カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

文字の大きさ
84 / 92

八十四話 惜しいと思わなくもない

しおりを挟む
「カバディ!!」

体が暖まり、イメージ通りに体が動くようになり、更に動きが加速。

エクセルフワイバーンの爪撃や尾撃を躱し、鋭い拳打や蹴突が叩きこまれる。
空中から攻撃し続ける様な姑息な行動を取らないため、クランドは無理に宙へ跳ぶことなく攻撃を当てられる。

(っ! こいつ、かなりタフだな)

ウォーミングアップが終わってから約二分間、今まで培ってきた予測をフル活用し、攻撃を躱しながらカウンターを叩きこんできた。

身体強化に加えてキャント、脚力強化なども使用しているため、その攻撃はタンクが構える盾をも凹ませる。

当然、エクセルフワイバーンも無傷ではない。
体の所々に内出血が見えるが……地面に倒れ伏し、大きな隙を見せない。

衝撃で後方へ押されても、直ぐに前進し、鋭い牙や爪を武器に斬撃をぶちかます。

(既にニ十回以上はクランド様の打撃を食らっているのに、どの傷も重傷に至っていない……ゴーレムなどの防御力が高いモンスターと比べても、タフさはエクセルフワイバーンの方が上の様ですね)

クランドは時に、打撃ではなく手刀による斬撃のダメージも与えている。

鱗はワイバーンと比べて当然、強度は上ではあるが、見事に切断している。
しかし、体の大きさ的な問題で、それらの傷はエクセルフワイバーンにとって大きな傷になり得ない。

回復力にも大きな差があるため、数分後には完治。
失った血までは戻らないが、クランドにとって不利となる情報であることに変わりはない。

「あのワイバーン、回復力がそこら辺のモンスターとは訳が違う。やっぱり、直ぐにでも加勢すべきじゃ!」

「……もう少し待とう」

「アルティス?」

「彼の闘志は、まだ全く萎えていない」

リーダーであるアルティスが解っている事を確認し、メリルは展開していた風槍と炎槍の方向を変えようとしたが、賢明な判断によって同業者同士の戦闘には発展せずに済んだ。

「カバディ!」

アルティスの見解通り、クランドの闘志は全く萎えていない。
寧ろエクセルフワイバーンのタフさを肌身で感じ、更に闘志を熱く燃やしていた。

(このタフさだけで、先日戦った逆鱗状態のワイバーンより、圧が強いと感じるな!!!!)

大半の者は、怒り狂って暴れる逆鱗状態のワイバーンの方が恐ろしいと感じてもおかしくない。

ただ、戦闘者であるクランドからすれば、果てしなくHPが多いと感じるエクセルフワイバーンの方が強い存在感、有無を言わせな圧を感じる。

勿論、エクセルフワイバーンの優れた点はタフさだけではなく、攻撃力とその鋭さも通常種のワイバーンを上回っている。

木々は切り裂かれ、大地は抉れる。
そんな光景が何度も繰り返される中……唯一、ドラゴンの代名詞とも言える攻撃、ブレスだけは今のところ使用していない。

(それにしても、強くてタフなだけじゃなく、知能も他のワイバーンより、優れているんだな!!!)

ある程度距離が離れていなければ、ブレスを放った瞬間……クランドの脚は火炎を回避し、懐に潜り込む。

最初の数分でクランドの実力を読み取り、エクセルフワイバーンはブレスの使用を封印していた。

「モンスターが本能で回避するところを、我々が行う予測で回避している……かもしれませんね。希少種とはいえ、ワイバーンとは思えない知能の高さですね」

ブレスを使用しない理由も、何となく察することが出来る。
その点に関しても、リーゼはエクセルフワイバーンを評価していた。

「……しかし、現状が続けば人の身であるクランド君の方が不利だ」

「普通はそう思うかもしれませんね」

エクセルフワイバーンが自身の周囲に展開した火球を炎槍、風槍で破壊しながらアルティスの見解をナチュラルに見下す。

「アルティスさん、クランド様の闘志は先程までと比べて少しでも萎えていますか?」

「…………いや、萎えてないね」

「それが答えです」

目を凝らせば、エクセルフワイバーンとの戦闘中に、クランドが笑みを浮かべているのが分る。

その光景をアルティスは理解……出来なくもなかった。
そうなってしまう事に、身に覚えがある。

しかし、エクセルフワイバーンというドラゴンを相手に、そんな状態になれるのか?
自身に問いかけるが、数秒後に出た答えはノー。

今までの経験則から、目の前の竜種は四人で戦うべき相手。
そんな常識に縛られている。

(……惜しい方ですね)

先日、主人であるクランドの実力を見下す様な態度に関しては、強烈な怒りが湧いた。
本当に数瞬の間ではあるが、アルティスを殺す寸前まで潰したいという思いすら抱いていた。

そんな過去を抜きにして視れば、Bランクモンスターであるエクセルフワイバーンとソロで渡り合える逸材だった。

(仲間である女性たちが枷……とは言いませんが、その三人といるせいで挑戦できる壁に対して安全策を取り、大きく成長する機会を失ってそうですが……まぁ、私には関係無いことです)

クランドがまた一段ギアを上げたのを感じ取り、戦況の整理と万が一の援護に関して集中力を高めていく。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...