ピアニストは恋を奏でる

沖弉 えぬ

文字の大きさ
6 / 13

2話ー③

しおりを挟む
 ブランデー、ホワイトラム、コアントローにアクセントのレモンジュース。柑橘の匂いが柔らかく香るカクテルの度数は高い。時間が経って酒の温度が緩やかに上がってくると、アルコールのツンとくる感じが喉を焼いていく。同じカクテルを麗も自分で作って飲んでいた。夜空は一口ごとに勇気が必要なくらい強いと感じるのに、麗は飲み慣れているのかさらさらと流し込んであっという間に飲み干した。
「これくらいじゃ酔わないんだけどね」
 という麗の発言に驚いているうちにも頭がぽやぽやとしてくる。心地良い。酒を飲んだのなんて何年ぶりだろう。
「ビトウィーン・ザ・シーツって名前なんだよ、このカクテル」
 意味は、ベッドに入って。
 何とも麗らしいダイレクトなチョイスに笑っていられた時間は短いものだった。麗が軽くつまむものを出してくれたのですきっ腹では無かったのに、十分もすると世界に暈しのフィルターがかかったみたいになっていた。
「酔った?」
 自分は全く酔いの無い様子で訊ねてくる。「とっておき」なのだから自分が酔っていてはそのとっておきの効力を無くしてしまう。この作戦は酒の強い人間にしか出来ないという意味でもとっておきなのだ。
上着を脇に抱えた麗がカウンターから出て来た。隣の席に置いていた夜空のカーディガンを肩に掛けられて、その肩を抱かれる。
「このままだと俺にお持ち帰りされちゃうけど、いいの?」
 低い声がわざとらしく耳元で囁いた。
「……酔った。介抱しろ」
 意趣返しのつもりだったが、こういう事に慣れているだろう麗には通用しない。
「喜んで」
 余裕を持って返されて、鼓膜にチェロが染みていく。普段の朗々とした雰囲気に、香油を一滴垂らしたようなしっとりと蠱惑的な声が、これから自分たちが何をするのかを如実に表していた。
 胸の奥の軽やかな心拍を聞きながら、麗に連れられて店の奥に入っていく。二階建ての店の二階が住居スペースになっているが勉は家族と一緒にマンションで暮らしているのでここには麗が一人で住んでいた。
 カン、カン、と滑り止めの凹凸がついた縞鋼板の階段を踏んで裏口から二階に上がる。昭和当時はモダンと呼ばれたであろう一階の店のレトロな雰囲気と違って二階はごく普通のスチール製のドアがあり、その奥に待ち受けていた彼の部屋もとりとめのない男の一人暮らしの部屋だ。知識源は映画なので実物を見るのはこれが初めてだが。
 上着を椅子の背もたれに放り投げて麗はセミダブルのパイプベッドに腰掛ける。ぴったりと肌にフィットした黒いTシャツ一枚になって、部屋の端で所在無げに立つ夜空を呼んだ。
「おいで」
 麗が腰の横で両手を広げた。そこに来い、ということか。成人した大人が? 夜空の記憶では母に抱きしめられたのでさえ十歳くらいまでだ。
 父に関してはそもそも身体的触れ合いが皆無だった。家庭より仕事に打ち込む人で、音楽事務所を作りそこに母と夜空を置いたものの、対外的な事に手いっぱいで夜空のマネジメントは母が行っていた。物心つく頃から父は一緒に食事を取る大人の人、という認識だった。
 おずおずと近寄ると、麗は更に一段階外に腕を広げる。おいで、と。
 麗の広げた足の間に立った。近い。毛穴が見えるくらいすぐ真下に麗の顔がある。
 一度ぎゅうっと強く抱き締められた。
「夜空の匂いがする」
 単なる事実を伝えているだけの言葉に、酒で温まった体を更に熱くさせられ小さく混乱する。言葉そのものではなく彼の声の響きに対しての反応だと分析が済めば、これが所謂性欲なのだと理解してますます体は火照った。
「夜空、両手で自分のシャツの裾握ってくれる? ……そう、それからシャツを自分で捲って」
 麗の指示通りにしているだけなのに、何だか自分がすごくいやらしい事をしている気分になってくる。恥ずかしさがこみ上げてきて止まらない。
「うん……綺麗な肌してる」
「あっ」
 予告無く臍の横に麗が吸い付いた。音がする。水っぽい音。麗の鼻息が肌を掠めてくすぐったい。目の前で揺れる黒髪もぞわっとして払いのけたくなるが、両手でシャツの裾を握っているせいで出来なかった。
麗の唇が上に上がってくる。前髪の生え際の辺りがシャツに当たると、一度顔を上げた麗が目で言った。「もっと捲って?」
 麗は表情で喋る。喜怒哀楽がはっきりしていて、顔のパーツがいちいち大きいので変化も分かりやすい。夜空の顔についている筋肉とは違う筋肉がついているのかと思うほど多弁で自由。
 両手を持ち上げた。病院で聴診器を当てられる時みたいにシャツの裾が胸の高さまで持ち上がっている。
「んっ……も、麗っ」
 シャツをたくし上げて何をされるのか、あまりよく理解していなかった夜空の腹の周りが突然ぐっと緊張した。胸を、吸われたのだ。びっくりして声が出て、思わず麗を呼んだが止まってくれない。
 甘く噛まれて尖端を舌の先でノックされる。そうされるともぞもぞとした感覚が湧き起こって産毛を震わせていく。何だ、これは。どうしてそんなところでそんな事をするのか。
「赤ん坊みたいだ……」
 なんて言ったが、胸から顔を上げた麗の顔付きはとてもではないが赤子と呼べるようなものではなかった。
「ねぇ、見てて夜空。俺が赤ちゃんみたいに夜空のおっぱい吸うところ」
 見てて? どうやって、と思っているうちに麗の頭が自分の胸に埋められる。そうすると丸めたシャツの裾で見えなくなるので更にシャツを首元まで捲り上げて、麗が自分の胸を吸うところを見えるようにした。
 刺激を与えられて赤く縮こまった粒を、それと同じくらい赤い舌が嬲っていく。ころり、ころり、尖らせた舌が小さな薄桃の果実を転がしている。麗は反対の乳首を手で弄った。くすぐったいようなもどかしい何かが腰のところに集まっていく。自慰をする時とは似て非なる何か。
 麗が乳首を口に含んだ。鳶色の瞳がきょろりと上向き夜空を捉える。「見て」と言っている。次の瞬間、ぢゅっと音を立ててきつく吸われた。
「んんっ……!」
 甘い痺れのようなものが背骨を降りて尾てい骨まで駆け抜けていった。その感覚は麗がそこを吸う度に何度も起きる。麗の口の中という見えない場所で緩急をつけて吸われるので、弱いのがくるのか強いのがくるのか分からない。分からず身構えているとちうちう優しく吸われ、気を抜くと唇で食みながら音を立てられる。
「はぁ……んっ……れ、い……」
 名前を呼ぶと、麗は夜空の顔を見てうっそりと笑んだ。今までで一番妖しくて、野生を秘めた、目が離せなくなる笑み。その時、夜空は自分の体の変化に漸く気が付いた。夜空の男の部分が反応してズボンを押し上げている。
 手を引かれ、シーツの上に押し倒された。麗の匂いがする。いつも彼から香っている柑橘とグリーンの香水と、彼自身の匂い。むん、とそれらに包まれて、ただでさえ酒に酔った体は期待で汗ばむほど熱くなっていた。
 麗が夜空のズボンに手を掛けた。ベルトをしていないので簡単に前を寛げられて、下着が前立ての間から見えてしまう。はしたない。
人前で着替えをしたのなんて小学校の体育の授業が最後だ。中学からは母が「指に怪我をしたらいけないから」と言って学校に許可を取り、体育の授業は全て見学。必要ないので中学以降の体操服を夜空は持っていない。
 火が出そうなほど恥ずかしいのに、酔った体は言う事を聞かなかった。いや違う。夜空が自分の意思でされるがままになっているのだ。
 ズボンが下ろされて、外気に腿を擦り合わせる。下着だけになると隠し様もない、興奮の証が存在を主張した。
「嬉しい。夜空、男慣れしてる感じじゃなかったから」
 麗の動きに躊躇いはなかった。膨らんだそこに下着の上から口づけられてぎょっとする。知っている、口淫という行為がある事を、夜空でも知っている。でも、麗が夜空のそこをそうするなんて予想は出来なかった。
あっさり下着を下げられて膝のところでつっかえたズボンと下着が図らずも夜空の足を拘束する。麗は分かってやっているのかも知れない。
 熱い咥内に迎え入れられた。胸をそうされた時よりもずっとはっきりとしたものが皮膚の下を這って腰の辺りで蟠る。麗は手慣れていた。その事に安心する。右も左も分からない人に体を預けるのは怖い。酒が入っていてもそれくらいの理性は残っているらしい。
 痛いものも怖いものもなくて、柔らかくて温かな舌と頬の肉に包み込まれて得も言われぬ快感が夜空の腰をゆらめかせた。
「ん……気持ちいね、夜空」
 そんな事一言も言っていないのに麗には全部知られている。括れを舌先でぐりぐりとやられ、手で付け根を揉まれ、夜空の眉根が悩まし気に寄せられる。
 気持ち良い。声が出そうだ。下唇を噛んで堪えると、麗が陰茎から口を離した。「あ……」と切ない声が漏れる。麗が笑む。バレている。夜空がどうして欲しいか、声を我慢するほどよくなっている事だとか。
 恥ずかしい。そう思うのにもっとしてほしい。そんな願いを込めて彼の名前を呼ぶと麗は苛立たしげに片方の眉毛を持ち上げた。分かりやすいはずの彼の、その表情の意味はどうしてか伝わってこなくて、何か怒らせるような事をしたかと不安になったが、直後、麗は夜空の腫れあがったそれをほとんど根本まで飲み込んで激しく頭を上下させ始めた。
「やぁっ! れいっ、麗……それ、だめ……だめぇ……!」
 腰のところに思う存分溜まっていた性感の種子がぱあっと花開く。気持ちがいいという事しか考えられなくなって、自分の口から漏れていく声にも意識を払えなくなって麗の名前を呼びながらあっという間に上り詰めた。
「あ、はなして、放してっ」
 まだ彼の口の中に自分が収まっているのに堪えきれなくて、麗の頭を押しのけようとしたが離れていかなかった。
「んぁっ、あ、出る、ぅ……!」
 管の中を粘液がせり上がり吹き出していく解放感に、夜空はぎゅっと目を閉じて身悶えた。下腹を細かく痙攣させて腰を麗の喉に押し付けるようにすると、それに合わせて麗が全部絞り取るようにして吸い上げる。達している最中の刺激に訳も分からなくなって「あ、あ」と声帯を震わせて、やがてぐったりとベッドに倒れ込んだ。
「ば……ばか麗、放せと言った」
 口の中に射精するなんて、ありえない事だ。麗のせいだというのに自分がとても酷い事をしてしまった気がしてつい責めてしまうと、麗はにやりと笑って夜空が放ったものを手の平に吐き出した。
うわっ、と声が出た。麗にはあと何度ぎょっとさせられるのだろう。自分の常識とこの男の常識が違いすぎて全てが刺激的で興味が尽きない。
「用意が無いから、滑りを良くするために何でも使わないと」
「用意……?」
 よく理解出来なかったので、見て学ぼうと麗の成す事を見守っていた。そうすると彼の手はあらぬところに向かって伸びていく。項垂れた夜空のものの更に下、会陰を通り過ぎて肛門へ。
「何を」
 止める隙も無く、唾液と混じった白濁を塗付けられた。いくら何でもそれは無い。何て事するんだと麗の腕を掴んで止めようとしたが、麗は力が強いのだ。夜空の細腕ではびくともしない。
「男同士はここを使う」
「え……?」
「穴が無いでしょ? だからお尻にペニスを入れるんだよ」
「まさか」
「ちゃんと気持ち良くなれるよ。それとも、夜空が俺に入れたい?」
「僕が、麗に……?」
 麗が夜空に何をしようとしているかやっと理解した。尻を解そうとしているのだ。女の体のようにはいかないから潤滑剤が必要で、やはり女とは違うから穴を性器にするべく柔らかくしなくてはならない。いざ解れたら、麗の陰茎が夜空に――。
 逆の立場を想像しようとしたが上手くいかなかった。自分が麗の体を割り開き、彼の体内を犯す様をどうしてか上手く思い描けない。
「どうする?」
「……し、しない。僕はされる方でいい」
「そう、分かった」
 麗はほっとしたようだった。行為に慣れている麗でももしかすると入れられる側の経験は無いのかも知れない。夜空とて入れられる事はおろか入れた経験も無いのだけれど。
 尻の穴を粘つく液体で濡らされていく。その液体に自分の体から出た物が混じっていると思うとぞっとしない。しかしそこに触れているのが麗である事を目視すると、下半身の違和感を差し引いても自分の体が軽くなったような高揚感の方がよほど勝る。
 彼に「とっておき」を求めた時からもうずっと心音は浮かれたままだ。もしも一生のうちに心臓が鼓動する回数が決まっているとしたら、今夜空は確実に寿命を短くしている。
「夜空、俺にキスして?」
 後孔を弄りながら麗は身を乗り出すようにして顔を近付けてくる。しかしもう少しで届きそうなところで止まってしまう。鼻を擽る柑橘の匂いとグリーンの匂い。混じる、汗の匂い。
「夜空」
 チェロの声に誘われて、鳶の目に呼ばれて、夜空から口付けた。しかし、猫が鼻を合わせてくるような、戯れのキスでは麗は満足しない。
「舌を出して。もっと、えーって」
 溶けたアイスを舐め取る時くらい舌を長く出すと、麗にそれを食まれた。さっきまで自分のものを咥えていた口だという事が一瞬過ぎったが、舌を吸われる感触の前に理性は消失していく。
「俺の口の中、好きに動かして? 俺の事、犯して、夜空」
 犯す。物騒な物言いにしかし、一度射精して冷めていた興奮を的確に煽られて、夜空は拙く舌を動かした。肉厚な舌を捕まえ絡めて、麗の鼻から抜けていく荒い呼吸を聞いて、自分がそうさせているのかと思うと気分が良くなっていく。麗も同じなのだろうか。夜空の胸と陰茎をいじめて悦を見出していたのだろうか。
 夢中で彼の口を吸っている間に、麗の指が二本に増えていた。異物感が強いが、痛くはない。視界の端に映る麗の欲望は随分なものが見えている。大きい。あれを尻に収めるとしたら、指の二本程度では全く足りないだろう。
 するとやはり三本目が入ってきた。夜空にピアノを弾かせてくれた長く太い指が三本も。さすがに苦しくて、口を離してふうふうと息を吐き出す。
 萎えていた陰茎を揉まれてそちらへの刺激と混ざり、尻への苦痛が紛れていった。緩く芯を持ったそこを上下に扱かれて、同時に中をまさぐられる。次第に一度散らした欲の花が再び種子を腰に撒き始め、気付くと「ん、ん」と鼻から抜けるような声が出るようになっていた。
「……そろそろ、いいかな」
 指が抜けていく時、おぼろげだった快感が短い間だけ形を持った。もう一度そこを触ってほしいという願望が芽生えると、無意識に麗の未だ布の下に収まるそこに視線が向かった。
「そんなに欲しい?」
 欲しい、のか? 分からない。でも欲しい気がする。麗の指にたくさん解された後ろが疼いて仕方がない。
 頷いた。
 ベルトが抜けていき、デニムのボタンが開いていく。黒のボクサーにくっきりと浮かび上がるシルエットに唾を飲み込んだ。
「……大きい」
 吐息だけで笑う声がする。あまりに熱心に見つめ過ぎたかと急に冷静になったが、目を逸らすよりも先に「見てて」と言われた。麗が下着に指を掛ける。
 夜空のものとは全然違っていた。形も色も違うまさに怒張と呼ぶに相応しい。血管が浮き出ていて、下着を全部下ろしても腹に当たるほど立ち上がっている。たとえ見るなと言われても、目が離せないほど長く太い麗のそれに意識が吸い寄せられてしまう。
 自分にまさかこんな欲があったなんて。性というものをほとんど意識してこなかった夜空が初めて知る、自分の中の単純な欲望。夜空の人生には自分とピアノと母しか存在していなくて、父は他人でその他の人間はもはや人ですら無かった。
 そんな中、麗は珍しく最初から人の形をしていたように思う。
麗は夜空を否定しない。偉いと言って褒めてくれる。ピアノが弾けない夜空を許してくれて、そのまま受け止めてくれる。
 もうピアノから離れるべきかも知れないと思っていた夜空とピアノを繋ぎ直してくれた人。
 体が熱い。胸が苦しい。彼に奥底まで貫かれたい――。
 初めて性的な事をした相手が彼だったからかもしれない。でも、少なくとも今この瞬間は、夜空の欲望は麗の形をしていた。
「麗」
 名前を呼ぶだけで、麗は分かってくれた。
 さほど肉のついていない夜空の双丘を手で割って、いきり立つ尖端が押し当てられる。それだけでも太さを感じた。怖さより、焦燥の方が強い。もしも入らなかったらどうしよう。麗に呆れられてしまうかも知れない。
 ぐう、と硬い肉の棒が普通なら出口でしかないはずの孔から侵入してくる。圧倒的な質量に息を呑む。苦しいけれど、同じくらい満たされる。
 いつの間にか眉間に皺を寄せて目を閉じていた。麗の指に額を撫でられて目を開ける。
「繋がった……?」
「繋がったよ」
 麗が夜空の腹の中に全て収まっていた。それを見た瞬間幸福が押し寄せてくる。
 顔を上げると麗と視線がぶつかった。これまでずっと余裕そうに見えていた麗に初めて焦りが浮かんでいるのを見つけると、自然と頷いてしまっていた。
 恐ろしいほどの質量が、内臓をじっくりと押し上げてくる。圧迫されて少しでも楽になろうと開きっぱなしになっていた口から空気が押し出されていく。
 麗は殊更慎重に動いた。仰向けになった夜空に覆いかぶさり、腰を持ち上げ前後に揺れる。
 一度指で与えられた未知の快感が再び体の中に生じ始めていた。泣きたくなるような焦れったい衝動が、麗が出入りするたび夜空を襲う。意識をそこへ集中させるほど、腹に力が入ってただでさえみちみちに詰まっているのにいっそう麗を締め付けてしまう。
「あ……、そこ」
「ここ?」
「ひあっ、そこ、変……っ」
「変なの? やめる?」
 麗は分かっていて言っている。証拠に睨みつけると楽しげに微笑む。かと思えば、速度を上げて変だと訴えた場所を重点的に突き始めた。
「あ、あ、んーっ」
 声が我慢出来ない。同じところだけ何度も、気が狂いそうになるくらい擦られて、だらしなく開いた口から喘ぎが漏れる。
「夜空、今のあんた、すごく素敵」
「わ、かんなっ」
 麗に足を抱えられ、高いところから更に奥を穿たれる。上も下も分からなくなって頭を振り乱し、与えられるものにただ善がる。
夜空が素敵? 裸になって醜態を晒しているだけなのに?
そんなはずはないと思うのに、恍惚とした表情を浮かべる麗が嘘を言っていない事が分かる。
 麗が夢中になって腰を振っている。夜空の姿に興奮しきり、内から溢れてくる衝動に身を委ねて夜空を犯す。やがて夜空を熱烈に見下ろしながら太い眉毛をきゅっと苦しげに寄せた。限界が近い。
 夜空の喘ぎが誤魔化しようもなく甘えた音色になって、そこへ麗の荒々しい息遣いが混ざり合い、パイプベッドの軋む音が拍を刻む。
「夜空、出すよ……っ!」
 パァンッと肌がぶつかる音が速くなって麗が腹の中で果てた。ドクドクと脈打つのが分かる。温かいものが流れ込んでくる。麗が肩で息をしながらも、夜空が達していないと分かると手でペニスを刺激しまだ硬さの残るもので中を擦り上げた。
「う、あ、……出そうっ」
「そういう時、イくって言ってごらん、夜空」
「イく?」
「そう」
「あんっ、んっ……あ、イく、イ、ッ……!!」
 薄い精を弱々しく吐き出した。ちかちかと快感の火花が散り、それが収まると一気に疲労が全身に回っていく。
「夜空」
「んっ」
 労るようなキスだった。汗で張り付いた髪を退かし、頬を撫でてくれる。気持ち良くて、疲労が眠気に変わっていく。汗や自分の出したもので汚れた体を気にしている余裕は無かった。あっという間に瞼が重くなり、隣に寝転んだ麗に頭を撫でられながら眠りに落ちていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

竹本義兄弟の両片思い

佐倉海斗
BL
 高校一年の春、母親が再婚をした。義父には2歳上の引きこもりがちな連れ子の義兄がいた。初対面ではつれない態度だった義兄だった。最初は苦手意識があったのに、先輩に目を付けられて暴行されている時に助けられてから、苦手意識が変わっていった。それにより、少しずつ、関係が変わっていく。

まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり…… 態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語 *2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。

君のスーツを脱がせたい

BL
 学生兼モデルをしている佐倉蘭とオーダースーツ専門店のテーラー加瀬和也は絶賛お付き合い中。  蘭の誕生日に加瀬はオーダースーツを作ることに。  加瀬のかっこよさにドキドキしてしまう蘭。  仕事、年齢、何もかも違う二人だけとお互いを想い合う二人。その行方は?  佐倉蘭 受け 23歳  加瀬和也 攻め 33歳  原作間  33歳

【完結】君の穿ったインソムニア

古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。 純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。 「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」 陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。

処理中です...