僕が玩具になった理由

Me-ya

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ずれてゆくこわれてゆく-優紀の章-

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(………大きい……)

僕は愛原に渡され眞司の家の住所が書かれているメモを片手に、その家を見上げていた。

眞司に会いたい一心で…勢いだけでここまできたものの…眞司の家の前まで来たところで気後してしまい…チャイムを押せないまま、家の前をいったり来たり…。

『本当に僕の代わりに眞司の家に行ってくれるの!?ありがとう!!』

和巳が僕を紹介する時に言った眞司の友人という言葉を信じているのか、邪気のない笑顔で涙を浮かべて喜んでいた愛原の顔を思い出すと、胸が痛むが…。

…そして、最後まで僕と一緒に行くと言っていた和巳にも、眞司にはひとりで会いたいからと説得してここまで来たけど…。

(どうしよう…)

想像していたより大きい家に気後れして、眞司の家の門の前をウロウロしている僕。

そんな僕の後から声がかけられた。

「……………誰?」

振り返ると、そこには眞司によく似た男性が立っていた。

「眞司の友達?」

ニコッと笑った笑顔は優しそうなのに…何故だろう…寒気を覚えた。

「眞司の見舞いに来てくれたんだ?ありがとう、眞司も喜ぶよ。さ、中に入って」

その人は僕の手首を掴むと、門を開けて中に入って行く。


「…え…あ…いえ…あの…ちょっ…」

いきなり掴まれた手の思わぬ力強さと強引さに、僕は戸惑い口籠もる。

僕の戸惑いに気付いたのか、彼は僕の掴んでいた手から手を離すと、照れたように謝り、頭を掻いた。

「…ああ…ごめん…眞司の友人が家に来てくれるなんて、始めてだったんで嬉しくて…改めまして、眞司の兄の保です。さ、入って。眞司も泣いて喜ぶよ、優紀君が来てくれたと知ったら」

…喜ぶ…。

その言葉を眞司の兄から言われて少し嬉しくなり…それから…気付いた。

(…僕…名前、教えたっけ…?)

-僕の後ろで家の扉が閉まる音がした。
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