改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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57 召喚の間

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 神聖テリーヌ帝国、光の女神の神殿召喚の間。

勇者召喚の儀式で、ここへ入ることができるのは、聖神女だけだ。そして女神から神託を直接受けられるのも、この場所と聖神女だけだ。

現聖神女ジャンヌ・モローは、女神からの神託を受け、新勇者召喚を待ちわびていた。

聖神女といえども、そこは見た目年齢幼女。あまりにも遅いので、完全に寝落ちしていた。

召喚魔法陣が光り輝き、新勇者、沖田総子は無事転移を終えた。

「こっちも寝てるし……。
女神様や聖神女様も相当いいかげん。
え~っと、聖神女、ジャンヌ・モロー様、起きて下さい」
 総子はジャンヌを揺り起こした。

「う~ん……。
はっ……。
新しい勇者ちゃまですね? 
お待ちしておりました」
 寝ぼけ幼女聖神女は、呂律怪しく礼を尽くした。

「初めまして。沖田総子です。
ごめんなさい。
ずいぶん待たせたみたいですね」
 総子は気を取り直し謝った。召喚がずいぶん遅くなってしまったのは、自分の責任だという自覚はあった。

召喚早々、幼女虐待の罪を犯してしまったかもしれない。

「いえ。聖神女の務めですから。
私こそ眠ってしまってごめんなさい」

「いえ、私が悪いの」

「そんなことありません。
私が悪いんです」

「違います! 
私が悪いんです!」

「違いますぅ~! 
私が悪いんですぅ~!」

「違いま…、きりがないですね。
そうそう、お聞きしたいことがあるのですが。
ケーンという男の名前、ご存知ですか?」
 幼女相手に何をムキになってる。総子は反省しながら、気になっていたことを聞いた。

「知ってますぅ~……。
失礼。はしたなかったですね。
存じております。
夜の女王と、元勇者ケンイチの息子です」
 幼女聖神女は、頬を赤らめて応えた。ケーンの名前が出たことが意外だったから。

「元勇者の息子! 
そうか、光の女神様は、ケーンという男と、パーティを組めと言いたかったんだ。
うん。文脈からして間違いない。
たしか、信頼できるパーティメンバーを、どうのこうのと言ってたから。
ジャンヌ様、そのケーンという男、強いでしょ?」

「よく知りませんが、強いはずです。
夜の女王は、光の女神様に匹敵する力を持っています。
この世界に物理的な干渉可能という意味では、光の女神様をしのぎます。
ケンイチも歴代最高の勇者だと、聞き及んでおります。
その二人の息子ですから、弱いわけがありません。
ケーンがどうかしましたか?」

「光の女神様が、彼をパーティに加えろとおっしゃったんです。
…多分」

「へ~、そうなんですか? 
意外。
フフ、ケーン、私の体、狙ってたんですよ」
 幼女聖神女は、平坦な胸を張る。

「え~! 変態?」
 総子はドン引き。

「違いますよ。
私が十二歳だと知らなかったそうです。
魔王側に情報を漏らさないため、私のことはトップシークレットですから」

「そうなんですか? 
安心しました。
どこにいるかご存知ですか? 
早くパーティを組んで、レベルアップしないと」

「たしか、ライラックに帰るということですが……。
あの~、私も連れて行ってもらえませんか? 
ケーンという男に興味があります。
ほら、女の子にとってあこがれじゃないですか! 
籠の鳥の中の王女をさらって、妻にするチョイワル王子様。
はっきり言って、今の生活退屈すぎです。
それに、勇者には神聖魔法が使える、女神様の巫女が必ず必要です。
自慢するようですが、私は最高レベルの素質を持っています。
だからこの歳で、聖神女に選ばれたんです」

「籠の中の鳥と思うんですが……。
そうですね。おつらいんですね? 
ずいぶん縛られてます?」

「ガチガチに。
おばさん神官としか話できないし、外出なんてもってのほか。
勇者のパーティに加わった、聖神女の前例はあります。
歴代聖神女最高峰のミレーユ様。
勇者のパーティに加わる以外、聖神女を辞める方法はないんです。
私だって普通に友達作りたいし、普通に恋をしたい。
そして、普通に夫を選んで…ごにょごにょ……」

「わかりました。
あなたは今から私の仲間です。
だけど、どうやってここを抜けるんですか? 
偉い人に頼めば大丈夫?」

「大丈夫なわけないです! 
だけど、最高レベルの転移魔法陣がありますね……」
 ジャンヌは悪い顔をして、魔法陣を指さす。

「転移魔法、使えるんですか?」
 総子が聞く。

「もちろんです! 
こう見えても聖神女ですから!」

「じゃ」

「では……」
 新勇者と幼女聖神女はうなずき合う。

そして、魔法陣の中へ。

「目的地、ライラック、城門前。
転移!」
 ジャンヌは魔法発動。二人はライラックへ転移した。

魔法陣の中に、紙切れが落ちてきた。

『探さないでください。
新勇者様と冒険の旅に出ます。
ジャンヌ』

 紙切れには、そう書いてあった。
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