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第18話 嫌だ
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(毎度思うが、カクテルがエールに負けてるとは思えないが、この仕事終わりのエールにだけは……ん~~~~、やっぱり勝てないよな)
「アスト、冷やしてもらっても良いか」
「うっす」
厄介な盗賊団を討伐して街に帰還後、誰一人欠けることなく討伐を果たしたことで盛大な宴会が行われていた。
そしてアストは……一気にエールを半分程飲み干し、頼まれる冷却を行いながら仕事終わりのエールの恐ろしさに改めて感嘆していた。
「アスト~~~、あん時は本当に助かったぜ~~~」
「……スラディスさん、もう酔ってますか?」
「何言ってんだ。まだまだこれからに決まってんだろ!! エールおかわり!!!」
元気よくエールを頼み……再度アストに冷却を頼み、キンキンに冷えた悪魔の飲み物を喉に流し込む。
「フレイムハザークランスを片手で受け止めちまっただろ」
「あぁ、あれですか。結構危なかったですよ。腕に痺れが残ってたんで……正直、あれ以上の攻撃魔法を使われてたら、為す術がなかったですよ」
アストだけが持つ特別なスキル、カクテルの技の一つ……アルケミストは、自分の攻撃と他者の攻撃。
もしくは、他者と他者の攻撃を受け止め、ステア(混ぜ合わせる)ことで、即興でアストだけの攻撃を生み出す。
ただ、同世代よりも有利な状況から人生をスタートさせたアストだが、最強無敵の完璧超人ではない。
素材として受け止められる攻撃にも限界がある。
加えて瞬時に新たな攻撃を生み出すことは出来ないため、多少なりとも隙がある。
「そうぃうもんか。まっ、完璧な技なんてないもんな。けど聞いたぜ~~~。お前が駆け回ってくれたお陰で、一人も死者が出なかったってな」
「……偶々ですよ」
「謙虚なスーパールーキーだぜ~~~」
ちょっとスラディスの絡み方がダルいな~と思い始めたアスト。
少し離れた場所で仲間たちと共に飲み食いしてる同じCランク冒険者は、アストの動きを褒めたくなる気持ちが良く解っていた。
(スラディスさんがあんなに褒めたくなるのも解る~~~~。ぶっちゃけ……あんな大乱戦の中で、あそこまで冷静に動けるのかって話だもんな~~)
全ての動きは観ていない。
それでも……チラッと視界に映ったアストの動きは、大乱戦において……非常に的確なものだった。
人を殺すのに、わざわざ心臓や喉を、頭をぶった斬る必要はない。
切断するなら足を狙い、機動力大幅ダウン。
首を少しでも斬り裂ければ死に繋がる可能性大。
指を切り裂けば、得物を持ち辛くなる。
アストだけで戦っているのであれば話は別だが、今回は頼れる同僚たちと共に戦っていた。
それだけ行えば、有利に戦いを進められる。
「けど……あんまり無茶し過ぎんなよ。って、死にかけたかもしれない俺が言うのはおかしいんだけどな」
「……冒険者なんですから、無茶をするなって言う方が無理な注文じゃないですか?」
「はっはっは!!! 全くだぜ…………そうだな。何を言っても、カバー力に関しては俺らの不手際だった。本当に、今回の討伐にアストがいてくれて助かったぜ」
「……こんな考えこそ無茶だって解ってるんですけど、やっぱり周りで同僚が死ぬのは……嫌なんで」
非常に子供っぽい考え。
しかし、この場で仕事を終えたギルド職員も含めて、アストの考えをバカにする者は一人もいなかった。
「…………アストも、色々と経験してきてるんだな」
「一応、三年は冒険者として活動してますからね……調子に乗ってた訳じゃないんですけど、自分が死ぬ気になれば……なんとか出来るって、不透明な自信を持っていた時期があって」
転生者のアドバンテージを殺さず頑張り続け、幸いにも魔法の才もあったアスト。
ファンタジーの中でもちょっとファンタジーが過ぎるんじゃないか? と思う程の実力は有していなかったが、それでも冒険者に成りたてのアストは確かに強かった。
そしてある日……共に依頼を受けた冒険者と共に行動している時、アストは調子に乗って危険なモンスターの目撃情報が確認された場所にも向かってみないかと提案した……りはしなかった。
ただ…………イレギュラーが襲って来た。
同世代の仲間達だけでは対処できない理不尽の急襲。
共にイシュドが行動していたお陰でなんとか全滅は免れた。
しかしその急襲によって、アストは初めて……親しくなった者の死を体験してしまった。
あの時の感覚は今でも覚えている。
「解ってますよ。冒険者として活動していれば、そういう事もあるって……でも、やっぱり嫌じゃないっすか」
「……そうだな。そういう時にエールを呑んでも、何も晴れやしない。ただただ、苦いだけだな」
「はい…………俺の本業はバーテンダーですけど、それでも冒険者としてのプライド? みたいなものは多少あります。だから……俺の手が届く範囲の命は、どうしても助けたいって思ってしまいます」
胸の内を零してから約十秒……急に恥ずかしさがアストを襲う。
「ッ!!!! す、すいません。なんか、急に語りだしちゃって」
「いや、そんな事はねぇよ。寧ろ、こう……原点とか大層なあれじゃない。けど目を逸らしちゃならない大事なこと? そういうのを思い出せた」
「スラディスの言う通りだな。その気持ちを思い出せたからこそ、やはりアスト。お前が今日、共に戦ってくれたことに感謝したい」
杯の中が空になったアストに、エールが入った杯を渡すマックス。
「アスト、お前のお陰で今日……誰も死なず、クソ共を討伐し……こうしてまた宴会を楽しむことが出来た」
序盤から中盤、そして最後。
どの場面を取っても、一番活躍して働いたのはアストだった。
それはスラディスやマックスだけではなく、他の討伐に参加した冒険者……全員が認めていた。
この時、柄にもなくアストはほんの少し、涙を零した。
「アスト、冷やしてもらっても良いか」
「うっす」
厄介な盗賊団を討伐して街に帰還後、誰一人欠けることなく討伐を果たしたことで盛大な宴会が行われていた。
そしてアストは……一気にエールを半分程飲み干し、頼まれる冷却を行いながら仕事終わりのエールの恐ろしさに改めて感嘆していた。
「アスト~~~、あん時は本当に助かったぜ~~~」
「……スラディスさん、もう酔ってますか?」
「何言ってんだ。まだまだこれからに決まってんだろ!! エールおかわり!!!」
元気よくエールを頼み……再度アストに冷却を頼み、キンキンに冷えた悪魔の飲み物を喉に流し込む。
「フレイムハザークランスを片手で受け止めちまっただろ」
「あぁ、あれですか。結構危なかったですよ。腕に痺れが残ってたんで……正直、あれ以上の攻撃魔法を使われてたら、為す術がなかったですよ」
アストだけが持つ特別なスキル、カクテルの技の一つ……アルケミストは、自分の攻撃と他者の攻撃。
もしくは、他者と他者の攻撃を受け止め、ステア(混ぜ合わせる)ことで、即興でアストだけの攻撃を生み出す。
ただ、同世代よりも有利な状況から人生をスタートさせたアストだが、最強無敵の完璧超人ではない。
素材として受け止められる攻撃にも限界がある。
加えて瞬時に新たな攻撃を生み出すことは出来ないため、多少なりとも隙がある。
「そうぃうもんか。まっ、完璧な技なんてないもんな。けど聞いたぜ~~~。お前が駆け回ってくれたお陰で、一人も死者が出なかったってな」
「……偶々ですよ」
「謙虚なスーパールーキーだぜ~~~」
ちょっとスラディスの絡み方がダルいな~と思い始めたアスト。
少し離れた場所で仲間たちと共に飲み食いしてる同じCランク冒険者は、アストの動きを褒めたくなる気持ちが良く解っていた。
(スラディスさんがあんなに褒めたくなるのも解る~~~~。ぶっちゃけ……あんな大乱戦の中で、あそこまで冷静に動けるのかって話だもんな~~)
全ての動きは観ていない。
それでも……チラッと視界に映ったアストの動きは、大乱戦において……非常に的確なものだった。
人を殺すのに、わざわざ心臓や喉を、頭をぶった斬る必要はない。
切断するなら足を狙い、機動力大幅ダウン。
首を少しでも斬り裂ければ死に繋がる可能性大。
指を切り裂けば、得物を持ち辛くなる。
アストだけで戦っているのであれば話は別だが、今回は頼れる同僚たちと共に戦っていた。
それだけ行えば、有利に戦いを進められる。
「けど……あんまり無茶し過ぎんなよ。って、死にかけたかもしれない俺が言うのはおかしいんだけどな」
「……冒険者なんですから、無茶をするなって言う方が無理な注文じゃないですか?」
「はっはっは!!! 全くだぜ…………そうだな。何を言っても、カバー力に関しては俺らの不手際だった。本当に、今回の討伐にアストがいてくれて助かったぜ」
「……こんな考えこそ無茶だって解ってるんですけど、やっぱり周りで同僚が死ぬのは……嫌なんで」
非常に子供っぽい考え。
しかし、この場で仕事を終えたギルド職員も含めて、アストの考えをバカにする者は一人もいなかった。
「…………アストも、色々と経験してきてるんだな」
「一応、三年は冒険者として活動してますからね……調子に乗ってた訳じゃないんですけど、自分が死ぬ気になれば……なんとか出来るって、不透明な自信を持っていた時期があって」
転生者のアドバンテージを殺さず頑張り続け、幸いにも魔法の才もあったアスト。
ファンタジーの中でもちょっとファンタジーが過ぎるんじゃないか? と思う程の実力は有していなかったが、それでも冒険者に成りたてのアストは確かに強かった。
そしてある日……共に依頼を受けた冒険者と共に行動している時、アストは調子に乗って危険なモンスターの目撃情報が確認された場所にも向かってみないかと提案した……りはしなかった。
ただ…………イレギュラーが襲って来た。
同世代の仲間達だけでは対処できない理不尽の急襲。
共にイシュドが行動していたお陰でなんとか全滅は免れた。
しかしその急襲によって、アストは初めて……親しくなった者の死を体験してしまった。
あの時の感覚は今でも覚えている。
「解ってますよ。冒険者として活動していれば、そういう事もあるって……でも、やっぱり嫌じゃないっすか」
「……そうだな。そういう時にエールを呑んでも、何も晴れやしない。ただただ、苦いだけだな」
「はい…………俺の本業はバーテンダーですけど、それでも冒険者としてのプライド? みたいなものは多少あります。だから……俺の手が届く範囲の命は、どうしても助けたいって思ってしまいます」
胸の内を零してから約十秒……急に恥ずかしさがアストを襲う。
「ッ!!!! す、すいません。なんか、急に語りだしちゃって」
「いや、そんな事はねぇよ。寧ろ、こう……原点とか大層なあれじゃない。けど目を逸らしちゃならない大事なこと? そういうのを思い出せた」
「スラディスの言う通りだな。その気持ちを思い出せたからこそ、やはりアスト。お前が今日、共に戦ってくれたことに感謝したい」
杯の中が空になったアストに、エールが入った杯を渡すマックス。
「アスト、お前のお陰で今日……誰も死なず、クソ共を討伐し……こうしてまた宴会を楽しむことが出来た」
序盤から中盤、そして最後。
どの場面を取っても、一番活躍して働いたのはアストだった。
それはスラディスやマックスだけではなく、他の討伐に参加した冒険者……全員が認めていた。
この時、柄にもなくアストはほんの少し、涙を零した。
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