あわいの宦官

沖弉 えぬ

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山芒編

2東からの急使

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 賢妃けんひが住まう宮には桃の花の香りが漂う。見頃になる春はもちろんのこと、季節が過ぎても乾燥させた花や取り寄せた実を食すなり茶に入れるなりする事が多く、殿舎の隅々にまで匂いが染みついてしまっているかのようだ。
 桃の香は甘く女たちには受けが良い。しかし戊陽ウーヤンの父であり皇帝である黄雷《ホアンレイ》を除いて、女心の分からない戊陽と宦官たちにとっては桃も桜も梅もみな似たようなものだった。
 桃の花がちょうど満開を迎えた頃、戊陽は満十五を迎え、元服の儀を執り行う。間もなく母と共に後宮を出ていかねばならない歳だ。
 シェン国の妃嬪ひひんたちは男児を儲け十二歳まで育つと後宮を出る事を許される。更に長男が満十五歳になると今度は強制退去となった。新たな皇太子のための後宮を築くために入れ替えを行うのだ。
 ならば汀彩ティンツァイ城内の居所に、ひんなら紫沈ズーシェン内の親類のもとへ子と帰されるのが慣わしだ。
 しかし戊陽にとって曾祖父にあたる凱寧《カイニン》皇帝の代に大規模な地脈変動が起こり、動乱の中で嬪の位は空になった。地方から皇都へやってくるのには危険が伴うのと同時に、妃嬪の輿入れには相応の金が動くものだからだ。地脈変動は国民の五分の一を死に追いやる大災害で、各国の王を除く貴族たちも娘を皇帝の元に嫁がせるだけの力を失ってしまったのである。
 制度や嬪の階級そのものは残っているので以前よりは国力が回復してきた現在なら皇帝が望めば嬪を後宮に迎える事も出来るだろう。しかし戊陽の父黄雷は色に溺れる事を恐れて後宮の敷地の半分以上を今も空っぽのままにしてある。しかし宰相を筆頭に官吏たちに渋い顔をされたので、代案として立てられたのが第五の妃、東妃とうひであった。東妃は後宮の中で長く不遇の立場だったが、数年前に待望の皇子を産んでからは見違えるように変わっていった。
玲馨リンシン、俺はもうすぐ十五になる」
「うん」
 この日、桃の花は満開を迎えていた。風に薄紅の花びらが乗って舞い、開けた窓から時折入り込んで来ては、机に広げたままの巻子かんすを彩っていく。
「そうしたらここを出なくてはならない。お前は後宮付きの宦官だから、俺が連れて行きたくとも父上が許さないかもしれない」
「うん」
 母がいい加減な人だったので玲馨は自分の確かな年齢を知らない。だが、今は抹消された戸籍の上では十八になる。しかし子供を宦官として売るには十二歳未満である必要があったので、母によって売られる時に歳を三つ鯖読んだ。つまり周囲にはまだ十五歳、戊陽と同い年だと思われている。
 玲馨が浄身──去勢の事──したのは実年齢で十五になる歳だった。ちょうど三年前になる。戊陽の居る賢妃の宮に仕える事になったのも三年前だ。理由は戊陽の一目惚れである。賢妃の宮には同じ年頃の宦官が居なかったので、彼は友として玲馨を欲しがった。
 玲馨としては戊陽のおかげであの燕太傅イェンたいふに師事する事が出来たのだから棚から牡丹餅の如きであった。
 しかしそれも間もなく終わりが近付いている。戊陽の母である賢妃は比較的歳を召してから戊陽を産んだ。同母の兄弟姉妹はおらず、賢妃も望まなかった。近くこの宮は人が空っぽになる。
 戊陽たちが去れば玲馨は宦官としてまた別の仕事を与えられるだろう。皇子と共に机を並べるなど夢のような時を三年も過ごせた事に感謝しかなかった。
 しかし戊陽はそれに納得がいかない様だった。くしゃりと眉を顰め、唇を尖らせて、衣をぎゅっと握りしめたまま黙っている。本人の言う通り間もなく十五にもなるというのにその幼い仕草がまだまだ似合って見えるのは、玲馨が悪いのかもしれない。心の中では年下だと思っていたせいで甘やかしてきた自覚があった。
「戊陽、私は戊陽が私をまるで友のように扱ってくれて嬉しかった」
 弾かれたように戊陽が顔を上げる。玲馨も自分で何を言い出すのだろうと思いながらも、口から出るに任せて喋っていた。
「私は姓も戸籍も無く売られて来ただけの宦官だけど、この三年間は──」
 驚いて玲馨の言葉が止まる。戊陽に強い力で肩を掴まれていた。
「俺が、俺が父上を説得するから!」
「何を」
「玲馨、科挙かきょを受けろ」
「か、科挙……?」
 咄嗟に「無理だ」と否定しかけるも、戊陽のあまりに真剣な様子に声にならない。
老師先生が言っていた。玲馨なら可能性があるって」
 戊陽の言う老師は一人しか居ない。燕太傅の事だ。
 燕太傅は極めて優れた知慧を持ち更に人格者としても名高いが、いくら燕太傅であってもただの宦官如きに世辞を使うような事はないだろう。戊陽のご機嫌取りに方便を使う人でもない。
 はたと気付いて玲馨は自分の思考に待ったをかける。そうしなくてはつい浮かれてしまいそうだった。
 だって玲馨の思う燕太傅の人柄ならば、燕太傅が本当に玲馨にその才があると認めた事になるのだから。
「官吏になれ玲馨。そして俺は医者になる」
「戊陽……それ、まだ諦めてなかったのか」
 勇む戊陽を前にして、玲馨は何だか気が抜ける思いになる。
 燕太傅に教わる機会など毎度これきりだと思い勉学に励んできた。何より学ぶという事が楽しかった。その果てに待つものはただの自己満足だと思っていたのに。
 まだ、夢を見続けても許されるのだろうか。
「でも、皇子が医者になるなんて聞いた事がない。宦官だって戸籍が無いから」
「その前例を俺たちで作ればいい。なぁ玲馨。お前は俺の無二の友だ。お前には生涯傍に居てほしい」
 玲馨。
 振り絞るように出した戊陽の声はまるで希うようだった。
 桃の花弁が巻子に記した字を隠し、虫食いにしていく。
 そんな春めく季節の事だった。
 それからほんの数日後の事である。
 天泣から始まったにわか雨が全ての花を散らさんばかりに激しさを増した豪雨の日、皇帝崩御の知らせが後宮に届く事になる。





 寝台から起き上がると、懐かしい夢を見ていたような、そんな感覚だけが残っていた。
 部屋の窓からは遠目に花をつけた桃の木が見える。あの桃の木は後宮の賢妃、今は皇母と呼ばれるその人が入宮するのに合わせて庭を作り変える時に一本だけ余った物をやむなく植えた物らしい。
 桃の木は一本だと実をつけず、花は咲けども散って終わる。ただの一本では散り際もさして美しくなく、忘れ去られたようにひっそりと桃の木はそこに在った。
 玲馨はあの桃の木があまり好きではなかった。実をつけない桃には何の価値も無いという気にさせられるからだ。花で腹が膨らめば世話はないというのに。
「玲馨先輩おはようございます」
 衝立の向こうから極めて抑揚のない幼い声が聞こえてくる。彼は名を于雨ユーユーといって訳あって玲馨と同室で過ごすまだ九歳ほどの少年である。
 于雨にはまだ男としての象徴が残っている。即ち浄身じょうしんを済ませていない状態なので、後宮の中で働く事は出来ない。
 宦官になるには浄身といって必ず去勢をしなくてはならないが、宦官になる事情は様々だ。罪を犯して宮刑を執行された者、自ら望んで自宮をする者、そして十二歳までに売られてきた子供。于雨は最後に該当した。
「先に起きていたのか」
「はい。身支度は済んでおります」
 于雨より遅く起きた事など初めてではないだろうか。自分で思っていたより一ヶ月の出張が堪えていたのかも知れない。
 後輩に情けない姿を見せたようで据わりの悪さを感じながらも手早く身支度を整えていく。
「于雨、浄身の日は決まったか?」
「まだです」
「そうか……」
 ──遅いな。
 何も玲馨はさっさと切ってしまえばいいと無体な事を考えている訳ではない。浄身しなければ後宮には入れないという事情から、少し焦り始めているのだ。
 嬪が空位になって久しく、宦官の数は年々減少しており、五十年前と比較するとその総数は七割を切るという。昔と比べて宦官を希望する者自体が減っており、数を間に合わせるべく少年を浄身させる年齢も下がってきているのだが、于雨の順番はまだ回ってこないらしい。
 嘗て自分も経験した耐え難い苦痛だが、ここに居る以上は浄身しなければ外に捨てられ野垂れ死ぬだけだ。しかし玲馨の焦りはそれとは別の理由だ。
 玲馨は于雨を小杰シャオジエ付きに出来ないかと考えていた。そのためには後宮を出る前に一度でも顔を合わせておいた方が話を通しやすい。
 早晩小杰は汀彩城に宮殿を構えるが、玲馨が黄麟宮に仕えているのと同じように于雨が小杰の宮に仕えるためには、小杰から于雨を指名してもらう方法が最も平和的に済む。他は内侍監という宦官の長官に手配してもらう方法もあるが、それには内侍監の説得が不可欠で確実性に欠けた。
 とは言えいくら焦ったところでその日取りを決める権限は玲馨には無い。
「決まったらすぐに教えなさい」
「はい、先輩」
 玲馨が浄身したのは十を越えてからだった。于雨のように幼い子があんな目に遭うのかと憂う気持ちはあれど、それを押してでも玲馨は于雨と小杰を会わせておくべきだと考えていた。




 玲馨は時々まるで自分は皇帝と皇弟のあわいに生きているようだと思う事がある。
 朝議の間は皇帝付きの宦官として戊陽の傍に控え、午後は後宮で小杰の勉強を見る毎日。北玄海ペイシュエンハイに行っていたおかげで繰り返しの日々から束の間廟堂から離れていられた一ヶ月ばかりは、思わず息苦しさから解放されたような気になってしまったものだ。
 しかしそれも最初のうちだけで、北玄海での調査が一筋縄ではいかなかった上に貝で食中りを起こして酷く懲りた。あれ以上長く滞在しろと言われたらきっと目を回していただろうと思えば、やはり玲馨は宮廷でこき使われる定めなのだろう。
 このところ、朝議では専ら戊陽の後宮についての議題で持ち切りである。違う議題を取り上げてもすぐに誰かが話を戻してしまうほどで、後宮以外の話は息抜きにさえならない。戊陽が強引に終わらせるまでは好き勝手に話しているのだ。
 朝議の場で戊陽を味方する者はまず居ない。弟たちはまだ朝議に参加する年齢に足りておらず、後見する氏族もないとくれば、朝議は老人たちの茶飲み談話となるしかなかった。実際に茶は無いが。
 特に主導権を強く握っているのは、尚書令を除けば四王所縁の官吏たちだ。決定権こそ皇帝にあるように見せかけて、彼らに都合が悪ければ容赦なく突っぱねられた。
「五妃というのはいかがなものでしょうなぁ」
「はて、四妃に戻せと仰るので?」
「東西南北の王の地より、四神に選ばれし相応しい公主ひめを。これは古くよりの慣例に御座いますれば」
 四神とは沈の建国にまつわる神話で、皇都紫沈ズーシェンを中心とした時、その東西南北を守護する神の事だ。
 王とは各地の領主の事をそう呼び、沈では帝の下に地方を治める王の位を置く。帝、王、貴族、平民の順に身分が低くなる。これを殊に帝上王下と呼んだりするのだが、最近の人間は言葉すら聞いた事がないだろう。あわいが四方と中央を分断して既に七十年以上が経っているせいだ。紫沈で行う政はもはや四方に及ばなくなっている。
 沈国内が分断された頃中央での皇帝の権威は一時強まったが、凱寧皇帝の晩年の頃には四方との連携もある程度回復して四方貴族が宮廷内に増え、嬪を空位にした事によって寧ろ皇族の数が減って段々と翳りを見せていった。その煽りは、戊陽の代に至って最大になったと言えるだろう。
「しかし、今となってはクン国も見過ごせますまい」
 沈の西には昆と呼ばれる大国があり、西の東江ドンジャンは昆との外交によって四方の中で最も力をつけていると目されている。東江を治めるスー氏は戊陽が最も無視出来ない相手であり、同時に戊陽と小杰それぞれの母の生まれ故郷でもある。これが二人の背景にある確執へと繋がっていた。
「これは異なことを! 隣国のご機嫌伺いをされよと! いやはや参った。血を重んじる沈皇家が他国の公主を正妃にせよと申される」
 今それを唱えているのは紛れもなく皇族以外の人間だが。
「早まられるな。今のまま五妃とすれば良いのです。五妃の御子なれば、やがて良き地位につかれ名誉を得られましょう」
 それぞれがそれぞれに勝手な事を話すのを皇帝である戊陽はひたすら聞くに徹している。玲馨の見立てでは面倒なのが半分、余計な事を言って言葉尻を捕らえられたくないのが半分といったところだ。
 話に上っている昆だが、昆国の血というならば既に後宮に入っている。金の髪と碧の瞳が美しい東妃とうひだ。昆国と沈国の合いの子である東妃は男児を産み、第五の皇子となった息子は小杰と名を与えられた。戊陽に子が居ない今、小杰の皇位継承権は第三位とそれこそ見過ごせない位置にある。
 良き地位について名誉を得る。それは暗に皇位継承権を捨てて、皇族ではなく一臣下として皇帝に仕える未来になると言っている。継承権三位である事を軽視した発言に他ならなかった。
「五妃ではなく四妃一嬪と、嬪の位を復位させるのも手ですな。妃たちも同位ではなく一つ下に置く事で納得なさるのでは?」
「そもそも五という数が釣り合わぬのです。四神に対し五妃となると、ややもすると罰当たりでありませぬか」
 五妃に当たる東妃が後宮でどんな立場にあったかを、後宮を知らないはずの男たちが知っている。おかしな話だ。彼らはそうして昆国の公主をぞんざいにする事で自分たちは偉いのだと錯覚している。
 東妃の母は東江を拝領する蘇家に輿入れしたのだから彼女は沈国の人間であるし、蘇家領主の血を引く東妃本人なら尚更だ。けれども彼女は年寄りたちからすれば他国の公主で、その息子小杰は「あわい」なのだ。或いはどちらもあわいか。
「さて、諸侯。そろそろ出尽くしたか」
 しん、と議会が静まった時、それまで一言も口を挟まなかった戊陽が玉座から背を離した。官吏たちの視線を一手に引き受けながら戊陽は続ける。
「気が済んだのなら次の議題へ進む」
 ざわりとどよめいたのは空気だ。誰も声にしなかったが、一気に不満で満ちたのが肌で分かる。
「陛下、我々は陛下を案じているのですぞ」
「左様で御座います。陛下はまだご自身の後宮を築いておられない。さすれば陛下の後宮に相応しき公主を選出するにつけ、吐故納新であらねばと」
「吐故納新だと? ならば私はそなたらをこそ排さねばならぬな」
 ふるきを吐きて新しきをる、と言い、元は呼吸法から来た言葉である。古い物を捨てて新しい物を取り入れるという意味だ。
 老官吏たちに向かってお前たちこそ故きものだと言い放ったおかげで、今度こそ官吏の間から声が上がり俄に騒々しくなった。聞こえよがしに「賢妃の子」と漏らす者さえ居る始末だ。
 賢妃とは四番目の妃の事だ。戊陽の生母であり、東妃とは従姉妹の間柄にある。当初、この二つは逆の順番で後宮入りするという話があった。
 小杰の母東妃は蘇家の先代領主の後妻の長女だ。そして戊陽の母は先代の兄の娘だがこちらは蘇の分家筋になる。本来なら東妃の方が家格が高かったのだが、東妃には昆国の血が混ざっているとして五妃に置かれたという経緯があった。
 分家の公主と宗家でありながら異人の血が混ざった公主。当時を知る古い官吏たちからすれば戊陽の母もまた五妃と同じか、或いはそれよりも位の低い妃だという意識があるのだ。
「賢妃の子」それは皇帝はおろか国母に対し酷い侮辱を表わす言い回しである。
 しかしこうした事は今に始まった事ではなかった。沈は皇位継承権を妃の順位ではなく皇子の生まれた順番で決める以上、古くからついて回る問題の一つだ。長子を産んだ妃は息子の立太子と共に皇后となるため、妃の待遇はいかに早く男児を産むかに大きく左右されてきた。
 非難の声が外廷の外にまで漏れそうになる頃、戊陽はつとめて冷静に笏を鳴らして官吏たちを静まらせる。
「後宮の事は小杰が宮を移してから考えるものとする。故、この件については今後一切取り上げる事を許さぬ」





 朝議で戊陽がずばりと言い切ってしまった以上、さしもの古狸たちも同じ事を繰り返す事はなくなるだろう。とは言え完全に話題が消え去るはずもなく、後宮の話題は朝議から皇帝個人に移っただけの話だ。今後、宮廷ですれ違いざまに娘を姪を従姉妹をと縁談が引きも切らないだろう。寧ろ戊陽にとって今後の方が面倒になる事うけあいだ。それでも朝議で後宮を議題にするのは益が無いと戊陽は判断した。
 確かに朝議ではもっと他に話し合わなければならない事が多くある。それには玲馨も同意に違いないが。
 黄麟宮に戻るなり冠ごと頭を押さえる戊陽の姿を見ても「これで良かった」と言えるほど玲馨は冷酷ではないつもりだ。
「……頭が痛い」
「少し休まれては?」
「そうではないだろ玲馨」
 戊陽は皇帝となってからも玲馨に昔の少年の頃のような態度を求めた。始めは固辞していたのだが毎度毎度しつこくされれば、玲馨とて吝かではないのでいつしか折れてしまった。
 玲馨はちらと視線を入り口の方へ向ける。衝立で見えないがその辺りにはいつもの寡黙な宦官が控えていた。玲馨と戊陽の昔を知る彼なら聞こえた事を聞かなかった事にするだろうが、それでも極力声を下げて話を続ける。
「戊陽、ああは言っても後宮の事ちゃんと考えているんだろうな?」
「……当然だ」
 玲馨はやれやれというように額に手を当てる。
 少し不貞腐れたような顔つきや語調。ついでに指で下唇を押し上げる仕草。これは嘘をついている時の戊陽だと分かる。
「恐らくあなたの意向はほとんど無視されるだろうが、それでも相手を知っておかねば足元を掬われるぞ」
 嫌な話だ。結婚する女を疑ってかからなくてはならないのだから。
 戊陽の曽祖父である凱寧は大往生であった。しかし戊陽にとっての父黄雷と、先帝で戊陽の兄になる黄昌ホアンチャンの在位はそれぞれあまり長く続かなかった。おかげで後宮は大いに混乱した。
 黄昌の後宮に入るはずだった妃も取りやめになり、では代わりに弟の戊陽の後宮に入るかと言えばそれはそれでまずいのではないかという意見も出て妃が決まらない。しかし、兄の急逝のおかげで世継ぎがない事もまた混乱の一因となっており、それを嫌う官吏は一刻も早く戊陽に後宮を持ってほしくて仕方がないのである。
 そして父の早逝、兄の急逝で足場固めも出来ずに皇位を継いだ戊陽は皇帝としての力がさほど強くない。小杰は別として、歳の近い他の弟たちを皇帝にと考えている勢力も未だに全く居ないとは言い切れなかった。
 そうした中で後宮に入ってくる妃とはどんな女だろうか。積極的に子を望むのならまだいいが、毒薬の知識に長けた女なら? 或いは四王の一族に宿るという四神の異能を宿していたら?
 調査を怠れば自分に何が返ってくるのか、戊陽とて分からないはずはないのだと玲馨は耳の痛い話をしている。
「玲馨お前が……」
 頭が痛むのは言葉の綾ではないらしく戊陽は一瞬ふらりとよろめきながら寝台に腰掛ける。持病の頭痛が出ているようだ。
「後で薬を運ばせましょう」
 戊陽が何を言いかけたのかは訊かなかった。
「それよりも」
 戊陽は言葉を切って玲馨の手を取った。宦官である玲馨は宦官の割には育ったが、それでも戊陽の体格には劣る。手の大きさもそれなりに違って感じられた。
 力を入れて引っ張られると顔が近付く。何を求められているかをよく理解しながらも、玲馨はそっと戊陽の胸を押し返した。
「眠ってください陛下。顔色がよくありません」
「……。分かった」
 子供のように悄気げた顔をされるとその頭を撫でてやらねばという気にさせられるが、一度触れればそのまま寝台に引きずり込まれそうな気がしてどうにか堪えた。
 大人しく横臥するのを見届けてから玲馨は部屋を出ていく。やはり入り口の傍で控えていた宦官に薬を頼み、足早に宦官の宿舎へと戻った。





「于雨! 戻っているか于雨!」
 自室に騒々しく戻った玲馨にびっくりした様子で于雨が振り返った。文字の書き取りをしていたようで机に巻子と書き損じた反古紙が広げられている。
「于雨、地脈の流れを読んでくれ」
 玲馨の差し迫った様子に気圧されて言葉が飛んでいった于雨はコクリと首だけで頷いた。
 それから目を閉じるといかにも精神を集中させるような素振りをする。いや、確かに集中しているのだろうがいかんせん玲馨には于雨のような異能の力が無いので想像し難いのだ。
 この幼気な少年には、地脈の流れを読む事が出来る特別な力があった。玲馨が自分の部屋に于雨を置いているのはこのためだ。
 地脈を読むことをそのまま脈読みゃくどくと呼び、それは天賦の才と言われている。そのため于雨が見て感じている世界と同じ物を玲馨が知る事は生涯あり得ない。
 嘗て脈読は卜師たちの宮廷での大事な役割であった。しかし、凱寧皇帝の時代に史上最後の卜師となる栄建ロンジェンが凱寧の怒りを買った事で、凱寧は卜占にまつわる機関を廃止にし、在野の卜師までも捕らえて処刑したとされる。その頃は皇帝の一存で宮廷を作り変えてしまえるほどに皇帝の権威が強かった裏付けでもある。
 以来、沈には脈読の力を持つ者が一切現れないでいる。それをどうして于雨がその力を持ってこんな所に現れたのかは、玲馨にも分かっていない。ただとにかく貴重で得難い力である事と、他に漏れたら于雨も玲馨も命が無い事は確かだった。
 静かに目を閉じた于雨は一見するとただ深く瞑想しているだけに見える。例えば頭上に靄がかかったり、于雨の体が発光したり、傍目に分かりやすく脈読をしているという兆しはない。何を持ってして終わりかもよく分からず手持ち無沙汰に待っていると、漸く于雨の瞼が微かに震えてぼんやりと目を開く。
「……あっちに向かって流れています。流れる? あふれる? みたいな」
 あっち、と言って指差したのは東寄りの方角だ。そちらには山芒がある。
「それは今起きている事か? それとも地脈の動きは落ち着いてしまっているのか?」
「今です。今も動いていました。とても、大きく」
「この城の周辺はどうだ?」
「何も、いつもと同じ、です」
 于雨は言葉があまり上手くない。喋る事そのものがどうも苦手なようだ。脈読の方へ才能が取られてしまったのだろう。玲馨がやや興奮ぎみに訊いてくるのに釣られてしまうようで、ますます語彙が減ってしまっている。
 于雨の言葉は要領を得にくいが聞いた限りでは汀彩城周辺の地脈は落ち着いているようだ。戊陽が体調を崩していたので或いはこの地にまた異変があったかと身構えたが杞憂だったと安心する。いや、戊陽の事は安心出来ないが、戊陽に関しては心理的なものが大きいので玲馨がしてやれる事は限られている。
「ここでも東か……。いや、于雨、悪かった。邪魔をしたな」
「いいえっ」
 于雨は首を痛めそうな勢いで頭を振って、それから思い出したように拱手してから椅子に座り直す。
 彼の座る椅子は元は玲馨が使っていた物だ。この部屋へやってきてすぐの頃、于雨は足を痛めており床座が辛そうだったので貸していたのだが、結局そのまま于雨専用になってしまっている。
 今更返してほしいとも思わず、真面目に机に向かう于雨の頭をそっと撫でてやる。するとピッ、と于雨の体が緊張して、すぐに口元をもごもごさせた。時々見せるその仕草は嬉しいからなのだろうと、玲馨は勝手に解釈している。




 玲馨は宿舎を出る前に一度、鍵のついた漆塗りの箱を確認する。中には先日戊陽から預かった皇帝の名と印璽が捺された書簡が仕舞ってあった。
 箱の方は何年か前に戊陽より贈られた舶来品で、箱の蓋に螺鈿と金に瞬く変わった絵が施されたのが印象的だ。中に仕舞ってあるのも同じく戊陽が送った──本人は誤魔化していたが──手紙が一通だけ。それをまさかこんな形で使う事になるとは思わなかった。
 自分の命よりも重いそれをひつの中にしっかり戻したのを確認して、改めて宿舎を出ていく。
 兎にも角にも、戊陽の言うように東の地は調査が必要だろう。短い期間で度重なった皇帝の代替わりによって皇族の権威が弱まっている今、四王たちは己に不都合な事を正直に報告してくる事はない。監察官である刺史もすっかり抱き込まれてしまっていた。
 しかし調査に適した人員となるとすぐには思い浮かばない。
 地脈の流れを読める于雨は可能なら調査の人員に加えたいところなのだが、浄身を済ませるまでは難しいだろう。旅の間に順番が回ってきても、では今すぐ城に戻りますとはいかない。
 では一体誰なら──玲馨は考えながら後宮へ続く門を潜る。




 一ヶ月の不在など無かったかのように足は自然と後宮の道を進み、花の香が漂ってくると思議から醒めた。
 声がする。雑談している風ではない。何か作業をする掛け声のようだ。
 東妃の宮の庭に荷車が止まっており、複数の宦官たちが荷を運んでいた。始めは蘇家からの届き物を運び込んでいるのだと思ったが、逆のようだ。中から外へ荷を運び出している。
「おい、これは何だ?」
 下級宦官らしき一人を呼び止めて訊ねると宦官は背筋を伸ばして「はい先輩」と答える。これは東妃の居所から新居へ荷を運び出しています、と。
「新居……白蓮バイリエン宮の事か」
 代々の妃や皇子たちの居所として後宮の外にもいくつか庭付きの宮がある。そのうちの一つに白蓮宮という名の宮があり、古くは皇后の居所であった。やがて殿舎が古くなるのに合わせて皇后が別の宮に居所を移すと暫くの間使われなくなったが、東妃という新たな内官の位が出来た事で東妃の引っ越し先として再び主人を迎える事が決まった宮である。
 蓮の中でも睡蓮が美しい池が特徴で、主人が居ない間もよく管理されてきた。夏の頃になると真っ白な花冠を水辺に浮かべ、幻想的な光景を描くという。
 ちなみにこの白蓮宮の事でも官吏たちは揉めた事がある。既に使わなくなっているとはいえ嘗ては皇后の居所だったために、五妃である東妃を住まわせるのはいかがなものかと。しかしこれを戊陽は、「後宮全体を小杰の居所としてしまっても構わない」と脅す事でどうにか官吏たちを抑えた。
 そんなひと悶着あった白蓮宮には早晩東妃と小杰が移り住む事になるのだが、具体的な日取りは決まっていなかったはずだ。少なくとも小杰が十二歳になり半元服を済ませてからで、肝心の小杰はまだ十二を迎えていない。そも本来ならあと三年は居られる所を官吏たちのせいで半ば追い出すのだから、せめて半元服の儀までは官吏たちも弁えるものと玲馨は思っていた。
 そんなにも戊陽の後宮を急がせたい何某かが宮廷には居るというのだろうか。戊陽の弟を蔑ろにしてまでも。
「あの、作業に戻ってもいいですか?」
「ああ、悪かった。そうしてくれ」
 呼び止めた下級宦官は歳も若くこの事についてあまり詳しくないようだった。
 別の年長の者でも居ないかと視線を巡らせると、荷車の把手はしゅに寄りかかって退屈そうにしている宦官を見付ける。
「これらは白蓮宮に運ぶ物で間違いないか?」
 宦官は気怠げに顔を上げると値踏みするようにして視線を動かし玲馨を眺めた。
 嫌な目付きだ。自然、玲馨が相手を見る目付きも鋭くなる。
 体格は良く上背があり顔形が比較的精悍で整っているが、漂うだらしなさが台無しにしている。そのいやらしいような目付きといい、女絡みの罪で宮刑に処されたに違いない。性犯罪者は特に宮刑にされやすいという事情がある。
「あんた、小杰殿下の宦官だな?」
 あんたとぞんざいに言われて玲馨は面食らった。相手は下級宦官、玲馨は上級宦官の中でも皇帝と皇弟に仕える身分だ。殊にへりくだれとは言わないが、まるで格が違う相手に物怖じしないどころか揶揄するような雰囲気で対応されたのは初めての事だった。
 宦官は突然ふごっと鼻を鳴らすようにして笑い出す。玲馨が睨むと声はしなくなったが肩が小刻みに揺れていた。
「これは古くなった家具だよ。東妃様が同じ物を使いたいと仰せになったから、古くなった物に似せて作ろうと運び出してる」
 宦官は荷車に乗ったそれを軽く叩いて示す。布が掛けられた下には櫃のような物が見えていた。
「新居に運ぶのは、こっちとあっちじゃ建物の形が違うからだってよ。向こうに合わせてなるべく似せた物を作るためだな」
 それくらいの事は言われずとも分かる。しかし口には出さなかった。言えばこの宦官が面白がるだろう事が簡単に予想出来たからだ。
「教えてくれて感謝する。が、休んでいないでお前も仕事をしろ」
 それだけ告げて素早く踵を返す。しつこく追いかけて揶揄ってきそうな雰囲気があったがさすがに弁えていたようだ。
 出来ればもう関わりたくない類の人間だったが、下級宦官が後宮に出入りする事などそうないのでこれきりになるだろう。
 中へ入ると東妃付きの年若い宮女が家具について同じことを話して聞かせてくれた。既に下級宦官から聞いている事を伝えると、宮女は何故か少し微笑み声を下げた。理由を問うと「宦官にもあんな風に男らしい者が居るんですね」と言われ、玲馨の胸中は実に複雑になるのだった。





 玲馨が下級宦官に揶揄われていたのと同時刻。離宮の四阿あずまやにて休養していた戊陽のもとへ宦官の使いが来ていた。
「陛下、シャン家より急使が参りました」
「通せ」
「はっ」
 玲馨が一ヶ月間北玄海へ行っていた間に戊陽は離宮で過ごす機会が増えていた。戊陽がまだ皇弟だった頃の居所で、皇位を継いでからは母だけが暮らしている。
 庭には母が好きな桃の木が植わっており、花の見頃を迎えた今時分、四阿の方まで芳香が風に乗り流れてくる。良い香りだと思うが、桃は香りを楽しむより食べて味わう方が好きだ。
 それにしても──。
「向家か」
 わざわざ離宮にまで報告しにくるのだから余程の「急使」なのだろう。明日の謁見を待てなかったという事だ。或いは取り次いだ宦官が事情を掻い摘んだところ、疾く陛下に報告すべしと判断したか。
 少しと待たず宦官に案内されて訪れた向家の使いには疲労が色濃く窺えた。
「陛下に向家領主から急ぎお伝えしたき儀が御座います」
「申せ」
 使者は書を広げて内容を読み上げる。
 東の山岳地帯にて大規模な地盤沈下が発生。場所は山芒軍の駐屯地で多くの兵が巻き込まれ、救助活動が思うように進行せず、兵力の大幅な減少が見込まれる。また、兵の減少によって東の国境が手薄となる見込みである。疾く救援を要請す。
 窮状と言って差し支えない内容に戊陽の表情が曇る。
「……軍を動かす必要があるか。リー将軍を呼んで参れ。それと」
 ──玲馨をここへ。
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養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
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