改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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25 ケーンの左腕になって

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 ケーンを下界へ送り、夜の女王はしょんぼりしているキキョウを、慈しみの目で見た。
 我が息子、最高の嫁と巡り会えた。

「キキョウ、つらいでしょうが、しばらくの我慢よ。
ケーンがあの百合女を懐柔したら、また一緒にさせてあげるから」
 夜の女王は、そう言ってやさしく微笑みかけた。

「はい!」
 キキョウは、けなげに応えた。

「見たところ、あなたの弱点は魔法ですね? 
じっくり鍛えてあげます。
ケーン様の嫁にふさわしい、もっと強い女になりなさい」
 ミレーユも微笑んで、涙ぐむキキョウに声をかける。

「ひゃい……」
 顔面崩壊のキキョウは、懸命に笑顔を作って応えた。


「ブラック、わかっているわね? 
ケーンとユリにばれないよう、見守りなさい」

「御意!」
 ブラックは女王にそう応え、二人の後を追った。

「ブラック、大丈夫かな? 
あいつ、お人よしだし、超抜けてるところもある」
 ケンイチは憂い顔でそう言った。

「ホワイト!」
「はい。ここに」
 女王の呼びかけに応え、ホワイトが片膝をついて控えた。

「わかっているわね?」

「御意。夫を監視します。
ぎりぎりまで手は出させません」
 ホワイトは夫の後を追って、転移した。

ちなみにホワイトは、ブラックの嫁ペガサスだ。時々残念なブラックより、はるかに使える。


「ちょっと過保護かな?」
 愛息子に、二重のセキュリティーをつけた女王は夫に言う。

「いいんじゃないの。ケーンが死んだとしても、死体が新鮮ならホワイトがいれば蘇る。
ケーンを失ったら、俺たちが生きてる意味がなくなる」

「そうだね。今晩バイオレットとガーネットがいなくてよかった。
あの二人がいたら、親バカだと怒られるところだ。
ところで、あの二人は?」
 女王はミレーユに聞く。

「古龍と飲み会だそうです。保護区で活きのいいベヒモスを狩ったそうですから」
 ミレーユは苦笑して応える。

あの二人がいたら、ユリはみじん切りにされるところだった。

関西弁汚染の呪いを解く一番簡単な方法は、呪いをかけた張本人を、魂レベルまで抹殺することだ。

ケーン様や肉親のお二人、とりつかれたパーティメンバーには、それができないが、自分やあの二人なら可能だ。

まあ、あんなひねくれ者の嫁もおもしろい。

ケーン様、ガンバ! 

心の中で声援を送るミレーユだった。


「ベヒモスを肴に古竜と飲み会」。豪快すぎるこぼれ話にキキョウはあっけにとられていた。

そんなキキョウに、王宮に帰ってきたバイオレットが言う。

「キキョウ、聞きたいんだけど、ケーンのどういったところがよかったの? 
あんたからモーションかけたそうじゃない」

「どういったところと言われましても」
 キキョウは返事に困る。「いかにも頼りなさそうなところ」。今から思ったらそれが一番の原因かもしれないが、そんなこと、ここでは口が裂けても言えない。

ところが、実際は自分が足元にも及ばないほど強かった。そのギャップで完全にいかれてしまった。


「キキョウ、悪いけど、あんたのことは調べさせてもらった。
あんたが、ただ一人生き残ったことは知ってる。
いかにも危なっかしそうな坊やを守りたい。
そう感じたんでしょ?」
 キキョウの表情は、バイオレットの言葉で、にわかに曇った。

彼女はトリプルSクラスに挑んだダンジョンで、父親と弟を失っている。コーガの里の仲間二人も。

生き残った彼女は、トリプルSクラスに昇進後、パーティに加わることを拒み続けていた。

彼女は家族や仲間を失うのが怖かった。


「弟さんは、相当背伸びしてたみたいだね。
そんな弟さんをあなたは守れなかった」
 キキョウは、女王の言葉に、うなだれて唇をかんだ。


「この世界には、三大名刀と呼ばれる刀が存在するの。
光の女神が所有する日輪刀。
攻撃力で言えば刀の中でダントツ。
ケーンがあなたに与えたマサムネ改は、切れ味では最高の名刀よ。
どれほどの防御力があっても、全く関係なく斬れちゃう。
その意味で日輪刀と肩を並べる。
それはあなたも実感してると思う。
同時に、欠点にも気づいているでしょ?」

「多分ですけど、体が大きすぎる魔物を仕留めるには、時間がかかり過ぎる。
そういうことでしょうか?」
 女王の言葉にキキョウは答える。

「その通りよ。
ドラゴンやサイクロプス、ベヒモス。
巨体の急所には届きにくい。
あなたの最大の長所は、俊敏性を生かした手数と回避能力。
欠点は攻撃が軽いこと。
そんなあなたに最も適した刀を与える」
 そう前置きし、女王はキキョウに歩み寄り、一振りの刀を差し出した。

キキョウはおずおずと両手で刀を受け取る。軽い……。

「銘は月影。傷をつけるたび、敵の戦う意欲や魔力、筋力をそぎとる能力がある。
つまり、敵の攻撃力を弱める力を持ってるの。
その力でケーンを守って。
あの子、無茶をするから」

「はい!」  
 キキョウは感激して月影刀を胸に抱きしめた。


女王様は私の性格や戦い方、そして深層心理までも正確に分析している。
この刀は、これ以上ないほど私に適した刀だ。


「あなたをケーンの左腕と認めます。
夜空城と私の真の使命を教えます。
ついてきなさい」
 女王は威厳に満ち溢れた表情と声で言った。


数分後、キキョウは驚くべき事実を知らされ、体の震えを抑えられなかった。

なぜ夜空城は、夜の空に浮かび続けてきたのか。

なぜ女王と彼女の眷族は、永遠に生きなければならなかったのか。

ケーンさえまだ知らない事実を知り、キキョウは痛切に思った。

私はもっともっと、強くならなければならない。
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