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8 どっちなんだよ!

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 ケーンはキキョウが残した籠を見つけた。

メモを持つ手が震えた。

黒髪黒目? 
どっちなんだよ! 

残念なことに、ブラックも、この世界では珍しい黒髪黒目だった。

すっかりいじけモードのケーンは、ブラックのファンだとしか思えなかった。

「ケーン様、誰かが応援してくれてますよ。
ガンバ!」
 ブラックの思いやりは、涙目のケーンに追い打ちをかけてしまった。

「いいんだも~ん! 
美人の女の子とは限らないし! 
むさいおっさんかもね! 
俺たちが新米冒険者だと知ってるのは、職員と今朝いた冒険者だけだ。
おっさん人口密度、超高かったよね! 
おっさん、ほぼ確定! 
よかったね、ブラック。
ムキムキどうしの熱い絡み、乞うご期待!」

「お言葉ですが、どちらかといえば、ケーン様の方が……。
いえ、なんでもありません! 
なんでもありませんてばぁ~!」

 ケーンは風のごとく、森の奥へ走っていった。

俊足のブラックでも、とても追いつけないスピードで。

ケーンの駆け抜けた後には、一撃で撲殺された魔物が、数え切れないほど転がっていた。

初心者向けの青の森だから、大金を得られるハイレベルの魔物はいなかった。

だが、ブラックは、その死体の金になる部位を、せっせと回収して回った。
ブラックは案外貧乏性だった。


 青の森最奥部。ケーンは急ブレーキをかけた。大勢が争っている気配。
 ひょっとしてチャンス? 救助イベントも定番!
 危ういところ、ありがとうございました。
 お粗末ですが、お礼に私の体をどうぞ、なんてね、な~んてね!

 ケーンは感覚を研ぎすます。

 ケーンは肩を落とす。ゴブリンの群れに襲撃されたんだ。

 男が……。

 ケーンは肩を落として、森から転移した。男を助けるなんて、彼の美学に著しく反する。
 それに、戦闘は終わった。ご愁傷様だけど、男に蘇生魔法を使うほどの義理はない。

 ちなみに、遅れてケーンの後を追っていたブラックは、五人の冒険者の遺体を、丁寧に葬った。
 ブラックは、案外気が利かないが、案外気のいいペガサスだった。

 もちろん、遺体をおいしくいただいていたゴブリンたちは始末した。冒険者たちの貧弱な装備や現金、ちゃっかりいただいたこと、付け加えておく。
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