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第91話 珍しく、頑張る
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「はぁ、はぁ、はぁ」
現在、バトムスは訓練場の端っこで休息を取っていた。
「どうしたんだ、バトムス。普段と違ってこう……頑張っているじゃないか」
水が入った杯を渡しながら、心配そうに先程までバトムスの相手をしていた騎士が声を掛ける。
「えっと……こう…………負けられない、戦い? が、迫ってると言いますか」
「負けられない戦い? ……ルチア様との勝負、ではないよな」
あまり大きな声では言えないものの、現状ではまだまだルチアよりもバトムスの方が上手。
ルチアもモンスターを討伐し、身体能力や魔力量を上げつつある。
そのため……パワーに関しては、バトムスと比べても見劣りしない程まで成長していた。
だが、素早さに関してはバトムスの方が一枚上手。
その差もあり、戦闘スタイルの違いが加わると、更に差が広まる。
「お嬢との、戦いに関しては、まだ……負けないでしょう」
「だよな。それじゃあ……もしかして、そろそろDランクのモンスターに挑むのか?」
あり得ない。
とてもではないが、現実的な話ではない。
Dランクのモンスターというのは、冒険者として活動している者が一人で討伐出来てようやくケツの殻が取れた一人前と呼ばれる。
ただ……バトムスが発想力も戦闘力も普通ではないことは、アブルシオ辺境伯家に仕える騎士たちの間では常識。
そんなバトムスなら、と思えなくもない。
「いや、そういう訳じゃないっす。ただ、あぁ~~~~……その、ちょっと爺ちゃんから頼まれごとをされて」
「ゼペルさんからか?」
「はい」
「ほ~~~ん…………まっ、バトムスがそれだけ頑張ってるってことは、本当に負けたくない戦いってことなんだろうな」
「はい……………ぷは~~~~~~。そういう事なんで、もう一勝負、お願いします」
「それは構わないけど、もう少し休んでからでも良いんじゃないか?」
騎士の言うことは最もである。
ただ……バトムスはそれでもと、立ち上がって木剣を構える。
「疲れてからが、本番って言うじゃないですか。それに…………絶対に、負けたくないんで」
「……分かった分かった。確かに、バトムスの言う通りだよ」
短期間の間に、激的に技術を伸ばすのは難しい。
だが、最後の最後で生まれる粘り強さなら伸ばせる。
それがバトムスの下した判断であり、騎士たちはそんな珍しく努力を積み重ねようとする少年の姿勢を見てニヤリと笑い、模擬戦相手を努めるのだった。
「んじゃ、適当にのんびりしててくれ」
「頑張って強くなってるね!!!!!!」
(いや……のんびりしててくれって言ってるじゃん)
孫たちが競い合う日程は直ぐに決まり、バトムスはゼペルと共に別の街へ向かう事となった。
その間、シエルは……面倒な問題が起こらないようにとお留守番。
シエルと同じ理由で、パーズも家で留守番である。
パーズが居るとはいえ、シエルは一人で留守番となる。
その間はのんびりしててくれと伝えたバトムスだが、シエルから帰ってきた答えはバトムスがいない間もこれまで以上に頑張る!!! という内容だった。
何故そんな答えが返ってきたのかと言うと、ここ二十日ほど……訓練場で真剣に研鑽を続けるバトムスの姿を見たのが要因だった。
バトムスとしては、今回他の孫たちを蹴散らせればそれで良いと思っているため、これからも頑張って特訓しようとは思っていない。
「……そっか。パーズ、シエルやクローゼルさんの言う事をちゃんと聞くんだぞ」
「バゥ!!」
パーズとしては……正直、自分もバトムスと共に向かいたかった。
だが、似たような立場であるシエルが大人しく留守番すると決めたことで、それなら仕方ないと諦めた。
両親や兄にも行ってきますと伝え、久しぶりに別の街へと旅立ったバトムス。
「……なんか、あれだね」
「そうだな。言いたい事は解るぞ、バトムス」
バトムスは勝手に祖父と二人で移動するのだと思っていた。
ゼペルも個人的な事情で別の街へ向かうため、馬車などを使うにしても自身の金を使って移動しようと考えていた。
しかし、いざ屋敷から出ると……何故か馬車と、数名の騎士と魔術師が待機していた。
「日頃の行いだと思ってくれて構わないよ」
というのが、ギデオンからの言葉だった。
当然、ギデオンからすれば二人を褒めているのが……本人がその場にいなかったことを考えれば、半ば強制的な善意。
(日頃の行いって……好き勝手にやってるだけなんだけどな)
日々、良い行いをしているつもりはないバトムス。
それでも断れる状況ではなく……有難い事に変わらないため、ひとまず納得するしかなかった。
「そういえば爺ちゃん。他の人の孫たちとの戦いなんだけどさ、別に騎士的な戦い方は必要ないよね」
馬車に揺れる中、バトムスは先に訊いておきたい内容を尋ねた。
現在、バトムスは訓練場の端っこで休息を取っていた。
「どうしたんだ、バトムス。普段と違ってこう……頑張っているじゃないか」
水が入った杯を渡しながら、心配そうに先程までバトムスの相手をしていた騎士が声を掛ける。
「えっと……こう…………負けられない、戦い? が、迫ってると言いますか」
「負けられない戦い? ……ルチア様との勝負、ではないよな」
あまり大きな声では言えないものの、現状ではまだまだルチアよりもバトムスの方が上手。
ルチアもモンスターを討伐し、身体能力や魔力量を上げつつある。
そのため……パワーに関しては、バトムスと比べても見劣りしない程まで成長していた。
だが、素早さに関してはバトムスの方が一枚上手。
その差もあり、戦闘スタイルの違いが加わると、更に差が広まる。
「お嬢との、戦いに関しては、まだ……負けないでしょう」
「だよな。それじゃあ……もしかして、そろそろDランクのモンスターに挑むのか?」
あり得ない。
とてもではないが、現実的な話ではない。
Dランクのモンスターというのは、冒険者として活動している者が一人で討伐出来てようやくケツの殻が取れた一人前と呼ばれる。
ただ……バトムスが発想力も戦闘力も普通ではないことは、アブルシオ辺境伯家に仕える騎士たちの間では常識。
そんなバトムスなら、と思えなくもない。
「いや、そういう訳じゃないっす。ただ、あぁ~~~~……その、ちょっと爺ちゃんから頼まれごとをされて」
「ゼペルさんからか?」
「はい」
「ほ~~~ん…………まっ、バトムスがそれだけ頑張ってるってことは、本当に負けたくない戦いってことなんだろうな」
「はい……………ぷは~~~~~~。そういう事なんで、もう一勝負、お願いします」
「それは構わないけど、もう少し休んでからでも良いんじゃないか?」
騎士の言うことは最もである。
ただ……バトムスはそれでもと、立ち上がって木剣を構える。
「疲れてからが、本番って言うじゃないですか。それに…………絶対に、負けたくないんで」
「……分かった分かった。確かに、バトムスの言う通りだよ」
短期間の間に、激的に技術を伸ばすのは難しい。
だが、最後の最後で生まれる粘り強さなら伸ばせる。
それがバトムスの下した判断であり、騎士たちはそんな珍しく努力を積み重ねようとする少年の姿勢を見てニヤリと笑い、模擬戦相手を努めるのだった。
「んじゃ、適当にのんびりしててくれ」
「頑張って強くなってるね!!!!!!」
(いや……のんびりしててくれって言ってるじゃん)
孫たちが競い合う日程は直ぐに決まり、バトムスはゼペルと共に別の街へ向かう事となった。
その間、シエルは……面倒な問題が起こらないようにとお留守番。
シエルと同じ理由で、パーズも家で留守番である。
パーズが居るとはいえ、シエルは一人で留守番となる。
その間はのんびりしててくれと伝えたバトムスだが、シエルから帰ってきた答えはバトムスがいない間もこれまで以上に頑張る!!! という内容だった。
何故そんな答えが返ってきたのかと言うと、ここ二十日ほど……訓練場で真剣に研鑽を続けるバトムスの姿を見たのが要因だった。
バトムスとしては、今回他の孫たちを蹴散らせればそれで良いと思っているため、これからも頑張って特訓しようとは思っていない。
「……そっか。パーズ、シエルやクローゼルさんの言う事をちゃんと聞くんだぞ」
「バゥ!!」
パーズとしては……正直、自分もバトムスと共に向かいたかった。
だが、似たような立場であるシエルが大人しく留守番すると決めたことで、それなら仕方ないと諦めた。
両親や兄にも行ってきますと伝え、久しぶりに別の街へと旅立ったバトムス。
「……なんか、あれだね」
「そうだな。言いたい事は解るぞ、バトムス」
バトムスは勝手に祖父と二人で移動するのだと思っていた。
ゼペルも個人的な事情で別の街へ向かうため、馬車などを使うにしても自身の金を使って移動しようと考えていた。
しかし、いざ屋敷から出ると……何故か馬車と、数名の騎士と魔術師が待機していた。
「日頃の行いだと思ってくれて構わないよ」
というのが、ギデオンからの言葉だった。
当然、ギデオンからすれば二人を褒めているのが……本人がその場にいなかったことを考えれば、半ば強制的な善意。
(日頃の行いって……好き勝手にやってるだけなんだけどな)
日々、良い行いをしているつもりはないバトムス。
それでも断れる状況ではなく……有難い事に変わらないため、ひとまず納得するしかなかった。
「そういえば爺ちゃん。他の人の孫たちとの戦いなんだけどさ、別に騎士的な戦い方は必要ないよね」
馬車に揺れる中、バトムスは先に訊いておきたい内容を尋ねた。
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