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第106話 時間はかかるけども
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「……チッ!」
耳に、悲鳴が聞こえた。
思い出すのは、シエルと出会った日。
現在バトムスが活動している場所を考えれば、悲鳴の主は冒険者であることが予想出来る。
冒険者という盗賊やモンスターと戦うことを主な仕事とする職業に就いている者であれば、仕事中……もしくは自主探索を行っている際に、危機と遭遇して死んでしまうことは珍しい事ではない。
ただ……バトムスの耳に入った悲鳴は、若さを感じる声だった。
「ジーニスさん、良いですか」
「勿論構わないよ」
バトムスが何を考えてるのか既に把握しており、護衛担当の騎士であるジーニスは笑みを浮かべながら答えた。
「シエル」
「わ、私も大丈夫です!!!」
やや緊張感はあるものの、シエルとしても聞いてしまった以上、見過ごせないという思いが強い。
「っし、行こう」
バトムスはパーズの背に乗り、シエルとジーニスはダッシュで悲鳴が聞こえた場所へと向かった。
そして数十秒も経たないうちに、悲鳴が聞こえた現場へと到着。
その現場には……四人の冒険者と、六体のコボルトがいた。
(上位種は、一体だけか)
六対いる中で、上位種は一体のみと即座に把握したバトムスは二人に指示を飛ばす。
「シエル! 彼らを守ってくれ!!」
「了解!!!!」
「ジーニスさんはリーダーを!!」
「はいよ!!!」
今のバトムスであれば……一対一のシチュエーションであれば、コボルトリーダーの相手を出来なくもない。
だが、今はそういった事を優先する場面ではないと、重々承知している。
そのため、コボルトリーダーの相手は自分たちの中で一番強いジーニスに任せ、バトムスとパーズは残りのコボルトを相手する。
「ガァアアアッ!!!!」
「ルァアアアッ!!!!」
数では勝っているコボルトたちは怯むことなく襲い掛かる。
ただ……そんな元気一杯、殺る気一杯なコボルトたちを相手に、バトムスはいたって
冷静に対処していく。
「よっ!! っと……ふん!!!!」
「「っ!!!???」」
バトムスが取り出した獲物はロングソードではなく、両腰に帯剣していた双剣。
それらを蹴られるリスクを考慮しながらも足元に飛び込み、脚の甲を突き刺し……地面に縫い付ける。
普通の双剣であり、返しなどはないため、引き抜こうと思えば引き抜けるが、当たり前だが脚の甲を貫かれれば痛い。
その痛みと直ぐに引き抜けない状況に戸惑っている間に、パーズの爪撃がコボルトの顔面を叩き潰す。
「っ、ガァアアアアアアッ!!!!!!」
「……シッ!!!!!!」
残り三体となった内、一体はバトムスとパーズを狙うのではなく、負傷している四人を守る様に立っているシエルの元へ襲い掛かった。
コボルトの経験上、雌と思わしき人間の方が弱い。
それは……何の経験も積んでいない男女であれば正しいかもしれないが、シエルはバトムスと出会ってから毎日積んで積んで積み続けている例外。
振り下ろされる爪撃の軌道を冷静に把握しながら……槍による突きを胸部に向かって放った。
「ガっ!!!??? イ、ギ……」
コボルトが突きに対して対応出来ないタイミングで放った渾身の突きは、見事に胸部を貫き、一撃で仕留めることに成功。
「お疲れさん、シエル」
「バトムスもお疲れ様です!!!」
迫ってくる数が一体となれば、バトムスも余裕を持って相手が出来るため、最後はパーズの力を借りずに自分の力だけで首を刎ね飛ばし、討伐に成功。
「こっちも終わったぞ~~」
「ありがとうございます、ジーニスさん」
「お安い御用だよ」
六体のコボルトはバトムスたちが到着してから、一分と関わらずに制圧することに成功。
パーズが死体を引きずりながら集める中、バトムスは先程までコボルト戦っていたであろう冒険者たちの方へ顔を向けた。
「大丈夫だったっすか」
「あ、あぁ。お前らのお陰で、誰も死なずに済んだ」
リーダーであろう少年の言葉通り、四人のうち死んだ者はおわらず、死にそうな重傷を負っている者もいない。
ただ、リーダーの少年を含め、全員がそれなりの傷を負っている。
それを確認したバトムスは、アイテムバッグという見た目以上に、中に多くの物を……生物以外の物を入れることが出来るマジックアイテムの中から、四つのポーションを取り出し、少年たちに渡した。
「よかったら、飲んでくれ」
「えっ、いや……その」
「別に金を取ろうってつもりはないんで。全部自分が造ったものですし」
「そ、そうか…………ありがとう」
使っても金は取られない。
それを確認した少年は安堵し、バトムスから受け取ったポーション入りの瓶を仲間たちに渡す。
まだまだ新米のバトムスが造ったポーションではあるが、多少の時間は掛かるもののバキバキの粉々な粉砕骨折レベルの怪我でなければ治せるほど治癒力を有している。
「本当に、助かった。俺はパーティーのリーダーのイリオだ」
「バトムスです」
名乗られたから名乗り返した。
ただそれだけの事ではあるが、バトムスはパーティーのリーダーであるイリオの表情が、ややしかめっ面になるのを見逃さなかった。
「…………バトムス。お前たちのお陰で、本当に助かった。ありがとう」
とはいえ、やや間があったものの、イリオはしっかりと頭を下げ、バトムスに対して礼の言葉を伝えたのだった。
耳に、悲鳴が聞こえた。
思い出すのは、シエルと出会った日。
現在バトムスが活動している場所を考えれば、悲鳴の主は冒険者であることが予想出来る。
冒険者という盗賊やモンスターと戦うことを主な仕事とする職業に就いている者であれば、仕事中……もしくは自主探索を行っている際に、危機と遭遇して死んでしまうことは珍しい事ではない。
ただ……バトムスの耳に入った悲鳴は、若さを感じる声だった。
「ジーニスさん、良いですか」
「勿論構わないよ」
バトムスが何を考えてるのか既に把握しており、護衛担当の騎士であるジーニスは笑みを浮かべながら答えた。
「シエル」
「わ、私も大丈夫です!!!」
やや緊張感はあるものの、シエルとしても聞いてしまった以上、見過ごせないという思いが強い。
「っし、行こう」
バトムスはパーズの背に乗り、シエルとジーニスはダッシュで悲鳴が聞こえた場所へと向かった。
そして数十秒も経たないうちに、悲鳴が聞こえた現場へと到着。
その現場には……四人の冒険者と、六体のコボルトがいた。
(上位種は、一体だけか)
六対いる中で、上位種は一体のみと即座に把握したバトムスは二人に指示を飛ばす。
「シエル! 彼らを守ってくれ!!」
「了解!!!!」
「ジーニスさんはリーダーを!!」
「はいよ!!!」
今のバトムスであれば……一対一のシチュエーションであれば、コボルトリーダーの相手を出来なくもない。
だが、今はそういった事を優先する場面ではないと、重々承知している。
そのため、コボルトリーダーの相手は自分たちの中で一番強いジーニスに任せ、バトムスとパーズは残りのコボルトを相手する。
「ガァアアアッ!!!!」
「ルァアアアッ!!!!」
数では勝っているコボルトたちは怯むことなく襲い掛かる。
ただ……そんな元気一杯、殺る気一杯なコボルトたちを相手に、バトムスはいたって
冷静に対処していく。
「よっ!! っと……ふん!!!!」
「「っ!!!???」」
バトムスが取り出した獲物はロングソードではなく、両腰に帯剣していた双剣。
それらを蹴られるリスクを考慮しながらも足元に飛び込み、脚の甲を突き刺し……地面に縫い付ける。
普通の双剣であり、返しなどはないため、引き抜こうと思えば引き抜けるが、当たり前だが脚の甲を貫かれれば痛い。
その痛みと直ぐに引き抜けない状況に戸惑っている間に、パーズの爪撃がコボルトの顔面を叩き潰す。
「っ、ガァアアアアアアッ!!!!!!」
「……シッ!!!!!!」
残り三体となった内、一体はバトムスとパーズを狙うのではなく、負傷している四人を守る様に立っているシエルの元へ襲い掛かった。
コボルトの経験上、雌と思わしき人間の方が弱い。
それは……何の経験も積んでいない男女であれば正しいかもしれないが、シエルはバトムスと出会ってから毎日積んで積んで積み続けている例外。
振り下ろされる爪撃の軌道を冷静に把握しながら……槍による突きを胸部に向かって放った。
「ガっ!!!??? イ、ギ……」
コボルトが突きに対して対応出来ないタイミングで放った渾身の突きは、見事に胸部を貫き、一撃で仕留めることに成功。
「お疲れさん、シエル」
「バトムスもお疲れ様です!!!」
迫ってくる数が一体となれば、バトムスも余裕を持って相手が出来るため、最後はパーズの力を借りずに自分の力だけで首を刎ね飛ばし、討伐に成功。
「こっちも終わったぞ~~」
「ありがとうございます、ジーニスさん」
「お安い御用だよ」
六体のコボルトはバトムスたちが到着してから、一分と関わらずに制圧することに成功。
パーズが死体を引きずりながら集める中、バトムスは先程までコボルト戦っていたであろう冒険者たちの方へ顔を向けた。
「大丈夫だったっすか」
「あ、あぁ。お前らのお陰で、誰も死なずに済んだ」
リーダーであろう少年の言葉通り、四人のうち死んだ者はおわらず、死にそうな重傷を負っている者もいない。
ただ、リーダーの少年を含め、全員がそれなりの傷を負っている。
それを確認したバトムスは、アイテムバッグという見た目以上に、中に多くの物を……生物以外の物を入れることが出来るマジックアイテムの中から、四つのポーションを取り出し、少年たちに渡した。
「よかったら、飲んでくれ」
「えっ、いや……その」
「別に金を取ろうってつもりはないんで。全部自分が造ったものですし」
「そ、そうか…………ありがとう」
使っても金は取られない。
それを確認した少年は安堵し、バトムスから受け取ったポーション入りの瓶を仲間たちに渡す。
まだまだ新米のバトムスが造ったポーションではあるが、多少の時間は掛かるもののバキバキの粉々な粉砕骨折レベルの怪我でなければ治せるほど治癒力を有している。
「本当に、助かった。俺はパーティーのリーダーのイリオだ」
「バトムスです」
名乗られたから名乗り返した。
ただそれだけの事ではあるが、バトムスはパーティーのリーダーであるイリオの表情が、ややしかめっ面になるのを見逃さなかった。
「…………バトムス。お前たちのお陰で、本当に助かった。ありがとう」
とはいえ、やや間があったものの、イリオはしっかりと頭を下げ、バトムスに対して礼の言葉を伝えたのだった。
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