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第131話 雇えば良いんじゃ?
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「にしても、本当に良い対応だったよ」
バトムスがスパスパ切断した木々を拾いながら、ナシルは本日の相方に賞賛の言葉を送る。
「あざっす」
「……一応言っておくけど、お世辞とかじゃないからね。本当に良い対応だったと思ってる」
冒険者にならないのが勿体ない、とまでは言わない。
褒めたいだけで、バトムスにプレッシャーや本格的に冒険者になるんだ~~~といった圧を掛けたいわけではない。
「トレントを相手に、真正面から対応出来る十二歳はまずいないよ」
「それは……どうなんすかね」
「ふふ。でも、それだけ戦えると、ダンジョンとか気になったりしないのかい」
「ダンジョンっすか………………それはまぁ……気になりはしますね」
ダンジョン。
異空間へと繋がる扉であり、宝箱や珍しいモンスターなどといった甘い蜜で探索者たちを引き込み、ぱくりと食べてしまう魔窟、魔境。
本格的に冒険者活動をするつもりはないバトムスではあるが、それはそれでこれはこれ精神で気にはなっていた。
「まぁ、どのレベルのダンジョンを潜るかって話ではあるっすけど、パーズと組めばある程度は進めそうだと思うんで」
本当に潜るのであれば、バトムスも己の財力をフル活用し、万全な状態で挑む。
卑怯だ成金だと言われようとも、懐から大放出させて整える。
「マーサルベアの子供だったか……そうだね。後は一人か二人一緒に行動する人がいれば完璧だね」
「一緒に行動する人、か…………」
「なんだかんだで、候補はいる感じかな」
「一応いることにはいるっすね。ただ、シエルは数年後にどうなってるか解らないし」
「シエルちゃんか~。バトムスの妹分だよね」
「そうっす」
かつてバトムスが助けた先祖返りの狼人族、シエル。
彼女が巣立つまであと三年。
そこからは自由に生きるんだと、一応伝えている。
「後は、騎士候補の中に仲の良い奴がいるんですけど、後数年経てば普通に騎士として活動してそうなんで……難しいだろうな~~って」
「そうだね~~。騎士になっちゃうと、普通に毎日仕事があるだろうから……それなりにしっかりダンジョンを探索するってなると、最低でも数日間は必要になる」
ちなみにクレステントにダンジョンはないため、本当にダンジョンに潜ろうとするのであれば、ダンジョンがある街へ移動しなければならない。
その移動時間なども考えれば、どう考えても数日間では足りない。
「………………いやぁ~~~、無理っすね。うん、マジで色々と無理っす」
「……シエルちゃんがどういった選択を取るのかは解らないけど、騎士候補の子に関しては、バトムスが雇ってしまえば良いんじゃないかい?」
「……へ?」
ナシルの提案に、変な声を零してしまうバトムス。
彼が何を言ってるのか理解するのに、数十秒ほど掛かってしまった。
「いや……いやいやいや、それは……えっと…………ど、どうなん、すかね????」
「雇って、その子をアブルシオ辺境伯家の騎士じゃなくて、君の騎士にするのさ。それなら、共にクレステントを離れてダンジョンへ向かっても問題無いと思うんだけど」
「それは……そうなのかも、しれないっすけど……えっと…………」
シエルが言いたい事は解る。
ただ、現実的に考えてそんな事は可能なのかと思ってしまう。
「本当かどうかは知らないけど、バトムスはアブルシオ辺境伯とかなり仲が良いんでしょ。だから、騎士候補の一人ぐらい貰っても良いんじゃないかい?」
「…………」
「しっかり騎士としての給金を払ってれば、ちゃんとタダで貰ったとかじゃなくて、雇ったという形になるしね」
「……考えても、みなかったですね……正直、ありかなとは思いました。ただ、それでもあいつの道を決めるのはあいつ……ジョゼフ自身なんで」
ジョゼフは、バトムスの中でハッキリと友人だと断言出来る存在である。
だからこそ……シエルが提案してくれた内容に関しては、心が惹かれた。
だが、大切な友人だと思っているからこそ、自分の行動で彼の未来を縛りたくない。
「ふふ、そっか。それはそれで良いと思うけど、そのジョゼフ君に提案するだけしてみても良いんじゃないかい。もしかしたら、彼も立場上言い出せないだけで、そういう未来を望んでるかもしれない」
「…………」
「まぁ、そうするか否かを決めるのも、バトムス次第だ」
当然のことながら、バトムスの行動をシエルが強制出来るものではない。
最後は自分で決めるんだと伝え、二人はもう少し森の中を探索した。
すると、これまでとは違ってあっさりと二体目のトレントを発見。
木材はどれだけあっても困らないため、二体目も討伐。
(いやはや……こう、誘いたくなる言葉を抑えるのも辛いものがあるね)
トレントと遭遇し、戦闘が始まってからシエルはしまったという思いが零れた。
先程の会話内容から、バトムスはその事に関して考え込んでしまい、トレントの攻撃にどこかで対応が遅れてしまうのではないか。
というシエルの心配は的を得ていた……ただ、まさに杞憂。
バトムスは二度目のトレント戦も無傷で乗り切り、完璧に仕事を達成してみせた。
バトムスがスパスパ切断した木々を拾いながら、ナシルは本日の相方に賞賛の言葉を送る。
「あざっす」
「……一応言っておくけど、お世辞とかじゃないからね。本当に良い対応だったと思ってる」
冒険者にならないのが勿体ない、とまでは言わない。
褒めたいだけで、バトムスにプレッシャーや本格的に冒険者になるんだ~~~といった圧を掛けたいわけではない。
「トレントを相手に、真正面から対応出来る十二歳はまずいないよ」
「それは……どうなんすかね」
「ふふ。でも、それだけ戦えると、ダンジョンとか気になったりしないのかい」
「ダンジョンっすか………………それはまぁ……気になりはしますね」
ダンジョン。
異空間へと繋がる扉であり、宝箱や珍しいモンスターなどといった甘い蜜で探索者たちを引き込み、ぱくりと食べてしまう魔窟、魔境。
本格的に冒険者活動をするつもりはないバトムスではあるが、それはそれでこれはこれ精神で気にはなっていた。
「まぁ、どのレベルのダンジョンを潜るかって話ではあるっすけど、パーズと組めばある程度は進めそうだと思うんで」
本当に潜るのであれば、バトムスも己の財力をフル活用し、万全な状態で挑む。
卑怯だ成金だと言われようとも、懐から大放出させて整える。
「マーサルベアの子供だったか……そうだね。後は一人か二人一緒に行動する人がいれば完璧だね」
「一緒に行動する人、か…………」
「なんだかんだで、候補はいる感じかな」
「一応いることにはいるっすね。ただ、シエルは数年後にどうなってるか解らないし」
「シエルちゃんか~。バトムスの妹分だよね」
「そうっす」
かつてバトムスが助けた先祖返りの狼人族、シエル。
彼女が巣立つまであと三年。
そこからは自由に生きるんだと、一応伝えている。
「後は、騎士候補の中に仲の良い奴がいるんですけど、後数年経てば普通に騎士として活動してそうなんで……難しいだろうな~~って」
「そうだね~~。騎士になっちゃうと、普通に毎日仕事があるだろうから……それなりにしっかりダンジョンを探索するってなると、最低でも数日間は必要になる」
ちなみにクレステントにダンジョンはないため、本当にダンジョンに潜ろうとするのであれば、ダンジョンがある街へ移動しなければならない。
その移動時間なども考えれば、どう考えても数日間では足りない。
「………………いやぁ~~~、無理っすね。うん、マジで色々と無理っす」
「……シエルちゃんがどういった選択を取るのかは解らないけど、騎士候補の子に関しては、バトムスが雇ってしまえば良いんじゃないかい?」
「……へ?」
ナシルの提案に、変な声を零してしまうバトムス。
彼が何を言ってるのか理解するのに、数十秒ほど掛かってしまった。
「いや……いやいやいや、それは……えっと…………ど、どうなん、すかね????」
「雇って、その子をアブルシオ辺境伯家の騎士じゃなくて、君の騎士にするのさ。それなら、共にクレステントを離れてダンジョンへ向かっても問題無いと思うんだけど」
「それは……そうなのかも、しれないっすけど……えっと…………」
シエルが言いたい事は解る。
ただ、現実的に考えてそんな事は可能なのかと思ってしまう。
「本当かどうかは知らないけど、バトムスはアブルシオ辺境伯とかなり仲が良いんでしょ。だから、騎士候補の一人ぐらい貰っても良いんじゃないかい?」
「…………」
「しっかり騎士としての給金を払ってれば、ちゃんとタダで貰ったとかじゃなくて、雇ったという形になるしね」
「……考えても、みなかったですね……正直、ありかなとは思いました。ただ、それでもあいつの道を決めるのはあいつ……ジョゼフ自身なんで」
ジョゼフは、バトムスの中でハッキリと友人だと断言出来る存在である。
だからこそ……シエルが提案してくれた内容に関しては、心が惹かれた。
だが、大切な友人だと思っているからこそ、自分の行動で彼の未来を縛りたくない。
「ふふ、そっか。それはそれで良いと思うけど、そのジョゼフ君に提案するだけしてみても良いんじゃないかい。もしかしたら、彼も立場上言い出せないだけで、そういう未来を望んでるかもしれない」
「…………」
「まぁ、そうするか否かを決めるのも、バトムス次第だ」
当然のことながら、バトムスの行動をシエルが強制出来るものではない。
最後は自分で決めるんだと伝え、二人はもう少し森の中を探索した。
すると、これまでとは違ってあっさりと二体目のトレントを発見。
木材はどれだけあっても困らないため、二体目も討伐。
(いやはや……こう、誘いたくなる言葉を抑えるのも辛いものがあるね)
トレントと遭遇し、戦闘が始まってからシエルはしまったという思いが零れた。
先程の会話内容から、バトムスはその事に関して考え込んでしまい、トレントの攻撃にどこかで対応が遅れてしまうのではないか。
というシエルの心配は的を得ていた……ただ、まさに杞憂。
バトムスは二度目のトレント戦も無傷で乗り切り、完璧に仕事を達成してみせた。
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