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九十話 必ず出る犠牲者
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「着いたな」
「えぇ、着きましたね」
夕方になるギリギリ手前、二人はロルダンに到着。
門兵に身分証明書を見せ、中へ入ると……特に驚きはしなかった。
(確かに活気は……アブスタよりも上か? まぁ、でも特別驚くほど賑やかって訳じゃないな)
自信が冒険者になるまで住んでいた街、そして王都の街並みや活気に比べれば、そこまで驚く内容ではなかった。
他の街と違う点といえば、冒険者の数が多く、人族以外の他種族の者が少々多い。
ダンジョンは冒険者にとって、己の力を示す狩場の一つ。
途中途中の階層でボスと呼ばれるモンスターが専用の部屋で待ち構えており、最下層には必ずラスボスと呼ばれるモンスターが存在する。
そのラスボスと呼ばれるモンスターを討伐し、ギルドに伝えればそのパーティーの実力を示す、一つの評価基準となる。
「クランド様、むやみに同世代の冒険者たちと喧嘩してはなりませんよ」
「……それ、自分に言い聞かせてないか?」
「…………」
クランドの返しに、リーゼは思わず言葉が詰まった。
先日、まだクランドの実力を全く知らなかったBランク冒険者、アルティスがクランドの実力を過小評価し……本人がブチ切れるよりも先に、従者であるリーゼの堪忍袋の緒が切れかかった。
隣に自分よりも怒っている者がいれば、自然と怒りが冷める。
その時、クランドはそれをリアルに体験した。
「とりあえず、俺も初対面で喧嘩するのは良くないのは解ってる。でも……俺の場合、まず向こうから喧嘩売ってくるだろ」
喧嘩を売ってるのか、ただダル絡みしているのか……それはやられたクランドが判断する部分。
相手のやり方に対し、口だけで済ませるか……詐欺師たちの時の様に、力で潰すかは、本人の感じ方次第。
「横の繋がりをつくるなら、喧嘩しないことに越したことはないけど、あんまりストレスを溜めるのも良くない……そう思うだろ」
「……そうですね」
溜まったストレスはモンスター相手にぶつければ良い。
幸いにも、ロルダンという街にはダンジョンがある。
ダンジョンでは無限にモンスターが湧いてくるため、ストレスをぶつける相手に困ることはない。
とはいえ、対人関係で生まれたストレスは、関係無い存在にぶつけたとしても……完全に消えるとは限らない。
それをリーゼも解っているからこそ、主人の考えを否定しなかった。
(ストレスを与えてきた相手で解消してこそ意味がある……確かにその通りですが、であれば確実に犠牲者が出るでしょうね)
クランドは冒険者として、基本的に妬まれる要素しかない。
ウルガラたちの様に人ができている者たちであればともかく、その他大勢のルーキーたちからすれば、ぶっ潰したくなる程妬ましい存在。
そして冒険者ギルドに道中で倒したモンスターの素材を売りに行く二人は、ギルド内に入るともはや恒例のように多くの者たちから視線を向けられた。
まだ二人の容姿はそこまで広まっていないため、クランドとリーゼという名までは辿り着かない。
それでも、とにもかくにも第一にリーゼの容姿に多くの男性冒険者が惹かれてしまう。
これだけは、どうしようも出来ない現実だった。
「これらの買取をお願いします」
「か、かしこまりました。少々お待ちください」
亜空間から大量の素材を取り出すも、受付嬢は腰を抜かすことなく査定を開始。
そして査定が終了すると金を受け取り、本日は特に何もせずギルドを出た。
「あんな奴らいたか?」
「いや、見たことねぇな。他の街から来たんじゃねぇか」
「あんな二人組の冒険者パーティーっていたか?」
「あの銀髪の女……無茶苦茶美人だったな」
「悲鳴を上げられるだけだから、無駄に声を掛けるのは止めときなさい」
声を掛けたい。
そう思った冒険者は多数いたが、二人がさらっとギルドから出て行ってしまったため、チャンスを失うが……同業者同士、いきなり現れた二人組について話し合い始めた。
見たことがない、どう考えても初めてロルダンにやって来た冒険者。
外見から、詳しい情報は得られない……が、その雰囲気からルーキーではないと勘付く者は多い。
ロルダンの冒険者ギルドは他の街よりも大きく、必然的に中にいる冒険者たちの数も多く……質も高い。
そんな空間に足を踏み入れても、普段どりに表情を崩していない。
敢えて緊張感を出さず、堂々と振舞って緊張感隠してる?
そう思えなくもないが……気付ける者は、本当に二人がただいつも通りなだけなのだと気付く。
「なぁ、あいつらって俺らと同じルーキーなのかな?」
「えっ、嘘でしょ。どう考えても違うじゃない」
「外見的には、俺らと歳は変わらねぇだろ」
「ん~~……でも、装備している武器や、着ている服とかは俺らとかなり違う気がしたんだよね~」
相手の力量を測る一つに、身に付けている装備の質が目安となる。
その質は例え目が肥えているベテランでなくとも、自分たちが身に付けている装備との違いに気付く者は気付く。
本当にあの二人はいったい何者なのか……一部のルーキーは、後日詳しく知ることになる。
「えぇ、着きましたね」
夕方になるギリギリ手前、二人はロルダンに到着。
門兵に身分証明書を見せ、中へ入ると……特に驚きはしなかった。
(確かに活気は……アブスタよりも上か? まぁ、でも特別驚くほど賑やかって訳じゃないな)
自信が冒険者になるまで住んでいた街、そして王都の街並みや活気に比べれば、そこまで驚く内容ではなかった。
他の街と違う点といえば、冒険者の数が多く、人族以外の他種族の者が少々多い。
ダンジョンは冒険者にとって、己の力を示す狩場の一つ。
途中途中の階層でボスと呼ばれるモンスターが専用の部屋で待ち構えており、最下層には必ずラスボスと呼ばれるモンスターが存在する。
そのラスボスと呼ばれるモンスターを討伐し、ギルドに伝えればそのパーティーの実力を示す、一つの評価基準となる。
「クランド様、むやみに同世代の冒険者たちと喧嘩してはなりませんよ」
「……それ、自分に言い聞かせてないか?」
「…………」
クランドの返しに、リーゼは思わず言葉が詰まった。
先日、まだクランドの実力を全く知らなかったBランク冒険者、アルティスがクランドの実力を過小評価し……本人がブチ切れるよりも先に、従者であるリーゼの堪忍袋の緒が切れかかった。
隣に自分よりも怒っている者がいれば、自然と怒りが冷める。
その時、クランドはそれをリアルに体験した。
「とりあえず、俺も初対面で喧嘩するのは良くないのは解ってる。でも……俺の場合、まず向こうから喧嘩売ってくるだろ」
喧嘩を売ってるのか、ただダル絡みしているのか……それはやられたクランドが判断する部分。
相手のやり方に対し、口だけで済ませるか……詐欺師たちの時の様に、力で潰すかは、本人の感じ方次第。
「横の繋がりをつくるなら、喧嘩しないことに越したことはないけど、あんまりストレスを溜めるのも良くない……そう思うだろ」
「……そうですね」
溜まったストレスはモンスター相手にぶつければ良い。
幸いにも、ロルダンという街にはダンジョンがある。
ダンジョンでは無限にモンスターが湧いてくるため、ストレスをぶつける相手に困ることはない。
とはいえ、対人関係で生まれたストレスは、関係無い存在にぶつけたとしても……完全に消えるとは限らない。
それをリーゼも解っているからこそ、主人の考えを否定しなかった。
(ストレスを与えてきた相手で解消してこそ意味がある……確かにその通りですが、であれば確実に犠牲者が出るでしょうね)
クランドは冒険者として、基本的に妬まれる要素しかない。
ウルガラたちの様に人ができている者たちであればともかく、その他大勢のルーキーたちからすれば、ぶっ潰したくなる程妬ましい存在。
そして冒険者ギルドに道中で倒したモンスターの素材を売りに行く二人は、ギルド内に入るともはや恒例のように多くの者たちから視線を向けられた。
まだ二人の容姿はそこまで広まっていないため、クランドとリーゼという名までは辿り着かない。
それでも、とにもかくにも第一にリーゼの容姿に多くの男性冒険者が惹かれてしまう。
これだけは、どうしようも出来ない現実だった。
「これらの買取をお願いします」
「か、かしこまりました。少々お待ちください」
亜空間から大量の素材を取り出すも、受付嬢は腰を抜かすことなく査定を開始。
そして査定が終了すると金を受け取り、本日は特に何もせずギルドを出た。
「あんな奴らいたか?」
「いや、見たことねぇな。他の街から来たんじゃねぇか」
「あんな二人組の冒険者パーティーっていたか?」
「あの銀髪の女……無茶苦茶美人だったな」
「悲鳴を上げられるだけだから、無駄に声を掛けるのは止めときなさい」
声を掛けたい。
そう思った冒険者は多数いたが、二人がさらっとギルドから出て行ってしまったため、チャンスを失うが……同業者同士、いきなり現れた二人組について話し合い始めた。
見たことがない、どう考えても初めてロルダンにやって来た冒険者。
外見から、詳しい情報は得られない……が、その雰囲気からルーキーではないと勘付く者は多い。
ロルダンの冒険者ギルドは他の街よりも大きく、必然的に中にいる冒険者たちの数も多く……質も高い。
そんな空間に足を踏み入れても、普段どりに表情を崩していない。
敢えて緊張感を出さず、堂々と振舞って緊張感隠してる?
そう思えなくもないが……気付ける者は、本当に二人がただいつも通りなだけなのだと気付く。
「なぁ、あいつらって俺らと同じルーキーなのかな?」
「えっ、嘘でしょ。どう考えても違うじゃない」
「外見的には、俺らと歳は変わらねぇだろ」
「ん~~……でも、装備している武器や、着ている服とかは俺らとかなり違う気がしたんだよね~」
相手の力量を測る一つに、身に付けている装備の質が目安となる。
その質は例え目が肥えているベテランでなくとも、自分たちが身に付けている装備との違いに気付く者は気付く。
本当にあの二人はいったい何者なのか……一部のルーキーは、後日詳しく知ることになる。
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