執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第4話 認められるのも強さ

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「偶には、のんびりするのもありだな~~~」

今日も今日とて執事見習いの仕事をサボり、ルチアから追いかけられることもなく、屋敷の庭でのんびりとした時間を過ごしていた。

「あれ、バトムス君、だよね?」

「ん? お前は………………確か、アリーノさんの息子のジョゼフ、だったか?」

「うん、そうだよ」

バトムスの休憩スペースにたまたま通りかかった人物は、自主練を終えたジョゼフ・アリーノ。

アブルシオ辺境伯家に仕える騎士の息子。

「自主練でもしてたのか?」

「うん…………僕は弱いし、才能もないから、頑張らないとさ」

「ふ~~~ん……結構、深く悩んでる感じなんだな」

「そう、かな」

バトムスにとりあえず座れよと促され、隣に腰を下ろすジョゼフ。

(……こいつって、確か俺の一個上だったか? 歳の割には結構冷静っていうか、大人びてる感じがするし……なにより、このまま見逃すのは、な)

悩んでいる。
とりあえずそれが解ったため、バトムスなりにアドバイスを送ることにした。

「俺はさ、ジョゼフが今の時点で自分が弱い、才能がない……そうやって認められてるのは、凄い事だと思うぜ」

「そ、そうなの、かな?」

まだ六歳であるジョゼフは……凄いと、褒められているという事は解る。
ただ、内容が内容なため、純粋に褒められているとは感じれなかった。

「そうだよ。だって、普通はそういうの、簡単に認められないもんだぜ」

転生者であるバトムスは、まだ前世の記憶がそれなりに残っていた。
前世では特に目立った特技はなく、頭の良さや身体能力は凡の中の凡。

クラスメートや他クラスの同級生たち、全員が夢を持っていた訳ではないが……何人かは既に明確な目標を持って努力してる者がいた。

そんなクラス、学年の中でも目立つ存在たちを見て……何の根拠もないにもかかわらず、自分には何かしらの特別な才がある……と、その者たちと自分を比べて落ち込まないように、現実から首が千切れるほど顔を逸らしていた。

「……バトムス君は、自分のことをどう思ってるの」

「俺自身か? 訓練とかに関しちゃあ……なんか、楽しさが第一優先? って感じになって、あんまり自分の事をどうこうとは考えてないかな」

これはジョゼフをこれ以上落ち込ませないための嘘ではなく、バトムスの本音だった。

「ジョゼフはさ、そうやって自分は弱い、才能がないって思ってるからこそ、さっきまで頑張って自主練してたんだろ」

「う、うん」

「なら、寧ろ他の奴らより一歩先に進んでる様に思うね」

「そ、そう、かな」

ジョゼフはバトムスが自分より一つ歳下であることは知っている。
しかし、アブルシオ辺境伯家に仕える者たちの子供たちの中で、圧倒的に異質な存在であるバトムスの言葉は……何故か信用出来る、元気付けてくれる力があった。

「だから、後は訓練をしてればダメなところを指摘されるだろ」

「うん」

「そのダメなところをちゃんと覚えて……何でも良いから木板か洋紙に残しておく。そして自主練でそこを直していって、解らないとこがあったら騎士の人たちに積極的に質問する」

「ダメなところを直して、積極的に質問をする」

「そうだ。それを繰り返していけば、ジョゼフは強くなれる筈だ」

「……ありがとう、バトムス。僕、頑張るよ!!!」

「おぅ、って……もう自主練を再開するのかよ」

バトムスからアドバイスを受け取ったジョゼフは休憩を切り上げ、ダッシュで指導役を行っている騎士の元へ向かった。

(弱くて才能がない、ねぇ……まだ子供なんだから、その差が本当に才能なのか、センスや学習能力の差なのか解らない段階。ジョゼフに才能がないとは思わないけどな~~~)

バトムスが訓練に参加する時間帯には、当然同じ戦闘が出来る執事やメイドを目指す者たち、騎士や兵士たちの子供たちもいる。

時折バトムスは他の子供たちの様子を観察しているが、個人的に頭一つ抜けてる才を持つ感じる者は……自分の兄、ハバトだけであった。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「ぃよし! 今日はここまでだ、バトムス。きっちり水分補給して、ガッツリ飯を食えよ!!」

「お、おっす」

今日も今日とて、五歳の子供に行うには、ややハードが過ぎるのでは? と感じる訓練を乗り越えたバトムス。

「バトムス、少しいいかな」

すると、笑顔が似合う騎士が声を掛けてきた。

「は、はい。大丈夫、っすよ」

「良かった」

声を掛けてきた騎士の後に付いて行き、訓練場から移動。

「ちょっと訊きたい事があってね。もしかしてだけど、うちの息子に何かアドバイスでもしてくれたかな」

声を掛けてきた騎士は、ジョゼフの父親。
最近息子が妙に明るく元気な姿を見て、何かを察した。

「自分は弱い、才能がないから頑張らないとって零してたので、寧ろそう思えてるのは凄いと。これから反省と努力を繰り返していけば問題無い、って感じな事を伝えました」

「…………そうか、ありがとう。近々、礼をさせてもらうよ」

相変わらず、目の前の少年の頭は、心はどうなっているのかとツッコミたい。

しかし、それでも最近沈み気味だった息子のジョゼフを元気付け、的確なアドバイスを伝えてくれたことに変わりはない。

後日、アリーノは宣言通り、バトムスに礼の品を送った。
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