改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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64 ダンジョンチャレンジ再開

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 ケーンの店は、当初金と勇気がない、好奇心だけの冷やかし客しか来なかった。だが、売っているものは希少で確かな品だ。
勇気はそれほどないが、金がある上客がつき始めた。冷やかし客は相変わらずで、メグだけでさばききれなくなり、王宮のオートマタも交代で店員として働いている。冷やかし客を追い出す必要があるから。
別に儲ける気がないから、ケーンは放置している。嫁たちは噂がさらに広まれば、大盛況となるに違いないとにらんでいる。
現にその兆候は確実に生まれている。
 
ケーン達は、懸案だったSクラス難易度のダンジョンに挑戦。

Sランクにこだわるのには、理由がある。超一流冒険者の証しであり、どの国に行っても、かなり自由に活動できるからだ。

都市部城門のフリーパスはもちろん、家を借りる時の保証人や保証金が不要となる。

高ランクの魔物の素材を売るときにも、状況を聴取されない。

ギルドから様々な情報を、優先的に無償で受けられるなどなど。いわばギルドから、その身元と実力が保証されるわけだ。

 今回のメンバーは、ケーン、ユリ、テレサの三人。

ギルド登録を終えたばかりの総子とジャンヌは、レミとペガサス夫婦を付けて薬草採集。

総子とジャンヌのコンビなら、いきなりDクラス程度の魔物でも楽勝だろうが、こればかりは仕方がない。

ケーン達がSランクに昇格したら、ランクアップにひたすら協力する予定だ。Sランクが一人でも加わったら、Bランクまでなら、どのクエストも受けられる。


「う~ん……。上級ポーションか。
前やったら感動ものやったけど」
 ユリが隠し部屋の宝箱を開けて、愚痴をもらす。

ダンジョンの宝物なら品質も均一で信用でき、上級ポーションは、重い傷と、体力全回復が可能な代物。

だが、回復役のテレサのいる今は、役立つ機会が少ない。

「Sランクになったら、母ちゃんにまた頼むかな。
能力ダウン」
 ケーン達は、クオーク近辺でさらにレベルアップしていた。

以前は苦労した魔物も、楽に倒せる。前にもこのダンジョンに来たことがあるので、実力確認の指針にはなっているが、やはり物足りない。

「私はまだまだキツイです。
二人がいるから、余裕があるけど」
 テレサはケーンの注文で、武器のランクを落としている。魔玉の指輪は装備したままだから、魔力切れの心配はないが、中級魔法でも一発で倒せない。

ちなみに、上級魔法は、攻撃範囲が広いものが多く、ダンジョンではむやみに使えない。

「まあ、パーティ全部で一つの力や。気にせんとき」
 ユリは気づいている。本物の聖神女ジャンヌが仲間に加わり、テレサが内心焦っていることを。

ジャンヌは大人に近い肉体を得たが、基本スペックは幼女のままだ。白ウサ着ぐるみ、着たままだし。
それでもさすが聖神女。
戦闘に慣れたら、十分な戦力となりそうだ。

それほど彼女の資質は高い。女神の加護の有無は、想像以上に大きいようだ。

「こんなこと、器の底が抜けてる俺が言ったら、気を悪くするかもしれないけど、生まれもっての器には限界がある。
だけど、経験は裏切らない。
テレサに必要なのは、経験を重ねて無駄を削ることだ。
まだまだ魔力ロスがあるよ」
 ケーンはテレサの肩を抱く。一生懸命背伸びするテレサが、かわいくて仕方ない。
なんだかアニキか父親気分。

「そうですよね。
ケーンさん、身体能力はユリさんに劣る。
だけど、動きに一切の無駄がない。
いいお手本です」
 テレサは笑顔を見せる。

「どうせわたしゃ、身体能力だけの女ですよ。
なにもかも性悪光の女神が悪い」
 ユリがわざといじけてみせる。

その時、青白い光を放つ魔法陣が地面に浮かび、魔物が転移されてきた。

「うわっ…ベヒモスや! 
ありえんやろ! 
そうか、ごめんや。光の女神様。
ウチが悪かった」
 ユリは光の女神の仕業だと悟る。

ベヒモスは、このダンジョンの一階で出てくる魔物ではない。きっと悪口の仕返しだ。


「ひゃっほ~! 光の女神も気が利いてる!」
 喜々としてケーンは、魔物に斬りかかった。五メートルはジャンプして、剣で首を薙ぐ。

「ひゃ~! 
こんなに硬かったんだ! 
楽し~!」
ケーンの剣は、十センチほど入っただけだった。それでも多少体力を削れたはず。

ブレス攻撃を用意していたベヒモスは、怒りのあまり、凶悪な長い爪でケーンを引き裂こうと右腕を振る。
ベヒモスの攻撃力は最強レベルだ。かなりの装備でも、ワンパンチで人体などぐしゃぐしゃになる。

だが、巨体のため、動作はどうしても緩慢になる。ベヒモスのリーチを見きったケーンは、ギリギリでかわす。

「あっぶね~!」
 伸びきったベヒモスの腕を踏み台に、ケーンは右目を狙って突きを入れる。

「ギィヤ~~~!」
 ケーン会心の突きが、ベヒモスの右目に深く刺さった。

両足に力を込め、素早く剣を引き抜き、地面に着地。

魔法で身体強化と氷属性を矢にまとわせたユリは、弦を引き絞り、左目を狙って放つ。
矢は過たず、左目に突き刺さった。

ブレスに備え、三人すべてにマジックバリアを張り終えたテレサは、ベヒモスの口を狙って、アイススピアの魔法を放つ。
最も危険なブレスの、範囲攻撃を防ぐ意図だ。

視力を失ったベヒモスは、やみくもにパンチを振るうが、こうなれば脅威は半減だ。

関節部を精密攻撃し、動きを鈍らせる。そしてちびちびと惨殺するのみ。

ベヒモスの名前にビビっていたユリとテレサも、冷静になって着実に攻撃を重ねていった。

もちろん、返り血を全身に浴びたケーンは、餓えた獣のごとく剣を振るう。

やがてベヒモスは、ぴくりとも動かなくなった。誰の攻撃も急所まで届かなかったが、血液の流出がおびただしく、生命活動を支え切れなかったのだ。

ベヒモスは風化し、後には大量の金貨と、ベヒモスの革鎧が残った。

この勝因は、いち早く攻撃を加え、ブレス攻撃を中断させたケーンの果断さに尽きる。

いきなりのベヒモス召喚にひるんだユリとテレサ。
防御や攻撃体制の準備が遅れた。ブレスにさらされたら、大ダメージを負っていただろう。

 テレサはクリーンの魔法で、血だらけになったケーンをきれいにしてやる。

ケーンは装備していた武具をすべて脱いだ。ケーンのパオーンは、著しくたぎっていた。

来るな……。ユリは苦笑して、壁に両手をつきお尻を向けた。餓えた野獣のケーンは、荒々しくユリのスッパツとパンツをずりおろし……。

テレサは二人の交歓を安全にするため、宝箱の部屋に結界を張った。
次は私。いそいそとパンツを脱ぐテレサだった。

実力以上の強敵を倒した時のケーンは、いつもこうだ。ケーンのパーティに加わった女にとって、その儀式は最高のご褒美だった。
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