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第169話 脅迫?
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「二人で呑むのは初めてですね」
「……かもな」
アストはウィステリアと共に夕食を食べる……そこまでは良かった。
そこまでは良かったが、共に酒まで呑むつもりはなかった。
だが、ウィステリアが無理矢理付いてきた……アストが無理矢理帰れと言うタイプではないということもあり、結果的に二人で呑むことになってしまった。
「にしても……ちょっとは強くなったのか?」
「アストと出会ってから、それなりに呑むようになりました」
「そうか。まぁ、前みたいにパタッと潰れてくれなきゃ良いけど」
「っ、もう……あまり前の事をいじらないでください」
以前アストと出会った際、ウィステリアはヴァーニたちと共にアストのミーティアに訪れ、カクテルを呑んだことがあったのだが……アストが気を利かせ、あまりアルコール度数が高くないカクテルを進めたのだが…………気分が良くなったウィステリアは何杯も呑んでしまい、結果酔い潰れてしまった。
「それで、あの子たちの事はどうですか?」
「それは探索している時にも話しただろ」
ほんの少しめんどくさそうな顔をしながら、ロックのウィスキーを口に運ぶ。
「アスト。私は、あの子たちの為に過保護になるつもりはないわ。だから、ちゃんとあなたの考えが聞きたいのです」
「…………探索中に言った通り、悪くはない筈だ。未来を見通せる訳じゃないから、あいつらの限界が何処なのかは知らないが、ある程度のところまではいけるだろうな」
「でも、不安点もあると」
「そこに関しては、ウィステリアも解ってるだろ」
「……ダリアンに関して、ですね」
「そうだ」
鬼人族らしい立派な肉体を持ち、アラックと共に前衛として戦う冒険者。
他の鬼人族と違いがあるとすれば……それは細剣という細い得物を使っている点。
「別に下手くそだとは思ってない。寧ろ、あの体格で上手く使いこなしてるとは思う。ただ、あのパーティーの現状を考えれば、欲しいのはタンクだ。アタッカーに関してはロングソードを使うアラックに、短剣と体術で戦うサンドラがいれば十分だ」
「そうですね」
「あれだけ立派な体格を持ってるんだ。大剣か大斧を使うか、もうがっつり大盾を持ってザ・タンクといった感じで戦っても良い。そうなれば、パーティーとしての欠点はなくなる」
「……想いを、憧れを捨てるか、別のパーティーに属するか、という事ですね」
「そういう事だ」
淡々と答えるアストを見て……何を思ったのか、ウィステリアはまだ半分程残っていたロックのウィスキーを一気に呑んでしまう。
「~~~~~~~~~~っ!!! ……マスター、同じのをもう一杯、お願いします」
「かしこまりました」
注文されれば、バーテンダーとして新しく作るが、表情を見て本当に良いのか? と迷いが生まれる。
だが、連れがいることは確認しているため、全て彼に任せようと……マスターは大人しく同じものを作った。
「想いや憧れ……いえ、今の彼にとっては、信念を言えるかもしれません。それを捨ててまで、他の武器を手に取ったとしても……上手くいくでしょうか」
「さぁ、どうだろうな。まだそれらを使うところを見てないから、なんとも言えない。ただ……細剣の才が溢れているとはまでは思えなかったな」
残酷にして、現実である事実を告げるアスト。
街から街へ旅をしているアストだからこそ、細剣を使う冒険者や騎士と出会う機会もそれなりにある。
だからこそ、多少なりとも解ってしまうところがある。
下手ではない……全く才能がないとも言わないが、溢れんばかりの才能があるわけでもない。
「多少なりとも、武器の重さが全く違う訳だから、慣れるまで違和感は付き纏うとは思うが、俺は重量級の武器に変えるか、がっつりタンクに転向するべきだと思っている」
「…………少なくとも、その事実は伝えないとですね」
「……そう思えるようになったんだな」
アストの記憶の中にあるウィステリアは、そういった残酷な事実を他人に突き付けられないタイプの人間だった。
「私も、少しは成長してるんですよ」
「そうか……んで、先輩であるウィステリアはどうしたいんだ?」
「強制することは出来ませんが…………私も、彼には大剣や大斧、大盾の方が合っていると思っています」
「だろうな。それじゃあ、今度伝えてみるか」
「大剣や大斧などの武器の方が合っていると、ですか?」
ゆっくり……ゆっくりと残っていたウィスキーを呑み干し……アストは、より残酷な言葉を口にした。
「お前の選択ミスで、仲間が死んでも良いのかと、伝えようと思う」
「っ!!!! それは……」
ロックでウィスキーということもあり、多少酔いが回り始めていたが、一気に覚めてしまったウィステリア。
何故なら……アストが口にした内容は、ほぼ脅迫であったから。
「ウィステリア。これでダリアンがどう答えるかによって、あいつの細剣への憧れや想いが本物か否かというのも解る。丁度良い見極めの機会になる筈だ」
「っ…………………………………そう、ですね。私としても、彼等にはなるべく仲間が死ぬという経験は、してほしくありません」
彼女は、決して脳内お花畑のお嬢様ヒーラーではない。
現実を突き付けることに対して可哀想という思いはあれど、冒険者という過酷な世界で生きていくのであれば……知らなければならない事実だと、解っていた。
「……かもな」
アストはウィステリアと共に夕食を食べる……そこまでは良かった。
そこまでは良かったが、共に酒まで呑むつもりはなかった。
だが、ウィステリアが無理矢理付いてきた……アストが無理矢理帰れと言うタイプではないということもあり、結果的に二人で呑むことになってしまった。
「にしても……ちょっとは強くなったのか?」
「アストと出会ってから、それなりに呑むようになりました」
「そうか。まぁ、前みたいにパタッと潰れてくれなきゃ良いけど」
「っ、もう……あまり前の事をいじらないでください」
以前アストと出会った際、ウィステリアはヴァーニたちと共にアストのミーティアに訪れ、カクテルを呑んだことがあったのだが……アストが気を利かせ、あまりアルコール度数が高くないカクテルを進めたのだが…………気分が良くなったウィステリアは何杯も呑んでしまい、結果酔い潰れてしまった。
「それで、あの子たちの事はどうですか?」
「それは探索している時にも話しただろ」
ほんの少しめんどくさそうな顔をしながら、ロックのウィスキーを口に運ぶ。
「アスト。私は、あの子たちの為に過保護になるつもりはないわ。だから、ちゃんとあなたの考えが聞きたいのです」
「…………探索中に言った通り、悪くはない筈だ。未来を見通せる訳じゃないから、あいつらの限界が何処なのかは知らないが、ある程度のところまではいけるだろうな」
「でも、不安点もあると」
「そこに関しては、ウィステリアも解ってるだろ」
「……ダリアンに関して、ですね」
「そうだ」
鬼人族らしい立派な肉体を持ち、アラックと共に前衛として戦う冒険者。
他の鬼人族と違いがあるとすれば……それは細剣という細い得物を使っている点。
「別に下手くそだとは思ってない。寧ろ、あの体格で上手く使いこなしてるとは思う。ただ、あのパーティーの現状を考えれば、欲しいのはタンクだ。アタッカーに関してはロングソードを使うアラックに、短剣と体術で戦うサンドラがいれば十分だ」
「そうですね」
「あれだけ立派な体格を持ってるんだ。大剣か大斧を使うか、もうがっつり大盾を持ってザ・タンクといった感じで戦っても良い。そうなれば、パーティーとしての欠点はなくなる」
「……想いを、憧れを捨てるか、別のパーティーに属するか、という事ですね」
「そういう事だ」
淡々と答えるアストを見て……何を思ったのか、ウィステリアはまだ半分程残っていたロックのウィスキーを一気に呑んでしまう。
「~~~~~~~~~~っ!!! ……マスター、同じのをもう一杯、お願いします」
「かしこまりました」
注文されれば、バーテンダーとして新しく作るが、表情を見て本当に良いのか? と迷いが生まれる。
だが、連れがいることは確認しているため、全て彼に任せようと……マスターは大人しく同じものを作った。
「想いや憧れ……いえ、今の彼にとっては、信念を言えるかもしれません。それを捨ててまで、他の武器を手に取ったとしても……上手くいくでしょうか」
「さぁ、どうだろうな。まだそれらを使うところを見てないから、なんとも言えない。ただ……細剣の才が溢れているとはまでは思えなかったな」
残酷にして、現実である事実を告げるアスト。
街から街へ旅をしているアストだからこそ、細剣を使う冒険者や騎士と出会う機会もそれなりにある。
だからこそ、多少なりとも解ってしまうところがある。
下手ではない……全く才能がないとも言わないが、溢れんばかりの才能があるわけでもない。
「多少なりとも、武器の重さが全く違う訳だから、慣れるまで違和感は付き纏うとは思うが、俺は重量級の武器に変えるか、がっつりタンクに転向するべきだと思っている」
「…………少なくとも、その事実は伝えないとですね」
「……そう思えるようになったんだな」
アストの記憶の中にあるウィステリアは、そういった残酷な事実を他人に突き付けられないタイプの人間だった。
「私も、少しは成長してるんですよ」
「そうか……んで、先輩であるウィステリアはどうしたいんだ?」
「強制することは出来ませんが…………私も、彼には大剣や大斧、大盾の方が合っていると思っています」
「だろうな。それじゃあ、今度伝えてみるか」
「大剣や大斧などの武器の方が合っていると、ですか?」
ゆっくり……ゆっくりと残っていたウィスキーを呑み干し……アストは、より残酷な言葉を口にした。
「お前の選択ミスで、仲間が死んでも良いのかと、伝えようと思う」
「っ!!!! それは……」
ロックでウィスキーということもあり、多少酔いが回り始めていたが、一気に覚めてしまったウィステリア。
何故なら……アストが口にした内容は、ほぼ脅迫であったから。
「ウィステリア。これでダリアンがどう答えるかによって、あいつの細剣への憧れや想いが本物か否かというのも解る。丁度良い見極めの機会になる筈だ」
「っ…………………………………そう、ですね。私としても、彼等にはなるべく仲間が死ぬという経験は、してほしくありません」
彼女は、決して脳内お花畑のお嬢様ヒーラーではない。
現実を突き付けることに対して可哀想という思いはあれど、冒険者という過酷な世界で生きていくのであれば……知らなければならない事実だと、解っていた。
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