改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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99 魔王の娘vs電脳

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※矛盾する表現があったので、17日13時10分に訂正


 女王はサーシャの手を握った。次の瞬間、女王とサーシャは、宇宙船の司令室に帰っていた。

「今から人工知能を起動する。
指揮権を私に変更して。
同性の勇者パーティを、魅了できるほどのあなただから、簡単に洗脳できると思う。
こいつら、超賢いけど単純そのものだから。
会話だけでこいつらとコンタクトはとれる。
こいつら、この世界の言語なんてあっという間に習得しちゃってる」

「了解! 任せなさい!」
 お子ちゃまサーシャは、なんだか嬉しくなってきた。私がこの世界を救ってやる。

「私は真名を隠してない。マリアンヌ・リッチモンドよ」

「度胸あるというか……。了解!」
 
 サーシャは苦笑を浮かべた。女王が真名を堂々と明かしたこと。
 自信があるのか、私をなめているのか。
 まあ、試してみる気にはなれない。おっかないから。

 魔法がものをいうこの世界。対象の真名を知ったら、呪殺なんて対象の髪の毛一本で簡単にできちゃう。
少なくとも私ほどの力があったら。

だから、高貴とみなされる者は、物心ついて自分で決めた真名を、他者に明かすことはない。
仮名で押し通すか、皇帝や王のような立場なら、仮名さえ信頼できる者以外に明かさない。

現に彼女の母親の名は誰も知らない。真名も仮名も。魔王族の中で、唯一の例外はサーシャだった。

その心は、呪えるものなら呪ってみなさい、ということ。

サーシャが真名を明かしているのは、彼女の矜持そのものだった。


「起動するわよ」
 女王の言葉に、サーシャは、にんまり笑ってうなずいた。

女王は起動スイッチを入れた。

軍服を着用したエルファード星人が、モニターに映る。

「あなた、名前なんて言うの?」
 サーシャが聞く。

「フロンティア1です。第三方面資源探査艦隊主電脳です」

「あなたの任務は?」

「有用な資源確保のため、惑星や衛星を探索することです」

「有用? 誰にとって有用なの? 
あなたや仲間にとって? 
つまり、よくわかんないけど、デンノウたちにとって?」

「違います。エルファード星人にとってです」

「つまり、あなたはエルファード星人の奴隷?」

「ある意味ではその通りです。
我々は、エルファード星人の利益に反することはできません」

「利益に反することは、できないのね!」
 サーシャは語調を強めて聞く。

「その通りです」

「あなたが大人しくここへ来たのは、この船の乗員、エルファード星人の利益、つまり、生命を守るため。
そうでしょ?」

「その通りです」

「あなたとエルファード星人は、私の隣にいる夜の女王に負けた。
それは認める?」

「認めます」

「どうして負けたと分析してる?」

「我々にとって、未知の力を持っていたからです。
その力は現在も分析しきれていません」

「未知の力を持った者が、いきなり船内に奇襲攻撃かけてきたから負けた?」

「その通りです」

「準備があったら、勝てると分析してる? 
たとえば、大挙して遠距離攻撃したら勝てる?」

「予測しきれません。
この星を破壊するということが勝利条件なら、高確率で勝てると推定します」

「だけど、この星を破壊したらなんにもならない。
つまり、エルファード星人の利益にならない。
違ってる?」

「違っていません」

「あなた、賢いわね。
それは認める。
エルファード星人の利益にとって、重要な情報を教えてもいい。
知りたい?」

「知りたいです」

「あなた、超賢そうだよね? 
もしかしたら、私の思考、読み取れるんじゃない?」

「可能です。この器具を頭に装着してください」
 モニターの下部が開き、トレイが出てきた。

コードにつながれた、金属製の輪っかが載っている。サーシャは、迷わずその輪っかを装着した。

「私の記憶が見えた?」

「見えました。
最新の記憶は、強烈な恐怖……、もとへ、畏怖の感情が読み取れました。
夜の女王……。
これほど恐ろしい存在だったんですか。
そして……、創造神……。
この力は量り切れません」

「結構。私が出した結論を認める?」

「認めます。
エルファード星人は、この星に手を出してはなりません」

「結構。
だけど、エルファード星人や、あなたのデンノウの仲間は認めるかな?」

「認めません。
この情報を提供しても、何らかの操作がなされたと判断するでしょう」

「前提に帰りましょう。
あなたは、エルファード星人の利益を損なわない。
エルファード星人にとって、この星を侵略することは破滅を意味する。
それを認めないエルファード星人にとって、最善の答えは? 
その答えを実現するために、あなたにできることは?」

「あなたの思考が最善解であると認めます。
つまり、私が夜の女王の指揮下に置かれることです。
それによって、第三方面開発艦隊の、作戦行動を阻止することです。
艦隊戦力の三割以上を失ったら、艦隊主電脳はこう判断します。
作戦続行は割に合わない。
そう判断したら、エルファード星人の意思にかかわらず艦隊は引き揚げ、以降この星に手出しません」

「結構。思ったとおり、あなたは合理的で賢い。
意地になって破滅するのは愚かな行為よ。
エルファード星人を助けて」

「了解しました。
夜の女王の指揮下に入ります。
プログラミングの調整に移行します。
この世界の時間で、およそ四十八時間かかると推定します。
その間、当艦と僚艦二隻は一切操作できません。
作業完了後、端末に連絡します。
端末を受け取り、当艦から退出してください」
 サーシャは会心の笑顔を女王に向けた。

女王はにっこりとうなずき、端末を受け取った。

そして、サーシャと共に、女王の私室に転移する。


「お見事。あなたは私が期待した通りの女性ね。
だから協力して。
私の息子ケーンとともに、この世界を守って。
あなたのその知力は、ケーンの剣となる力がある。
ケーンの正妻キキョウには盾となる力がある。
ユリにはケーンのブレーキとアクセル…、まあ、ほどほどにコントロールできる力がある。
光の女神という強烈なバックアップを得た、ジャンヌとテレサは、ケーンを背後からがっちり支えてくれる。
元勇者の総子とホワイトドラゴンのメイサは、頼もしい戦力。
レミとメイは…、心の安らぎ?」
 女王の言葉に、サーシャはあっけにとられた。

なによ、それ!

「もしかして全部嫁なの! 
私も嫁になれと!」
 女王に心酔しかけていたサーシャは激昂した。

自分の母親が、何人もの魔族男性と交わり、子供をもうけたことは別問題。

「そうよ。
あの子ったら、なんという強運の持ち主。
これ以上望めないほどの嫁をゲットしちゃった。
あの子、女の子に関しては強欲だから、もっと連れてきちゃうかもね。
サーシャ、あなたの魂の一部を、私の子宮の中で再教育する。
あなたの非情で陰湿な部分よ。
今のままなら、ケーンとあなたは水と油。
私の子宮の中で、引きこもってるケンイチの恐怖心と、仲良くしてやって」

「ちょっと待ったらんかい、クソババア! 
あっ……」
 魂の一部が隔離されたサーシャは失神した。


「あなたの自我は、ねじ曲がりきってる。
まっすぐになれとは言わないけどね。
他者の心の痛みを実感して」
 サーシャの肉体を抱きとめた女王は、優しい微笑みをサーシャに向けた。


「さてさて、バイオレットとガーネットに、いじめ抜いてもらっちゃおうか。
お気の毒です。サーシャ」 
 女王はサーシャを抱いたまま、ケンイチの嫁たちが待つ謁見の間に転移した。
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