11 / 170
11 ブラックの崇高なる魂に敬意を
しおりを挟む
ケーン主従は、朝市をのぞいてみた。昨日のようなギルドの混雑はいやだし、「掘り出し者」がいるかもしれない。
結論から言えば、ケーンの基準にかなう「掘り出し者」はいなかった。
美人やかわいい子はいる。だが、強者の匂いがしない。癒される~、と感じる女性も。
「ケーン様、古道具屋に、寄ってもよろしいでしょうか?」
ブラックが聞く。
「大したもの、ないと思うぞ。
何買いたいんだ?」
ケーンは全然気乗りしない。異世界ファンタジー小説、古道具屋で掘り出し物を見つけるのは、定番といえば定番だが、夜空城には国宝級や伝説、神話級のアーティファクトが転がっている。
いや、転がってはいないが、いつでも呼び出し可能だ。
「昨日冒険者の遺体を見つけました。
ゴブリンどもに襲われたようです。
装備を残しておくのも、まずいかと思いまして」
「青の森の冒険者なら、大した装備は持っていなかっただろ?」
要するに、「もったいない」の精神であること、ケーンは見抜いていた。
「さようでございますが……」
「いいよ。寄ってみよう」
ケーンはブラックのドケチ魂に妥協した。
「全部で銀貨一枚ってところだな」
古道具屋のオヤジは、ブラックが並べた剣や槍を一瞥してそう言った。
「それは安すぎる!」
ブラックはこめかみに青筋を浮かべた。彼の心づもりでは、最低銀貨二枚。
「おやっさん。この髪飾り、いくら?」
ケーンは古びた髪飾りを手に取った。
「ん……。そうだな、金貨一枚!」
オヤジは、めいっぱいふっかけてみた。どうせ冷やかしだろうし。
「へ~、案外安いんだな。
買った」
「へっ……。本当にいいのか?」
オヤジはびっくりして聞く。
「いいよ。ほら」
ケーンは金貨をオヤジに渡す。
「お兄ちゃん、銀貨二枚で買い取ってやるよ!」
大儲けした、と錯覚したオヤジは、気分を良くしてブラックに大盤振る舞い。適正価格は銀貨二枚とみていたが。
「清浄! ブラック、この髪飾り、ちゃんとした店で売ってみたら?
一応防御結界が付与されている。
多分金貨十枚ぐらい?」
ケーンが魔法をかけたら、髪飾りはぴかぴかに。
「さようでございますか!」
ブラックは、オヤジが出した銀貨二枚をふんだくり、超ご機嫌だった。
「ちょっと待った!」
オヤジは、かけていたイスから身を乗り出した。
「あんた古道具屋に向かないんじゃない?
もっと目利きの力つけろ」
ケーンはそう言ってブラックを目で促した。
「そんな……」
膝から崩れ落ちる、古道具屋のオヤジだった。
「ケーン様、この調子で古道具屋を回りましょう!」
ブラックは、かわいいお目々をキラキラさせる。
「そんなめんどくさいこと、やだ。
どうしてそんなに金儲けしたい?」
ケーンはあきれ口調で言う。
「どうして……?
どうしてでございましょう?」
ブラックは考え込んだ。請求すれば、夜の王宮からいくらでも経費は下りる。
必要な物も。
特に買いたい物なんてないし……。
どうしてなんだろう?
真剣に考えこむ、一千年物の神馬だった。
「どうでもいいよ。ギルドへ行くぞ!」
ケーンは苦笑して促した。ブラック、それは多分趣味の領域だよ。
趣味は理屈じゃない。ブラックのドケチ魂を、そっと見守ることに決めたケーンだった。
結論から言えば、ケーンの基準にかなう「掘り出し者」はいなかった。
美人やかわいい子はいる。だが、強者の匂いがしない。癒される~、と感じる女性も。
「ケーン様、古道具屋に、寄ってもよろしいでしょうか?」
ブラックが聞く。
「大したもの、ないと思うぞ。
何買いたいんだ?」
ケーンは全然気乗りしない。異世界ファンタジー小説、古道具屋で掘り出し物を見つけるのは、定番といえば定番だが、夜空城には国宝級や伝説、神話級のアーティファクトが転がっている。
いや、転がってはいないが、いつでも呼び出し可能だ。
「昨日冒険者の遺体を見つけました。
ゴブリンどもに襲われたようです。
装備を残しておくのも、まずいかと思いまして」
「青の森の冒険者なら、大した装備は持っていなかっただろ?」
要するに、「もったいない」の精神であること、ケーンは見抜いていた。
「さようでございますが……」
「いいよ。寄ってみよう」
ケーンはブラックのドケチ魂に妥協した。
「全部で銀貨一枚ってところだな」
古道具屋のオヤジは、ブラックが並べた剣や槍を一瞥してそう言った。
「それは安すぎる!」
ブラックはこめかみに青筋を浮かべた。彼の心づもりでは、最低銀貨二枚。
「おやっさん。この髪飾り、いくら?」
ケーンは古びた髪飾りを手に取った。
「ん……。そうだな、金貨一枚!」
オヤジは、めいっぱいふっかけてみた。どうせ冷やかしだろうし。
「へ~、案外安いんだな。
買った」
「へっ……。本当にいいのか?」
オヤジはびっくりして聞く。
「いいよ。ほら」
ケーンは金貨をオヤジに渡す。
「お兄ちゃん、銀貨二枚で買い取ってやるよ!」
大儲けした、と錯覚したオヤジは、気分を良くしてブラックに大盤振る舞い。適正価格は銀貨二枚とみていたが。
「清浄! ブラック、この髪飾り、ちゃんとした店で売ってみたら?
一応防御結界が付与されている。
多分金貨十枚ぐらい?」
ケーンが魔法をかけたら、髪飾りはぴかぴかに。
「さようでございますか!」
ブラックは、オヤジが出した銀貨二枚をふんだくり、超ご機嫌だった。
「ちょっと待った!」
オヤジは、かけていたイスから身を乗り出した。
「あんた古道具屋に向かないんじゃない?
もっと目利きの力つけろ」
ケーンはそう言ってブラックを目で促した。
「そんな……」
膝から崩れ落ちる、古道具屋のオヤジだった。
「ケーン様、この調子で古道具屋を回りましょう!」
ブラックは、かわいいお目々をキラキラさせる。
「そんなめんどくさいこと、やだ。
どうしてそんなに金儲けしたい?」
ケーンはあきれ口調で言う。
「どうして……?
どうしてでございましょう?」
ブラックは考え込んだ。請求すれば、夜の王宮からいくらでも経費は下りる。
必要な物も。
特に買いたい物なんてないし……。
どうしてなんだろう?
真剣に考えこむ、一千年物の神馬だった。
「どうでもいいよ。ギルドへ行くぞ!」
ケーンは苦笑して促した。ブラック、それは多分趣味の領域だよ。
趣味は理屈じゃない。ブラックのドケチ魂を、そっと見守ることに決めたケーンだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる