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第20話 そもそもな話
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(というか、この人の状況にブルームーンって……ちょっと縁起悪過ぎないか)
ブルームーンのカクテル言葉は、叶わぬ恋。
まるで今のタルダの恋愛状況表すかのようなカクテル言葉である。
「恋に関しては素人なのですが、働いている場所が違うとなると……手紙を送り、互いの近況を報告し合うといったコミュニケーションを行い、距離を縮めるのは難しいのでしょうか」
話を聞いた限り、全く面識がないわけではなく、寧ろ王都にある学園の中で同じ学園に通っていた。
加えて、同じクラスの同級生として過ごしていた。
そして……それなりに会話をしていたこともある。
やはりアストからすれば、それはもはや根性次第では? と首を傾げたくなる。
「身分という壁を越える為には、まだ……今の僕では足りないんだ」
(騎士としての功績? 的な話だよな。向こうの親に認められるためにはまだまだ必要ってことか)
タルダはまだ二十歳であり、想い人も二十歳。
侯爵家の令嬢であれば、幼い頃に既に婚約者がいてもおかしくないが、魔法使いとして非常に優秀だったこともあり、まだ彼女に相応しい人物は現れていなかった。
「……タルダさんは、今の自分ではまだ足りないと思っていらっしゃるのですよね。でしたら……まず、想い人が自分のことをどう思っているのか、そこを知るところから始めてはいかがでしょうか」
「っ、それは……………………いや、そうだね。納得させる功績を手に入れる前に、そもそも彼女が僕に気が無ければ……全て無意味になってしまうか」
納得させる功績が必要。
その考え自体はアストも一応納得は出来る。
前世で例えるならば、相手の親に自分は彼女を支えられる程の年収があると証明するようなもの。
ただ……年収を目標額までアップすることが出来たとしても、まず意中の相手が自分を好いてくれているのか……そこが解らなければ、色々と始まらない。
「……オークリーダーのローストビーフを貰えるかな」
「かしこまりました」
このままちびちびとカクテルを呑みながら相談に乗ってもらうのは悪いと思い、追加で料理を注文。
「……まず、手紙を送ること自体は……おかしくないかな」
「幼い頃から社交界で面識があり、青春時代とも言える学生時代を共に過ごしていた間柄であれば、数年ぶりに手紙を送ってもおかしくないかと」
話を聞く限り、アストからすれば友人関係であったのは間違いない。
互いに命を懸けた職業に就いて生活を送っているとなれば、そもそも生きているか否かを確認するために手紙を送ってもおかしくない。
「自分の近況を伝えながらも、相手の近況を尋ねるような文を入れる。これで、想い人の方も手紙を書いて送らなければという気持ちになるかと」
「それを何度か続け……一年、もしくは半年言えないに確認しなければならない、と」
「タルダさんが、まだ自身が彼女の隣に立つ為には功績が足りていないと思うのであれば、尚更早い方が良いかと」
無謀に告白しろと言っている訳ではない。
タルダとその想い人には、幼少期から学生時代まで続く思い出がある。
そこを加味すれば、無謀な賭けではない。
「これまた個人的な感想ではありますが、告白するのは二度目……もしくは三度目のデートを重ねた時がよろしいかと」
「で、デート……そ、そうだよね。出会っていきなり告白するのは……うん、良くないよね」
「まず、デートに誘った際に、オッケーしていただけるかどうか。そこをまず乗り越えることが出来れば、個人的には成功する可能性がグッと高まるかと」
タルダと、その想い人は現在勤務している街が違う。
ただ、街と街が馬車で一か月ほど移動しなければいけないほど離れてはいないため、一年以内に数回デートを重ねるのは、現実的に不可能な話ではない。
「そこが第一関門ということだね」
「はい。多少なりとも気になっている、記憶にそれなりに残っている人物からの誘いでなければ、基本的に女性はデートの誘いを受けないかと」
アスト自身が何度も体験してきた話ではなく、前世も含めて相談に乗ってきた経験からくる答えである。
「…………何を、話せば良いかな」
(……一バーテンダーにここまで相談してくれるのは個人的に嬉しくはある。でも、ここまで整った容姿に、戦闘者の中でも完全に平均以上の強さを持っている人が恋に悩む、か……前世とは、やはり違う世界なのだと実感させられるな)
子爵家出身とはいえ、貴族は貴族。
これまで幾人かの貴族を見てきた、アストから見てタルダはその中でも上位に入る容姿を持っている。
そんなタルダが……意中の女性との会話内容に困っている。
これは寧ろギャグなのでは? と思ってしまうが、声と顔には出さない。
「手紙で話したことの再確認。後は……これは彼女に悩みがあればの話ですが、手紙で話した書かれていなかった悩みを引き出すことが出来れば、チャンスといえるかもしれません」
「言えない悩みを引き出す…………」
ブルームーンのカクテル言葉は叶わぬ恋以外にも、奇跡の予感という言葉がある。
そして奇跡とは諦めない奴の頭上にしか降りてこない……らしい。
ブルームーンのカクテル言葉は、叶わぬ恋。
まるで今のタルダの恋愛状況表すかのようなカクテル言葉である。
「恋に関しては素人なのですが、働いている場所が違うとなると……手紙を送り、互いの近況を報告し合うといったコミュニケーションを行い、距離を縮めるのは難しいのでしょうか」
話を聞いた限り、全く面識がないわけではなく、寧ろ王都にある学園の中で同じ学園に通っていた。
加えて、同じクラスの同級生として過ごしていた。
そして……それなりに会話をしていたこともある。
やはりアストからすれば、それはもはや根性次第では? と首を傾げたくなる。
「身分という壁を越える為には、まだ……今の僕では足りないんだ」
(騎士としての功績? 的な話だよな。向こうの親に認められるためにはまだまだ必要ってことか)
タルダはまだ二十歳であり、想い人も二十歳。
侯爵家の令嬢であれば、幼い頃に既に婚約者がいてもおかしくないが、魔法使いとして非常に優秀だったこともあり、まだ彼女に相応しい人物は現れていなかった。
「……タルダさんは、今の自分ではまだ足りないと思っていらっしゃるのですよね。でしたら……まず、想い人が自分のことをどう思っているのか、そこを知るところから始めてはいかがでしょうか」
「っ、それは……………………いや、そうだね。納得させる功績を手に入れる前に、そもそも彼女が僕に気が無ければ……全て無意味になってしまうか」
納得させる功績が必要。
その考え自体はアストも一応納得は出来る。
前世で例えるならば、相手の親に自分は彼女を支えられる程の年収があると証明するようなもの。
ただ……年収を目標額までアップすることが出来たとしても、まず意中の相手が自分を好いてくれているのか……そこが解らなければ、色々と始まらない。
「……オークリーダーのローストビーフを貰えるかな」
「かしこまりました」
このままちびちびとカクテルを呑みながら相談に乗ってもらうのは悪いと思い、追加で料理を注文。
「……まず、手紙を送ること自体は……おかしくないかな」
「幼い頃から社交界で面識があり、青春時代とも言える学生時代を共に過ごしていた間柄であれば、数年ぶりに手紙を送ってもおかしくないかと」
話を聞く限り、アストからすれば友人関係であったのは間違いない。
互いに命を懸けた職業に就いて生活を送っているとなれば、そもそも生きているか否かを確認するために手紙を送ってもおかしくない。
「自分の近況を伝えながらも、相手の近況を尋ねるような文を入れる。これで、想い人の方も手紙を書いて送らなければという気持ちになるかと」
「それを何度か続け……一年、もしくは半年言えないに確認しなければならない、と」
「タルダさんが、まだ自身が彼女の隣に立つ為には功績が足りていないと思うのであれば、尚更早い方が良いかと」
無謀に告白しろと言っている訳ではない。
タルダとその想い人には、幼少期から学生時代まで続く思い出がある。
そこを加味すれば、無謀な賭けではない。
「これまた個人的な感想ではありますが、告白するのは二度目……もしくは三度目のデートを重ねた時がよろしいかと」
「で、デート……そ、そうだよね。出会っていきなり告白するのは……うん、良くないよね」
「まず、デートに誘った際に、オッケーしていただけるかどうか。そこをまず乗り越えることが出来れば、個人的には成功する可能性がグッと高まるかと」
タルダと、その想い人は現在勤務している街が違う。
ただ、街と街が馬車で一か月ほど移動しなければいけないほど離れてはいないため、一年以内に数回デートを重ねるのは、現実的に不可能な話ではない。
「そこが第一関門ということだね」
「はい。多少なりとも気になっている、記憶にそれなりに残っている人物からの誘いでなければ、基本的に女性はデートの誘いを受けないかと」
アスト自身が何度も体験してきた話ではなく、前世も含めて相談に乗ってきた経験からくる答えである。
「…………何を、話せば良いかな」
(……一バーテンダーにここまで相談してくれるのは個人的に嬉しくはある。でも、ここまで整った容姿に、戦闘者の中でも完全に平均以上の強さを持っている人が恋に悩む、か……前世とは、やはり違う世界なのだと実感させられるな)
子爵家出身とはいえ、貴族は貴族。
これまで幾人かの貴族を見てきた、アストから見てタルダはその中でも上位に入る容姿を持っている。
そんなタルダが……意中の女性との会話内容に困っている。
これは寧ろギャグなのでは? と思ってしまうが、声と顔には出さない。
「手紙で話したことの再確認。後は……これは彼女に悩みがあればの話ですが、手紙で話した書かれていなかった悩みを引き出すことが出来れば、チャンスといえるかもしれません」
「言えない悩みを引き出す…………」
ブルームーンのカクテル言葉は叶わぬ恋以外にも、奇跡の予感という言葉がある。
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