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62 メグ、どっと疲れる

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 メグはレミの伯母の家で泊った。ケーンにもらった魔法のバッグを見つめる。
 どんだけ高性能なの? 服などの身の周りのものはもちろん、家具や店に残っていた商品まで、全部入ってしまった。
 ケーンさんの言う通りだった。入れたいと思うものに、触って念じるだけで入っちゃった。

 劣化抑制機能まで、付いているらしい。生ものでも一か月は新鮮なままだ、とのこと。

 これを売ったら、多分一生食べられるだろうね?
 売れるわけないけど……。こんなとんでもない物、本当にもらっていいのかな?

「メグちゃん。レミとケーンさんが帰ってきたよ」
 ドアの外から、伯母ちゃんの声が。

「は~い!」
 メグはいそいそと部屋から出た。今日は新しい店をさがす予定だ。商業ギルドにかけあって、仕入れルートをさがすことも必要だ。
 
 がんばるぞ!

 クズな旦那のことなんか、全く未練を感じないメグだった。
 むしろ超すっきり!

 商品をみんな持ってきたのは、すべて自分の甲斐性だとメグは思っているから。
あの男は将棋ばかりで、何から何まで切り盛りしたのはメグだった。
 
商品を残しても、あの男に店はやっていけない。ろくなものも残っていなかったし。
それに、クズヤローには、店と土地の権利が残っている。あの高利貸しに、いちゃもんはつけられるかもしれないが、知ったことではない。
 考えてみたら、惰性だけの夫婦生活。色々なけじめをつけてくれたケーンさんとレミには、一生頭が上がらない。


 ケーンはレミとメグを伴い、商業ギルドへ。商業ギルドは、ケーンも初めてだった。

 どんな受付嬢なんだろう? ワクワク!
「すみませ~ん!
商売始めます!」
 期待通りのおっぱいに、ケーンは話しかけた。

「だしぬけですね……。
まず、商業登録が必要です。
ギルドから連絡がつく住所と、代表者の氏名、年齢、販売品を、これにご記入ください」
 受付嬢は、カウンターに羊皮紙を置いた。

 ケーンは腰に巻いたポーチから、ボールペンを取り出した。ジャンヌ超お気に入りの、有名なウサギが頭に付いているやつ。
そのミッ〇ィーという名称は明かせない。商標登録の関係で。

「なんですか。それ!」
 受付嬢とメグは叫んだ。

「古代遺跡で拾ったそうだよ。
父ちゃんの形見?」
 そう答えて、ケーンは必要事項を記入していった。

ケンイチは、もう何度ケーンに殺されただろう? ピンピンしてるけど。

 商業登録を終え、ケーンたちは、さっきのギルド嬢に、空き店舗を案内されている。
 ムフ! ぷりぷりだぜ!

 ケーンはギルド嬢のお尻を思う存分鑑賞。あの厚いスカートから、わずかにうかがえるお尻もいい!
 
「ここです。条件にぴったりだと思いますが」
 不意にギルド嬢は立ち止まり、今度は胸の谷間をケーンに見せつけた。
 ギルド嬢的に、見せつけてはいないが、制服のデザイン的にそうできている。

「なるほど。大きさ的には、ちょうどいいかな」
 ケーンは胸の谷間に向かって言う。
 いや、店舗の大きさですよ?

「雑貨店ということですが、主に何をお売りになるんですか?」
 ギルド嬢は、おっぱいを意識的に突き出して聞く。この男、登録料金貨一枚、保証金として金貨十枚を、あっさり出した。
 店舗も即金で買い取りだという。土地と合わせて金貨百枚。

 つまり、かなり金を持っている。本職はA級の冒険者だと言うし。

グフ……、うまくいけば……。じゅるり……。

「ライラックは内陸だから、塩が高いよね?
砂糖も高級品だし、香辛料も不足しがちだ。
俺、確かなルート持ってるから、その三つが目玉かな」
 ケーンは、あっさりとおっぱいに答えた。

「塩と砂糖と香辛料!
愛人でもいいです!
どうか私を召し上がってください!」
 受付嬢は、ケーンににじり寄った。

「いや~、人妻ステイタスは魅力的だけどさ、パス!」
 ケーンは視認していた。受付嬢の左薬指に入れられた銀の指輪。

ちなみに、エンゲージリングも、ケンイチがこの世界に流行らせた風習だ。中流階層以上では、かなり一般化している。

「即別れてもいいですよ!
おそまつな旦那だし」
 受付嬢の両目には、金貨が光っていた。気分の問題だけど。

「俺、もう六人の嫁がいるから。
昨日二人増えたばかりだし、さすがに怒られちゃうよ」
 あっさりとかわしたケーンだった。人妻は「見てるだけ」に限る。めんどくさいんだもん!

 
 ケーンは契約を交わし、店を手に入れた。大通りから少し入った立地条件以外、注文通りの店舗だと思う。若干ふてくされ気味だったギルド嬢には、少し気の毒なことをした。

 彼女の旦那には、もっと気の毒なことをしなかったから、良しとしよう。

「ケーンさん、本当に塩と砂糖、香辛料仕入れられるんですか?」
 メグは不安げな顔で聞く。
「もちろん!
夜空城で塩は精製してるし、サトウキビと香辛料もバッチリ。
実は夜空城、それで潤ってる。
仕入れ代はタダだから、ぼろもうけできるよ」

「はぁ……」
 夜空城なら当たり前か、とメグは納得。たしかにぼろもうけだ。

「せっけんやシャンプー、リンス、それも売ろうと思えば可能なんだけど、どうかな?」
「ケーンさん、ほどほどに」
 レミがやんわりと止める。夜空城産の日用品を扱ったら、大商会になってしまう。
 メグ一人でやっていけるとは思えない。最低限の生活…、売るものが売るものだから、絶対最大限になるだろうが、とにかく女一人の生計が立てばいいのだ。

「だよね~……。制限つけた方がいいな。
少量を他の店より少しお安く?
そんな感じでいい?」
 ケーンはメグをうかがう。

「もちろんです!
身の丈に合う感じで!」
 ちょっぴり安心のメグだった。

 メグはケーンが帰った後、メイに手伝ってもらって家具類を配置した。一階は店舗。二階は居住スペースとなっている。
 商売は一週間後に始める。「普通」の商品を仕入れ、持ってきた商品の陳列もしなければならない。

「今日のところは、こんなもの?」
 レミが聞く。
「そうね……。なんか疲れちゃった」

「まあ、ゆっくり休みなさい。
明日にはユニットバスとシャワートイレ、ケーンさんが用意してくれるから」
「なにそれ?」
「明日のお楽しみよ。
あ、ケーンさんからこれを預かってる」
 そう言って、レミは魔法のハンドバックから、透明な石を取り出した。
「何?」
「結界石よ。女一人なんだから、用心しないとね。
それと、防犯ブザーも預かってる。
常に持っておきなさい。
危険を感じたら、このボタンを押すの。
夜空城から、つよ~~~いガードウーマンが、跳んでくるから。
頻繁に使うことは、お勧めできない。
加減が超下手なんだって」

「がーどうーまん?」

「用心棒? ケンイチさんが作ったオートマタ?
本当はアンドロイドと呼ばれる機械人間」

 まあ、いいか……。あ、
「結界石って、聞いたことあるような。
それって何?」
「結界を張る魔道具。階段に置いておきなさい。
魔力認証した人以外に、誰も入れなくなる」

「ひょっとして高いの?」
「聞かない方が幸せよ。
じゃ、明日また来るから」
 レミはにやにやしながら帰って行った。

 どっと疲れたメグだった。
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