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19 光の女神の宿命

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 キキョウは、ケーンと共にブラックの背中に乗ってフライト。ケーンにすがりつきながら思う。

 かねてから疑問に思っていたこと、聞いてみようかな?
「ケーン様ならご存知でしょうか? 
ダンジョンは誰が作ったのでしょう? 
魔物や魔物のドロップ、宝箱なんかも。
時間が経てば復活しちゃうでしょ? 
前から不思議に思ってたんです」

「知ってるよ。
そんなことが可能なのは三人だけだ。
消去法で考えてみたら答えはすぐわかる」

「消去法で……。
可能な三人と言えば、夜の女王様、光の女神様、魔王?」

「正解」

「魔王は、意味ないですよね?
っていうか、敵に塩を送るようなもの。
夜の女王様は、基本的に人族と魔族の争いには不干渉。
つまり、光の女神様?」

「正解。光の女神は、自分で戦う手段を持たない。
だから人族をダンジョンで鍛えて、勇者を召喚する。
その見返りが魔物のドロップや宝箱の中身。
ダンジョンの戦闘で、スキル獲得やレベルアップしやすくしてるのも、餌の一つ」

「餌か……。言われてみたらそうですよね? 
なんか光の女神様の、イメージがダウンしちゃうというか……。
もっと根本的なこと、聞いていいですか?」

「光の女神が、どうして魔王と戦うのかということだろ? 
一言で言えば、宿命、かな? 
光の女神の宿命は、人族を守護することだ。
皮肉なことに、人族は魔王という強力な敵がいるから、結束と向上心を保っている。
共通の敵がいなければ、人族同士の争いや、堕落がもっと際立つ。
魔族も同じ。
人族に比べて数は圧倒的に少ないから、より強い力を求める。
虚しいけど、それが現実。
父ちゃんが勇者をやめたのも、母ちゃんと出会って、その虚しさに気づいたからだ。
父ちゃんの嫁も同じ。
母ちゃんが治める夜の世界は平穏だからね。
低級バンパイアが魔王に味方するのは、その平穏さが退屈だから。
母ちゃんは、その堕ちたバンパイアを守護しない。
つまり、眷族と認めない」

「そうだったんですか!」
 突然ブラックが叫ぶ。

「はあ?」
 ケーンはきょとんとする。

「いや~、実は私、ケンイチ様は、単なる色ボケだと思ってたんです。
あっ……、なんでもないです! 
なんでもないんですってばぁ~!」
 ケーンは、ブラックのたてがみを、ぶち、ぶちっとむしっていた。
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