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八十九話 忘れてはいけない
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SIDE クランド
「クランド君、リーゼ君。君たちには是非、Cランクへの昇格試験を受けてもらいたい」
ギルドの上役から伝えられた内容は、二人にとって少々戸惑う内容だった。
「えっと……先日、似た様な話をしてもらいましたけど、本当に受けられるんですか?」
「あぁ、勿論だ。冒険者ギルドとしても、Bランクモンスターを一人で倒せる者を、いつまでもDランク二留めておくわけにはいかない。リーゼ君がCランクモンスターを一人で倒すことが出来るのも把握済みだ」
クランドだけに昇格試験を受けさせることも可能ではある。
ただ、クランドの隣に立つ人物が、ただのメイドとは思えない。
リーゼがクランドと共に冒険者となる前の戦績も調べた結果、Cランクへの昇格試験を受ける資格があると判断された。
「ありがたいっちゃありがたいんですけど、本当に俺たちがその試験を受けても良いんですか?」
上役の言葉通り、自分たちは戦闘力だけであれば、Cランク冒険者に負けないと自覚している。
(護衛依頼とか一切受けてないんだが、そういった評価点はどうなってるんだ?)
とはいえ、上のランクへ上がるには、戦闘力だけでは不十分。
普通に考えれば、まだ冒険者歴が半年も経っていない二人が、戦闘力以外の面で評価を十分に受けるのは不可能に近い。
「君たちが危惧している内容は解っている。だから、ロルダンで試験を受けてもらいたい」
「ロルダン……確か、ダンジョンがある街の一つですね」
現在二人が滞在する街、アブスタからそう遠くない距離に位置する街、ロルダン。
ダンジョンを保有する街ということもあり、活気はアブスタより上であり、人も多く集まる。
「……何故、この街ではなくロルダンで受けるんですか?」
「理由としては、君たちがCランク昇格試験に対して抱いている危惧を解消する為だよ」
上役の言葉を、脳内で何度も繰り返し考える。
(ダンジョンだからこそ、俺たちの不安を解消できる……あぁ、そういう訓練を行うのか?)
まだ知らされていない試験内容ではあるが、クランドはある程度その内容を予想出来た。
「勿論、今回の昇格試験は、私たちが願っての事だ。これは、わざわざ移動してもらう君たちへの気持ちだ」
上役は金貨十枚をテーブルに置き、クランドへ渡した。
その金額に多少驚き、数秒ほど固まりはしたものの、素直に受け取る。
気持ちとしては少々多い金額ではあるが、侯爵家の令息に頼んでいるという事情を考えれば、ギルドとしては安いものだった。
「本当に良かったのですか?」
「何がだ?」
上役との話し合いが終わってギルドを出た後、リーゼは少々不安げな表情で主人に尋ねた。
「わざわざダンジョンがある街に行くということは、ダンジョン内で試験が行われるはずです」
「俺も同じことを考えた。多分だけど、俺たちの戦闘力と同時に、護衛力を試す試験内容だと思う」
「……私も同じ意見です。ただ、私たちはまだダンジョンの探索経験がありません」
「そりゃそうだろ。いくら父さんや母さんは俺のやりたい事に寛容でも、冒険者になる前にダンジョン探索を行うのは許してくれないって」
クランドの表情に、初ダンジョンに対する恐怖、緊張といった要素は皆無。
逆にワクワク、楽しさといった感情しかない。
「そうなると、俺が防御をメインに行って、リーゼが攻撃をメインで担当する形か?」
「もう少し真剣に考えてほしいのですが……そうですね、誰かを一定の階層まで怪我を負わせず送り届けるという試験内容であれば、その役割が妥当かと」
最大攻撃力に関しては、当然クランドの方がリーゼより上。
しかし、遠距離の敵を仕留める力や、遠距離攻撃の連射力などに関してはリーゼの方が数枚上手。
そして相手の動きを止めるといった面に関しては、クランドが一つ優れていた。
「俺たちなら大丈夫だって」
「……少々楽観過ぎな気もしますが」
とはいえ、並大抵の相手には負けないという自信は持っている。
デットルティス、ワイバーン、エクセルフワイバーンと冒険者の間では、それらの強敵を一人で倒したクランドが評価されているが、万能面ではリーゼの方が優れている。
多彩な攻撃魔法に加えて、武器の手数はクランドにも劣らない。
故に、それを一番間近で見てきたクランドは、リーゼの実力を信用している。
とはいえ、ダンジョンという魔境に少しは慣れておきたい。
まだ昇格試験が始まるまで余裕はあるため、二人はアルティスなどの知り合いに挨拶を済ませると、直ぐにロルダンへと向かった。
「っし「クランド様、下がっていてください。私が相手をします」お、おぅ……そうか」
ロルダンに到着するまでの道中、リーゼは昇格試験に必ず合格するため、遭遇するモンスターの相手を全て一人で蹴散らした。
その結果、クランドに残った仕事はモンスターの解体のみ。
(……俺、もしかしてヒモみたいだったか?)
大きな仕事は任せ、小さな仕事を担当。
一応仕事はしているが、道中を振り返り、ヒモみたいだったと思わざる得ず……少々落ち込んむクランドだった。
「クランド君、リーゼ君。君たちには是非、Cランクへの昇格試験を受けてもらいたい」
ギルドの上役から伝えられた内容は、二人にとって少々戸惑う内容だった。
「えっと……先日、似た様な話をしてもらいましたけど、本当に受けられるんですか?」
「あぁ、勿論だ。冒険者ギルドとしても、Bランクモンスターを一人で倒せる者を、いつまでもDランク二留めておくわけにはいかない。リーゼ君がCランクモンスターを一人で倒すことが出来るのも把握済みだ」
クランドだけに昇格試験を受けさせることも可能ではある。
ただ、クランドの隣に立つ人物が、ただのメイドとは思えない。
リーゼがクランドと共に冒険者となる前の戦績も調べた結果、Cランクへの昇格試験を受ける資格があると判断された。
「ありがたいっちゃありがたいんですけど、本当に俺たちがその試験を受けても良いんですか?」
上役の言葉通り、自分たちは戦闘力だけであれば、Cランク冒険者に負けないと自覚している。
(護衛依頼とか一切受けてないんだが、そういった評価点はどうなってるんだ?)
とはいえ、上のランクへ上がるには、戦闘力だけでは不十分。
普通に考えれば、まだ冒険者歴が半年も経っていない二人が、戦闘力以外の面で評価を十分に受けるのは不可能に近い。
「君たちが危惧している内容は解っている。だから、ロルダンで試験を受けてもらいたい」
「ロルダン……確か、ダンジョンがある街の一つですね」
現在二人が滞在する街、アブスタからそう遠くない距離に位置する街、ロルダン。
ダンジョンを保有する街ということもあり、活気はアブスタより上であり、人も多く集まる。
「……何故、この街ではなくロルダンで受けるんですか?」
「理由としては、君たちがCランク昇格試験に対して抱いている危惧を解消する為だよ」
上役の言葉を、脳内で何度も繰り返し考える。
(ダンジョンだからこそ、俺たちの不安を解消できる……あぁ、そういう訓練を行うのか?)
まだ知らされていない試験内容ではあるが、クランドはある程度その内容を予想出来た。
「勿論、今回の昇格試験は、私たちが願っての事だ。これは、わざわざ移動してもらう君たちへの気持ちだ」
上役は金貨十枚をテーブルに置き、クランドへ渡した。
その金額に多少驚き、数秒ほど固まりはしたものの、素直に受け取る。
気持ちとしては少々多い金額ではあるが、侯爵家の令息に頼んでいるという事情を考えれば、ギルドとしては安いものだった。
「本当に良かったのですか?」
「何がだ?」
上役との話し合いが終わってギルドを出た後、リーゼは少々不安げな表情で主人に尋ねた。
「わざわざダンジョンがある街に行くということは、ダンジョン内で試験が行われるはずです」
「俺も同じことを考えた。多分だけど、俺たちの戦闘力と同時に、護衛力を試す試験内容だと思う」
「……私も同じ意見です。ただ、私たちはまだダンジョンの探索経験がありません」
「そりゃそうだろ。いくら父さんや母さんは俺のやりたい事に寛容でも、冒険者になる前にダンジョン探索を行うのは許してくれないって」
クランドの表情に、初ダンジョンに対する恐怖、緊張といった要素は皆無。
逆にワクワク、楽しさといった感情しかない。
「そうなると、俺が防御をメインに行って、リーゼが攻撃をメインで担当する形か?」
「もう少し真剣に考えてほしいのですが……そうですね、誰かを一定の階層まで怪我を負わせず送り届けるという試験内容であれば、その役割が妥当かと」
最大攻撃力に関しては、当然クランドの方がリーゼより上。
しかし、遠距離の敵を仕留める力や、遠距離攻撃の連射力などに関してはリーゼの方が数枚上手。
そして相手の動きを止めるといった面に関しては、クランドが一つ優れていた。
「俺たちなら大丈夫だって」
「……少々楽観過ぎな気もしますが」
とはいえ、並大抵の相手には負けないという自信は持っている。
デットルティス、ワイバーン、エクセルフワイバーンと冒険者の間では、それらの強敵を一人で倒したクランドが評価されているが、万能面ではリーゼの方が優れている。
多彩な攻撃魔法に加えて、武器の手数はクランドにも劣らない。
故に、それを一番間近で見てきたクランドは、リーゼの実力を信用している。
とはいえ、ダンジョンという魔境に少しは慣れておきたい。
まだ昇格試験が始まるまで余裕はあるため、二人はアルティスなどの知り合いに挨拶を済ませると、直ぐにロルダンへと向かった。
「っし「クランド様、下がっていてください。私が相手をします」お、おぅ……そうか」
ロルダンに到着するまでの道中、リーゼは昇格試験に必ず合格するため、遭遇するモンスターの相手を全て一人で蹴散らした。
その結果、クランドに残った仕事はモンスターの解体のみ。
(……俺、もしかしてヒモみたいだったか?)
大きな仕事は任せ、小さな仕事を担当。
一応仕事はしているが、道中を振り返り、ヒモみたいだったと思わざる得ず……少々落ち込んむクランドだった。
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