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100 これからどうするの?
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メイサの家の露天風呂で、ケーンと嫁たちはくつろいでいた。
「ひどいもんだね」
ケーンは、ぽつんとそう漏らした。
「ごめんなさい。私の責任です」
ヒカリちゃんのジャンヌは肩を落とす。
ケーンの気持ちいいところに色々手を届かせたケアで、ヒカリちゃんは立ち直っていた。
ところが、この露天風呂会議で届いたキキョウの報告。そして、現聖神女達から届いた報告。
いずれも人族の堕落ぶりを、まざまざと見せつけるものだった。
特に貴族。
ヒカリちゃんの目も万能ではない。守備範囲が広すぎるのだ。
せいぜい教会幹部、皇帝や王の動向を見守る程度。各王国貴族たちの不正は、よほどひどくない限り感知できない。
「まあ、光の女神も全能じゃない。人族すべてを見張るわけにいかないし」
ケーンはヒカリちゃんのジャンヌの肩を抱きよせ、慰める。
勇者パーティ乱交事件から、二か月が過ぎた。この二カ月の間、ケーンとキキョウ、教会秘密組織シャドー達は、人族界を飛び回り、その腐敗ぶりを目の当たりにしていた。
特に地方貴族のやり口はひどいものだった。
ケーンも無関係とは言えない。父親が頑張り過ぎて、魔王の勢力を大きくそいだ結果、権力者の油断とおごりを招いたのだから。
全くパワーバランスというのは難しい。
ケーン達は目に余る貴族を、片っ端からお縄にし、現在百名弱、強制労働に服させている。
救助が不可能な絶海の孤島で。
夜の女王のお仕置で、魔王領も混乱している。だが、人族の多くの国でも、いきなり大物貴族が多数行方不明となり、魔王領以上に混乱している。
光の女神は、『目に余る不正や横暴許し難し』のお告げを、該当国の王と、その権力者周辺に残しているが。
その周辺の者たちは、心当たり大ありなので、事態収拾に追われている。
もちろん、行方不明者を探す気など毛頭ない。
「あの~……、ムサシさんたちは、どうなったのですか?」
以前ムサシたちに迷惑をかけたメイが、恐る恐る聞く。ヒカリちゃんは、どよ~んといっそう落ち込む。
「ムサシは勇者返上。酒びたりの毎日。
ライアンは立ち直って、一人で魔物狩り。
脳筋属性は、その意味で幸せですね。
リンダとメアリーは引きこもってる。
特にメアリーは……。
まあ、それ以上聞かないで」
ケーンはヒカリちゃんに代わって答える。熟年末期で処女を喪失したメアリーの落胆ぶりはひどいものだ。
もっと違う形なら多分違っていただろうが。
「ヒカリちゃん、次の勇者はどうしたのですか?」
レミが雰囲気を変えるためそう聞いた。
「能力的にはイマイチだけど、敏腕刑事を後釜に据えた。
勇者の仕事は、人族の不正取締を中心にしろと命じている。
対魔王に関しては、当分心配ないはずだし」
ヒカリちゃんは力なく応える。
「むしろよかったんじゃないの。
ムサシのパーティは、力をつけるのに必死だった。
権力者取り締まりの余裕はなかったんだ。
父ちゃんの活躍ぶりと、負けっぷりが華々し過ぎたから」
ケーンはおどけた口調で言う。露天風呂に、わずかな笑いがおこる。
「レミさん、メイ、順調らしいな」
チームのムードメーカーユリが、ポジティブな方向へ、さらに話題を変える。
非武闘派嫁の二人は、ケーンの子をお腹に宿している。
「おかげさまで。私が妊娠して、伯母さんも張り切ってる。
こっそりミレーユさんの薬、飲ましてるし」
レミは老けこんだ伯母を心配し、ミレーユに健壮薬を処方してもらった。
その薬は、若返りの秘薬ではない。レミの伯母とはいえ、あくまで一般人なのだから。寿命が尽きるまで健康体でいられること。それがレミの注文だった。
レミは自分が夜空城へ行くまで、伯母に子供のお守を手伝わせるつもりだ。
きっと生きる励みにもなるだろうから。レミは伯母が生きている間、地上にとどまる決意を固めた。
「ケーン様、これからの方針は?」
貴族取り締まりも一段落し、キキョウはそう聞いた。
「ライラックに冒険者育成の寺小屋を作る。
ヒカリちゃん、リンダとメアリーに、講師頼んでもらえる?」
ヒカリちゃんのジャンヌは、ケーンに抱きついた。
「ケーン、大好き!」
「次はやっぱ学園ものでしょ!
俺はもちろん生徒だから。
こじんまり女だらけの学園生活。
うん、青春だね~!」
嫁たちは思わず大笑いした。
やっぱりそっちかよ!
なんとぶれないやつ。
「ひどいもんだね」
ケーンは、ぽつんとそう漏らした。
「ごめんなさい。私の責任です」
ヒカリちゃんのジャンヌは肩を落とす。
ケーンの気持ちいいところに色々手を届かせたケアで、ヒカリちゃんは立ち直っていた。
ところが、この露天風呂会議で届いたキキョウの報告。そして、現聖神女達から届いた報告。
いずれも人族の堕落ぶりを、まざまざと見せつけるものだった。
特に貴族。
ヒカリちゃんの目も万能ではない。守備範囲が広すぎるのだ。
せいぜい教会幹部、皇帝や王の動向を見守る程度。各王国貴族たちの不正は、よほどひどくない限り感知できない。
「まあ、光の女神も全能じゃない。人族すべてを見張るわけにいかないし」
ケーンはヒカリちゃんのジャンヌの肩を抱きよせ、慰める。
勇者パーティ乱交事件から、二か月が過ぎた。この二カ月の間、ケーンとキキョウ、教会秘密組織シャドー達は、人族界を飛び回り、その腐敗ぶりを目の当たりにしていた。
特に地方貴族のやり口はひどいものだった。
ケーンも無関係とは言えない。父親が頑張り過ぎて、魔王の勢力を大きくそいだ結果、権力者の油断とおごりを招いたのだから。
全くパワーバランスというのは難しい。
ケーン達は目に余る貴族を、片っ端からお縄にし、現在百名弱、強制労働に服させている。
救助が不可能な絶海の孤島で。
夜の女王のお仕置で、魔王領も混乱している。だが、人族の多くの国でも、いきなり大物貴族が多数行方不明となり、魔王領以上に混乱している。
光の女神は、『目に余る不正や横暴許し難し』のお告げを、該当国の王と、その権力者周辺に残しているが。
その周辺の者たちは、心当たり大ありなので、事態収拾に追われている。
もちろん、行方不明者を探す気など毛頭ない。
「あの~……、ムサシさんたちは、どうなったのですか?」
以前ムサシたちに迷惑をかけたメイが、恐る恐る聞く。ヒカリちゃんは、どよ~んといっそう落ち込む。
「ムサシは勇者返上。酒びたりの毎日。
ライアンは立ち直って、一人で魔物狩り。
脳筋属性は、その意味で幸せですね。
リンダとメアリーは引きこもってる。
特にメアリーは……。
まあ、それ以上聞かないで」
ケーンはヒカリちゃんに代わって答える。熟年末期で処女を喪失したメアリーの落胆ぶりはひどいものだ。
もっと違う形なら多分違っていただろうが。
「ヒカリちゃん、次の勇者はどうしたのですか?」
レミが雰囲気を変えるためそう聞いた。
「能力的にはイマイチだけど、敏腕刑事を後釜に据えた。
勇者の仕事は、人族の不正取締を中心にしろと命じている。
対魔王に関しては、当分心配ないはずだし」
ヒカリちゃんは力なく応える。
「むしろよかったんじゃないの。
ムサシのパーティは、力をつけるのに必死だった。
権力者取り締まりの余裕はなかったんだ。
父ちゃんの活躍ぶりと、負けっぷりが華々し過ぎたから」
ケーンはおどけた口調で言う。露天風呂に、わずかな笑いがおこる。
「レミさん、メイ、順調らしいな」
チームのムードメーカーユリが、ポジティブな方向へ、さらに話題を変える。
非武闘派嫁の二人は、ケーンの子をお腹に宿している。
「おかげさまで。私が妊娠して、伯母さんも張り切ってる。
こっそりミレーユさんの薬、飲ましてるし」
レミは老けこんだ伯母を心配し、ミレーユに健壮薬を処方してもらった。
その薬は、若返りの秘薬ではない。レミの伯母とはいえ、あくまで一般人なのだから。寿命が尽きるまで健康体でいられること。それがレミの注文だった。
レミは自分が夜空城へ行くまで、伯母に子供のお守を手伝わせるつもりだ。
きっと生きる励みにもなるだろうから。レミは伯母が生きている間、地上にとどまる決意を固めた。
「ケーン様、これからの方針は?」
貴族取り締まりも一段落し、キキョウはそう聞いた。
「ライラックに冒険者育成の寺小屋を作る。
ヒカリちゃん、リンダとメアリーに、講師頼んでもらえる?」
ヒカリちゃんのジャンヌは、ケーンに抱きついた。
「ケーン、大好き!」
「次はやっぱ学園ものでしょ!
俺はもちろん生徒だから。
こじんまり女だらけの学園生活。
うん、青春だね~!」
嫁たちは思わず大笑いした。
やっぱりそっちかよ!
なんとぶれないやつ。
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