執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

文字の大きさ
81 / 166

第81話 そちらはどうなんだ

しおりを挟む
「んじゃ、エルリック師匠、ジョラン師匠。また授業の時に」

「えぇ。シエルさんも是非来てくださいね」

「おぅ。娘、お前さんも遠慮せず来いよ」

「あ、ありがとうございます!!!」

シエルはエルリックとジョランの二人に深々と頭を下げ、まだ言い争っているファエリナとタリアを無視してバトムスと共に屋敷へ帰って行った。




「ほれ」

「ふふ、ありがとう」

その日の夜、二人は昼過ぎに話した通り、ジョランの家で宅飲みをしていた。

「……うん、美味しいね」

「そりゃ良かった」

エルリックはエルフではなく、普通の人族。
そして昔の話ではあるものの、冒険者として活動していたこともあり、それなりの酒呑みだったのでハーフドワーフであるジョランが用意した酒を難無く呑める。

「にしても、小僧の奴に妹分ができるとはなぁ」

どちらも弟子にバトムスがいるため、やはり会話の種はバトムスとなる。

「意外でしたか」

「……あいつの事を理解出来る奴には、モテるだろうとは思ってた。ただ、聡いからこそあんまり小僧は自分の傍に女を置かないと思っててな」

「そうかな」

「おぅ。あいつは面倒事を嫌うタイプだろ。男を置いとくなら問題が起こる事はねぇと思うが、顔の整った女を置いとけば問題が起こることぐらいは解るだろ」

ジョランが語る通り……今のところ問題らしい問題が起こっていないが、それでもその可能性は見え隠れしていた。

「ん~~~、なるほど。そういう考え方もあるとは思うけど……でも、バトムス君はなんだかんだ言って優しい性格の持ち主だからね。そこを考えると、私はバトムス君が容姿の整った女の子を傍に置いておいても、不思議ではないと思うかな」

「…………ふん。確かに、お人好しではあるか」

工房が気に入ったから、パトロンになる。
それは何もおかしい事ではない。
小さな子供が工房のパトロンを担っているのはおかしいが、その点を除けばおかしいところはない。

バトムスがパトロンだからこそ、ジョランはバトムスから頼まれれば優先的に武器を造ると決めている。

ただ、バトムスは今のところ見返りを求めていないにも関わらず、まだ新米の弟子たちも気にかけて色々とお節介をかくことがある。

新米弟子たちからすれば、自分よりも成金のガキにお節介をかかれたところで……とはならない。
親方であるジョランが普通ではないと認めており、これに関しては大なり小なり嫉妬心を抱くが、弟子たちの中でも腕の立つタリアに気に入られている。

完全に普通ではない子供と認識されていることもあり、逆にそんな存在にお節介をかかれ、飯に誘われることなどは……新米弟子たちにとって、普通に嬉しかった。

「……それじゃあ、ゆくゆくは小僧の隣に立つのか?」

「さぁ、それはどうでしょうか。これは私の個人的な予想ですが、バトムス君はそれなりに遊びたい人だと思っています」

「それは同意じゃな」

まだ子供も子供。
大人の意味で遊ぶという言葉の内容を知っているとは思えないが、二人ともそれなりにバトムスの事を知っているからこそ、バトムスなら解っていてもおかしくないと考えている。

「鍛冶は趣味、錬金術も趣味で、ついでに戦闘や料理も趣味。となれば、ある意味で完全な遊び人となるかもしれんのう」

「はっはっは!!! 完全な遊び人、ですか……確かに、最も人生を遊び楽しめるかもしれませんね…………ところで、バトムス君の鍛冶の方はどうですか」

違う畑の事とはいえ、バトムスが鍛冶に関してどの程度まで進んでいるのかは多少気になっていた。

「まだまだガキのお遊びだ。つっても、お遊びにしちゃあ上等じゃがな」

身体強化のスキルを発動し、更に全体的な身体能力を上げるマジックアイテムを装備することで、バトムスは実際に短剣や双剣を打ち始めていた。

当然……ジョランは自分の店で売る許可など出しはしない。
ただ、刃を磨く技術は素人の域を脱しつつあり、普段バトムスが戦っているゴブリンやホーンラビットなどを相手にするのであれば、決して使えなくはない。

「そうか……順調そうでなによりだよ」

「ふん。錬金術の方はどうなんじゃ」

タリアも同じく、専門外ではあるがバトムスの錬金術に関する腕の上がり具合も気になっていた。

「ポーションに関しては、安定して初級の中位を造れるようになっているよ。集中力が良い塩梅の時は、初級の上位を造れる」

「ほ~~~ん。ポーション意外に関しちゃぁ、どうなんじゃ」

「そこら辺はまだまだ始めたばかりだから、本当にこれからってところだね。ただ、やっぱりバトムス君は本当に面白いことを考えるなと思ったよ」

エルリックは内緒だよと前置きをしながら、以前バトムスから聞いた将来的に造ってみたいマジックアイテムの内容をジョランに伝えた。

「ふっ、ふっふっふ、はっはっは!!!!! さすが小僧だ。面白い事を考えるのう。しかし、それを造りたいのであれば、鍛冶も錬金術もこれまで以上の励んでもらいたいところじゃが……小僧にとっては、言われずともと言ったところじゃろうな」

「そうですね。バトムス君ですからね」

二人の師から見たバトムスの第一共通点は……普通ではない。

だからこそ、今更自分たちがケツを叩かずとも、勝手に走り出すことは解っていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが…… この世界の文明レベル、低すぎじゃない!? 私はそんなに凄い人じゃないんですけど! スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...