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98 夜空城の秘密
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サーシャは夜の女王の懐に抱かれたまま、夜空城に連れてこられた。
「サーシャ、今からあなたに、この城のすべてを教えます。
ケーンの嫁の中でも、すべて知っているのは正妻のキキョウだけです。
今のところケーンにさえ教えていません」
サーシャは身動きもできなかった。むしろ、抵抗する気にもならなかった。不思議な安心感がある。
「どうして?
どうして私に、そんな大切なこと教えるの?」
「あなたにケーンの右腕となってもらいたいから。
ケーンの利き手は右よ」
女王はそう答え、サーシャを解放した。
真っ暗だった室内に灯りがともった。
「これは…エルフの死体?」
室内にはエルフとしか思えない男女の肉体が、寝台の上に横たわっていた。
「エルフじゃないよ。エルファード星人。
この星アンジェラと違う星からやってきた。
私の想像だけど、創造神はエルファード星人をモデルにして、エルフ族を生み出したと思う。
外見だけじゃなく、優れた知能と、きわめて長命だという点も共通する。
創造神は魔素が高いこの世界で、いずれは精霊が、自然発生するだろうことを予想してたと思う。
エルフはその精霊をコントロールするための種族。
そう想像してる。
結果は知ってるでしょ?
知性をより高めるための長命が災いして、エルフ族は生きる活力をひどく失った。
皮肉なことに、精霊に振り回されることともなった」
女王の言葉に、サーシャは納得できた。
この世界以外に世界があることも、抵抗なく受け止められた。
現に被召喚者という強敵がいるのだから。
「エルファード星人とエルフの間には、他にも共通点がある」
そう前置きし、女王はサーシャの手を取って転移した。
女王は灯りをともす。
「何、これ!」
サーシャは驚いた。円形の巨大な物体が三つ、目の前にあった。
「エルファード星人たちが乗ってきた宇宙船よ。
ケンイチたちが制圧したの。
エルファード星人は、この世界の民をなめ切ってたと思う。
宇宙船の内部に転移して、簡単に制圧できた。
戦闘能力は魔法が使えないエルフ並?
もちろん強力な武器も持っていたけど、彼らの船の内部では、そんなもの使えない。
護衛のロボットもせいぜいオークキング並?
野戦型の戦闘用ロボットは、ドラゴン並みだけど。
船の中に転移するわよ」
サーシャの手を握ったままだった女王は、次の瞬間船内のコントロールルームに転移した。
「この部屋で船をコントロールするの。
エルファード星人たちを、支配下に置くことは簡単だった。
だけど、こいつはとてもやっかいなの」
女王はコントロールパネルを指さす。
「何?」
サーシャが聞く。
「人工知能と呼ばれる機械の端末よ。
堕落する一方のエルファード星人に対して、こいつは知識を蓄え続け、進化し続ける。
エルフが精霊をコントロールしきれないように、エルファード星人もこいつを、コントロールしきれなくなったと思う。
なにせエルファード星人より、はるかに賢いのだから。
エルファード星系の資源は、枯渇しかけてるみたい。
そこでこいつらは、資源を求め、星系以外に進出し始めた。
エルファード星人は、こいつらにひきずられてこの星までやってきたと思う。
この人工知能の弱点はただ一つ。
こいつらを作ったエルファード星人の、『利益』に反することはできない。
ここまでこの船を運べたのは、エルファード星人と船を人質にして脅し上げたから。
さっき見せたエルファード星人は生きているよ。
大切な人質だから。
時間が止まった空間で眠り続けているだけ」
サーシャは深くうなずく。女王の説明に破綻はなかったから。
「今はこの船を改造して、人工知能と別系統で、ある程度の操縦はできるの。
だけど、本格的にこの船の機能は発揮できない。
基本設計が人工知能向けに作られてるから、お手上げ状態。
そこでお願いがあるの」
「人工知能とやらをたぶらかす? お断りよ」
サーシャは、冷笑を浮かべてそう言った。
「私に命令させないで。
忘れたの?
あなたは奴隷なの」
サーシャは青ざめた。
そうだった。「命令」を聞かなければひどい目にあわされる。
サーシャはきわめて高い知能を持っているが、精神はお子ちゃまそのものだ。
痛いのは絶対嫌!
「具体的には?」
「その前に、この夜空城最大の秘密を教える」
そう言って、女王はサーシャと共に王宮最深部へ転移した。
「何、これ?」
巨大な球体が浮かぶ部屋だった。
この世界屈指の魔力を誇るサーシャでも、見当がつかないほどの、莫大な魔力とエネルギーの塊。
「お休み中の創造神。
この世界のすべてを作った神よ。
目覚めたら、つまり、太陽の光を浴びて、元の力を取り戻したら、想像できないほどの力を発揮できる。
夜空城が常に夜の上空で浮かんでいるのは、創造神の眠りを妨げないため。
私と私の眷族の最も重大な使命は、創造神の安眠を守ること。
創造神はこの星を愛してる。
この世界の生きとし生ける物も。
基本的には、この世界の生物に自由を与えてるけど、この星や世界の秩序を、破壊できるほどの力は許さない。
創造神の守人である私が、どうしてもこの世界がダメだと判断したら……、
たとえば、エルファード星人に侵略され、完全に支配されたら、私は創造神を起こす権限を持ってる」
女王は、口をあんぐりと開けたサーシャをちらっと見、柔らかく微笑む。
さらに言葉を継ぐ。
「エルファード星人の侵略の仕方は単純明快。
知的生物を虐殺した後、『安全』に資源を集める。
私たちが完敗したら、創造神は侵略者を滅ぼし、また新たに世界を創造するでしょうね」
サーシャは、母親である魔王が、どうして夜の女王を心底恐れているのか、はっきり理解した。
夜の女王は、創造神の意思そのもの。だから彼女は、永遠の命と絶大な権限を与えられた。
「サーシャ、今からあなたに、この城のすべてを教えます。
ケーンの嫁の中でも、すべて知っているのは正妻のキキョウだけです。
今のところケーンにさえ教えていません」
サーシャは身動きもできなかった。むしろ、抵抗する気にもならなかった。不思議な安心感がある。
「どうして?
どうして私に、そんな大切なこと教えるの?」
「あなたにケーンの右腕となってもらいたいから。
ケーンの利き手は右よ」
女王はそう答え、サーシャを解放した。
真っ暗だった室内に灯りがともった。
「これは…エルフの死体?」
室内にはエルフとしか思えない男女の肉体が、寝台の上に横たわっていた。
「エルフじゃないよ。エルファード星人。
この星アンジェラと違う星からやってきた。
私の想像だけど、創造神はエルファード星人をモデルにして、エルフ族を生み出したと思う。
外見だけじゃなく、優れた知能と、きわめて長命だという点も共通する。
創造神は魔素が高いこの世界で、いずれは精霊が、自然発生するだろうことを予想してたと思う。
エルフはその精霊をコントロールするための種族。
そう想像してる。
結果は知ってるでしょ?
知性をより高めるための長命が災いして、エルフ族は生きる活力をひどく失った。
皮肉なことに、精霊に振り回されることともなった」
女王の言葉に、サーシャは納得できた。
この世界以外に世界があることも、抵抗なく受け止められた。
現に被召喚者という強敵がいるのだから。
「エルファード星人とエルフの間には、他にも共通点がある」
そう前置きし、女王はサーシャの手を取って転移した。
女王は灯りをともす。
「何、これ!」
サーシャは驚いた。円形の巨大な物体が三つ、目の前にあった。
「エルファード星人たちが乗ってきた宇宙船よ。
ケンイチたちが制圧したの。
エルファード星人は、この世界の民をなめ切ってたと思う。
宇宙船の内部に転移して、簡単に制圧できた。
戦闘能力は魔法が使えないエルフ並?
もちろん強力な武器も持っていたけど、彼らの船の内部では、そんなもの使えない。
護衛のロボットもせいぜいオークキング並?
野戦型の戦闘用ロボットは、ドラゴン並みだけど。
船の中に転移するわよ」
サーシャの手を握ったままだった女王は、次の瞬間船内のコントロールルームに転移した。
「この部屋で船をコントロールするの。
エルファード星人たちを、支配下に置くことは簡単だった。
だけど、こいつはとてもやっかいなの」
女王はコントロールパネルを指さす。
「何?」
サーシャが聞く。
「人工知能と呼ばれる機械の端末よ。
堕落する一方のエルファード星人に対して、こいつは知識を蓄え続け、進化し続ける。
エルフが精霊をコントロールしきれないように、エルファード星人もこいつを、コントロールしきれなくなったと思う。
なにせエルファード星人より、はるかに賢いのだから。
エルファード星系の資源は、枯渇しかけてるみたい。
そこでこいつらは、資源を求め、星系以外に進出し始めた。
エルファード星人は、こいつらにひきずられてこの星までやってきたと思う。
この人工知能の弱点はただ一つ。
こいつらを作ったエルファード星人の、『利益』に反することはできない。
ここまでこの船を運べたのは、エルファード星人と船を人質にして脅し上げたから。
さっき見せたエルファード星人は生きているよ。
大切な人質だから。
時間が止まった空間で眠り続けているだけ」
サーシャは深くうなずく。女王の説明に破綻はなかったから。
「今はこの船を改造して、人工知能と別系統で、ある程度の操縦はできるの。
だけど、本格的にこの船の機能は発揮できない。
基本設計が人工知能向けに作られてるから、お手上げ状態。
そこでお願いがあるの」
「人工知能とやらをたぶらかす? お断りよ」
サーシャは、冷笑を浮かべてそう言った。
「私に命令させないで。
忘れたの?
あなたは奴隷なの」
サーシャは青ざめた。
そうだった。「命令」を聞かなければひどい目にあわされる。
サーシャはきわめて高い知能を持っているが、精神はお子ちゃまそのものだ。
痛いのは絶対嫌!
「具体的には?」
「その前に、この夜空城最大の秘密を教える」
そう言って、女王はサーシャと共に王宮最深部へ転移した。
「何、これ?」
巨大な球体が浮かぶ部屋だった。
この世界屈指の魔力を誇るサーシャでも、見当がつかないほどの、莫大な魔力とエネルギーの塊。
「お休み中の創造神。
この世界のすべてを作った神よ。
目覚めたら、つまり、太陽の光を浴びて、元の力を取り戻したら、想像できないほどの力を発揮できる。
夜空城が常に夜の上空で浮かんでいるのは、創造神の眠りを妨げないため。
私と私の眷族の最も重大な使命は、創造神の安眠を守ること。
創造神はこの星を愛してる。
この世界の生きとし生ける物も。
基本的には、この世界の生物に自由を与えてるけど、この星や世界の秩序を、破壊できるほどの力は許さない。
創造神の守人である私が、どうしてもこの世界がダメだと判断したら……、
たとえば、エルファード星人に侵略され、完全に支配されたら、私は創造神を起こす権限を持ってる」
女王は、口をあんぐりと開けたサーシャをちらっと見、柔らかく微笑む。
さらに言葉を継ぐ。
「エルファード星人の侵略の仕方は単純明快。
知的生物を虐殺した後、『安全』に資源を集める。
私たちが完敗したら、創造神は侵略者を滅ぼし、また新たに世界を創造するでしょうね」
サーシャは、母親である魔王が、どうして夜の女王を心底恐れているのか、はっきり理解した。
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