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八十五話 遊びは終わり?
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クランドとエクセルフワイバーンの戦闘が始まってから……既に七分が経過している。
一対多数の戦いであればおかしくはない。
しかし、一対一の戦いであれば、クランドの戦闘力を考えるとあり得ない戦況と言える。
(こいつっ、本当に楽しいな!!!!)
キャントを続けながら戦う顔に、笑顔はなくならない。
エクセルフワイバーンは非常にタフなことに加えて、他のワイバーンと比べて知能が高い。
故に、七分も戦闘が続けば、敵の動きを読み始める。
「カバディ!?」
しかし、そこはルーキーに似つかわしくない百戦錬磨の経験値を持つクランド。
寸でのところで攻撃を鋭い尾撃を回避し、お返しとばかり左アッパーを叩きこむ。
(……思ったより時間が掛かりますね。希少種のワイバーンだからこその耐久力だとは思いますが……)
既に通常のワイバーンではないことは把握済み。
エクセルフワイバーンが防御、耐久寄りのスキルを有していることも分っている。
クランドの打撃が全く聞いていない訳ではないが、それでも完全に倒れ伏すことなく反撃を行う。
「……このまま続けば、彼は負けるぞ」
リーゼから色々と説明を受け、視る眼を養った方が良いと言われたBランクの男、アルティス。
先程の言葉通り、自分にはまだまだ視る眼が足りないと思い知った。
己より弱く、死ぬ可能性が高いと思っていた少年は、希少種のワイバーンを相手に有効打を一撃を食らわず、鋭い打撃を叩きこんでいる。
自分の得意な得物である細剣で、あそこまでの攻撃数を一人で叩きこむことが出来るか?
つまらないプライドを持たないアルティスは、出来ないと答えることができる。
ただ……相変わらず顔から笑みが消えていないが、モンスターと人間との大きな差から、クランドは負けると口にした。
「君もそれは解るだろ!」
「えぇ、そうですね。エクセルフワイバーン……予想以上にタフなワイバーンですね」
声が僅かに荒ぶるアルティスに対し、リーゼの態度は一切変わっていない。
そんなリーゼの様子に小さな苛立ちを感じるも、掴みかかることはしなかった。
それでも、今回ばかりは助けには行った方が良いのでは? という重いが大きくなっていた。
「クランド様も、そろそろ遊んでいる場合ではないと気付くでしょう」
「……は?」
アルティスが素っ頓狂な声を出してしまうのも無理はない。
リーゼは今、確かに「クランド様も、そろそろ遊んでいる場合ではないと気付く」と口にした。
つまり……現在目の前でエクセルフワイバーンと激闘を繰り広げているクランドは、死闘を演じているのではなく、遊んでいる。
Bランクモンスターという難敵を相手に、遊んでいる……その言葉だけは、そう簡単にアルティスの仲間三人も含めて信じられなかった。
「私の言葉が信じられない、といった顔ですね。確かに、自分でも信じられないようなことを口にしている自覚はあります。しかし……現在エクセルフワイバーンと戦っているのは、クランド様です」
一つの才能が、他の才能を喰らってしまうという、異質な才を持つ鬼才。
強い者と戦い続ける為に騎士という道を捨てた、傍から見ればただの異常者。
「あの方は、色んな意味で他者の理解を超えていく。この戦闘も、あの方にとってはこれからの通過点でしかありません」
そんな主人の勝利を確信するかのような言葉が合図となったのか、戦況に変化が訪れた。
「ギィアッ!?」
これまで苦痛を表情に浮かべるも、痛みを口に出さなかったエクセルフワイバーンの口から、苦悶の声が零れた。
それと同時に、クランドの打撃にギリギリ耐え切れず、思いっきり木に激突した。
「なっ!?」
いきなり変化した戦況に、再び驚きの声を上げるアルティス。
「あれって……もしかして、鬼心開放!!??」
アルティスの仲間である女戦士が驚きの声を上げるが、声を出した本人は自身の言葉に疑問を持たずにはいられなかった。
(嘘、でしょ……なんで!? 絶対にあり得ない!!)
目の前の光景は嘘だ。
心がそう叫びたがっているが、頭は目の前の光景が真実なのだと解っている。
「き、鬼心開放ってあの鬼心開放!? えっ……彼、まだ二十は超えてないでしょ!?」
「……どうやら、嘘ではない様だね。あれがあったから、君はそんなに冷静でいられたんだね」
「その通り、と答えておきましょう」
アルティスの中にも、仲間と同じく信じられないという思いがある。
ただ、バカで傲慢ではない。
目の前の光景を受け止められる器はある。
しかし……まだ二十を超えていない戦闘者が、鬼心開放という強化スキルの中でも習得難易度が高いスキルを習得している。
この事実に、内心では驚きが止まらない状況が続いていた。
そんなアルティスたちの驚き、驚嘆など無視するかのように戦いは終幕へと向かう
「カバディ」
「ッ!?」
先程まで読めていた動きが、大幅な身体強化によって読めていても、体が反応出来ない。
強化された打撃は肉だけではなく骨、内臓にまでダメージを与え、確実にエクセルフワイバーンの動きを鈍らせていき……その首に刃を押し当て始めた。
一対多数の戦いであればおかしくはない。
しかし、一対一の戦いであれば、クランドの戦闘力を考えるとあり得ない戦況と言える。
(こいつっ、本当に楽しいな!!!!)
キャントを続けながら戦う顔に、笑顔はなくならない。
エクセルフワイバーンは非常にタフなことに加えて、他のワイバーンと比べて知能が高い。
故に、七分も戦闘が続けば、敵の動きを読み始める。
「カバディ!?」
しかし、そこはルーキーに似つかわしくない百戦錬磨の経験値を持つクランド。
寸でのところで攻撃を鋭い尾撃を回避し、お返しとばかり左アッパーを叩きこむ。
(……思ったより時間が掛かりますね。希少種のワイバーンだからこその耐久力だとは思いますが……)
既に通常のワイバーンではないことは把握済み。
エクセルフワイバーンが防御、耐久寄りのスキルを有していることも分っている。
クランドの打撃が全く聞いていない訳ではないが、それでも完全に倒れ伏すことなく反撃を行う。
「……このまま続けば、彼は負けるぞ」
リーゼから色々と説明を受け、視る眼を養った方が良いと言われたBランクの男、アルティス。
先程の言葉通り、自分にはまだまだ視る眼が足りないと思い知った。
己より弱く、死ぬ可能性が高いと思っていた少年は、希少種のワイバーンを相手に有効打を一撃を食らわず、鋭い打撃を叩きこんでいる。
自分の得意な得物である細剣で、あそこまでの攻撃数を一人で叩きこむことが出来るか?
つまらないプライドを持たないアルティスは、出来ないと答えることができる。
ただ……相変わらず顔から笑みが消えていないが、モンスターと人間との大きな差から、クランドは負けると口にした。
「君もそれは解るだろ!」
「えぇ、そうですね。エクセルフワイバーン……予想以上にタフなワイバーンですね」
声が僅かに荒ぶるアルティスに対し、リーゼの態度は一切変わっていない。
そんなリーゼの様子に小さな苛立ちを感じるも、掴みかかることはしなかった。
それでも、今回ばかりは助けには行った方が良いのでは? という重いが大きくなっていた。
「クランド様も、そろそろ遊んでいる場合ではないと気付くでしょう」
「……は?」
アルティスが素っ頓狂な声を出してしまうのも無理はない。
リーゼは今、確かに「クランド様も、そろそろ遊んでいる場合ではないと気付く」と口にした。
つまり……現在目の前でエクセルフワイバーンと激闘を繰り広げているクランドは、死闘を演じているのではなく、遊んでいる。
Bランクモンスターという難敵を相手に、遊んでいる……その言葉だけは、そう簡単にアルティスの仲間三人も含めて信じられなかった。
「私の言葉が信じられない、といった顔ですね。確かに、自分でも信じられないようなことを口にしている自覚はあります。しかし……現在エクセルフワイバーンと戦っているのは、クランド様です」
一つの才能が、他の才能を喰らってしまうという、異質な才を持つ鬼才。
強い者と戦い続ける為に騎士という道を捨てた、傍から見ればただの異常者。
「あの方は、色んな意味で他者の理解を超えていく。この戦闘も、あの方にとってはこれからの通過点でしかありません」
そんな主人の勝利を確信するかのような言葉が合図となったのか、戦況に変化が訪れた。
「ギィアッ!?」
これまで苦痛を表情に浮かべるも、痛みを口に出さなかったエクセルフワイバーンの口から、苦悶の声が零れた。
それと同時に、クランドの打撃にギリギリ耐え切れず、思いっきり木に激突した。
「なっ!?」
いきなり変化した戦況に、再び驚きの声を上げるアルティス。
「あれって……もしかして、鬼心開放!!??」
アルティスの仲間である女戦士が驚きの声を上げるが、声を出した本人は自身の言葉に疑問を持たずにはいられなかった。
(嘘、でしょ……なんで!? 絶対にあり得ない!!)
目の前の光景は嘘だ。
心がそう叫びたがっているが、頭は目の前の光景が真実なのだと解っている。
「き、鬼心開放ってあの鬼心開放!? えっ……彼、まだ二十は超えてないでしょ!?」
「……どうやら、嘘ではない様だね。あれがあったから、君はそんなに冷静でいられたんだね」
「その通り、と答えておきましょう」
アルティスの中にも、仲間と同じく信じられないという思いがある。
ただ、バカで傲慢ではない。
目の前の光景を受け止められる器はある。
しかし……まだ二十を超えていない戦闘者が、鬼心開放という強化スキルの中でも習得難易度が高いスキルを習得している。
この事実に、内心では驚きが止まらない状況が続いていた。
そんなアルティスたちの驚き、驚嘆など無視するかのように戦いは終幕へと向かう
「カバディ」
「ッ!?」
先程まで読めていた動きが、大幅な身体強化によって読めていても、体が反応出来ない。
強化された打撃は肉だけではなく骨、内臓にまでダメージを与え、確実にエクセルフワイバーンの動きを鈍らせていき……その首に刃を押し当て始めた。
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