驚異的な存在がアブスタに現れた理由は、子供の心配。
案の定、アブスタ周辺で暴れている子供の姿はなかった。
その一件が逆鱗に触れることはなかった。
それでも……エクセルフワイバーンの中に、是非とも子供を倒した存在を潰したいという思いが芽生える。
故に、アブスタ周辺に現れてから今まで、冒険者だけではなく気になったモンスターまで平等に襲い続けた。
「カバディ」
「っ!!??」
体を突き抜けたのでは? と錯覚するアッパーを食らい、苦悶の表情を浮かべてしまう。
今すぐ自慢のブレスを、爪撃を……尾撃を叩きこみたい。
逆鱗状態ではないが、激情状態であることに変わりはない。
そんな恐ろしい状態から放たれる攻撃が来るタイミングが解っているかのように躱し、再び打撃をめり込ませる。
自身がタフである事を認識しているエクセルフワイバーンが、徐々に己の身を心配し始める。
自分の攻撃が一切当たらなくなり、解りかけていた動きが加速し、突き抜けるような痛打が止まらない。
「ッ、ギィィァアアアアアァァァアアアアッ!!!!!」
だからといって、そこから逃げ出すことはない。
他のモンスターであれば、その場から逃げ出したかもしれない。
基本的に敵対する冒険者がそう思う程、戦闘は一方的な内容に変わりつつあった。
しかし、エクセルフワイバーンは本能的に戦場から逃げ出さない。
竜種……ドラゴン故の、モンスターピラミッドの頂点に立つ存在としてのプライドが、そこから逃げ出すことを許さなかった。
見る者によっては、その姿に何かを感じるかもしれない。
クランドは……戦況が大きく変わりつつあっても、攻めの姿勢を崩さないエクセルフワイバーンに対し、無意識に敬意を抱いていた。
そんな強敵との戦闘に感謝の心を持ちつつ……宙で身を回し、加重を加えた回し蹴りを首根に叩きこむ。
「ガッ!? ッ!!!??? ァ……」
宙で首根を蹴られ、地面に叩きつけられた。
連続で降りかかる衝撃に表情が歪む……どころの話ではない。
首の次に体全体に衝撃が走り、呼吸が止まる。
「……はぁ~、仕方ないか」
地面に叩きつけられた衝撃も大ダメージではあるが、勝負を終わらす一撃となったのは、首根に叩きこまれた蹴り。
その時点で高い回復力だけでは修復不可能な衝撃を受け、呼吸が不可能な状態へ追い込まれた。
呼吸が不可能となれば、呼吸を必要とする生物としては……もう活動不能に追い込まれたも同然。
ピクピクと体を震わせ……そのまま一度も起き上がれず、息絶えた。
「リーゼ、終わったぞ」
「見事な戦いぶりでした、クランド様」
「そうか? 結局鬼心開放を使ってしまったからな……個人的には、あんまり褒められた戦いじゃないと思うんだが」
「致し方ないといったところかと。希少種という稀有で強い存在との戦いだったのです。思い通りにいかないこともあるかと」
「……それもそうか」
終戦がリーゼから解体を申し出、クランドは周囲の警戒に努める。
そんなクランドに、周囲への警戒を妨害するつもりはなかったが、声を掛けずにはいられない人物がいた。
「すまない」
「いきなり謝罪されても困るんだが」
「以前、君では希少種のワイバーン……エクセルフワイバーンを倒せないと言ったことに関しての謝罪だよ」
「……あぁ、それか」
強敵との戦いに熱中していたため、すっかり以前怒りを抱いた一件に関して忘れていた。
本人から声を掛けられてようやく思い出したが、標的であったエクセルフワイバーンを倒せたこともあり、その一件に対しての怒りは消え失せていた。
「確かに多少はキレてたけど、あれは俺やリーゼの身を案じての言葉だろ」
「それはそうだが……他に、何も言わないのかい?」
「こうして、俺一人だけで希少種のワイバーンを倒せると証明できたんだ。その現実を、あんたなら卑怯な手を使ったとか、屑野郎たちみたいな言葉を投げたりしてこないだろ」
心の内を読める仙人などではない。
それでも、目の前の先輩冒険者……アルティスが、口だけのピエロではないのは解る。
「君は……心が広いね」
「あんたがまともな人で、先輩だからな。あんたがこの前絡んで来た面倒な先輩だったら、一発ぶん殴ってたと思うぞ」
その表情から本気で殴り掛かると解り、アルティスの仲間含め、僅かに震えた。
因みにアルティスが以前クランドに絡んだ詐欺師の様な人間であれば、今ではなくギルド内で絡んできた時点で鉄拳を叩きこんでいた。
鬼心開放の使用は、クランドにとって非常に不本意。
出来ることなら、奥の手を使わずにエクセルフワイバーンという強敵を倒したかった。
それが出来れば、また一つ……大きな壁を超えられる予感がした。
しかし、そんな事ばかり考えている戦闘狂も、命は惜しい。
もう何年も野生という戦場でやり取りをしていることもあり、その辺りの判断は敏感になっていた。
一方で、エクセルフワイバーンは……自身の子供であった一体のワイバーンを倒した存在は、今自身と戦っている人間だと、本能的に気付いてしまった。
希少種のワイバーン、エクセルフワイバーンという驚異的な存在がアブスタに現れた理由は、子供の心配。
案の定、アブスタ周辺で暴れている子供の姿はなかった。
その一件が逆鱗に触れることはなかった。
それでも……エクセルフワイバーンの中に、是非とも子供を倒した存在を潰したいという思いが芽生える。
故に、アブスタ周辺に現れてから今まで、冒険者だけではなく気になったモンスターまで平等に襲い続けた。
「カバディ」
「っ!!??」
体を突き抜けたのでは? と錯覚するアッパーを食らい、苦悶の表情を浮かべてしまう。
今すぐ自慢のブレスを、爪撃を……尾撃を叩きこみたい。
逆鱗状態ではないが、激情状態であることに変わりはない。
そんな恐ろしい状態から放たれる攻撃が来るタイミングが解っているかのように躱し、再び打撃をめり込ませる。
自身がタフである事を認識しているエクセルフワイバーンが、徐々に己の身を心配し始める。
自分の攻撃が一切当たらなくなり、解りかけていた動きが加速し、突き抜けるような痛打が止まらない。
「ッ、ギィィァアアアアアァァァアアアアッ!!!!!」
だからといって、そこから逃げ出すことはない。
他のモンスターであれば、その場から逃げ出したかもしれない。
基本的に敵対する冒険者がそう思う程、戦闘は一方的な内容に変わりつつあった。
しかし、エクセルフワイバーンは本能的に戦場から逃げ出さない。
竜種……ドラゴン故の、モンスターピラミッドの頂点に立つ存在としてのプライドが、そこから逃げ出すことを許さなかった。
見る者によっては、その姿に何かを感じるかもしれない。
クランドは……戦況が大きく変わりつつあっても、攻めの姿勢を崩さないエクセルフワイバーンに対し、無意識に敬意を抱いていた。
そんな強敵との戦闘に感謝の心を持ちつつ……宙で身を回し、加重を加えた回し蹴りを首根に叩きこむ。
「ガッ!? ッ!!!??? ァ……」
宙で首根を蹴られ、地面に叩きつけられた。
連続で降りかかる衝撃に表情が歪む……どころの話ではない。
首の次に体全体に衝撃が走り、呼吸が止まる。
「……はぁ~、仕方ないか」
地面に叩きつけられた衝撃も大ダメージではあるが、勝負を終わらす一撃となったのは、首根に叩きこまれた蹴り。
その時点で高い回復力だけでは修復不可能な衝撃を受け、呼吸が不可能な状態へ追い込まれた。
呼吸が不可能となれば、呼吸を必要とする生物としては……もう活動不能に追い込まれたも同然。
ピクピクと体を震わせ……そのまま一度も起き上がれず、息絶えた。
「リーゼ、終わったぞ」
「見事な戦いぶりでした、クランド様」
「そうか? 結局鬼心開放を使ってしまったからな……個人的には、あんまり褒められた戦いじゃないと思うんだが」
「致し方ないといったところかと。希少種という稀有で強い存在との戦いだったのです。思い通りにいかないこともあるかと」
「……それもそうか」
終戦がリーゼから解体を申し出、クランドは周囲の警戒に努める。
そんなクランドに、周囲への警戒を妨害するつもりはなかったが、声を掛けずにはいられない人物がいた。
「すまない」
「いきなり謝罪されても困るんだが」
「以前、君では希少種のワイバーン……エクセルフワイバーンを倒せないと言ったことに関しての謝罪だよ」
「……あぁ、それか」
強敵との戦いに熱中していたため、すっかり以前怒りを抱いた一件に関して忘れていた。
本人から声を掛けられてようやく思い出したが、標的であったエクセルフワイバーンを倒せたこともあり、その一件に対しての怒りは消え失せていた。
「確かに多少はキレてたけど、あれは俺やリーゼの身を案じての言葉だろ」
「それはそうだが……他に、何も言わないのかい?」
「こうして、俺一人だけで希少種のワイバーンを倒せると証明できたんだ。その現実を、あんたなら卑怯な手を使ったとか、屑野郎たちみたいな言葉を投げたりしてこないだろ」
心の内を読める仙人などではない。
それでも、目の前の先輩冒険者……アルティスが、口だけのピエロではないのは解る。
「君は……心が広いね」
「あんたがまともな人で、先輩だからな。あんたがこの前絡んで来た面倒な先輩だったら、一発ぶん殴ってたと思うぞ」
その表情から本気で殴り掛かると解り、アルティスの仲間含め、僅かに震えた。
因みにアルティスが以前クランドに絡んだ詐欺師の様な人間であれば、今ではなくギルド内で絡んできた時点で鉄拳を叩きこんでいた。
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