40 / 170
40 生餌の少女
しおりを挟む
城砦都市クオーク。
テリーヌ帝国最東部に位置するこの都市は、対魔王軍防衛のための、最前戦基地として機能している。
五千人の精鋭の部隊を養うため、強固な城壁に囲まれた町は、自給自足がぎりぎり可能なだけの農・工・商業施設が、城壁内に整っている。
というのも、この都市周辺には、強くて凶暴な魔物が多数徘徊している。比較的安全な近隣都市と、頻繁に交易を保つことは難しい。
したがって、税が極端に抑えられたこの町に集まる平民は、ただの平民ではない。
ある程度家族や、自分の身が守れるだけの力を持った、冒険者や元冒険者がほとんどだ。
いざ魔王軍が攻めてきた、といった緊急事態には、平民も武器を取り、軍に協力している。
そんな特殊な町の性格上、平均年齢が極端に若い。
クオークで一財産つくり、老後は安全な町や村で余裕を持って暮らす。
そんな野望と活気に満ち溢れているのがこの町だ。
冒険者ギルドに隣接する食堂兼酒場。ケーン達四人は、女性ばかりのパーティ四人と、酒を酌み交わしていた。
「ケーンクンの、ちょっといいとこ見てみたい!」
「ケーン、飲みま~す!」
ケーンは、でっかい陶製カップに入った酒を、豪快に飲み干す。
「スッゲー強い! あっちの方も強い?」
女冒険者たちは、少年に見えるケーンをからかう。
「どんと任せちゃってください!
一晩十発はいけます!」
ケーンは真顔で応える。
「キャー、頼もしい!
おねえさんと…する?」
たくましい肉体美を誇る女冒険者は、ケーンをいっそうからかう。
「四人まとめてでもいいよ!」
酒が入ったケーンは、ますます調子に乗る。
普通の肝臓なら、とっくにパンクするほど彼は飲んでいるが、ほろ酔い程度だ。
「ケーン、ええかげんにせえよ!」
ユリがマジギレする。
ケーンが新たに嫁をとるなら文句は言わない。だが、遊びならとうてい許せるものではない。
この四人は、ケーンの見た目より、かなり年上に見える。女盛りなのはたしかだが、お互い本気だとは思えない。
「冗談だって。ユリちゃんという、ちゃんとした嫁がいるのに、寝取ったりしないさ。
ユリちゃんも飲みなよ」
パーティリーダーが、ユリに酒を勧める。
「冗談、なの?」
ケーンが心外、という顔で言う。
「パーティの和を乱しちゃダメだって。
酒はこのへんにして、嫁をいたわってやりなよ。
強くてかわいい嫁じゃないか」
苦労人のリーダーは、しみじみと言う。
男女関係のもつれで、ばらばらになったパーティを、彼女はいくつも見てきた。
「僭越ながらケーン様、そろそろお開きがよろしいかと」
今日はブラックとホワイトも参戦した。
女冒険者たちは、オーガの群れに囲まれ、大ピンチだったから。
その恩に報いるため、女冒険者たちは四人をもてなしていたのだ。
「まあ、しゃ~ね~か。
ユリ、帰ろう」
ケーンはしぶしぶといった顔で、立ち上がった。
ユリはいそいそと彼に寄り添う。
「おねえさんたち、今日はゴチになりました。
まったね~!」
ケーンはユリに腕を開けた。ユリはにこっと笑い、ケーンに腕を組んだ。
「こっちこそ助かった」
「バイバーイ!」
「若いっていいよね!」
「まったね~!」
女冒険者たちは、軽く手を振って、ケーン達を見送った。
ケーンは酒場を出て、ユリの耳元でささやく。
「ごめんな。見張ってる女がいたから」
「えっ……」
ユリはびっくりした。全然気づかなかった。
それと同時に、自分を恥じた。ケーンは正真正銘のスケベだが、今日はどこか様子が違っていた。
そうか、監視者に軽薄ぶりを装っていただけか……。
「うまくいけば、シックスプレイもアリかと思ってたんだけどな。残念」
カクンとくるユリだった。
もちろんジョークですよ、ジョーク。ケーンは嫁になる女以外、抱く気はない。
ほんとだよ……。
とある宿。四人の女が鳩首会談。
「あの坊や、マジで夜の女王とケンイチの子?
強いことは確かだけど……」
「フツー、だよね?
せいぜいSランク?」
「超軽いし……。
伝説ではケンイチも、超スケベだってことだけど」
「あのヤラシー顔、とても見ていられませんでした!
私、あのパーティに、潜入調査するなんていやです!」
「新人。お前は若さと美貌だけで、この任務に選ばれたんだ。
体を張ってあの坊やを落とせ。
それが私たちの仕事だ」
「処女膜の一枚や二枚、どうってことない」
「男はバカだから、処女だということだけでも大喜びだ」
先輩の冷厳な言葉に、少女はうなだれた。
処女膜に二枚目なんてないよ。心の中だけで反論する少女だった。
その少女は、とある事情によって、シャドーと呼ばれる組織に拾われたばかりだ。
そんな新人が、この重大な任務に選ばれたのは、聖神女だと言われても納得できるほどの、美貌と神秘的な雰囲気を持っているからだ。
ケンイチの息子がいかにも好みそうな。
素人同然の彼女が、素性を見破られる可能性は低いし、組織の事情もほとんど知らない。
また、食い逃げされても惜しくない実力だ。
つまり、「生餌」として、最適とシャドーの幹部は判断した。
テリーヌ帝国最東部に位置するこの都市は、対魔王軍防衛のための、最前戦基地として機能している。
五千人の精鋭の部隊を養うため、強固な城壁に囲まれた町は、自給自足がぎりぎり可能なだけの農・工・商業施設が、城壁内に整っている。
というのも、この都市周辺には、強くて凶暴な魔物が多数徘徊している。比較的安全な近隣都市と、頻繁に交易を保つことは難しい。
したがって、税が極端に抑えられたこの町に集まる平民は、ただの平民ではない。
ある程度家族や、自分の身が守れるだけの力を持った、冒険者や元冒険者がほとんどだ。
いざ魔王軍が攻めてきた、といった緊急事態には、平民も武器を取り、軍に協力している。
そんな特殊な町の性格上、平均年齢が極端に若い。
クオークで一財産つくり、老後は安全な町や村で余裕を持って暮らす。
そんな野望と活気に満ち溢れているのがこの町だ。
冒険者ギルドに隣接する食堂兼酒場。ケーン達四人は、女性ばかりのパーティ四人と、酒を酌み交わしていた。
「ケーンクンの、ちょっといいとこ見てみたい!」
「ケーン、飲みま~す!」
ケーンは、でっかい陶製カップに入った酒を、豪快に飲み干す。
「スッゲー強い! あっちの方も強い?」
女冒険者たちは、少年に見えるケーンをからかう。
「どんと任せちゃってください!
一晩十発はいけます!」
ケーンは真顔で応える。
「キャー、頼もしい!
おねえさんと…する?」
たくましい肉体美を誇る女冒険者は、ケーンをいっそうからかう。
「四人まとめてでもいいよ!」
酒が入ったケーンは、ますます調子に乗る。
普通の肝臓なら、とっくにパンクするほど彼は飲んでいるが、ほろ酔い程度だ。
「ケーン、ええかげんにせえよ!」
ユリがマジギレする。
ケーンが新たに嫁をとるなら文句は言わない。だが、遊びならとうてい許せるものではない。
この四人は、ケーンの見た目より、かなり年上に見える。女盛りなのはたしかだが、お互い本気だとは思えない。
「冗談だって。ユリちゃんという、ちゃんとした嫁がいるのに、寝取ったりしないさ。
ユリちゃんも飲みなよ」
パーティリーダーが、ユリに酒を勧める。
「冗談、なの?」
ケーンが心外、という顔で言う。
「パーティの和を乱しちゃダメだって。
酒はこのへんにして、嫁をいたわってやりなよ。
強くてかわいい嫁じゃないか」
苦労人のリーダーは、しみじみと言う。
男女関係のもつれで、ばらばらになったパーティを、彼女はいくつも見てきた。
「僭越ながらケーン様、そろそろお開きがよろしいかと」
今日はブラックとホワイトも参戦した。
女冒険者たちは、オーガの群れに囲まれ、大ピンチだったから。
その恩に報いるため、女冒険者たちは四人をもてなしていたのだ。
「まあ、しゃ~ね~か。
ユリ、帰ろう」
ケーンはしぶしぶといった顔で、立ち上がった。
ユリはいそいそと彼に寄り添う。
「おねえさんたち、今日はゴチになりました。
まったね~!」
ケーンはユリに腕を開けた。ユリはにこっと笑い、ケーンに腕を組んだ。
「こっちこそ助かった」
「バイバーイ!」
「若いっていいよね!」
「まったね~!」
女冒険者たちは、軽く手を振って、ケーン達を見送った。
ケーンは酒場を出て、ユリの耳元でささやく。
「ごめんな。見張ってる女がいたから」
「えっ……」
ユリはびっくりした。全然気づかなかった。
それと同時に、自分を恥じた。ケーンは正真正銘のスケベだが、今日はどこか様子が違っていた。
そうか、監視者に軽薄ぶりを装っていただけか……。
「うまくいけば、シックスプレイもアリかと思ってたんだけどな。残念」
カクンとくるユリだった。
もちろんジョークですよ、ジョーク。ケーンは嫁になる女以外、抱く気はない。
ほんとだよ……。
とある宿。四人の女が鳩首会談。
「あの坊や、マジで夜の女王とケンイチの子?
強いことは確かだけど……」
「フツー、だよね?
せいぜいSランク?」
「超軽いし……。
伝説ではケンイチも、超スケベだってことだけど」
「あのヤラシー顔、とても見ていられませんでした!
私、あのパーティに、潜入調査するなんていやです!」
「新人。お前は若さと美貌だけで、この任務に選ばれたんだ。
体を張ってあの坊やを落とせ。
それが私たちの仕事だ」
「処女膜の一枚や二枚、どうってことない」
「男はバカだから、処女だということだけでも大喜びだ」
先輩の冷厳な言葉に、少女はうなだれた。
処女膜に二枚目なんてないよ。心の中だけで反論する少女だった。
その少女は、とある事情によって、シャドーと呼ばれる組織に拾われたばかりだ。
そんな新人が、この重大な任務に選ばれたのは、聖神女だと言われても納得できるほどの、美貌と神秘的な雰囲気を持っているからだ。
ケンイチの息子がいかにも好みそうな。
素人同然の彼女が、素性を見破られる可能性は低いし、組織の事情もほとんど知らない。
また、食い逃げされても惜しくない実力だ。
つまり、「生餌」として、最適とシャドーの幹部は判断した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる