改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

文字の大きさ
82 / 170

82 夜空城でデート

しおりを挟む
 ケーンはメイの休日を選び、夜空城デートに誘った。兄にはイケナイガス抜きをさせたので、メイに悪い気がして。

兄妹にはすでに自分の出自を明かしている。戦闘能力は、ちょっとね、だが、人間性は信頼できると認めている。

「夜なのに明るい。どうなってるんですか?」
 メイがここへ転移し、最初に驚いたのは、整然とした街並みだった。現代の地球人が見たら、マンションが立ち並ぶ都市部型住宅街を連想しただろう。
 そして、次に気づいたのは、夜なのにどうして明るい? ということだった。
 夜空城は、常に夜の上空を飛んでいると聞いていたから。

「二十四時間真っ暗じゃ、生活が不便だろ?
認識できないけど、夜空城は巨大なドームに覆われている。
朝から夕方までは、人工照明が光を注ぐんだ」
 ケーンが解説する。

「夜の女王様が、お作りになったんですか?」
 うさちゃん着ぐるみの、ジャンヌが聞いた。ジャンヌに転移を頼んだら付いてきた。

「知らない。母ちゃん、そのへんのところ、いつもごまかすから」
 ケーンは、細かいことを気にしない。

相当でかいことだろ?
まあ、いいんじゃないの、が、ケーンのイズムということ。いいんじゃない?

「ジャンヌさんは、夜空城初めてなんですか?」
 メイは、自分と同じように、周囲の景観を物珍し気に見渡すジャンヌに聞く。

「今、ほとんど王宮に住んでますが、保護区以外は時々です。
旦那様とは初めてです」
 ジャンヌは、ちょっぴり責める目でケーンを見る。
 旦那様、滅多にデート、してくれないんだもん!
 エッチの方はマメだけど。

 その不満があるから、今日は強引に付いてきた。

「保護区?」
「フィールド型ダンジョンのようなものだと、考えてください。
下界のダンジョンは、光の女神様がお作りになられます。
それとは別に、夜の女王様は、ケーン様や奥様が、退屈しないようお作りになったそうです。
そこで魔物狩りをしたり、錬金術に使う色々な素材を採集したり。
詳しいことは、わかりませんけど」

 メイは今さらながら思う。
壮大というか、ファンタジーというか……。

 ケーンさん、とんでもない世界で生まれ育ったんだ。

「ここで暮らす人、どんな仕事を?」
 メイが聞く。

「ほとんどが工場で働いてる。
他には自治のための役所や病院・保育・教育施設、それと商業施設だね」

「工場?」
「食料と生活用品製造工場。
前は普通に農場や牧場、工房があったらしいけど、超技術革新があったそうだ。
今では父ちゃんが生まれた世界より、はるかに進んでいる。
何がきっかけで、その超技術革新が起こったのか、教えてくれない。
父ちゃんの知識もあったんだろうけど、それだけでは説明がつかない。
何があったんだろうね?」
 ケーンは苦笑して答えた。彼を取り巻く大人たちは、変に秘密主義的なところがあった。
 たいていのことは、平気で話すくせに、夜空城の成り立ちや、技術革新については、頑として口をつぐむ。

 ケーンは、この星以外の先端文明から、学んだのではないかと想像している。
 特に父ちゃんが作るオートマタ。あれは父ちゃんとミレーユの技術だけで、作れるものではない。
 フィギャーなら、ケーンでも作れるが、次元がいくつも違う。

「今日は、どうして夜空城へ、連れてきてくださったんですか?」
「ん? 気晴らしになるだろ?
下界じゃ買い物するものなんてないし、遊興施設も貧弱だ。
遊園地へゴー!」
 兄をイケナイところへ出陣させた罪滅ぼし。そんなこと、口が裂けても言えない。 

「遊園地のアトラクション、楽しいですよ!
なんでも、ケンイチ様が生まれた世界の、US〇やデズミーランドを参考にしたそうです!」
 浮かれうさちゃんが、ぴょんぴょん跳ねながら言う。

「U〇J? デズミーランド?」
「聞かないでください!
私には、さっぱりわかんないんですから!」
 ジャンヌの、説明になってない説明でも、うなずくしかないメイだった。


「だ、旦那様……。神聖魔法、使ったらダメ、ですよね?」
 うさちゃんジャンヌは、恐怖のあまり、ケーンにぴったりすがりついている。 

「ダメに決まってるだろ!
全部作り物!
本物のアンデッドは超臭いんだから!」

「ぎゃ~~~!」
 反対側で、ケーンにすがりついていたメイが叫ぶ。

「コンニャクが、顔に触っただけだよ」

 そうなんです。ここはアトラクションの一つ、ホラーハウス。もちろん、ケーンはこの事態を予測してここへ誘った。
 本物のアンデッドダンジョンに、勝るとも劣らない迫力だ。もちろん危険性は全くないが。

「もう……、出ませんか?
出ます!
転移!」
 ケーンが引き留める間もなく、三人はホラーハウスから出た。

 残念!


「はあ……、疲れた」
 観覧車に乗り、メイは虚脱。
色々な乗り物があった。恐ろしいスピードで、高いところから一気に走り下りる。
 巨大な画面が前にあり、色々な景色が映る。変な道具を目に付けて、座席は揺れたり下がったり。
 ジャンヌはペガサスに乗せられた経験があったので、それほどでもなかったが、メイは生まれて初めて、あのような浮遊や落下感覚を味わった。
 小舟に乗って川下り。川の中や近くの陸地に、魔物が突然出現する。作り物だとわかっていてもドキドキもの。

 疲れたけど、あれが楽しく感じられたのはなぜだろう?

「なんだか、味気ない光景ですね」
 ジャンヌがぽつりともらした。

 道路は放射型に端まで伸び、道端には箱型の建物が並ぶ。その中央にそびえる王宮だけは、ヨーロッパのお城型で、異彩を放っている。
ところどころに緑の公園はあるが、殺風景と形容するしかない。

「ここでは二万人程度の人が住んでる。
夜空城はそんなに広くないから、仕方ないんだ」
 ケーンがつぶやく。

「今日見かけたのは人類だけでしたが、獣人はいないんですか?」
 メイが聞く。

「少数だけどいるよ。ただ、獣人は寿命が短い。
元々数が少なかったし、獣人口は減る一方だ。
俺はあまり王宮の外に出なかったけど、滅多に見かけないな」

「どんな人が住んでるんですか?」
 ジャンヌが聞く。

「母ちゃんの眷属が拾った者だよ。
人族と魔族の戦乱に巻き込まれ、身寄りをなくした子供。
とても全部は救えないけど、仕方ないだろ?」
 元聖神女として、何も言えなくなったジャンヌだった。

 その後、果物工場でフルーツ狩り。すでにおなじみとなっているが、夜空城産の果物は超おいしい。

 栽培技術と品種改良の結果だとか。下界では王侯貴族や大商人にしか口にできない高級品。
 ケーンさんとお近づきになれてよかった!

 自分で摘んだ大粒イチゴをかじり、しみじみと感慨にふけるジャンヌとメイだった。

 メイは思う。もっとお近づきになれないものだろうか?
 ケーンさんと……。

 キャー! 恥ずかしい!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...