36 / 167
第36話 食べなければ、後悔が残る
しおりを挟む
「こっちはオークの肉ともやしを使用したとん平焼きに、こっちはふんわり卵の上にひき肉を乗せたつまみ。んで、こっちは味付け卵だ」
「ふ、ふふふ……偶に思うんだが、料理とはやはり魔法に似ているのではないかって」
「ん~~~、魔法とは違うかもな。どっちかっつ~と、錬金術に近いんじゃないか? まっ、そんなのは後で考えるとして、冷めないうちに食べてくれ」
普通の卵の……十個以上の量はあるソニックイーグルの卵を使用したため、アストはまだ追加のとん平焼きふんわり卵の上にひき肉を乗せたつまみを作り続けている。
「ッ!!!! う、うんめぇええええ!!!!!!」
「ガリアス。時間的に……あぁ~~、まだ大丈夫っちゃ大丈夫か。でも、あんまり大きな声を出すと変に視線が集まる」
「いやいや、こんな美味い飯食って黙ってるのなんて無理だって!!! なぁ、お前ら!!!!」
「同感ね。ねぇ、アスト。まだおかわりはあるのよね」
「勿論だ。というか今作ってる。けどお前ら、ちゃんと金は払ってくれよ?」
「安心しなさい!! ぶっちゃけアストのお陰ではあるけど、今懐はほかほかよ!!」
目に見えてテンションが上がるガリアスとシーナ。
そんな二人とは反対に、ロルバとロクターは口の中に広がる未知の味に……逆に大きな声が出ることはなく、静かに堪能していた。
「さっき、シーナがバーテンダーと料理人……どちらの方が本業なのかと、ツッコんだ意味が良く解るな」
「うむ、ロルバの言う通りだ。とん平焼き? と、こっちのつまみも美味いが、こっちの卵が……普通の卵とは、違うのだよな?」
「文字通り、味付けした卵だ」
アストからすれば本当に作るのは難しくない……寧ろ、作るなんて言葉を使っても良いのか? と首を捻りたくなるもの。
だが、ロクターたちにとっては衝撃に値する味であった。
「言っておくけど、他の料理人に向かって無理に似たような物を作ってくれって頼むなよ」
「アストのアイデアから生まれた料理だからか?」
「別にそんなんじゃないよ。作れるなら作ってくれてかまわない。俺以外の店でも食べられるって言うのは、重要なことだ。ただな、真面目に料理の道を進み続けるには、金が掛かるんだよ」
「……それ、冒険者も一緒じゃない?」
「………………そうだな。今のは例えが悪かった。ん~~~…………儲けを気にするのは、冒険者も同じか。なら…………あえて差を上げるなら、管理しなければならない物が多い、かな」
食材の保存。
前世と違い、この世界ではそれが非常に難しい。
冷蔵庫の様なマジックアイテムは存在するものの、アストの前世ほどの値段では手に入らない。
「扱う食材の保存に……従業員たちの給料まで考えて利益を出さなければならない。俺たち冒険者なら、基本的にパーティーの人数分で儲けを割れば良いけど、そういうところまで頭を使わなければならない。だから、あんまり新作の料理とかに手を伸ばす時間と余裕、金がないんだよ」
「なるほど、ねぇ。私たちはDランク……Cランクにでもなれば、ある程度余裕は生まれるけど、料理人たちはそうもいかないのね」
「おそらくの話だけどな」
その後、シーナたちはアストが作っていたおかわり分も全て完食。
「一応デザートも作れるが、どうする?」
「いる!!!!」
ちょっと酔いが回り始めてきたシーナだったが、やはりそこは女性……いや、女子なのか、デザートという単語を聞き逃さなかった。
「はいよ」
最後にフレンチトーストを作り、それを食べ終え……ようやくシーナたちは腹が一杯になった。
「……やべぇ。久しぶりに食い過ぎたかもしれねぇ」
「だろうな。さっきまで宴会でがっつりした料理を食ってたのに、あれだけ追加で食えば腹も限界を迎えるだろ」
「その通りだ。しかし、致し方なしというもの。あれだけ美味い料理とカクテルを目の前にして、食うな呑むなというのは無理である」
「うんうん。ロクターの言う通りだ、アスト。ここで食べなければ、絶対に後悔が残ってしまう!!!」
「ロルバの言う通りね~~~~」
「そうかい……んじゃ、こいつが合計金額だ」
アストは料理、カクテル作りに追われながらも、しっかり四人が何を何人前食べたのか把握していた。
「………………アスト、本当にこの金額で合ってるのか?」
「あぁ、あってるぞ。不満か?」
「い、いや。全くもって不満など無い。ただ……本当にこんな安い金額で良いのかと思ってしまってな」
提示された金額は、ロルバが予想していた金額の三分の一もなかった。
「これが、俺が一つの街に長期間留まらない理由の一つだ。これだけ安く提供してたら、絶対に同業者たちから恨まれるだろ?」
「それは……そうだな」
経営の事など全く解らないロルバだが、間違いなく同業者から恨みを買ってしまう値段であることだけは即理解した。
「…………アスト、まだこの街に居るんだよ?」
「そうだな。悪く無い街だし、もう少し滞在しようとは思ってる」
「それは良かった。それじゃ、また呑みに来る」
客として出来ることはまた呑みに来ることだと思い、千鳥足になったシーナをロルバが、ガリアスをロクターが背負い、彼らは宿へと戻って行った。
「ふ、ふふふ……偶に思うんだが、料理とはやはり魔法に似ているのではないかって」
「ん~~~、魔法とは違うかもな。どっちかっつ~と、錬金術に近いんじゃないか? まっ、そんなのは後で考えるとして、冷めないうちに食べてくれ」
普通の卵の……十個以上の量はあるソニックイーグルの卵を使用したため、アストはまだ追加のとん平焼きふんわり卵の上にひき肉を乗せたつまみを作り続けている。
「ッ!!!! う、うんめぇええええ!!!!!!」
「ガリアス。時間的に……あぁ~~、まだ大丈夫っちゃ大丈夫か。でも、あんまり大きな声を出すと変に視線が集まる」
「いやいや、こんな美味い飯食って黙ってるのなんて無理だって!!! なぁ、お前ら!!!!」
「同感ね。ねぇ、アスト。まだおかわりはあるのよね」
「勿論だ。というか今作ってる。けどお前ら、ちゃんと金は払ってくれよ?」
「安心しなさい!! ぶっちゃけアストのお陰ではあるけど、今懐はほかほかよ!!」
目に見えてテンションが上がるガリアスとシーナ。
そんな二人とは反対に、ロルバとロクターは口の中に広がる未知の味に……逆に大きな声が出ることはなく、静かに堪能していた。
「さっき、シーナがバーテンダーと料理人……どちらの方が本業なのかと、ツッコんだ意味が良く解るな」
「うむ、ロルバの言う通りだ。とん平焼き? と、こっちのつまみも美味いが、こっちの卵が……普通の卵とは、違うのだよな?」
「文字通り、味付けした卵だ」
アストからすれば本当に作るのは難しくない……寧ろ、作るなんて言葉を使っても良いのか? と首を捻りたくなるもの。
だが、ロクターたちにとっては衝撃に値する味であった。
「言っておくけど、他の料理人に向かって無理に似たような物を作ってくれって頼むなよ」
「アストのアイデアから生まれた料理だからか?」
「別にそんなんじゃないよ。作れるなら作ってくれてかまわない。俺以外の店でも食べられるって言うのは、重要なことだ。ただな、真面目に料理の道を進み続けるには、金が掛かるんだよ」
「……それ、冒険者も一緒じゃない?」
「………………そうだな。今のは例えが悪かった。ん~~~…………儲けを気にするのは、冒険者も同じか。なら…………あえて差を上げるなら、管理しなければならない物が多い、かな」
食材の保存。
前世と違い、この世界ではそれが非常に難しい。
冷蔵庫の様なマジックアイテムは存在するものの、アストの前世ほどの値段では手に入らない。
「扱う食材の保存に……従業員たちの給料まで考えて利益を出さなければならない。俺たち冒険者なら、基本的にパーティーの人数分で儲けを割れば良いけど、そういうところまで頭を使わなければならない。だから、あんまり新作の料理とかに手を伸ばす時間と余裕、金がないんだよ」
「なるほど、ねぇ。私たちはDランク……Cランクにでもなれば、ある程度余裕は生まれるけど、料理人たちはそうもいかないのね」
「おそらくの話だけどな」
その後、シーナたちはアストが作っていたおかわり分も全て完食。
「一応デザートも作れるが、どうする?」
「いる!!!!」
ちょっと酔いが回り始めてきたシーナだったが、やはりそこは女性……いや、女子なのか、デザートという単語を聞き逃さなかった。
「はいよ」
最後にフレンチトーストを作り、それを食べ終え……ようやくシーナたちは腹が一杯になった。
「……やべぇ。久しぶりに食い過ぎたかもしれねぇ」
「だろうな。さっきまで宴会でがっつりした料理を食ってたのに、あれだけ追加で食えば腹も限界を迎えるだろ」
「その通りだ。しかし、致し方なしというもの。あれだけ美味い料理とカクテルを目の前にして、食うな呑むなというのは無理である」
「うんうん。ロクターの言う通りだ、アスト。ここで食べなければ、絶対に後悔が残ってしまう!!!」
「ロルバの言う通りね~~~~」
「そうかい……んじゃ、こいつが合計金額だ」
アストは料理、カクテル作りに追われながらも、しっかり四人が何を何人前食べたのか把握していた。
「………………アスト、本当にこの金額で合ってるのか?」
「あぁ、あってるぞ。不満か?」
「い、いや。全くもって不満など無い。ただ……本当にこんな安い金額で良いのかと思ってしまってな」
提示された金額は、ロルバが予想していた金額の三分の一もなかった。
「これが、俺が一つの街に長期間留まらない理由の一つだ。これだけ安く提供してたら、絶対に同業者たちから恨まれるだろ?」
「それは……そうだな」
経営の事など全く解らないロルバだが、間違いなく同業者から恨みを買ってしまう値段であることだけは即理解した。
「…………アスト、まだこの街に居るんだよ?」
「そうだな。悪く無い街だし、もう少し滞在しようとは思ってる」
「それは良かった。それじゃ、また呑みに来る」
客として出来ることはまた呑みに来ることだと思い、千鳥足になったシーナをロルバが、ガリアスをロクターが背負い、彼らは宿へと戻って行った。
291
あなたにおすすめの小説
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる