執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

文字の大きさ
97 / 176

第97話 三から一以下に

「っ、お前……俺と素手で戦るつもりかよ」

「あぁ、そうだよ」

普段から武器はロングソードを使っているバトムスだが、五体を使ったトレーニングも行っている。

転生者であるバトムスからすれば、剣や双剣、槍に弓といった武器に憧れを持つのは当然として……身体能力に関しては既に前世を越え、漫画の中だけでしか見たことがない動きを、実際に出来るようになっていた。

そのため、素手での戦闘に関してもそれなりに強い興味を持っていた。

「チっ! おい、普段使ってる武器を使わなかったからって、後から負けた時の言い訳にするなよ」

ファルトンの孫である執事候補、ファスラルの言葉は中々に鋭く、良い煽りとなっている。
執事候補としての発言としては、ややよろしくないものの、彼の祖父やシャルプたち……彼らに訓練場を貸している騎士たちも、ファスラルがまだ子供である事は十分理解している。

加えて、今回の試合がお爺ちゃんたちの自慢大会であると同時に、孫たちにとっても負けたくないバチバチの戦いになることが容易に解る。

だからこそ、ファスラルのバトムスに対する言葉は、特にモラルに反したものではない。

「ん~~~~……そっか、解ったよ。それじゃあ、普段使ってる物を使わせてもらうな」

「お、おぅ」

ただ、ここでファスラルや周りの大人たちの予想とは違う反応を取ったのがバトムス。

彼らはてっきり「言い訳を考えておいた方が良いのは、そっちじゃないのか?」といった感じの言葉を返すと思っていた。
だが、実際にはファスラルの言葉通りだなと受け取り、バトムスは木剣を取りに移動。

(なんじゃ、ファスラルと同じく素手で戦らな……っ!!! もしや、そういう意味で……はぁ~~~~~~~、ダメじゃな)

ファルトンは七対三ぐらいで自分の孫の方が不利だと思っていた。
だが、目の前で行われたやり取りをみて、三が一に……もしくはそれ以下に減ったと感じた。

とはいえ、嫌な予感を感じ取ったからといって、その内容を孫に伝える訳にはいかない。




「それでは、二人とも構えて……始め!!!」

審判を務める騎士が開始の合図を行い、それと共にバトムスとファスラル、共にその場から駆け出した。

(ぶっ潰してやる!!!!)

リーチの長さを考えれば、武器を持っているバトムスの方が有利。
しかし、まだ八歳と幼くはあるが、それを知らないファスラルではない。
だからこそ、普段自分を鍛えてくれている騎士、先輩執事、同じく体術をメインに戦う祖父からその差をクリアする技術を叩き込まれている。

「っ!!??」

だが、それに関してはバトムスも理解している。

そこでバトムスが取った行動は……ファスラルに言われて持った木剣を、投げた。

斜めに振り上げて振り下ろすと見せかけ、そのままファスラルに向けてぶん投げた。
間合いの長さによっては避けられた可能性もあるが、試合開始と同時にダッシュで距離を詰めてしまったことにより、回避という選択肢が潰された。

「おらッ!!!!!」

だがしかし!! ファスラルは魔力を纏い、左手の甲をタイミング良く動かし、迫りくる木剣を弾き飛ばした。

咄嗟の行動にしては、非常に素晴らしい対応、ナイス反射神経である。

ただ……問題があったとすれば、そこまでがバトムスの思い描いていた流れだったという事。

「ふんっ!!!!」

「がっ!!!!????」

木剣を投げた瞬間には移動し、やや潜る様にファスラルの懐に入り込み……下から押し上げ気味に左拳を腹に叩きつけた。

痛恨のボディーを食らってしまい、完全にファスラルの動きが止まってしまうのをバトムスが見逃す訳がなく……右手で襟を掴み、地面に引き下ろす。

「っ!!!??? いっ!!!???」

勢い良く地面に倒れ込み、背中を強打。
後頭部に関してはバトムスが右足を出していたため、地面に激突することはなかった。

「ふっ!!!」

「うっ!!!! ……?」

腹に背中といった順で衝撃が襲い、今度は顔に突風が襲いかかるも……衝撃波ファスラルの顔に届かなかった。

「俺の勝ち、ってことで良いですよね。騎士さん」

「あぁ、勿論だ。この勝負、バトムス君の勝ちだ」

拍手は、直ぐに零れた。
シャルプ、ゲルダンとゼペルの三人が直ぐに手を叩き、ワンテンポ遅れてガリダスとファルトンが勝者に拍手を送る。

だが、それに送れて騎士たちが拍手を送るよりも先に、少年の声が上がった。

「ま、待ってくれ!!!!!!」

手の甲が痛い、腹が痛い、背中が痛い。
それでも、少年はそれらの痛みを全て無視して立ち上がり、待ってくれと声を上げた。

これから少年が何を口にするのか、大人たちはある程度解っていた。
解っていた上で……彼ら大人は、その幼い少年の態度を責めることは、出来なかった。
感想 6

あなたにおすすめの小説

即席異世界転移して薬草師になった

黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん) 秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。 そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。 色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。 秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

死んだはずの老人魔術師が蘇りました~ワシ、2周目の人生は相棒精霊と一緒に旅に出るのじゃ~

きょろ
ファンタジー
偉大なる老魔術師ユーノリオンは今日、その人生に終わりを迎えた。 ……かに思われたが、ユーノリオンは「大精霊」の力によって生き返り、更には若返ってしまった。 『囚われている精霊達を解放してほしい──』 王族に生まれ、世間知らずなユーノリオンは生涯を「魔術」に捧げていた。 運動神経も悪く、身の回りのことは何も出来ない。 そんな若返った元老魔術師ユーノリオンは、長い付き合いであり、大精霊の力で人間の姿となった相棒ギルノートと共に、人生で初めて精霊探しの「旅」に出る。 ひょんなことから若返った魔術師の、ほのぼのスローライフな人生二周目の物語。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。