780 / 1,103
退くという選択肢もある
しおりを挟む
「それじゃあ、もうオルト―から離れてしまうんですね」
「あぁ、そうだな。元々一か所の街にそんな長く留まらないようにってタイプだからな」
魔靴の製作依頼が終了した後、ギルドからの依頼で指導を行ったルーキーたちと最後の宴会。
……なんか、こうして別れを惜しむ様な顔をしてくれると、あの出会った当初の態度はなんだったのかってツッコみたくなってくるな、マジで本当に。
「もう、墓場には潜らなくて良いんですか?」
「結構潜ったし、一番下のボス部屋もこの前また討伐したから、俺はそれなりに十分って感じだな」
ハイ・ヴァンパイアと通常種より強いケルベロスを何度も倒すとか、超あり得ねぇって顔してるな。
まっ、本気で疑ってるわけではないんだろうけど。
「五十層のボスを倒した話は前も聞いたっすけど……恐ろしくはないんっすか」
「…………どうだろうな。実際に戦って、バカみたいに強いとは感じたけど、ハイ・ヴァンパイアが持つ圧に怯んで動けなくなったりすることはなかったかな」
これに関しても、運が良かったと言うしかない。
本気になったフェリスさんと戦ったことがあるわけじゃないけど、フェリスさんほどの絶対強者はまだ見たことがない。
それに、圧ってだけなら学生自体に戦った三本角のオーガジェネラル。
あいつも負けてない。
あのオーガジェネラルの場合、ハイ・ヴァンパイアみたいな邪悪さはなく……純粋な闘気の塊をぶつけられてる感じだったけどな。
「恐怖に慣れた方が良いのか、慣れない方が良いのかってのは難しいところだよな」
「??? そういうのには慣れておいた方が良いんじゃないですか? いざって時に動けなくなるのは困るじゃないですか」
「そうだな。確かにいざって時に動けないのは困るだろう。でも、あんまり恐怖に対する感覚がマヒしたら、退かなきゃいけない時に退けなくなるだろ」
「……ラガス坊ちゃまにしては、もの凄く一般的で冷静な考えですね」
「おい、どういう意味だよ」
ったく、相変わらずからかってきやがる。
確かに色々と普通じゃねぇけど、一般的なあれこれについて考えることぐらいは出来るっての。
「ラガス坊ちゃま……今まで強敵、難敵を相手に、退くという選択肢を取ったことがありましたか?」
「……ないな。でも、それはあれだ。倒せるって、勝てるっていう自信があったからだ。そういったイメージがなきゃ、俺も……どう戦うか冷静に考えるっての」
絶対に退くかは解らないけどな。
「是非、冷静に退いて欲しいものですね……今ラガス坊ちゃまも仰いましたが、恐怖心がマヒすれば退くべき時に退けません」
俺らのパーティーの中だと、そこら辺がちゃんとしてるのは……ぶっちゃけメリルだけだな。
「退くのは恥ずかしい、悔しいと思うかもしれませんが、勇気ある撤退は必要です」
「……そういう状況も考えて、冒険の準備をしないとですね」
「その通りです。モンスターと、敵と相対した時の選択肢はなにも勝つ、死ぬの二択ではありません。逃げて生き残るという選択肢もあります」
うんうん、メリル先生の言う通りだ。
つっても……そういう状況まで考えて道具を用意すると、出費が半端ないことになるけどな。
「稼いで手に入れた自分たちの欲望の為に使いたいという気持ちは解ります。しかし……死んでしまっては、その為に稼いで溜めていたお金を使えなくなります。それを考えて、行動した方が良いですよ」
それなりにやりたい事をやって生活している俺たちが言っても説得力はないかもだけど、間違ってはいないんだよな……この世界じゃ、ハンターという職業に就いていれば、死は当然の様に起こり得る現象だ。
「肝に銘じておきます……ところで、ラガスさんたちはこれから何処に向かうんですか?」
「カルパって名前の街に向かおうと思ってる」
「カルパ、カルパ…………っ!!?? あ、あのカルパですか!!!!」
そりゃ知っててもおかしくないか。
「そのカルパだ」
「…………は、ハンターとして、本当に、尊敬します」
「よせよせ、そんなお世辞使わなくても、今日の飯は奢りだっての」
そんな心配そうな顔しなくても、大丈夫だっての。
「あぁ、そうだな。元々一か所の街にそんな長く留まらないようにってタイプだからな」
魔靴の製作依頼が終了した後、ギルドからの依頼で指導を行ったルーキーたちと最後の宴会。
……なんか、こうして別れを惜しむ様な顔をしてくれると、あの出会った当初の態度はなんだったのかってツッコみたくなってくるな、マジで本当に。
「もう、墓場には潜らなくて良いんですか?」
「結構潜ったし、一番下のボス部屋もこの前また討伐したから、俺はそれなりに十分って感じだな」
ハイ・ヴァンパイアと通常種より強いケルベロスを何度も倒すとか、超あり得ねぇって顔してるな。
まっ、本気で疑ってるわけではないんだろうけど。
「五十層のボスを倒した話は前も聞いたっすけど……恐ろしくはないんっすか」
「…………どうだろうな。実際に戦って、バカみたいに強いとは感じたけど、ハイ・ヴァンパイアが持つ圧に怯んで動けなくなったりすることはなかったかな」
これに関しても、運が良かったと言うしかない。
本気になったフェリスさんと戦ったことがあるわけじゃないけど、フェリスさんほどの絶対強者はまだ見たことがない。
それに、圧ってだけなら学生自体に戦った三本角のオーガジェネラル。
あいつも負けてない。
あのオーガジェネラルの場合、ハイ・ヴァンパイアみたいな邪悪さはなく……純粋な闘気の塊をぶつけられてる感じだったけどな。
「恐怖に慣れた方が良いのか、慣れない方が良いのかってのは難しいところだよな」
「??? そういうのには慣れておいた方が良いんじゃないですか? いざって時に動けなくなるのは困るじゃないですか」
「そうだな。確かにいざって時に動けないのは困るだろう。でも、あんまり恐怖に対する感覚がマヒしたら、退かなきゃいけない時に退けなくなるだろ」
「……ラガス坊ちゃまにしては、もの凄く一般的で冷静な考えですね」
「おい、どういう意味だよ」
ったく、相変わらずからかってきやがる。
確かに色々と普通じゃねぇけど、一般的なあれこれについて考えることぐらいは出来るっての。
「ラガス坊ちゃま……今まで強敵、難敵を相手に、退くという選択肢を取ったことがありましたか?」
「……ないな。でも、それはあれだ。倒せるって、勝てるっていう自信があったからだ。そういったイメージがなきゃ、俺も……どう戦うか冷静に考えるっての」
絶対に退くかは解らないけどな。
「是非、冷静に退いて欲しいものですね……今ラガス坊ちゃまも仰いましたが、恐怖心がマヒすれば退くべき時に退けません」
俺らのパーティーの中だと、そこら辺がちゃんとしてるのは……ぶっちゃけメリルだけだな。
「退くのは恥ずかしい、悔しいと思うかもしれませんが、勇気ある撤退は必要です」
「……そういう状況も考えて、冒険の準備をしないとですね」
「その通りです。モンスターと、敵と相対した時の選択肢はなにも勝つ、死ぬの二択ではありません。逃げて生き残るという選択肢もあります」
うんうん、メリル先生の言う通りだ。
つっても……そういう状況まで考えて道具を用意すると、出費が半端ないことになるけどな。
「稼いで手に入れた自分たちの欲望の為に使いたいという気持ちは解ります。しかし……死んでしまっては、その為に稼いで溜めていたお金を使えなくなります。それを考えて、行動した方が良いですよ」
それなりにやりたい事をやって生活している俺たちが言っても説得力はないかもだけど、間違ってはいないんだよな……この世界じゃ、ハンターという職業に就いていれば、死は当然の様に起こり得る現象だ。
「肝に銘じておきます……ところで、ラガスさんたちはこれから何処に向かうんですか?」
「カルパって名前の街に向かおうと思ってる」
「カルパ、カルパ…………っ!!?? あ、あのカルパですか!!!!」
そりゃ知っててもおかしくないか。
「そのカルパだ」
「…………は、ハンターとして、本当に、尊敬します」
「よせよせ、そんなお世辞使わなくても、今日の飯は奢りだっての」
そんな心配そうな顔しなくても、大丈夫だっての。
64
あなたにおすすめの小説
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
余命半年の僕は、君を英雄にするために「裏切り者」の汚名を着る
深渡 ケイ
ファンタジー
魔力を持たない少年アルトは、ある日、残酷な未来を知ってしまう。 最愛の幼馴染であり「勇者」であるレナが、半年後に味方の裏切りによって惨殺される未来を。
未来を変える代償として、半年で全身が石化して死ぬ呪いを受けたアルトは、残された命をかけた孤独な決断を下す。
「僕が最悪の裏切り者となって、彼女を救う礎になろう」
卓越した頭脳で、冷徹な「悪の参謀」を演じるアルト。彼の真意を知らないレナは、彼を軽蔑し、やがて憎悪の刃を向ける。 石化していく体に走る激痛と、愛する人に憎まれる絶望。それでも彼は、仮面の下で血の涙を流しながら、彼女を英雄にするための完璧なシナリオを紡ぎ続ける。
これは、誰よりも彼女の幸せを願った少年が、世界一の嫌われ者として死んでいく、至高の献身の物語。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます
白い彗星
ファンタジー
魔力の溢れる世界。記憶を失っていた少女は、最強魔導士に弟子入りをする!
いずれ師匠を超える魔導士になると豪語する少女は、魔導を極めるため魔導学園へと入学する。様々な出会いが、少女を満たしていく。
しかし、平穏な学園生活を望む彼女の気持ちとは裏腹に様々な事件に巻き込まれて…!?
初めて出会う種族、友達、そして転生者。
思わぬ出会いの数々が、彼女を高みへと導いていく。
その中で明かされていく、少女の謎とは……? 果たして彼女は、師匠をも超える魔導士になれるのか!?
最強の魔導士を目指す少女の、青春学園ファンタジーここに開幕!
毎日更新継続中です。ほのぼの学園系の中にシリアスもあるよ!
小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも連載しています!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる