執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第129話 転職?

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「ふっ!!!」

「ギギャっ!?」

「シッ!!!!」

「ボギャっ!!!???」

トレントを探し始めた約三十分後、二人はゴブリンの群れと遭遇するも、バトムスは一人だけで討伐してしまった。

「良いね。素晴らしいよ、バトムス」

四体ほどのゴブリンをあっさりと一人で討伐してしまったバトムスに、シエルはお世辞ではなく称賛の声と拍手を送る。

「あ、ありがとうございます」

慣れた手つきで魔石を回収しながら、おずおずと称賛の言葉を受け取るバトムス。

(……そうだよな。一応、まだ十二歳だもんな)

忘れてはいないが、バトムスにとって慣れた戦闘相手であっても、複数体のゴブリンを圧倒出来る少年は多くない。

「うん……今の戦いを観て思ったけど、バトムスの強味は敵を倒す手札が多い。そして、流れるようにそれを使い分けられる技術だね」

「それは、そうなのかもしれないっすね」

「短剣からの裏拳、そして足技。武器と徒手格闘の技術が良い具合に混ざり合っている……錬金術と鍛冶に関しては師匠がいるって聞いてるけど、戦闘に関しても師匠がいるのかい?」

「戦闘は……どうですかね。色んな騎士の方々に教わってるんで、エルリック師匠やジョラン師匠みたいに、ザ・師匠って感じの人はいないかもしれないっすね」

「そうかそうか…………冒険者として活動してる身としては、バトムスには是非ともルーキーキラーとして冒険者ギルドに協力してほしいかな」

「へ?」

突然の提案に、バトムスは変な驚き声が零した。

「え、えっと……る、ルーキーキラー?」

「そう。ルーキーキラーだ。バトムスは以前何故冒険者として活動しようと思わないかと尋ねた時、パーズという相棒がいて……彼らがいるから、面倒が起こると答えたよね」

「そうな感じ……だったかもしれないっすね」

相棒、家族であるパーズを悪く言うつもりはない。
ただ……客観的に考えると、パーズの存在が要因となって他の冒険者たちと衝突する可能性は、非常に高い。

「でも、実際のところは違う。他の冒険者と衝突する要因の一つではあると思うけど、バトムスの戦いに関する技術はそこら辺のルーキーと比べて間違いなく数段……いや、五段かそれ以上上かな」

「…………」

「バトムスは、それはアブルシオ辺境伯家の騎士たちに教えてもらったからと思うかもしれないけど、それはあくまで武器の扱いだろう」

「一応、戦闘に……直接関わる? 技術も教えてもらいましたけど」

「武器の技術と戦闘に関する技術は異なる部分があると僕は思ってる」

魔石の回収を終えた後、移動しながら会話を続ける二人。

「武器に関する技術は、鍛錬を積めば身に付く。そして、実戦が初めて否かで差は
あると思うけど、ある程度発揮することが出来る。対して、戦闘そのものに関する技術は、知っていたから……一応訓練していても、ある程度も……三割も発揮出来ないんじゃないかな」

「…………」

普段からそこまで訓練に、実戦に取り組んでいる訳ではないため、反論や意見する考えが欠片もなく、ただ聞くしかない。

「だから、その年齢であれほど上手く戦えているのは、間違いなくバトムスの経験やセンスに関わるところだと思う。それで、君の様な人物を僕はまだ見たことがない」

「……でも、あれですよ。その……俺の友達の中に、似た様な出来る人がいますよ」

「そうだね。世界は広いだろう。でも、その友達って結構珍しい人なんじゃないかい」

「…………」

全くもって反論出来ないバトムス。

珍しい……どころではない。
バトムスが口にした友達は王族の一人。
超が最低五つは付くほど珍しい人物である。

「やっぱりね。とにかく、武器の扱いや徒手格闘。そして戦闘技術の高さは同世代の中でも群を抜いてる。年齢が上であっても、バトムスほどそこら辺が優れている人物は少ない。だからこそ、今……これから数年はルーキーキラーとして間違いなく活躍出来る」

「…………キラーってことは、心を殺すってことですか」

「そうだね。正確に言うと、少しぐらいはあるであろう自尊心、プライドかな」

今更ではあるが、シエルは冗談ではなく真面目に、バトムスに執事候補から一定期間ではあるものの、ルーキーキラーに転職してほしいと考えている。

「卵のうちに、そういったものはいらない。がむしゃらに前に進もうと、なんでも取り込もうとしてる子なら問題は無いけど、実際のところそういうった子は多くない。まぁ、色々と理由はあるんだけど……でも、そういった精神力がないと遅かれ早かれ死んでしまう」

「本当の意味で死んでしまうなら、先に心を殺しておいた方が良いと」

「そう。別に、徹底的にズタボロに、灰も残らないほど殺した方が良いと思ってない。ただ……君みたいな例外もいると知った時点で本当に折れてしまう、死んでしまうなら、そもそも冒険者という職業は合わない」

「…………」

「上を目指すことが全てだとは思ってないよ。でもね、現実を知っても……それでも上を目指すだけじゃなくても、生き残ろうとする精神力がなければ、本当にどちらにしろって話なんだ」

「っ……見抜かれてたっすか」

「ふふ、君は聡い子だからね…………だから、是非とも期間限定で、ルーキーキラーとしてギルドと契約を結んでくれないかと思ってる。まぁ、僕が思ってるだけだから、そんなに気にしたり考え込まなくて良いよ」

「…………」

直ぐに、言葉は出てこない。
ただ……バトムスは、シエルという人物がルーキーたちに対し、確かな優しさを持っていることだけは解った。
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