執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第80話 ライバル?

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「シエルさんは、錬金術に興味はありませんか?」

「え、えっと……わ、解りません。それに、私はじゅ、獣人族ですし」

まだバトムスの家で暮らし始めて一か月も経っていないが、幸いにもアブルシオ辺境伯家は色々と教えてくれる者がいる。

そのため、シエルは獣人族という種族が、あまり錬金術を得意としていないという知識を得ていた。

「興味が無くとも、学ぶだけでもあなたの生活や好奇心を豊かにするかもしれません。もし、興味があればバトムスと共にいらっしゃってください」

「あ、ありがとうございます!!」

(ファエリナさん…………やっぱ優しい人だな)

エルフと獣人族は、犬猿の仲という訳ではない。
ただ、獣人族という種族があまり錬金術を得意としていないというのは事実である。
そのため、あまり勧誘する意味はない。

しかし、ファエリナはバトムスの傍にいる人物だからという関係性を考慮しての誘いではあるが、特に錬金術という分野に関して、獣人族となったシエルを下に見ることはなかった。

「ぃよう!!! バトムスじゃん!!!!!!」

「ぐむっ!!!!!?????」

「街中で会うなんて久々じゃ~~~ん!!!」

急に背後から肩を組み、胸元に押し寄せた人物は…………バトムスにとってもう一人の姉弟子、ハーフドワーフのタリアであった。

「そ、そうかも、しれませんね。それで、タリアさんはなんで、街中に?」

「親方と一緒に酒の調達よ。って、もしかして君がバトムスが前に話してた妹分ちゃん?」

「は、はい。バトムスの妹分の、シエルと申します。よろしくお願いします!!」

「うんうん、よろしくね~~~~~」

元気良く握手を交わすタリア。
その後ろから、親方であるジョランの声が届く。

「タリア、急に駆け出してビックリしたぞ」

「ごめんごめん、親方。でもさ、街中でバトムスに会うのって超久しぶりだし、それにこの前聞いた妹分のシエルちゃんもいたんだよ」

「ほぅ。そっちの娘が小僧が話しておった妹分か」

「シエルと申します。よろしくお願いします!!」

「ふむ……元気のいい娘だな」

「だよね! それと、結構強い感じだよね。シエルちゃんはさ、鍛冶とかに興味あったりしない」

「か、鍛冶ですか」

タリアがシエルに鍛冶に興味はないかと誘った瞬間、ファエリナの額に青筋が走った。

「バトムスもやってるし、偶にうちに来て色々見ていきなよ。ねっ、親方!!」

「ふむ……………そっちの娘が希望するのであれば構わんが」

ジョランにとって、バトムスはただ鍛冶について教えている弟子、というわけではない。
バトムスは師匠のジョラン、姉弟子であるタリアだけを気に入っているだけではなく、その他の弟子たち……ジョランの工房を全体的に気に入っている。

そのため、今のところ特に家や鍛冶場など以外でそこまで高い買い物をしていないバトムスは、ジョランの工房にとってパトロンの様な役割も行っていた。

そういった事情もあり、バトムスの親しき者であれば、バトムスと共に鍛冶を教えても構わないと思っていた。

「強制するのはよくありませんよ、タリア。シエルは錬金術にも興味があるようですし」

「へ?」

「な~~~に言ってんだか。獣人族の、狼人族のシエルちゃんには錬金術なんて合ってないでしょ」

「そういって決め付けるのは良くないですよ。それに、私の勘ですけど、シエルには鍛冶よりも錬金術の方が合う筈です」

「あんたの勘なんて、全然信じらんないけど」

突然、互いにガンを飛ばしながら言い合いを始めたファエリナとタリア。

(あぁ~~~~~……や~~~~っぱりこうなったか)

なんとなく、タリアが来た時点でこうなるだろうと予想していたバトムス。

「バ、バトムス。あの、二人は」

「シエルが気にする事じゃないよ。元々二人は仲が良くないんだ」

方やエルフで、もう片方はハーフドワーフ。
ハーフと言えど、ドワーフの血が流れていれば……自然と嫌悪感を感じる。

だが、エルフであるファエリナは師であるエルリックにそこら辺の感覚を全て教育されているため、今では相手がドワーフやハーフドワーフだからといって嫌悪の視線を向けることはない。

ただ……タリアは別だった。
そして、それはハーフドワーフであるタリアも同じ。

(錬金術と鍛冶だから、比べようがないって言うか、比べる意味がないというか…………まぁでも、ライバルって感じ……なのかな?)

二人とも錬金術師と鍛冶師と、互いに製作者ではある。
しかし、錬金術と鍛冶は異なる技術……だが、二人は製作者という点以外でも共通点がある。

それは系統は違うが美人で胸が大きくスタイルが良い…………ではなく、二人とも戦闘者として非常に強い。
どれぐらい強いかというと、よく冒険者たちから……なんならアブルシオ辺境伯家の騎士団や魔法師団などから「今からでも入団しないか」と無理と解っているので半分冗談ではあるが、半分本気のスカウトを受けるほどの強さを有している。

「いやはや、いつもうちの弟子がすまないね」

「いや、こっちも弟子が迷惑掛けてスマンな。ところで、良い酒が手に入ったんじゃが、空いていれば今夜一杯どうじゃ」

「おっ、良いですね」

因みに、師匠同士の中は非常に良好であった。
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