改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

文字の大きさ
80 / 170

80 兄妹に引導を渡す

しおりを挟む
 一週間後のこと。

ケーン、キキョウ、ジャンヌのヒカリちゃんは、総子と模擬戦で戦う兄妹を見ていた。

『どう思う?』
 ケーンが念話で聞く。

『思い切り装備で固めても、Aランクに届かないと思います』
 キキョウが念話で応える。

『器の問題ですね。
気持ちだけが空回りして、一番危険なタイプです』
 ヒカリちゃんも念話で応える。

『俺もそう思う。どうしよう?』
 ケーンは途方に暮れる。

総子とジャンヌに付けて、レベルアップさせようという心づもりだったが、めちゃくちゃ足を引っ張りそうだ。

『エリックは、救いようがないほどのシスコンですね。
メイをケーン様の嫁にするには、問題大ありです』
 キキョウが苦笑して念話で言う。ちなみに、エリックは兄の名だ。ケーンは、さっきまで知らなかった。

『メイもエリックほどではないにしろ、重度のブラコン。
割って入ろうとしたら、険悪な雰囲気になります。
ケーン、頑張ってください。じゃ!』
 ヒカリちゃんはそう言い残し、ジャンヌの体から逃げていった。

三人は目を見合わせ、大きくため息をついた。


「そこまで! 総子、お疲れ」
 ケーンは模擬戦を止めた。「お疲れ」と言ったものの、総子は汗もかいていない。兄妹は息も絶え絶えといった感じ。

総子は幼いころから剣道を習っているし、部活にも入っていた。弱い者の指導はお手の物である。

「エリック、メイ、今晩付き合え」
 ケーンは引導を渡すべきだと思った。

「俺、男は……」
「兄者と二人で? それはちょっと……」
 なんだかひどく誤解しているらしい兄妹だった。

ケーンが二人にコスプレさせているのが、誤解を与える要因だろう。二人はコスプレモデルとして、最高の素材だ。

照れがりながらも、兄、妹の艶姿に、お互い萌え萌えであること、ケーンは見抜いている。

「じゃね~よ! 
君たち二人の将来、じっくり語りあおう」

「もしや、俺に婿入りしろと? レミさんに」
「私はケーンさんの側室?」
 どうしてそういう発想? ケーンはとことん問い詰めたくなった。
 
 ケーンは、兄妹を誘って酒場を訪れた。

供には世間を一番知っている、ユリを指名した。

冒険者があまり来ない店を選ぶ。

「あのさ、まず聞いておきたい。
二人とも、俺のことどう思ってる?」
 オーダーを終えた後、ケーンが切り出す。

「どうと言っても……。
ムサシ殿は、バトルとエッチにしか興味がない人だと、おっしゃってました」
 兄の言葉に、妹はコクコクとうなずく。

「兄は全然そっちの気がないんですけど。
ケーンさんがどうしてもとおっしゃるなら、覚悟を迫ります。
美形なら男も女も見境なしと、ムサシ様はおっしゃってました。
ですが、さっきも言った通り、兄妹まとめてはいやです」
 ムサシィ~! 今度会ったらぶん殴ってやる!

「俺、男には全然興味ないから!」
「やっぱり私ですか……。
いいです。目をつぶって抱かれます」
 妹は妙に悟った目で言う。

兄は苦悶の表情で、一つうなずく。

「そんなの俺のプライドが許さないから! 
どうしてその発想につながる?」

「そら、ケーンに全然利益がないからや。二人の面倒みても。
ちょっと待遇良過ぎたんちゃう? 
生活にしろ装備にしろ。
普通、裏があると思うわな」
 苦労人ユリが、ずばりと解説する。
兄妹はコクコクとうなずく。

「俺たちの装備、いったいいくら使ったんですか? 
週給金貨一枚ずつ? 
薬草採集と、店の用心棒の給料じゃないです。
メイもあなたを嫌ってるわけじゃありません。
俺、あなたなら許せます。
どうか、どうかメイを……」

「兄者!」
 メイは男泣きする兄の肩を抱いた。

「いや、装備は全部ダンジョンで回収したやつだから。
下手な装備だと、レミが危ないかもしれないし。
給料は…そんなものかな、と思っただけなんだけど」
 ケーンも一応常識は持っている。

夜の王宮謹製の、とんでもアイテムは二人に渡してない。

もちろん、とてつもなく高いアイテムばかりだが、換金しても仕方ないと、とっておいたものだ。

「あんな、内緒にしといてや。
ケーンはさる大国の王子様や。
世間一般と金銭感覚がずれとる。
そんだけの話や」
 困惑するケーンに代わり、ユリが説明する。

「やっぱり……。そんな気もしてたんだ」
 涙をごしごしとぬぐう兄に、妹はそっとハンカチを差し出した。

いいカップルなんだけどね。血がつながっていなければ。

ケーンは、憐みの目で二人を見た。


「あのさ、はっきり言う。
二人の器では、一流の冒険者に届かない。
ノーキョーに、どういうふうに言われた?」

「どうしてノーキョー様のことを? 
かなりマイナーな神様なんですが」
 メイは驚いて聞く。

「うん。なんとなくね……」
 ケーンはごまかす。

ケーンはヒカリちゃんから詳しく聞いていた。ノーキョーは農業の発展に力を発揮する神だと。
いくら手厚い加護を受けても、戦闘力はアップしない。

「私たちは、小さいころから父に、領内にあるノーキョー様の祠を守るよう命じられていました。
ですから、二人でまつり物を供えたり、掃除をしたり。
ノーキョー様が顕現なされて、二人の話をよく聞いて下さるようになりました。
兄は上の兄に比べて、剣技や魔法がひどく劣っていました。
ノーキョー様は、根性さえあったら、絶対強くなると兄を励まして下さいました。
私が父に、男爵の妾になるよう命じられた日のことです。
私がノーキョー様に別れを告げるため、二人で祠を訪ねました。
ノーキョー様は、涙を流して同情して下さいました。
そして、まつり物のお酒をたいそう召し上がって、二人にこう言いました。
『俺が守護する。勇者に弟子入りして強くなれ』
次の夜、私と兄は家を飛び出しました」
 ケーンとユリは、なるほどとうなずく。

ノーキョーの気持ちもわかる。神通力もろくにないくせに、無責任だとは思うが。

「追っ手はつかんかったんか?」
 ユリが聞く。

「多分死んだことにしたのではないでしょうか。
それ以外、男爵様に申し開きできないと思います。
いわば兄妹の駆け落ちですから」
 ケーンとユリは、メイの言葉に軽くうなずいた。

「私たち、そんなに才能ないですか? 冒険者として」
 メイは力なく聞く。

「うん。ガチガチに装備しても、多分Aランクには届かない。
Bランクには届くかもしれないけど、なんと言ったらいいのかな。
危ない感じがするんだ。
もっとはっきり言えば、戦いに向いてない。
無理に戦いの生活に身をおいたら、かなりの確率で死ぬと思う」
 何度もお花畑を見てきたケーンだからわかる。

この純粋で人が良過ぎる兄妹は、戦いの場なら死亡フラグを背負っているようなものだ。
下手に人並み以上の力があるから余計に。

「どうすればいいのでしょう? 
もう家には帰れません」
 メイがすがるような目で聞く。

「商売やってみたら? 
メイは薬師として多分やっていけると思う。
エリックも薬草採集の用心棒なら大丈夫だ。
できるだけ援助するよ。
もちろん、レミはエリックに渡さないけどね」

「一つ、聞いていいですか? 
レミさん、他のお嫁さんたちとは、かなり違ってますよね? 
兄が錯覚したのも、無理はないと思うんですけど」
 メイはかねてから思っていた。他のお嫁さんたちは非凡そのもの。レミさんは平凡そのもの。
容貌でも、戦闘能力の面でも。

そして、妹付きとはいえ、女二人の家に兄を住まわせるのは、どうかと思っていた。

ケーンさんは、なにかのはずみでレミさんに手を出し、悪く言えばその後始末を、押し付けるつもりでは? 

兄妹はそこまで想像していた。身分の高い者には、よくある話だ。

「人間の魅力って、色々だろ? 
アットホームな安らぎ? 
それは凡人そのものの、レミしか持ってない魅力だ」

「エリックが、レミさんに手ぇ出そうとしたら、絶対死んでたで。
レミさん、ペンダント肌身離さずつけとるやろ? 
あれは不届きなやつを、即死させる付与がかかっとる。
レミさんの他の装備も、Cクラス程度の魔物なら、傷一つようつけんはずや。
用心棒はあくまで念のためや」
 ユリは兄妹が抱いているであろう疑問を晴らす。

「フフ、ケーンさん、優しいんですね」
 メイはケーンを大いに見直していた。

「スケベで自分の女に欲張りなだけや」
 ユリは混ぜ返す。ケーンは否定できない。

「サマンサさん、なんといっても高齢だろ? 
レミは錬金術師の修行中なんだ。
今は伯母さんが心配だから、店に泊まり込んでる。
錬金術は中級以上になったら、長時間手が離せなくなる。
二人がいたら安心して修行に打ち込める。
だから協力してくれない?」
 ケーンは誠意をもって説得する。

「それで私たち兄妹を……。
最初からそう言ってくだされば」
 変に勘繰ることはなかったのに、とメイは心の中で言葉をつなげる。

「最初から『老人の面倒見ろ』。それじゃ納得できなかっただろ?
君たちの素質を見極めた今なら頼める。
レミの修行の見通しがつくまで、サマンサさんと店を頼む」
 ケーンは深く頭を下げた。

「わかりました。兄者もいいですよね?」
 妹の言葉に、エリックは何か言いたげだったが、黙って軽くうなずいた。

やっぱり冒険者に、未練があるんや? ユリは、そう見てとったが、ケーンやキキョウさんの目は確かだし、自分もケーンの意見に賛成だ。

ユリは口を挟まないことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...