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第166話 子供ではあるが、自己責任
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「そ、そこまで!!!!! 勝者、アルフォンス!!!!!!」
体に複数の穴を空けられ、止めの蹴り。
実力者である審判から見て、最後の蹴りでガルジャスの骨に間違いなくヒビは入っていた。
ガルジャスが気を失っていたとしても、独断で止めなければならなかった。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
勝者の名前が告げられた。
にもかかわらず、大歓声と拍手が送られない。
多くの意味で、決勝戦とは思えない流れとなった。
だが、一人の少年が沈黙した空気を破った。
「……」
その少年の名は……バトムス。
この場では限られた者しかしらない、アルフォンスの友人。
友人のよしみで拍手を送ったのか……それは違った。
(ちゃんと見てはいなかったけど……それでも、嘗めていたわけじゃなかったんだな)
最後のやり取りの際、急所は貫いていなかったものの、それでもアルフォンスはガルジャスに対して大ダメージといえる傷を負わせた。
それは間違いないが、ガルジャスの眼は、闘志は一切死んでいなかった。
あそこでただ細剣を引き抜き、少し後ろに下がっただけでは……双斧を振り下ろされ、形勢逆転されていた可能性があった。
(それに、なにより……親友が勝ったんだ)
なんにしても、バトムスからすれば親友が大会で優勝した。
その事実だけでも、純粋に祝いたかった。
そんなバトムスの気持ちをシエルやノウザスたちも感じ取り、同じく称賛の拍手を両者へと送る。
彼らの行動に釣られて拍手の波は広がり、これまでと変わらず満開の拍手が闘技場を包み込んだ。
「………………ありがとうございました」
その光景にアルフォンスは小さく笑みを浮かべ、深々と頭を下げてからリングを降り、姿を消した。
「ふぅーーーーーー……」
「なんか、色々と凄かったね」
「あぁ、そうだな……色々と凄かった」
アルフォンスの強さが想像以上のところまで上がっていた。
まずそれが一番の驚きだったが……追い込まれ、絶望的な状況からも諦めなかったガルジャス・ノルナーバに関しても決して小さくない驚きを感じることとなった。
「…………ねぇ、バトムス。最後アルフォンス様が蹴りを入れたのって、そうしなかったらやられてたから?」
「多分、そうだろうな。遠目からではあるけど、ガルジャス・ノルナーバの眼は死んでいなかった。少し下がるだけならあいつの双斧が届いて……予想外の出血で結果は解らなくなってかもしれない」
「バトムスと同じ意見だ。あそこで最後に蹴りを叩き込んだのは賢明な判断であり、アルフォンス様が対戦相手を見下していなかった証拠と言えるだろう」
バトムスたちだけではなく、彼らと同じく戦闘に関わる者たちも同じ意見を持っていた。
とはいえ、最後こそ満開の拍手に包まれはしたが、それでも戦闘が解らないものにとって、今回の戦いはアルフォンスの印象を大なり小なり変えてしまうものであった。
「……バトムスは、やっぱり心配?」
「…………どうだろうな。そう思う気持ちはあるけど……あいつが強いのは知ってる。それに……そうなってしまうのが解ってないとは思えない」
「だから、大丈夫ってこと?」
「……多分な」
バトムスは、決して忘れていたわけではない。
アルフォンスは……まだ十二歳の子供であることを。
王族という立場として生まれ、貴族や王族の世界で生きており、そこら辺の少年とは訳が違うと思われるかもしれないが……まだ、成人していない子供である。
(けどな、アルフォンス。目の前で見てしまった試合の輝きに眼を奪われて、本気で自分を倒そうとする相手を映さなかったのは、お前自身の責任だ)
だとしても、一部の人間からすれば看過できないであろう事をしてしまったのは間違いない。
親友だとしても、そこを擁護することはできなかった。
「さて、それじゃあ戻りましょうか」
「お嬢様に声を掛けていかなくて良いのか?」
「声を掛けてどうするんですか。どうせ負けたところを観てたのかって咬みつかれるだけっすよ」
「えっ……あれって引き分けだよね?」
シエルの言う通り、ルチアとラニエの試合は引き分けである。
だが、バトムスはなんども口戦を行ってきていたからか、シエルよりも彼女のことを解っていた。
「お嬢にとっちゃ引き分けも負けと変わらないはずだ。どうせ目を覚ましてからあの時こうしておけばって感じのことを考え続けてるだろうよ」
「そ、そっか」
「ふふ、そうかもしれないな。では、一旦宿に戻るとしようか」
今顔を合わせずとも、後日顔を合わせる機会はある。
加えて……今日は今日で、まだ予定があることをノウザスとライラは知っていた。
(……言わないように、と告げられているんだよな)
(行ってあげておいた方が良いと思うのだけど…………だめなのよね……)
二人は知っているが、バトムスは知らない。
彼らの主であるギデオンにとっては娘が活躍する大会も非常に……非常に重要ではあるが、その後に控えているイベントもこれまでの人生でトップクラスに入るほど重要な内容。
それを……バトムスは数時間後に知ることとなる。
体に複数の穴を空けられ、止めの蹴り。
実力者である審判から見て、最後の蹴りでガルジャスの骨に間違いなくヒビは入っていた。
ガルジャスが気を失っていたとしても、独断で止めなければならなかった。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
勝者の名前が告げられた。
にもかかわらず、大歓声と拍手が送られない。
多くの意味で、決勝戦とは思えない流れとなった。
だが、一人の少年が沈黙した空気を破った。
「……」
その少年の名は……バトムス。
この場では限られた者しかしらない、アルフォンスの友人。
友人のよしみで拍手を送ったのか……それは違った。
(ちゃんと見てはいなかったけど……それでも、嘗めていたわけじゃなかったんだな)
最後のやり取りの際、急所は貫いていなかったものの、それでもアルフォンスはガルジャスに対して大ダメージといえる傷を負わせた。
それは間違いないが、ガルジャスの眼は、闘志は一切死んでいなかった。
あそこでただ細剣を引き抜き、少し後ろに下がっただけでは……双斧を振り下ろされ、形勢逆転されていた可能性があった。
(それに、なにより……親友が勝ったんだ)
なんにしても、バトムスからすれば親友が大会で優勝した。
その事実だけでも、純粋に祝いたかった。
そんなバトムスの気持ちをシエルやノウザスたちも感じ取り、同じく称賛の拍手を両者へと送る。
彼らの行動に釣られて拍手の波は広がり、これまでと変わらず満開の拍手が闘技場を包み込んだ。
「………………ありがとうございました」
その光景にアルフォンスは小さく笑みを浮かべ、深々と頭を下げてからリングを降り、姿を消した。
「ふぅーーーーーー……」
「なんか、色々と凄かったね」
「あぁ、そうだな……色々と凄かった」
アルフォンスの強さが想像以上のところまで上がっていた。
まずそれが一番の驚きだったが……追い込まれ、絶望的な状況からも諦めなかったガルジャス・ノルナーバに関しても決して小さくない驚きを感じることとなった。
「…………ねぇ、バトムス。最後アルフォンス様が蹴りを入れたのって、そうしなかったらやられてたから?」
「多分、そうだろうな。遠目からではあるけど、ガルジャス・ノルナーバの眼は死んでいなかった。少し下がるだけならあいつの双斧が届いて……予想外の出血で結果は解らなくなってかもしれない」
「バトムスと同じ意見だ。あそこで最後に蹴りを叩き込んだのは賢明な判断であり、アルフォンス様が対戦相手を見下していなかった証拠と言えるだろう」
バトムスたちだけではなく、彼らと同じく戦闘に関わる者たちも同じ意見を持っていた。
とはいえ、最後こそ満開の拍手に包まれはしたが、それでも戦闘が解らないものにとって、今回の戦いはアルフォンスの印象を大なり小なり変えてしまうものであった。
「……バトムスは、やっぱり心配?」
「…………どうだろうな。そう思う気持ちはあるけど……あいつが強いのは知ってる。それに……そうなってしまうのが解ってないとは思えない」
「だから、大丈夫ってこと?」
「……多分な」
バトムスは、決して忘れていたわけではない。
アルフォンスは……まだ十二歳の子供であることを。
王族という立場として生まれ、貴族や王族の世界で生きており、そこら辺の少年とは訳が違うと思われるかもしれないが……まだ、成人していない子供である。
(けどな、アルフォンス。目の前で見てしまった試合の輝きに眼を奪われて、本気で自分を倒そうとする相手を映さなかったのは、お前自身の責任だ)
だとしても、一部の人間からすれば看過できないであろう事をしてしまったのは間違いない。
親友だとしても、そこを擁護することはできなかった。
「さて、それじゃあ戻りましょうか」
「お嬢様に声を掛けていかなくて良いのか?」
「声を掛けてどうするんですか。どうせ負けたところを観てたのかって咬みつかれるだけっすよ」
「えっ……あれって引き分けだよね?」
シエルの言う通り、ルチアとラニエの試合は引き分けである。
だが、バトムスはなんども口戦を行ってきていたからか、シエルよりも彼女のことを解っていた。
「お嬢にとっちゃ引き分けも負けと変わらないはずだ。どうせ目を覚ましてからあの時こうしておけばって感じのことを考え続けてるだろうよ」
「そ、そっか」
「ふふ、そうかもしれないな。では、一旦宿に戻るとしようか」
今顔を合わせずとも、後日顔を合わせる機会はある。
加えて……今日は今日で、まだ予定があることをノウザスとライラは知っていた。
(……言わないように、と告げられているんだよな)
(行ってあげておいた方が良いと思うのだけど…………だめなのよね……)
二人は知っているが、バトムスは知らない。
彼らの主であるギデオンにとっては娘が活躍する大会も非常に……非常に重要ではあるが、その後に控えているイベントもこれまでの人生でトップクラスに入るほど重要な内容。
それを……バトムスは数時間後に知ることとなる。
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