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第97話 三から一以下に
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「っ、お前……俺と素手で戦るつもりかよ」
「あぁ、そうだよ」
普段から武器はロングソードを使っているバトムスだが、五体を使ったトレーニングも行っている。
転生者であるバトムスからすれば、剣や双剣、槍に弓といった武器に憧れを持つのは当然として……身体能力に関しては既に前世を越え、漫画の中だけでしか見たことがない動きを、実際に出来るようになっていた。
そのため、素手での戦闘に関してもそれなりに強い興味を持っていた。
「チっ! おい、普段使ってる武器を使わなかったからって、後から負けた時の言い訳にするなよ」
ファルトンの孫である執事候補、ファスラルの言葉は中々に鋭く、良い煽りとなっている。
執事候補としての発言としては、ややよろしくないものの、彼の祖父やシャルプたち……彼らに訓練場を貸している騎士たちも、ファスラルがまだ子供である事は十分理解している。
加えて、今回の試合がお爺ちゃんたちの自慢大会であると同時に、孫たちにとっても負けたくないバチバチの戦いになることが容易に解る。
だからこそ、ファスラルのバトムスに対する言葉は、特にモラルに反したものではない。
「ん~~~~……そっか、解ったよ。それじゃあ、普段使ってる物を使わせてもらうな」
「お、おぅ」
ただ、ここでファスラルや周りの大人たちの予想とは違う反応を取ったのがバトムス。
彼らはてっきり「言い訳を考えておいた方が良いのは、そっちじゃないのか?」といった感じの言葉を返すと思っていた。
だが、実際にはファスラルの言葉通りだなと受け取り、バトムスは木剣を取りに移動。
(なんじゃ、ファスラルと同じく素手で戦らな……っ!!! もしや、そういう意味で……はぁ~~~~~~~、ダメじゃな)
ファルトンは七対三ぐらいで自分の孫の方が不利だと思っていた。
だが、目の前で行われたやり取りをみて、三が一に……もしくはそれ以下に減ったと感じた。
とはいえ、嫌な予感を感じ取ったからといって、その内容を孫に伝える訳にはいかない。
「それでは、二人とも構えて……始め!!!」
審判を務める騎士が開始の合図を行い、それと共にバトムスとファスラル、共にその場から駆け出した。
(ぶっ潰してやる!!!!)
リーチの長さを考えれば、武器を持っているバトムスの方が有利。
しかし、まだ八歳と幼くはあるが、それを知らないファスラルではない。
だからこそ、普段自分を鍛えてくれている騎士、先輩執事、同じく体術をメインに戦う祖父からその差をクリアする技術を叩き込まれている。
「っ!!??」
だが、それに関してはバトムスも理解している。
そこでバトムスが取った行動は……ファスラルに言われて持った木剣を、投げた。
斜めに振り上げて振り下ろすと見せかけ、そのままファスラルに向けてぶん投げた。
間合いの長さによっては避けられた可能性もあるが、試合開始と同時にダッシュで距離を詰めてしまったことにより、回避という選択肢が潰された。
「おらッ!!!!!」
だがしかし!! ファスラルは魔力を纏い、左手の甲をタイミング良く動かし、迫りくる木剣を弾き飛ばした。
咄嗟の行動にしては、非常に素晴らしい対応、ナイス反射神経である。
ただ……問題があったとすれば、そこまでがバトムスの思い描いていた流れだったという事。
「ふんっ!!!!」
「がっ!!!!????」
木剣を投げた瞬間には移動し、やや潜る様にファスラルの懐に入り込み……下から押し上げ気味に左拳を腹に叩きつけた。
痛恨のボディーを食らってしまい、完全にファスラルの動きが止まってしまうのをバトムスが見逃す訳がなく……右手で襟を掴み、地面に引き下ろす。
「っ!!!??? いっ!!!???」
勢い良く地面に倒れ込み、背中を強打。
後頭部に関してはバトムスが右足を出していたため、地面に激突することはなかった。
「ふっ!!!」
「うっ!!!! ……?」
腹に背中といった順で衝撃が襲い、今度は顔に突風が襲いかかるも……衝撃波ファスラルの顔に届かなかった。
「俺の勝ち、ってことで良いですよね。騎士さん」
「あぁ、勿論だ。この勝負、バトムス君の勝ちだ」
拍手は、直ぐに零れた。
シャルプ、ゲルダンとゼペルの三人が直ぐに手を叩き、ワンテンポ遅れてガリダスとファルトンが勝者に拍手を送る。
だが、それに送れて騎士たちが拍手を送るよりも先に、少年の声が上がった。
「ま、待ってくれ!!!!!!」
手の甲が痛い、腹が痛い、背中が痛い。
それでも、少年はそれらの痛みを全て無視して立ち上がり、待ってくれと声を上げた。
これから少年が何を口にするのか、大人たちはある程度解っていた。
解っていた上で……彼ら大人は、その幼い少年の態度を責めることは、出来なかった。
「あぁ、そうだよ」
普段から武器はロングソードを使っているバトムスだが、五体を使ったトレーニングも行っている。
転生者であるバトムスからすれば、剣や双剣、槍に弓といった武器に憧れを持つのは当然として……身体能力に関しては既に前世を越え、漫画の中だけでしか見たことがない動きを、実際に出来るようになっていた。
そのため、素手での戦闘に関してもそれなりに強い興味を持っていた。
「チっ! おい、普段使ってる武器を使わなかったからって、後から負けた時の言い訳にするなよ」
ファルトンの孫である執事候補、ファスラルの言葉は中々に鋭く、良い煽りとなっている。
執事候補としての発言としては、ややよろしくないものの、彼の祖父やシャルプたち……彼らに訓練場を貸している騎士たちも、ファスラルがまだ子供である事は十分理解している。
加えて、今回の試合がお爺ちゃんたちの自慢大会であると同時に、孫たちにとっても負けたくないバチバチの戦いになることが容易に解る。
だからこそ、ファスラルのバトムスに対する言葉は、特にモラルに反したものではない。
「ん~~~~……そっか、解ったよ。それじゃあ、普段使ってる物を使わせてもらうな」
「お、おぅ」
ただ、ここでファスラルや周りの大人たちの予想とは違う反応を取ったのがバトムス。
彼らはてっきり「言い訳を考えておいた方が良いのは、そっちじゃないのか?」といった感じの言葉を返すと思っていた。
だが、実際にはファスラルの言葉通りだなと受け取り、バトムスは木剣を取りに移動。
(なんじゃ、ファスラルと同じく素手で戦らな……っ!!! もしや、そういう意味で……はぁ~~~~~~~、ダメじゃな)
ファルトンは七対三ぐらいで自分の孫の方が不利だと思っていた。
だが、目の前で行われたやり取りをみて、三が一に……もしくはそれ以下に減ったと感じた。
とはいえ、嫌な予感を感じ取ったからといって、その内容を孫に伝える訳にはいかない。
「それでは、二人とも構えて……始め!!!」
審判を務める騎士が開始の合図を行い、それと共にバトムスとファスラル、共にその場から駆け出した。
(ぶっ潰してやる!!!!)
リーチの長さを考えれば、武器を持っているバトムスの方が有利。
しかし、まだ八歳と幼くはあるが、それを知らないファスラルではない。
だからこそ、普段自分を鍛えてくれている騎士、先輩執事、同じく体術をメインに戦う祖父からその差をクリアする技術を叩き込まれている。
「っ!!??」
だが、それに関してはバトムスも理解している。
そこでバトムスが取った行動は……ファスラルに言われて持った木剣を、投げた。
斜めに振り上げて振り下ろすと見せかけ、そのままファスラルに向けてぶん投げた。
間合いの長さによっては避けられた可能性もあるが、試合開始と同時にダッシュで距離を詰めてしまったことにより、回避という選択肢が潰された。
「おらッ!!!!!」
だがしかし!! ファスラルは魔力を纏い、左手の甲をタイミング良く動かし、迫りくる木剣を弾き飛ばした。
咄嗟の行動にしては、非常に素晴らしい対応、ナイス反射神経である。
ただ……問題があったとすれば、そこまでがバトムスの思い描いていた流れだったという事。
「ふんっ!!!!」
「がっ!!!!????」
木剣を投げた瞬間には移動し、やや潜る様にファスラルの懐に入り込み……下から押し上げ気味に左拳を腹に叩きつけた。
痛恨のボディーを食らってしまい、完全にファスラルの動きが止まってしまうのをバトムスが見逃す訳がなく……右手で襟を掴み、地面に引き下ろす。
「っ!!!??? いっ!!!???」
勢い良く地面に倒れ込み、背中を強打。
後頭部に関してはバトムスが右足を出していたため、地面に激突することはなかった。
「ふっ!!!」
「うっ!!!! ……?」
腹に背中といった順で衝撃が襲い、今度は顔に突風が襲いかかるも……衝撃波ファスラルの顔に届かなかった。
「俺の勝ち、ってことで良いですよね。騎士さん」
「あぁ、勿論だ。この勝負、バトムス君の勝ちだ」
拍手は、直ぐに零れた。
シャルプ、ゲルダンとゼペルの三人が直ぐに手を叩き、ワンテンポ遅れてガリダスとファルトンが勝者に拍手を送る。
だが、それに送れて騎士たちが拍手を送るよりも先に、少年の声が上がった。
「ま、待ってくれ!!!!!!」
手の甲が痛い、腹が痛い、背中が痛い。
それでも、少年はそれらの痛みを全て無視して立ち上がり、待ってくれと声を上げた。
これから少年が何を口にするのか、大人たちはある程度解っていた。
解っていた上で……彼ら大人は、その幼い少年の態度を責めることは、出来なかった。
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