カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

文字の大きさ
92 / 92

九十二話 そういう問題ではない

しおりを挟む
「おい、リーゼ。本当に起きるのか?」

「私が見張りをしますので、クランド様はしっかり寝て疲れを養ってください」

食事、風呂が終われば……後は寝るだけ。

良質な寝袋を購入しているため、質の良い睡眠を取れる。
これまた高品質な結界のマジックアイテムを使用してるため、少なくとも一階層から十階層の間であれば、使用者は結界の中でぐっすりと寝ていても問題無い。

「私はクランド様の従者ですので、当然のことです」

「っ~~~……はぁ~~、分かった。お前の気持ちは有難いほど解かった」

そう言うと、寝袋から出てリーゼの方を叩く。

「でも、先に見張りをするのは俺だ。先にリーゼが寝といてくれ」

「そういう訳にはいきません」

「アホ、それはこっちのセリフだ。確かにお前は俺の従者だが、今は俺のパーティーメンバー、仲間でもあるんだ」

リーゼの行動は主人に仕える従者としては何一つ間違っていないが、冒険者という職業的には……あまりにも異質な行動。

「というか、普通に野営の時も交代で見張りはしてるだろ」

クランドとしてはマジックアイテムの効果を信用しているため、ぐっすりと寝てしまいたい。

しかし、リーゼは従者としてのプライド故に……クランドの安全を確保するために、夜の見張りを行うと断言。
そしてそうなると……前世ではただの一般人だったクランドとしては、女の子一人に見張りをやらせる訳にはいかなかった。

「だから、先にリーゼが寝といてくれ。お前に先を任せると、交代を伝えてくれないからな」

「っ……………………分かりました」

十秒ほど悩んだ末、リーゼは主人の言葉に従い、寝袋の中へ入って眼を閉じた。

(ったく、従者としては正解の行動なんだろうけど、今は仲間だってことをもう少し意識してほしいもんだな)

リーゼの頑固さを説き伏せ、見張りを始めたクランドだが……とにかく暇過ぎた。

一階層から十階層まで間に出現するモンスターの中で、一番高いランクはD。
稀にCランクのモンスターが出現することもあるが、稀も稀。
基本的に出現することはない。

Dランクのモンスターを、基本は五階層以降からしか出現しない。
現在クランドたちが居る階層は二層。

現在発動中の結界の強度であれば、どんなモンスターの攻撃も防ぐ。

(スマホでもあれば……いや、スマホがあっても電波というか、スマホだけあっても全く暇つぶしにならないか)

どう暇をつぶすか考えるクランドだが、そもそも現在は結界を破るパワーを持っているかもしれないモンスターが来ないか、見張る時間。

決して暇な時間ではない。
だが……結局はマジックアイテムが効果を遺憾なく発揮し、予定時間まで何事もなく時間が過ぎた。

「リーゼ、バトンタッチ」

「……かしこまりました」

リーゼに交代を伝え、寝袋に入ったクランドはたった十数秒後には夢の中へ飛び立った。

その後、リーゼが見張りを行っている間にも何か問題が起こることはなく、探索一日目の見張りは終了。

「おはようございます、クランド様」

「おぅ、おはよう……ほら、何も無かっただろ」

「クランド様、そういう問題ではありません」

クランドの言葉通り先日の夜から本日の朝方にかけて、二人が動かなければならない事態に発展することはなかった。

しかし、リーゼは「そういう問題ではない」と主人の言葉をバッサリと切った。

「……分かった分かった。とりあえず朝飯にしよう」

腹が膨れる朝食を準備し、完食。
二人は今日も一定のペースでダンジョンを進み続け、本日は宝箱を一つ獲得。

三回層で手に入れた宝箱なため、あまり中身には期待できない。
とはいえ、冒険者としては自然とテンションが上がってしまう。
それはクランドだけではなく、リーゼも同じようにテンションが上がっていた。

「ふんっ!!」

五階層以降からはDランクモンスターのワイルドボアやオークなどと遭遇するようになってきたが、二人は全く苦戦せずに下へ下へと降りて行き……約五日で十階層に到着。

「先客がいるみたいだな」

ボスが潜む部屋の前には三組のパーティーが並んでおり、勿論抜かすのは厳禁行為。

金で順番を買い、お互いに同意しているのであれば問題はないが、相手の意思を無視しようとするのはアウト。

「順番が来るまで待ちましょう」

二人は得意に順番を買おうとせず、自分たちの番が来るのを待つ。

そんな二人には、冒険者ギルド内やダンジョンの入り口前と同じく、同業者からの視線が向けられる。

ダンジョン探索において、基本的な人数は四人以上。
手に入れた素材や魔石の持ち運びや、見張りに対応する為の人数などを考慮すれば、四人が最低人数。

実力のある冒険者たちであれば三人で探索出来ない事もないが……二人で探索を行うのは、自殺行為。
その自殺行為に該当する人数でやって来た青年と美少女。

(……えっ、マジで二人なのか!?)

(何か問題があって、ボス部屋の前で合流予定だから二人、とかじゃないの?)

(あんな奴ら、ロルダンにいたか? 二人だけで十階層まで潜れる奴らなら、頭に入ってると思うんだが……何者だ)

色々と頭の中で二人について考える冒険者たちだが、クランドとリーゼの妙な迫力のせいで、誰も二人に声を掛けられなかった。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

凛月
2024.08.22 凛月

とても楽しく読ませて頂きました!
続き待ってます(˶'ᵕ'˶ )‪︎

解除
仲良し
2023.02.13 仲良し

16行目正確ではなく性格では。

とても楽しく読んでます、ありがとうございます

解除
リン
2023.02.01 リン

どの作品もとても面白いです(*^^*)
これからも執筆頑張ってください!

解除

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。