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第27話 褒め言葉では、なくなる
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「……頑張ることが卑怯、ですか」
プライベートであれば「もうちょい細かく喋ってくれよ。端折り過ぎだって」とツッコんでしまうが、今は接客中である。
そんな友人感覚でツッコめる訳がない。
「もう少し、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか」
「っ、すいません。言葉足らずでしたね……………その、自慢話という訳ではないのですが」
自慢話ではない、そう前置きしてからカインが語り始めた内容は……………誰が聞いても、完全に自慢話であった。
それなりに良い家に生まれ、何不自由なく過ごし、両親や兄や姉はとても尊敬出来る。
妹や弟たちも自分を慕ってくれている。
実家に仕えている教育係の者たちのお陰で、自分は実力を伸ばすことができ、学園にもトップクラスの成績で合格し、好成績を収め続けている。
(……あれだな。貴族の令息という出自を考えれば、先に自慢話という訳ではないのですがと、申し訳なさそうな顔で前置きしてるだけ本当にまともな部類だな)
やっぱり自慢話だな~~という思いを顔に出すことなく、アストはカインの話を最後まで聞き続けた。
「という訳で、自分はこれ以上努力するのは……………卑怯なのかと」
「なるほど……………私としては、全くそうは思いません。そういった陰口は、本当にただの嫉妬です」
全てを持ってるくせに、天才がそれ以上努力するなよ。
そんな同級生たちの会話内容を聞いてしまい、根が優しく……自分は恵まれていると自覚しているカインは悩んでしまった。
本当に、彼らの言う通りなのかもしれないと。
「……ありがとうございます」
「カイン様、これはあなたを慰める為のおべっかではありません。私の本音でございます」
正直なところ、下らない悩みだと思っている。
それでも前世という記憶があるアストは、ただ下らないと吐き捨てるだけではなく、カインの心に寄り添える優しさを持っている。
「まず、平民である私からすると……勿論差があるのは解っていますが、貴族の子供として生まれた方々は、総じて恵まれています」
批判、ではない。
純然たる事実であるとカインも解っている為、特に青筋を立てることなく、落ち着いてアストの話を聞き続ける。
「頑張る環境、それが整っており、本人が望めば更に家族は協力してくれるでしょう。その期待に応えたい……あるいは生まれた目標を達成するために努力を重ね続ける……それは至極当然のことです」
「……………」
「カイン様は、非常に整った顔をお持ちです。だからこそ、同級生の方々も全てを持っているくせにとひがんだのでしょう…………仮にですが、カイン様がそれを利用して意図的に多くのご令嬢方を落す。婚約者がいようといまいと関係無くそういった遊びを行っているのであれば、百歩譲って彼らがその点に関しては文句を言うのは致し方ないでしょう。ですが……カイン様はその様な遊びをする時間があれば、訓練に費やすでしょう」
「……ふふ。なんだか……嬉しいです。まだ、出会って一時間も経っていない店主が、私の事をここまで解ってくれるなんて」
正直なところ、アストもカインの顔面美は、非常に羨ましいと思っている。
今世では平民出身でありながら、それなりに良い顔を手に入れたので不満など無いが、それでも羨ましい事に変わりはない。
カインの顔は優顔イケメンのようになよなよしておらず、美の要素が強いながらも、きりっとした男らしさも含まれている。
「自慢になってしまうかもしれませんが、本当に前を向いて努力を積み重ねていけば……同じく真剣に、目標に向かって走り続けている同士というのは、自然と解るようになるものかと」
振り返ってみると……やはり自慢である。
しかし前世の一部、そして今世の冒険者兼バーテンダーになるまでは、目標に向けて走り続けてきたと胸を張って断言出来る。
「私は、昼は冒険者として活動しています。ですので……カイン様が説明して頂いた通りの強者であることが解ります」
「やはり、普通のバーテンダーの方ではなかったのですね」
そもそも、夜に屋台を出して活動してる時点で普通のバーテンダーではない。
「…………正直なところ、仮にの話でありますが、私がカイン様と試合を行うのであれば、真正面からは戦いたくありません」
戦う姿すら見ていないが、純粋な得物を使った技術力は負けていると感じた。
「保有する魔力量から、おそらく魔法の腕も並ではないのでしょう。努力に努力を重ねてきた……それでも多才であるというのも、また事実なのでしょう」
「…………」
才能がある。
子供の頃は、両親や教育係の者たちからそう言われるのが嬉しかったカイン。
単純に褒められているのだと思える。
しかし同世代の者たちと関わるようになってくると……だんだんと、自分を勝手に決めつける、恐ろしい言葉なのではないかと感じ始めた。
「ですが……それは、他の誰かに関係あるでしょうか?」
「それは、いったい……」
「その才をカイン様がどう伸ばそうと、それはカイン様次第です。その才はカイン様のものなのですよ? 何故……自分は現状に悔しいと感じているのに、もっと努力しようと動かない者たちの考えに合わせなければならないのでしょうか」
アストも……有するスキルの性能、転生者ということもあって、カインの気持ちが解らなくはなく……徐々に言葉に熱がこもり始める。
プライベートであれば「もうちょい細かく喋ってくれよ。端折り過ぎだって」とツッコんでしまうが、今は接客中である。
そんな友人感覚でツッコめる訳がない。
「もう少し、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか」
「っ、すいません。言葉足らずでしたね……………その、自慢話という訳ではないのですが」
自慢話ではない、そう前置きしてからカインが語り始めた内容は……………誰が聞いても、完全に自慢話であった。
それなりに良い家に生まれ、何不自由なく過ごし、両親や兄や姉はとても尊敬出来る。
妹や弟たちも自分を慕ってくれている。
実家に仕えている教育係の者たちのお陰で、自分は実力を伸ばすことができ、学園にもトップクラスの成績で合格し、好成績を収め続けている。
(……あれだな。貴族の令息という出自を考えれば、先に自慢話という訳ではないのですがと、申し訳なさそうな顔で前置きしてるだけ本当にまともな部類だな)
やっぱり自慢話だな~~という思いを顔に出すことなく、アストはカインの話を最後まで聞き続けた。
「という訳で、自分はこれ以上努力するのは……………卑怯なのかと」
「なるほど……………私としては、全くそうは思いません。そういった陰口は、本当にただの嫉妬です」
全てを持ってるくせに、天才がそれ以上努力するなよ。
そんな同級生たちの会話内容を聞いてしまい、根が優しく……自分は恵まれていると自覚しているカインは悩んでしまった。
本当に、彼らの言う通りなのかもしれないと。
「……ありがとうございます」
「カイン様、これはあなたを慰める為のおべっかではありません。私の本音でございます」
正直なところ、下らない悩みだと思っている。
それでも前世という記憶があるアストは、ただ下らないと吐き捨てるだけではなく、カインの心に寄り添える優しさを持っている。
「まず、平民である私からすると……勿論差があるのは解っていますが、貴族の子供として生まれた方々は、総じて恵まれています」
批判、ではない。
純然たる事実であるとカインも解っている為、特に青筋を立てることなく、落ち着いてアストの話を聞き続ける。
「頑張る環境、それが整っており、本人が望めば更に家族は協力してくれるでしょう。その期待に応えたい……あるいは生まれた目標を達成するために努力を重ね続ける……それは至極当然のことです」
「……………」
「カイン様は、非常に整った顔をお持ちです。だからこそ、同級生の方々も全てを持っているくせにとひがんだのでしょう…………仮にですが、カイン様がそれを利用して意図的に多くのご令嬢方を落す。婚約者がいようといまいと関係無くそういった遊びを行っているのであれば、百歩譲って彼らがその点に関しては文句を言うのは致し方ないでしょう。ですが……カイン様はその様な遊びをする時間があれば、訓練に費やすでしょう」
「……ふふ。なんだか……嬉しいです。まだ、出会って一時間も経っていない店主が、私の事をここまで解ってくれるなんて」
正直なところ、アストもカインの顔面美は、非常に羨ましいと思っている。
今世では平民出身でありながら、それなりに良い顔を手に入れたので不満など無いが、それでも羨ましい事に変わりはない。
カインの顔は優顔イケメンのようになよなよしておらず、美の要素が強いながらも、きりっとした男らしさも含まれている。
「自慢になってしまうかもしれませんが、本当に前を向いて努力を積み重ねていけば……同じく真剣に、目標に向かって走り続けている同士というのは、自然と解るようになるものかと」
振り返ってみると……やはり自慢である。
しかし前世の一部、そして今世の冒険者兼バーテンダーになるまでは、目標に向けて走り続けてきたと胸を張って断言出来る。
「私は、昼は冒険者として活動しています。ですので……カイン様が説明して頂いた通りの強者であることが解ります」
「やはり、普通のバーテンダーの方ではなかったのですね」
そもそも、夜に屋台を出して活動してる時点で普通のバーテンダーではない。
「…………正直なところ、仮にの話でありますが、私がカイン様と試合を行うのであれば、真正面からは戦いたくありません」
戦う姿すら見ていないが、純粋な得物を使った技術力は負けていると感じた。
「保有する魔力量から、おそらく魔法の腕も並ではないのでしょう。努力に努力を重ねてきた……それでも多才であるというのも、また事実なのでしょう」
「…………」
才能がある。
子供の頃は、両親や教育係の者たちからそう言われるのが嬉しかったカイン。
単純に褒められているのだと思える。
しかし同世代の者たちと関わるようになってくると……だんだんと、自分を勝手に決めつける、恐ろしい言葉なのではないかと感じ始めた。
「ですが……それは、他の誰かに関係あるでしょうか?」
「それは、いったい……」
「その才をカイン様がどう伸ばそうと、それはカイン様次第です。その才はカイン様のものなのですよ? 何故……自分は現状に悔しいと感じているのに、もっと努力しようと動かない者たちの考えに合わせなければならないのでしょうか」
アストも……有するスキルの性能、転生者ということもあって、カインの気持ちが解らなくはなく……徐々に言葉に熱がこもり始める。
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