改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

文字の大きさ
41 / 170

41 よかった、よかった

しおりを挟む
 翌日、日が傾きかけた時刻のギルド内は、クエスト達成の報告や、素材持ち込みの冒険者たちでにぎわっていた。

「テレサ、言いにくいんだけどさ、あんたここを離れた方がいいよ」
「神聖魔法は使えるけど、すぐに魔力切れをおこしちゃう。
別の町なら、回復役として重宝されるよ」

「リーダー、はっきり言ってやんなよ。
足手まといだって。
だから私は反対だったのよ」
 三人の女の言葉に、テレサはうなだれる。

「お金が必要なんです」
 テレサは半ベソで言う。

「そんなの誰でも同じだよ。
残酷だけど、これ以上ウチのパーティに置いておけない。
商人のキャラバンにでも入れてもらって、この町を離れなさい。
行こうか?」
 リーダー格と思われる女は、仲間を促し、ギルドから出ていった。

少女はうなだれた顔をキッと上げ、昨日ケーンが助けたパーティに歩み寄る。

「お願いですから、私を仲間に入れて下さい。
神聖魔法が使えます!」

「悪いけど、ウチは間にあってるから」
 今のやりとりを見ていて、仲間にいれるほど、その女はお人好しでなかった。

「あの~……、仲間に入れて下さい! 
女の人がいるパーティがいいんです!」
 テレサは、その女と軽口をたたいていたケーンの腕にすがりつく。

「いいよ。俺好みだし」
 ケーンは、あっさり認める。

「ちょっと、ケーン!」
 ユリが血相を変えて詰め寄る。

「俺がいいと言ってる。いいんだよ」
 ケーンはわけあり顔で、ユリにウインクする。

ユリは気づいた。そうか、この女、ゆうべケーンが言ってたテリーヌの間者か……。

ケーンに何か考えがあるのだろう。ユリは口を挟まないことにした。

もちろんブラックやホワイトは、基本的にケーンの意思に任せている。苦笑してケーンに軽くうなずいた。

なんだかミレーユ様に、感じが似てるし。よかったですね、ケーン様。

ブラックは、素材引き取りカウンターに歩いていった。


 ケーン達は、テレサを自分たちの宿に連れて帰った。自分とユリが借りている部屋に、テレサを通す。

「荷物は?」
 ケーンが聞く。

「そうですね……。取ってきます」
 テレサは、ほっとした顔で応える。どうやら本当に自分を迎える気らしい。
 よかったと言えるか、微妙だけど。

「うまく潜り込めたと報告しなよ。
そして、俺は想像通り、夜の女王とケンイチの息子だ。
聖神女略奪はあきらめた。
ひょっとして、その情報がゲットできたら任務完了?」
 ケーンの言葉に、テレサはピキーンと固まった。

「シャドーと、いったっけ? 
間諜なんてつまんない仕事、やめた方がいい。
本当に金が必要ならやるよ。
君はどことなくミレーユに似てる。
それだけでも金をやる価値がある」

「ケーン、いきなり放りだしたら、信じてくれんで。
あんた、ケーンは気にいったみたいやし、『うまく潜り込めた』とだけ報告し。
しばらくウチらのパーティで腕磨いたら? 
ケーンはドスケベやけど、いやがる女に手は出さん。
貞操は保証したるわ」

「どうして?」
 テレサは、複雑な思いを込めて聞いた。

「ケーンの目的は、冒険のスリルを楽しむことと、嫁探しや。
今んとこ三人の嫁はゲットしとる。
あんた、たしかにミレーユ様と感じ似とる。
あんたの気持ち次第やけど、嫁候補と認めたる」
 ユリはケーンの意を汲んでそう言った。

それは自分の気分でもある。この純情そうな乙女、どうやってこましたろ? 

ケーンの嫁となり、他の嫁とも百合仲間となって、ある意味ユリの百合趣味は、一層磨かれていた。

 テレサは考え込んだ。信じていいものだろうか? 

話がうますぎる。だが、「うますぎる話」に乗っても、自分にデメリットがあるとは思えない。

どうせこの男に、抱かれる予定なのだし。

「荷物、取ってきます」
 テレサは腹をくくって部屋を後にした。


 テレサは、先輩間諜が詰める宿へ帰った。

「どうだった?」
 シャドーの分隊長が聞く。
「あっけなく成功しました」
 テレサはうつむいて答えた。

「性交したのか?
早すぎない?
まあ、あの若さだ。早くても当然か」
 分隊長は、少し誤解した。

「私、なぜだか気に入られたみたいです」
 テレサはうつむいたまま答えた。

「そうか。それはよかった。
で、よかったか?」
 安心した分隊長は、下ネタを仕掛けてみた。全くウブな女だ、と、思いながら。
つまり、やましさからくるテレサのおどおどした感じ、処女をなくしたことが原因だととらえていた。

「まあ、よかったのではないでしょうか……」

「そうかそうか、よかったよかった」
 
 二人の会話は、かみ合わないままだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...