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第101話 甘さ、ではない
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(くっ!!! どうして、ここまで)
(っ!!!! この人は、どこまで読んで)
マルダーとの戦いが終わり、その次はネルドと……最後に、ノストと試合を行ったバトムス。
双剣を使うネルドとはマルダーの時と同じく真正面から戦い、腹への肘鉄を起点として勝利。
ノストとの試合では全力で駆け、死角に二度移動するという動きで翻弄し、全力を出させずに勝利を収めた。
「これで全ての試合が終わったね。まぁ、もう既に解っているとは思うけど、勝者はゼペルの孫のバトムス君だ」
ネルドの祖父であるシャルプは、敢えてそれ以下の順位を伝えなかった。
今回の試合において、重要なのは……一位の、トップの人物のみ。
(改めて、ゼペルがあそこまで熱くなった理由が解ったよ)
(……あれで、騎士や戦士の道に興味が無いのは、本当に惜しいな)
(彼は執事や騎士の道には興味が無くとも、魔術の道に興味はないだろうか)
(なっはっは!!!!! 笑いが止まらんほど、ファスラルたちにとっては良い刺激となったのぅ)
シャルプたちは、改めてバトムスという普通ではない八歳の少年に興味を持った。
興味を持ったところで、ゼペルという壁がいることは考えればどうにも出来ないが、それはそれでこれはこれ。
同年代の戦いを学んでいる者たちと戦い、全戦全勝。
この結果には、今回の試合で場所を貸した騎士たちもバトムスという執事候補の少年に興味を持った。
「お疲れ様、バトムス君」
「どうも」
「……少し、身勝手な質問をさせてもらっても良いかな」
「? はい。答えられる質問であれば」
「ありがとう。それじゃあ、もう一度ネルドたちと戦っても、勝てるかな」
本人に、その気はない。
しかし、バトムスからすれば……挑発と捉えられなくもない質問である。
祖父ズたちからすれば、負け惜しみの様な質問だが、その質問の意図を理解しているからこそ、ゼペルも口を挟むことはなかった。
「えぇ。勝ちますよ」
「「「「っ!!!!」」」」
確かに、彼らは今回の試合……バトムスという同じく従者候補の少年に負けてしまった。
ただ……今回の戦いで、バトムスという人間がどういった戦い方をするのか、ある程度理解出来た。
次の機会があれば!!!!! 彼らが、彼女がそう考えてしまうのも、致し方ない。
幼く……幼稚かもしれないが、それでも今の彼らにとっては今の場所から、更に前に進むために必要な向上心である。
「ただ、これまでの試合の様に、最後の一手を止めることはしないかもしれません」
ネルドたちとの戦いにおいて、バトムスは最後の一手を、喉元に剣先を突き付ける。
もしくは正拳を顔の前で止めるといった形を取っていた。
全くダメージを与えていない訳ではないが、それでもバトムスはなるべく早く、そしてマルダーたちにダメージを与えないように終わらせていた。
「ふふ、そうか。となると、脚や腕の骨をボキっとおられてしまうかもしれないね」
(……傍に回復魔法を扱える者がいる、となれば……腕や脚の骨だけでは済まないだろうな)
シャルプの言葉に、ほんの僅かに体が震えた孫ズ。
しかし、四人の中でも騎士味が強いマルダーの祖父であるガリダスは、もっとバトムスの深い部分を見抜いていた。
今回の試合で、バトムスは殆どマルダーたちに攻撃を当てずに勝利を収めた。
それは……実はバトムスが甘いという訳ではない。
バトムスと彼らには、その必要がないだけの判断力や思考力があっただけ。
(必要とあれば、眼や……相手が男児であれば、容赦なく金的を狙うだろう)
実際の戦いぶりを見て、ガリダスは確信した。
バトムスという少年は本気で勝とうとすれば、容赦なく勝利を奪い取ろうと……モラルがある範囲でなんでもすると。
(騎士という立場では、疎まれる可能性がある。しかし、執事という道を進むのであれば………………本当に、惜しいものだな)
バトムスの本質を把握したガリダスは、小さく……本当に小さく、失意のため息を零した。
「さて。それでは少し時間には早いけど、お昼を食べようか」
孫たちは、全員で……特にバトムスがいる場で共に食べる気にはなれないかもしれないが、祖父ズからすれば、本気で試合に取り組んだ全員を労いたい。
そのため、有無を言わせず背中を押し、一先ず訓練場から出て行く。
「バトムス君」
「? はい」
「もし、その気があれば将来、この騎士団に入団しないか」
その流れは、もはや必然と言えた。
身体能力だけではなく、技術や思考力まで優れた存在。
騎士たちも伸びしろの幅は個人によることは解っている。
それでも、勧誘の声を掛けるなというのは……無理な話であった。
「……自分の実力を評価してくれてるのは嬉しいです。ですが、断らせていただきます」
「っ、そうか」
勧誘の言葉を掛けた騎士も、そう簡単にいくとは思わなかった。
寧ろ、断れる可能性の方が高いと……なんとなく解っていた。
それでも、実際に勧誘を行って断られた方が、諦めも付くというもの。
「やはり、執事という道に進みたいか」
「……ふふ。勘違いさせていたらすいません。自分は、その道にも興味はありません」
「そ、そうなのか?」
「はい。ただ……自分本位な性格なので、騎士や執事といった誰かの為に動くことが出来ないんです」
それでは、と頭を下げてゼペルの後を追うバトムス。
「……はは。そこまで言えて、考えられてしまうところが、そうは思えないな」
男性騎士の言葉に、同僚の騎士たちは何度も首を縦に振るのだった。
(っ!!!! この人は、どこまで読んで)
マルダーとの戦いが終わり、その次はネルドと……最後に、ノストと試合を行ったバトムス。
双剣を使うネルドとはマルダーの時と同じく真正面から戦い、腹への肘鉄を起点として勝利。
ノストとの試合では全力で駆け、死角に二度移動するという動きで翻弄し、全力を出させずに勝利を収めた。
「これで全ての試合が終わったね。まぁ、もう既に解っているとは思うけど、勝者はゼペルの孫のバトムス君だ」
ネルドの祖父であるシャルプは、敢えてそれ以下の順位を伝えなかった。
今回の試合において、重要なのは……一位の、トップの人物のみ。
(改めて、ゼペルがあそこまで熱くなった理由が解ったよ)
(……あれで、騎士や戦士の道に興味が無いのは、本当に惜しいな)
(彼は執事や騎士の道には興味が無くとも、魔術の道に興味はないだろうか)
(なっはっは!!!!! 笑いが止まらんほど、ファスラルたちにとっては良い刺激となったのぅ)
シャルプたちは、改めてバトムスという普通ではない八歳の少年に興味を持った。
興味を持ったところで、ゼペルという壁がいることは考えればどうにも出来ないが、それはそれでこれはこれ。
同年代の戦いを学んでいる者たちと戦い、全戦全勝。
この結果には、今回の試合で場所を貸した騎士たちもバトムスという執事候補の少年に興味を持った。
「お疲れ様、バトムス君」
「どうも」
「……少し、身勝手な質問をさせてもらっても良いかな」
「? はい。答えられる質問であれば」
「ありがとう。それじゃあ、もう一度ネルドたちと戦っても、勝てるかな」
本人に、その気はない。
しかし、バトムスからすれば……挑発と捉えられなくもない質問である。
祖父ズたちからすれば、負け惜しみの様な質問だが、その質問の意図を理解しているからこそ、ゼペルも口を挟むことはなかった。
「えぇ。勝ちますよ」
「「「「っ!!!!」」」」
確かに、彼らは今回の試合……バトムスという同じく従者候補の少年に負けてしまった。
ただ……今回の戦いで、バトムスという人間がどういった戦い方をするのか、ある程度理解出来た。
次の機会があれば!!!!! 彼らが、彼女がそう考えてしまうのも、致し方ない。
幼く……幼稚かもしれないが、それでも今の彼らにとっては今の場所から、更に前に進むために必要な向上心である。
「ただ、これまでの試合の様に、最後の一手を止めることはしないかもしれません」
ネルドたちとの戦いにおいて、バトムスは最後の一手を、喉元に剣先を突き付ける。
もしくは正拳を顔の前で止めるといった形を取っていた。
全くダメージを与えていない訳ではないが、それでもバトムスはなるべく早く、そしてマルダーたちにダメージを与えないように終わらせていた。
「ふふ、そうか。となると、脚や腕の骨をボキっとおられてしまうかもしれないね」
(……傍に回復魔法を扱える者がいる、となれば……腕や脚の骨だけでは済まないだろうな)
シャルプの言葉に、ほんの僅かに体が震えた孫ズ。
しかし、四人の中でも騎士味が強いマルダーの祖父であるガリダスは、もっとバトムスの深い部分を見抜いていた。
今回の試合で、バトムスは殆どマルダーたちに攻撃を当てずに勝利を収めた。
それは……実はバトムスが甘いという訳ではない。
バトムスと彼らには、その必要がないだけの判断力や思考力があっただけ。
(必要とあれば、眼や……相手が男児であれば、容赦なく金的を狙うだろう)
実際の戦いぶりを見て、ガリダスは確信した。
バトムスという少年は本気で勝とうとすれば、容赦なく勝利を奪い取ろうと……モラルがある範囲でなんでもすると。
(騎士という立場では、疎まれる可能性がある。しかし、執事という道を進むのであれば………………本当に、惜しいものだな)
バトムスの本質を把握したガリダスは、小さく……本当に小さく、失意のため息を零した。
「さて。それでは少し時間には早いけど、お昼を食べようか」
孫たちは、全員で……特にバトムスがいる場で共に食べる気にはなれないかもしれないが、祖父ズからすれば、本気で試合に取り組んだ全員を労いたい。
そのため、有無を言わせず背中を押し、一先ず訓練場から出て行く。
「バトムス君」
「? はい」
「もし、その気があれば将来、この騎士団に入団しないか」
その流れは、もはや必然と言えた。
身体能力だけではなく、技術や思考力まで優れた存在。
騎士たちも伸びしろの幅は個人によることは解っている。
それでも、勧誘の声を掛けるなというのは……無理な話であった。
「……自分の実力を評価してくれてるのは嬉しいです。ですが、断らせていただきます」
「っ、そうか」
勧誘の言葉を掛けた騎士も、そう簡単にいくとは思わなかった。
寧ろ、断れる可能性の方が高いと……なんとなく解っていた。
それでも、実際に勧誘を行って断られた方が、諦めも付くというもの。
「やはり、執事という道に進みたいか」
「……ふふ。勘違いさせていたらすいません。自分は、その道にも興味はありません」
「そ、そうなのか?」
「はい。ただ……自分本位な性格なので、騎士や執事といった誰かの為に動くことが出来ないんです」
それでは、と頭を下げてゼペルの後を追うバトムス。
「……はは。そこまで言えて、考えられてしまうところが、そうは思えないな」
男性騎士の言葉に、同僚の騎士たちは何度も首を縦に振るのだった。
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