あわいの宦官

沖弉 えぬ

文字の大きさ
3 / 44
山芒編

3あわい

しおりを挟む
 五十人程度で構成された一団が日も上りきらぬ早朝に列を成してそぞろ歩く。京師紫沈ズーシェンの東方に位置する山芒シャンマンの地理に明るい歩兵が先導し、後方には荷を乗せた馬車がいくつも続いていた。
 隊の中央には甲冑姿の戊陽ウーヤン黒馬こくばを操り晴れやかな顔で東の空を見遣っている。
 まがり間違っても「旅は良いな!」などと発言してはならない事は戊陽も重々承知しているだろう。しかし手でひさしを作り、今まさに地平線から顔を出そうという朝日を眺めるその横顔は、あまりに清々しかった。
 シェン国の首都である紫沈にそびえ立つ汀彩ティンツァイ城から、山芒まではおおよそ六日の旅程になる。到着する頃には一体どれだけが妖魔ようまの被害に遭うか知れないと思うと、玲馨リンシンはとても戊陽のようにはしていられなかった。何も戊陽を責めようというのではない。彼には、彼の事情がある。
 しかし、思い返す傭兵を雇っての北玄海ペイシュエンハイとの往復はそれは過酷なものだった。玲馨の表情が険しくなる。
 出来れば戊陽には城に残っていてほしいというのが玲馨の本音だ。軍さえ派遣していればシャン家とて文句はつけられない。だが戊陽という人間はそれをしないと玲馨はよく知っていた。
 玲馨は過去に戊陽に命を救われた事があった。自分も反動で床に臥すと知っていながら戊陽はあの時我が身を顧みようとはしなかった。
 皇帝になったところで、戊陽のそういう本質の部分は何一つ変わっていない。だからこそ戊陽は現在、眼前に広がるあわいの旅路を見て気概に満ちているのだ。己の力を発揮出来る機会があれば、戊陽は出し惜しみをしない。彼の嘗ての夢は医者だったのだから。
 玲馨に出来るのは、この先何も起こらなければいいと願う事だけだ。




 話は少し遡る。皇帝自らが東への行軍に参加するその三日ほど前だ。
 向家から訪れた急使が告げた危急の内容は戊陽によってすぐさま禁軍を預かる李孟義リーモンイー将軍へと伝えられ、山芒へ災害派遣する救援部隊が皇都を守る禁軍によって編成された。その中に皇帝の名があるのを見て事後報告された宰相はさぞや頭を痛めた事だろう。お飾りの宰相とは言え気の毒である。
 沈の皇族には稀に天帝よりやしの力を授かって生まれてくる者がいる。その異能は病も毒も外傷も、体を巡る気と大地に流れる地脈の力を借りて癒す事が出来るというものだ。戊陽はその天賦てんぷに恵まれて、幼少の頃にはせっかくの力を活かすために医者になりたいと願っていた。
 近親者の中では戊陽を除くと彼の曽祖父である凱寧カイニンもその力を持っていたとされる。
 癒しの力は沈国の勃興ぼっこうに由来しており歴史は古い。その当時から「天帝に力を授かりし君子はその恵みを惜しむ事なく分け与えよ」という教えが代々の皇族たちに伝わっている。これを違える事は即ち天に背く事になるので、いかに戊陽が権威無き皇帝といえどこれに異を唱える者はなかった。
 そうして晴れて玉座から逃げ出してくる事に成功した戊陽は、馬を駆り広い空を見上げては上る朝日に感謝するのである。




 この行軍に玲馨が随行しているのは山芒で起きた事故とは別件であった。北玄海の件だ。
 玲馨には北玄海へ連なる川の調査という使命があり玲馨はその人員を探していたところだったのだが、三日前に離宮に呼びつけられた玲馨は戊陽の編成する救援部隊に混ざるよう言われたのである。
「しかし陛下、宦官が城を離れるなど」
「北玄海にも行ってきたお前の言葉とは思えぬな」
 戊陽の口ぶりはどこか拗ねた子供のようである。小杰の姿と重なって見えたと言えばその幼い振る舞いも改めようとするだろうか。
 玲馨は少し考えて、言わない事に決める。別に戊陽のこうした振る舞いを煩わしいと感じた事はない。
「それは、他に人手がなかったからで」
「今回はあると? ならばその者の名を申してみよ」
 四阿あずまやで悠然と座る戊陽は、言葉に詰まった玲馨を見て微かに頬を緩めた。
「あわいの護衛を雇うのは高いし面倒だろう。玲馨の供をした文官は、民間の傭兵は質が悪いと嘆いていたと聞いたぞ」
 正確には文官のお供を玲馨がしたのだが、今年から宮廷に出仕するようになった年若い──しつこいようだが玲馨より年嵩の──文官が、地方で役に立つかと言えば否である。
「諸々手間が省けるのだ。納得してくれるか、玲馨」
「はい、陛下……」
 川の調査には自ら赴くのが手っ取り早いのはもちろんのこと、戊陽も行軍に参加するというので玲馨の気持ちとしては随行したいのだ。しかし、こうして困惑するのには玲馨が赴く訳にはいかない相応の理由があるからだった。
 玲馨は戊陽にだけ仕えている訳ではない。半分は第五皇弟の小杰シャオジエにも仕えている。ただでさえ一ヶ月も後宮を空けて東妃には警戒されているというのに、すぐにまた東へ発つとなると東妃からの評価は今度こそ地に落ちてしまうような気がしてならないのだ。
 加えて于雨ユーユーの事もある。于雨にはどうにかして小杰が後宮に居る間に会わせたいが、下級宦官まで使って家具を運び出していた事を思うに、こちらもいよいよ手段を選んでいる場合ではなくなってきている。
 いっそさも浄身済みかのように装って于雨を後宮まで連れてきてしまおうか。
「玲馨、玲馨!」
 間近で名前を呼ばれてはっとする。何だか温かいと思ったら、戊陽に手を握られていた。一度考え事をし始めるとついつい周りが見えなくなるのは玲馨の悪い癖だ。
「北から戻ったばかりだしな。疲れが溜まっているのか?」
 真摯な眼差しが玲馨の胸をちくりと刺す。悪い事を考えていたとは言えない。
「いえ……。少々考え事を」
「何を考えた? 申せ、私が力になる」
 温かくて力強い手は「戊陽」という彼の名を象徴的なものにさせるようだ。
 ──なぜ、この人が天子になどならねばいけなかったのか。
 代々の天子はその名に黄を冠してきた。戊陽の父は黄雷ホアンレイといい、その長男には黄昌ホアンチャンと名付けられている通り天子たる証である。
 黄という字は太陽の比喩だが、次男である戊陽には当然黄の名は与えられていない。その代わり太陽から一字取って「戊陽」と名付けたのは、彼に癒やしの力が備わっていたためなのだろうか。名の由来など聞かされていないが、そうだとしたらこんなに皮肉な事はない。
 父、そして兄を失い本来にはない位にいたまがい物の太陽。
「……山芒の調査ですが、私一人では少々不安が。他にせめて二人ほど手伝ってもらえればと考えておりました」
 戊陽の手が離れていく。隙間に吹き抜けた春風はほんの少し冷たい。
 戊陽は顎に手を当て低く唸るとポンと一つ手を打った。
「土地勘のある者が必要だろう。それは将軍に訊いておく。もう一人は手足としてお前が使いやすい者だな」
 後者に関しては心当たりがあるようで、戊陽は「手筈が整ったらお前と会わせよう」と言う。
 戊陽の決める事に文句は無いので、その代わりに頭に浮かんだ非常に重たいについて話す事にする。
「陛下、先日預かった勅命を記した書簡はお返し致します」
 結局戊陽が調査の人員を決めてしまったので、書簡は無用の長物となった。なのであんな物はさっさと返して安心したかったのだが戊陽は緩く左右に首を振る。
「良い。持っていろ」
 戊陽は無慈悲だ。
「難しい顔をするな玲馨。使う気が無いならお守りだとでも思えば良い」
 寧ろ「お守り」をどうやって守り通すかに頭を悩ませなくてはならないだろう。本末転倒である。
 話が一段落ついたところで折よく李将軍が訪れる。ふさふさとした顎髭を生やした四十路の男は玲馨を一瞥しただけですぐに興味をなくしたようだった。宦官とは皇帝の所有物なので李将軍の反応は正しい。幼少から何度も顔を合わせているが、直接話した回数は片手で足りるだろう。
 とにかく想定外の事態にはなったが、禁軍で編成される救援部隊に同行出来るなら、預かっている山芒の件も自分で人手を集めてくるよりずっと早く解決するはずだ。
 それからの三日間は東妃にとりなして小杰のご機嫌取りをしていたらあっという間に過ぎていき、于雨をどうにかして後宮に忍ばせる事は結局叶わなかった。




 話は現在へと帰ってくる。禁軍兵に混ざり玲馨も無言で歩を進めていた。
 紫沈と地方を結ぶの街道を通る時には、いくらか知識をつけて挑む必要がある。
 まずあわい棲む妖魔は日中には姿を現さない。奴らは日が沈む頃から活動し始め、また日の出と共にどこぞへと帰っていく。
 次に夜間は必ず交代で見張りを立てなくてはならない。
 そして天幕を中心に妖魔除けの薬をいて安全を確保する事。それでも襲ってくるならその時は戦って追い払うなり倒すなりしなくてはならなかった。
 各地の街道はおよそ七十年ほど前から妖魔の恐怖に怯えなくてはならなくなった。領地間を行き交う行商人たちは自分たちで護衛を雇うようになり、傭兵業を営む者が増えた。宦官を希望する者の減少にはこれがひとつ絡んでいる。他にも城下の町で自警団を組織する許しを与えているため、そちらにも働き手が取られていった。
 日が暮れ始める前に天幕を張り終えると、玲馨は戊陽の居る天幕を訪ねた。天幕の入り口に立っていた兵士に名を告げるとすぐに中へと通してくれる。
「陛下、お呼びでしょうか」
 皇帝が過ごす天幕の中は縄で吊るした布が間仕切りの代わりにされていた。もちろん宮女はついて来ないので着替えは自分でするか同行している宦官に手伝わせるのだが。
「ああ、来たな玲馨。まぁ待て」
 戊陽の声は仕切り布の向こうから聞こえてくる。てっきり着替えを手伝わせられるものと思ったが、玲馨は戊陽とは別件で随行しているという建前がある以上そのつもりはないらしい。
 待てと言われてからそう経たないうちに、丈の短いほう姿の戊陽が仕切り布を捲って出てくる。初めて皇帝として袞衣こんえ──礼服の事──を纏った時、「全身が重い。礼服を身軽な袍に替える法を出したい」と嘆いていた事を思い出した。間仕切りの向こうから出てきたのは戊陽一人で無口な宦官は居ないようだ。
「玲馨だけか?」
「はい」
 夜の天幕に二人きり──。思わず意識してしまった次の瞬間、まるでそれを咎めるかのように外から兵士の声がして玲馨は人知れず息を吐き出した。
「誰か入って来るようです」
「ああ」
 何故か戊陽は玲馨を見てうっすらと笑った。その表情がどうにも悪戯めいて見え、嫌な予感を覚える。そして戊陽の表情の意味はすぐに分かる事になった。
「入りますよー」
 その声にはどうにも聞き覚えがあるような気がして玲馨の柳眉が歪んだ。
「えー、この羅清ルオチン、皇帝陛下にお呼ばれしてー……ん? この言い方だとおかしいか?」
 簡素な椅子に腰を下ろした戊陽がふっと吹き出す。馬鹿にした風ではない。好意的なそれだ。
 戊陽は玲馨にも座れと椅子を示し、入り口で律儀なフリをして待っている男にも「入れ」と声を掛けた。
「失礼つかまつりまする」
「お前は言葉の意味を分かって言っておらぬだろう、メイ
「へへ、バレました?」
 入ってきた男が取り繕っていたのはほんの短い間だけだった。さっと姿勢を崩した男は、いや宦官は、へらりとだらしなく笑って遠慮なく余った椅子に腰を下ろした。
 玲馨は二重の意味で驚き、声も出せずに宦官を凝視する。
 やはり知っている下級宦官だった。名前は今初めて聞いたが、この見目がそこそこよく出来た不遜な男を忘れるはずもなかった。その上戊陽と知り合っているとは、実に嫌な巡り合わせだ。
「それで? 陛下、一体俺は何でこんな軍人たちのお散歩に付き合わされてるんです?」
「散歩ではない。救援部隊だ。災害のあった地方の支援に向かうのだ」
「それは俺も手伝わせられるんで?」
「いや違う」
 つい、と戊陽の視線が動き玲馨を捉える。戊陽と視線が交錯し、そうかそういう事かと説明されるより先に事態を把握した玲馨は今から頭を抱えたくなった。
「んー……? あんた、この間後宮で会った」
「玲馨だ。戊陽陛下と小杰殿下に仕えている」
「へぇ! 驚いた! 皇帝陛下と皇弟殿下の両方に仕える宦官なんざ聞いた事ないぜ!」
「声が高いぞ、梅」
 戊陽に窘められると大きな背中を丸めて申し訳なさそうに謝罪する。が、すぐに気を取り直して嫌な笑いを口元に宿すと、玲馨をあの値踏みするような目で見遣った。
「もしかして俺はこちらのお嬢さんのお供をするんですかね?」
 下品だ。顔付きも言葉遣いも全部。
 苦手だと思うと止まらなくなるので堪えていたがどうにも無理そうだ。そして同時に、戊陽の好みそうな性格をしている事にも気付いていた。
 下品には違いないが、湿っぽくなくて場の空気を明るくさせるような陽気さがある。梅のカラッとした気質は、元来明朗快活とした戊陽とは相性が良さそうだ。
「お前がさっき名乗ったのは、捨てた名か」
 揶揄からかいを完全に無視して返すと、梅は目を丸くした。
「羅清か? そうそう、竿と玉がぶら下がってた頃の名よ。今はただの梅だ。梅梅メイメイって可愛く呼んでくれていいぜ」
 ──戊陽は何でこんな奴を……!
 元々戸籍の無かった者はさておき、一般的には宦官になる時に戸籍と共に名を返し新たに名をつけて晴れて王の所有物と見做みなされる。故に宦官は以前までの名を名乗ってはいけないのだが、戊陽への態度といい物事の道理を道端の石ころのように見ているこの男には関係ないらしい。
「陛下、既に山芒に詳しい者は手配して頂いております故、この者の供は不要で御座います」
「まぁそう言うな」
「そうそう仲良くやろうぜ玲馨先輩」
 片目を閉じた梅のその目玉に指を突き立ててやりたい衝動を堪え、玲馨は努めて冷静に「不要です」と繰り返した。
 それでも尚食い下がるならと物騒な事を考え始めた玲馨だったが、さしもの梅も肩を竦め戊陽の反応をうかがった。
「ふむ……。そこまで言うなら山芒までの残りの道程を共にしてから決めるといい。到着後にやはり要らぬというなら梅はこちらで貰い受けよう」
「その時は、俺も救援とやらをすればいいって事ですかい?」
「そうなるな」
「ま、俺ぁどっちでも構いませんがね。飯が食えて、時々楽が出来りゃ何だって。ついでにパオが元の通りにくっつく妙薬なんてのが、山芒にあれば最高なんですがねー」
「そんな物があったらお前は刑のやり直しになるかもしれないな」
「ひえ! 怖ぇ事言わないで下さいよ!」
 悲鳴を上げながら股間を押さえてみせる梅に戊陽がははと笑い声を上げる。玲馨は笑えなかったばかりか頭痛さえしてくるようだった。





 一日目の夜、事は皆が寝付いてから一時辰約二時間が過ぎた頃に起きた。
 隊列後方、積荷を乗せた荷車が集合していた場所でフッ……、と風も無いのに篝火が消えた。今夜は雲が薄く月明かりだけで十分に周辺を見通せたが、何より幸いしたのは見張りの兵士がそれを異常事態であると捉えた事だった。
 兵士は胸一杯に空気を吸い込むと、力の限り角笛を吹き鳴らす。妖魔出現の合図だ。沈の雄牛は大きな角を持ち、笛にすると太鼓や銅鑼よりもよほど遠くにまで響き渡った。




 笛の音を聞きつけた玲馨はかめに立て掛けておいた剣を取り天幕の外に飛び出す。
 一ヶ月ほど前に文官と共に北玄海へ行った時、剣を握って妖魔と戦う玲馨を見た文官に腰を抜かすほど驚かれたのは記憶に新しい。いや腰を抜かしたのは妖魔に驚いてだったか。
 戊陽のおかげで玲馨は多くの事を身に付けた。語学然り、算術然り、武芸もそのうちの一つだが、ほんの三年ばかりしか稽古していないから本職たちには到底及ばない。しかし自分の身を守るくらいの事なら可能だ。
 妖魔はどれも人のようで人でないような、おどろおどろしい姿形をしている。
 こいつに触れてはならない。触れた端から生気を奪われやがて草木のように枯死こしする。自分の体が枯れていく感覚はとても恐ろしいのだと言われている。痛くも痒くもないけれど、恐ろしい。例えば指が触れたなら、爪の先から徐々に力が入らなくなって感覚がなくなり、自分の体が妖魔に飲み込まれていくような錯覚を覚えるそうだ。
 妖魔に捕まったら逃げる手段は三つ。倒すか誰かに引き離してもらうか、浸食された体の部位を切除するか。
 幸い北玄海での旅路では妖魔の被害に遭う者は居なかったので、玲馨は妖魔の恐ろしさを伝聞でしかしらない。
 もし自分がこれに捕まってしまったら潔く体を切り離す事など出来るだろうか? そんな事を考えながら、女のようにも男のようにも見える浅黒い体の妖魔を一つ斬り伏せる。そして戊陽の天幕の方を振り返った。
 篝火は軒並み消えてしまっているので、月明かり程度では天幕のある方角くらいしか分からず、戊陽の姿を捉える事は出来なかった。だが戊陽の事だ。大人しく後ろに控えているという事はないのだろう。
 戊陽の特異な力は癒しと他にもう一つある。妖魔ようまばらいの力だ。それには剣も弓も必要ない。体内に宿る気を操り手をかざせばそれで妖魔は消滅する。四王の一族にも似た力が宿っているらしいが、生憎北玄海でその力を拝む機会はなかった。つまり戊陽が妖魔祓いを実際に行った時、一体彼の体にどんな影響があるのか玲馨には分からないのだ。
 半時辰約一時間も経たないうちに、周辺から妖魔の姿が消えていた。町の近くのあわいはまだ完全に地脈が枯渇している訳ではないので妖魔も大人しい。
 やはりどうしても戊陽の方が気になった。いっそ様子を見に行ってみるべきかと思った時、少し離れた所でボッと火が灯される。どうやら辺り一帯の妖魔が全て片付いたようだった。
 考えてみれば玲馨でも太刀打ち出来る程度の妖魔に戊陽や彼を守る兵士たちが遅れを取るはずがないのだ。取り越し苦労とはこの事かと、次第に篝火で明るくなっていく街道をぼんやり眺めた。
 その後、負傷者が出たという知らせが来る事はなかった。今夜はひとまず安心して良いのだろう。
 毎晩この程度ならあと五日で無事に山芒に辿り着けるだろうが、先日の経験からそう簡単にはいかない事を知っている玲馨は、浅い眠りにつく事になった。




「起きろ、梅」
 全ての天幕が片付けられ、隊列の前方は既に移動を開始している。
 あまりに起きないので兵士たちから地面に転がされていた梅をどうにかこうにか叩き起こして玲馨も進み始める。
「くぁ~……ふぅ。なぁ、まさかあんなのが毎晩続くのか、あわいってのは」
 品の無い大欠伸をし、首を回して関節を鳴らす。そのでかい口に石でも詰めてやれば多少気分が良くなるかも知れないなんて想像しながら答える。
「同じ天幕の者からお前は昨晩起きなかったと聞いたが?」
「いや外が煩くて一度目が覚めて、妖魔だって聞いてまた寝たな」
 ──寝ていた間にその天幕ごと妖魔に潰されたら良かったのに。
 馬のいななく声がすぐ傍でして玲馨はハッとする。案の定、たった一晩のうちに苦手意識が加速してしまっている。山芒についてからも四六時中この男の相手をしながら調査をしろというのか? とんでもない。
「お二方は山芒は初めてですか?」
 まだ十代と思しき若い声が馬上から玲馨と梅に向かって掛けられた。甲冑を纏い腰に剣を差したその兵士は戊陽が李将軍に見繕わせた案内役の青年だ。名を辛新シンシンという。
「そりゃあ妖魔を初めて見たんだから初物よ」
「山芒は初めてですね」
「そうなんですね。では張り切って案内させて頂きます!」
 歳は十五かそこらか。兵士になって一、二年といった具合だ。里帰りさせるにはよい時機といえるかも知れない。
 明るくて爽やかないかにも好青年然とした雰囲気は大変好ましい。どこぞの下級宦官とは違って育ちの良さがうかがえる。
 禁軍の兵士は徴兵ではない。武官も兵卒も名のある氏族が自薦・他薦して一定の試験を経て兵士となるので、辛新も辛家の令息のはずだ。
「つかぬ事を聞きますが、辛新殿はなぜご実家のある山芒の軍に入らなかったのですか?」
 玲馨がたずねると、手綱を持った辛新が何故か胸を張った。
「私は次男なのですが、剣の腕は兄弟一でした。ですから禁軍に志願したのです」
 山芒の軍の質が禁軍に劣る、という意味だろうか。いまひとつ要領を得られないでいると梅が退屈そうに説明を付け加えた。
「禁軍は四王のどの軍より強いはずだぜ。四王軍はどこも徴兵制だが、禁軍は志願兵。条件は子供の頃から武芸に親しんだ者。強くて当然だ」
 梅の皮肉めいた言い方には私怨の気配を感じる。一方辛新は皮肉られたとは気付いておらず、ますます得意げに胸を反らした。
 妙にちぐはぐな面々が集まってしまったなと、玲馨は先行きに不安を覚えた。




「なぁー、玲馨」
 馬蹄の音が近くでするのは辛新が跨る馬からだ。毛艶が良く、大事に飼育されているのが分かる。禁軍が駆る馬の世話は下級の兵士がしていると思うが、辛新の階級は分からない。
「辛新殿、この馬に名はあるのですか?」
「名ですか? チャンです」
「強?」
「はい! 戦場を駆ける強い馬になってほしくてそう名付けました!」
「なるほど辛新殿が」
 にこにことてらいの無い笑みで頷き返す辛新を見ているとなるほど名付け親だという気がしてくる。素直な良い名付け方だという事にしておくべきか。
「おーい玲馨ってば」
「辛新殿は、いつ頃から禁軍に?」
「ええと、そろそろ三年ほどに……あああこれは失礼致しました! 私の階級は下士三品かしさんぼんです!」
「なんと武官であられましたか。これまでの失礼をお許し頂きたい」
「わああっ、よして下さい玲馨さん! 玲馨さんは陛下付きの宦官と聞いております。私など家柄だけで武官となったような者ですから、どうか畏まらないで」
 それは謙遜だ。禁軍の武官となるのには家柄も関係するがそればかりでは務まらない。
 文官を採用するための科挙はあくまで庶民が官吏となるための登竜門で貴族出身者は自動的にある程度の階級につけるが、武官が受ける武科挙ぶかきょは生まれに関係なく全員が受ける事を定められている。というのも、武官は頭だけでなく腕っぷしも求めれられるからで、武科挙は実技の比重が大きい。落第すれば生涯下級兵士のままだ。つまり辛新には武官となるだけの実力が文武共に備わっているという事になる。
「しかしお若い。いかに下級武官でも十代で任命されるとは」
 ──いや、待て。確か武官も文官と同じで十代のうちは官吏にはなれないはずでは……?
「私こう見えて二十一でして……はは」
「二十一……」
 二十一!? と心の中でもう一度驚いた。
 という事は、戊陽と同い年、表向きには玲馨とも同い年という事か。
 玲馨は失礼だと思いながらも辛新をじっと見つめてしまう。武官なので体は鍛えられているようだが何せ顔が若い。あどけなさすら残っているようで、年齢を偽る必要はないとは言え信じがたかった。
「りーんしん! 玲馨せんぱーい! 俺さっきから話し掛けてるんだけどなあああ!!」
 玲馨と騎乗した辛新の間を歩いていた男がわざとらしく大声を上げると、周囲を歩いていた兵士たちの視線が一斉に三人へと向けられた。
「……声を下げろ、梅」
「わー、態度全然違うなあんた。賤民せんみんときく口は無ぇってか?」
「賤民というなら私もそうだ」
「分かってるじゃん」
 ひく、と玲馨の柳眉が跳ねると梅は愉快げに口角を歪めた。
 宦官の上級と下級の違いなど他者からすれば無いも同然だ。科挙を受けられない環境で生まれ育ったかもしくは能の無かった者と、罪を犯してその悪辣たる子孫を残す事許さじと陽物を切り落とされた者。どちらも男の矜持とも呼ぶべき部位を失くしている事は同じで、他者にとって宦官は男でも女でもなくややもすれば人ですらない。
 梅には玲馨がお高く止まった官吏もどきか何かに見えるのだろう。そんな人間が自分と同じ所に堕落していると認めさせて優越感に浸っているのだ。何と見苦しく愚かな精神か。
「あわいは中心部に差し掛かるほど体に負担がかかる。お前は初めてなんだろう、梅? これから先気を抜くなよ」
「ご忠告、痛み入りますセンパイ」
「それで?」
「ん?」
「話しかけた理由を訊いている」
「あー。何だっけ? センパイがあんまり無視するもんで忘れちまったなぁ」
 はははと大声で笑う梅とむっすりと黙り込む玲馨。辛新は呑気に馬の喉を撫で「褒めてもらえて良かったな」と笑っている。
 近くを歩いていた兵士たちの方がよっぽど気を揉んだという。





 三人の関係はさておいて、行軍は二日目、三日目と予定通り順調に進み、妖魔による被害も出ていなかった。
 しかし旅程の後半である四日目に入ると、部隊にも疲れが見え始める。それに追い打ちをかけるように本日の天候は雨。正午に向かって降り出した小雨はやがて霧を連れてきた。
 林立した枯れ木に嘗ての緑の気配はなく、地面には雑草さえも生えていない。薄暗さも相俟って不気味さに拍車がかかり、誰かが小さな窪みに足を掛けてよろめくと、悲鳴と共に泥が跳ね上がった。
「おい……こりゃまずいんじゃねぇか?」
 山芒出身の兵士たちは互いに顔を見合わせる。皆青い顔をしているが自分も似たような表情になっているという自覚があった。
「部隊を止めよう」
 正午を過ぎても霧は晴れるどころかいっそう濃さを増すばかりで、部隊の先導を務めていた兵士は全体に停止を告げる角笛を鳴らしたのだが──。
 今一歩その判断が遅かった。





 前後左右を枯れた木立が囲い、その隙間を埋めるようにして濃霧が出ている。肌にまとわりつくような湿気が体温を奪っていくようで玲馨は無意識に腕を擦った。
「まずいですね。このままだと夜までにユエ川を渡りきれないのでは?」
「……」
 質問は辛新に向けたつもりだったが答えは返ってこなかった。しかし彼のその不安げな顔つきが既に彼の返答を物語っている。
 旅程は全体の五分の三ほどを越えた所でここまでは実に順調な行軍を続けていたのだが、今朝がた雨が降り始めると全体の速度は緩やかに落ちていった。
 それから昼を過ぎるまで雨が止まないどころか霧が視界を奪い、順調から一転、悪路となった枯れ林を進む事態に陥った。
 予定ではこの後岳川に架かる橋を渡りきり林を抜けた所で野営のはずだが、玲馨が懸念している事を先導していた兵士も同様に問題に思ったらしい。部隊に停止命令を出した後、兵士は先頭から引き返してきて、部隊中央を進んでいた李将軍と戊陽とこの後の進路を相談しているようだった。
 部隊が停止してしばらく経つが進めとも戻れとも指示が出ないので、飽いた兵士たちが俄にざわつき始めている。玲馨としては軍とは別行動をとっても構わないので、梅と辛新だけ連れて素早く林を抜けるという手もある。が、しかし──。
「行かねぇのか。俺らは兵士たちに付き合う必要無いんだろ?」
 行かないのかと問いながら、梅は前方へ向かって顎をしゃくった。自分たちが禁軍とは別行動しているのだと彼の頭にもきちんと情報として入っているらしい。
 いい加減なようでいてその実違うらしい事はこの数日で分かって来た事だ。戊陽がそれこそいい加減な人選をするとは夢にも思えないので、梅への評価の低さは単に玲馨の苦手意識がそうさせている。
「残りの二夜を辛新殿一人に戦わせるつもりか?」
「玲馨だって剣が使えるだろ」
「私のは素人に毛が生えたようなものだ。自衛にも限界がある」
 山芒に向けての行軍が始まって以来、玲馨の意識は常に戊陽を向いていた。自衛がどうとは最早言い訳に過ぎず、戊陽が禁軍と共に立ち往生するというなら玲馨もまたここに留まらざるを得ないのだ。
「ふーん。それで? 川辺で野営の何がまずいんだ?」
 ──岳川のあわいについて何も調べずについてきたのか、この男は……!
 玲馨の中でひとつ梅の評価が上がったかと思えば、あっさりと裏切ってくる。前言撤回である。物事の本質は見落とさないが、やはりいい加減はいい加減だ、この男は。
 玲馨が理屈で物事を思考するなら、梅は本能のままに生きている。正反対の二人なのだから相容れないのも無理はない話だった。
「岳川周辺はあわいが深く、妖魔が手強いんだ。その道が長い行商や傭兵は、まず夜間にこの辺りに近づく事はないと聞く」
 仮にその情報を知らなかったとしてもあわいに流れる川の様子を直にその目で見れば、岳川の近くにはいっときでも居たくないと感じる事だろう。
 玲馨は北の地の調査で、川下の濁った岳川を見て来た。それは実におぞましい見た目をしており、墨とも違う不気味な黒い川は傍に立つだけで目眩がしてくるようだった。川に落ちれば命は無いと、獣でもないのに本能的に直感するのだ。
 かと言って、この林で野営するのも悪手だろ。見通しのきかない場所で大人数が寄り集まって戦闘行為をするのは危険だ。味方同士で斬り合いになんてなれば、救援部隊の名が聞いて呆れる。
 未だ話し合いに決着がつかないらしい戊陽が選ぶべき選択は二つに一つだ。
 一つはこのまま前進し、日没までに無理矢理川を渡る。
 もう一つは、林から開けたところまで引き返し、明日晴れるのを待ってから再び川越えに挑戦する、だ。
 だが戊陽はそのどちらも選ばないのではないかという予感が玲馨にはあった。




 一度止まった部隊が再び進みだしたのはあの後すぐの事だった。霧雨の中をぬかるみ始めた地面を踏みしめ一心に進んでいく。
 行軍の速度は停止命令が出る前よりは上がっているが、やはり晴天時のようにはいかない。刻一刻と日暮れが迫る中で、誰も文句を言わずに懸命に林の終わりを目指した。
 五十名ばかりの禁軍兵は若い兵士を中心に編成されており、数名の武官を除けば馬も与えられないような歩兵ばかりだ。玲馨は始め、今回の救援部隊編成には老官吏たちの圧力が掛かったのだと思っていた。「紫沈を守る禁軍が地方の救援などと、空き巣を狙われたらどうなさるおつもりか」といった具合に。
 しかしこの数日禁軍兵たちに随行してきて思ったのは、彼らは若くともきだったのではないかという事だ。
 まず単純に腕が良い。それから部隊の輪を乱すような粗忽者そこつものが居ない。人となりも悪くないようで、内心はどうあれ宦官である玲馨と梅をこれ見よがしに見下げるような事をする者も居ないのだ。
 この五十名の若い兵士たちを危険に遭わせてむざむざ失うのは李将軍はもちろん、戊陽も惜しいに違いない。だからこそますます玲馨は戊陽への心配を募らせていった。
 空はもう随分暗いがまだ日没ではない。林の終わりは近いようで視界は僅かに回復しつつあった。しかし注意が散漫になっていた玲馨は周囲の景観が変わり始めていた事に気付いていなかった。水を吸い粘土質な地面が足を滑らせ、玲馨の体が前傾に倒れていく。
「──っと。危ねぇな」
 ぐ、と腕を強い力で引っ張られ、茫洋としていた意識も一緒に霧から引き上げられたようだった。
「……助かった」
 遅れて心臓が驚きにバクバクと鳴り始める。
「はいはい。それで?」
「何だ?」
「やっぱ聞いてなかったか」
 梅に溜息を吐かれてムッとするも意図して無視した訳ではなかったので申し訳ない気持ちになる。謝罪しようと口を開いた途端、梅が小さく噴き出した。
「うそうそ。カマ掛けたんだよ。俺はあんたに声掛けたりなんてしてねぇぜ」
「何なんだ……。一体何がしたいんだ?」
「気もそぞろって感じだったから何となく?」
 ついさっき助けられた恩も忘れてとぼける顔面をひっぱたきたくなった。しかし同時に焦るようだった気持ちが落ち着いてもいた。梅に平常心を取り戻されるとは今後こんな不覚は二度ととるまいと固く心に誓う。
 そう、玲馨がどれだけ戊陽の心配をしたところで事が起きる時は起きるし、彼が力を使う必要に迫られたら戊陽は最大限自分の能力を惜しまず使ってしまうのだ。戊陽を止める事も、戊陽だけを守るために行軍を取りやめる事も出来ないのなら、果たして玲馨に出来る事は何なのだろうか。
「間もなく川が見えてきますよ、お二方」
 枯れ木の枝に頭を打ちそうだったので馬から降りて歩いていた辛新が玲馨たちのやり取りなどまるで気にせず告げてくる。辛新は辛新でおおらかというか少々抜けているというか、空気を読むという事をしないので、梅からさり気無く嫌味を言われても一切通用しない節があった。
 たった三日とはいえこのちぐはぐさはどうにも変わらない。このままでは行軍が珍道中になりかねないという新たな不安が芽生え始めた玲馨の気持ちとは裏腹に、目の前の林が途切れて漸く視界が開けていく。それから間もなく黒い濁水の流れが霧の中に現れた。
「うひぇー……きっしょく悪ぅー……」
「あわいの川」を初めて目の当たりにした者たちの心中を梅が的確に代弁する。言葉遣いはなっていないが。
 川に流れているのは確かに水なのだ。川辺に打ちつけられた流れがしきりに大きな水の音を立てているし、傍に立つと跳ねた水が足元を濡らしていく。だけど、それを川だと形容し難いのは、その汚泥のような真っ黒な水が思い描く川面とあまりに違っているせいだろう。
「墨を流したってこうはならねぇぜ?」
 黒い河川に白い紙をひたしたら黒く染まるのかというのを試した記録があるが、不思議な事に紙はただ濡れてふやけただけで黒い色は付かなかったという。しかし川に浸けた紙はその後乾く事なく次第に腐っていき、ぼろぼろに崩れたのだそうだ。
 その話を事前に梅には聞かせていたので、気色悪いと川を覗きながらもさすがに中へ足を浸けるような蛮勇は犯さなかった。
 そんな恐ろしい川を、日没と競り合うようにしてこれから渡らなくてはならない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

処理中です...