109 / 170
109 準備は命に直結する
しおりを挟む
ケーンはメンバーを引き連れ、レミの薬屋へ向かった。
今朝メアリーから与えられた指示は、午前中パーティ単位で自由行動。
ケーンは迷いなく薬草採集を指示した。チームジャイアンは、ダンジョン再トライを選んだ。
「ポチ、薬草採集なんて緩くない?」
槍を背負ったダンが不平を言う。
「薬草採集なめんな。
それに、今日の昼飯はないんだぞ。狩りも兼ねる。
昨日は精神的にも肉体的にもハードだっただろ?
ムキになって、トレーニング積めばいいってもんじゃない」
ダンはなるほど、とうなずく。
ポチ、やっぱスゲー。
嫁もちだし……。
女子三人は、すっかり気落ちしていた。もちろん、ポチに嫁がいることを知って。
「ここだ。嫁の伯母が経営してる。
薬の品質はピカイチだ。
おばちゃ~ん、仲間連れてきたよ」
ケーンは店のドアをあける。
「これは、これは。
みなさん、これからもごひいきに」
サマンサは、にこやかに応対する。
「半年間は俺の友達価格で。
冒険者になったらもちろん定価で。
ほら、ポーション買えよ。
冒険者は必需品に金を惜しまない。
準備は命に直結する。
昨日いやというほどわかっただろ?」
「たっけ~……」
ダンは表示価格にひるむ。
「昨日の稼ぎ分でいい。
おばちゃん、回復ポーションと解毒ポーション一個ずつ」
「はいはい。
ケ…ポチさんのお友達だから、初回は出せるだけでいいよ。
今度からはお代、二割引でいただくから」
サマンサは、五個ずつカウンターに並べる。
「俺が預かっておく。
消費期限に注意しておけ。
この店は良心的だから、ちゃんと正しい消費期限は明記してある。
おすすめポイントその二だ」
ケーンはポチバッグに、ポーション類をしまう。
なんと頼れるやつ。メンバーは革袋から昨日の稼ぎを出した。ケーンは定価で支払う。
「ケ…ポチさん、お代なんていいんだよ」
「だめだよ、おばちゃん。
取れるところからはきちんと取る」
カッケー! メンバーはいっそうリーダーに心酔した。
ポチの本名は、ケポチだったのかと思いながら。
ケポチじゃしまらな過ぎ。
「ここの薬屋さん、ずいぶん変わったもの、売ってるんですね」
アリスが、セーラー服やらメイド服やらに目を止めた。
サマンサが、困惑顔でケーンをちらっと見る。ケーンは苦笑してかすかに首を振る。
「それは…まあ、あんたたちに彼氏ができたら買ってもらいなよ」
「下着まで売ってるんですか?」
ダンがスク水を珍しげに手に取る。
「ダン! 女の子の下着なんか触っちゃダメだって!」
アリスがスク水を奪い取る。
「それは下着じゃないんだけどね。
水着だよ」
サマンサが苦笑して説明。ケーンを見たら、いかにも気まずげな顔をしている。
お仲間さんには、ちょっと恥ずかしんだ? と、サマンサは微苦笑。
「うわ~! 高い。それに、キキョウって?」
セーラー服を見ていた弓使いのミントが言う。その服には、値札に名前らしきものが記されていた。
「それはね、中古品なんだよ。
誰が着ていたのかわかんなかったら、気持ち悪いだろ?
いや、水着は新品なんだよ?」
サマンサは、ケーンのために言い繕う。
名前を付けてから、三倍の値段をつけても即売となった。サマンサは、人の奥さんのお古買って、なにがうれしいのかね、と思うのだが。
「さ、お客さんが来たぞ。
商売の邪魔だ。行こうか!」
ケーンは、いたたまれなくなり、店から逃げるのだった。
☆ ☆ ☆
ケーンは青の森で、代表的な薬草を抜きながら説明する。
一度しか言わない、と先に断わりを入れるのも忘れていない。
四人は夢中になって薬草を探す。
「ちょっと待った~!」
ケーンはそう叫んだ。
四人はけげんに思い、ケーンに注目。
「俺になんか言うべきことはない?
リーダーも絶対じゃない。
言うべきことはちゃんと言う」
「親切に教えてくれてありがとう?」
槍使いのミントが答える。
「ちっげーよ!」
「見張りはどうするの?」
アリスが答える。
「そのとおり!
薬草採集をなめんなと言ったはずだ。
現に……」
ケーンはダンの槍を奪い取り、草むらに向かって投げた。
キャンという悲鳴があがった。
「森コヨーテだ。
この季節発情期を迎える。
やつらは普段群れで行動するけど、メスにあぶれた若いオスはメスを求めて集団から離れる。
新しい自分の群れを作るためだ。
ゆうべ備え付けの冒険者ガイド、読まなかったのか?
最低限、ダンジョンがある青の森の巻には目を通すべきだ。
それ以前に、全員が集中して薬草を採集したら、思わない敵に奇襲される可能性は常にある。
以上、イジョーに備えような」
メンバーは、笑うべきなのかわからなかったが、とりあえずまた貴重な教訓を得た。
薬草採集を終えた時、アリスは代表してケーンに提案した。ポーションを買ったため、みんなお金を使ってしまったが、パーティの資金を集めて、矢を買ってはどうかと。
ケーンは、猛烈に感動した。自分が言い出すつもりだったが、ちゃんとパーティで話し合ったらしい。
ケーンは、メンバーをほめちぎった。厳しいだけが指導じゃない。
ご褒美に、矢を二百本パーティに寄贈した。その内の百本は、耐久力アップを付与したものであること、もちろん内緒だ。
今朝メアリーから与えられた指示は、午前中パーティ単位で自由行動。
ケーンは迷いなく薬草採集を指示した。チームジャイアンは、ダンジョン再トライを選んだ。
「ポチ、薬草採集なんて緩くない?」
槍を背負ったダンが不平を言う。
「薬草採集なめんな。
それに、今日の昼飯はないんだぞ。狩りも兼ねる。
昨日は精神的にも肉体的にもハードだっただろ?
ムキになって、トレーニング積めばいいってもんじゃない」
ダンはなるほど、とうなずく。
ポチ、やっぱスゲー。
嫁もちだし……。
女子三人は、すっかり気落ちしていた。もちろん、ポチに嫁がいることを知って。
「ここだ。嫁の伯母が経営してる。
薬の品質はピカイチだ。
おばちゃ~ん、仲間連れてきたよ」
ケーンは店のドアをあける。
「これは、これは。
みなさん、これからもごひいきに」
サマンサは、にこやかに応対する。
「半年間は俺の友達価格で。
冒険者になったらもちろん定価で。
ほら、ポーション買えよ。
冒険者は必需品に金を惜しまない。
準備は命に直結する。
昨日いやというほどわかっただろ?」
「たっけ~……」
ダンは表示価格にひるむ。
「昨日の稼ぎ分でいい。
おばちゃん、回復ポーションと解毒ポーション一個ずつ」
「はいはい。
ケ…ポチさんのお友達だから、初回は出せるだけでいいよ。
今度からはお代、二割引でいただくから」
サマンサは、五個ずつカウンターに並べる。
「俺が預かっておく。
消費期限に注意しておけ。
この店は良心的だから、ちゃんと正しい消費期限は明記してある。
おすすめポイントその二だ」
ケーンはポチバッグに、ポーション類をしまう。
なんと頼れるやつ。メンバーは革袋から昨日の稼ぎを出した。ケーンは定価で支払う。
「ケ…ポチさん、お代なんていいんだよ」
「だめだよ、おばちゃん。
取れるところからはきちんと取る」
カッケー! メンバーはいっそうリーダーに心酔した。
ポチの本名は、ケポチだったのかと思いながら。
ケポチじゃしまらな過ぎ。
「ここの薬屋さん、ずいぶん変わったもの、売ってるんですね」
アリスが、セーラー服やらメイド服やらに目を止めた。
サマンサが、困惑顔でケーンをちらっと見る。ケーンは苦笑してかすかに首を振る。
「それは…まあ、あんたたちに彼氏ができたら買ってもらいなよ」
「下着まで売ってるんですか?」
ダンがスク水を珍しげに手に取る。
「ダン! 女の子の下着なんか触っちゃダメだって!」
アリスがスク水を奪い取る。
「それは下着じゃないんだけどね。
水着だよ」
サマンサが苦笑して説明。ケーンを見たら、いかにも気まずげな顔をしている。
お仲間さんには、ちょっと恥ずかしんだ? と、サマンサは微苦笑。
「うわ~! 高い。それに、キキョウって?」
セーラー服を見ていた弓使いのミントが言う。その服には、値札に名前らしきものが記されていた。
「それはね、中古品なんだよ。
誰が着ていたのかわかんなかったら、気持ち悪いだろ?
いや、水着は新品なんだよ?」
サマンサは、ケーンのために言い繕う。
名前を付けてから、三倍の値段をつけても即売となった。サマンサは、人の奥さんのお古買って、なにがうれしいのかね、と思うのだが。
「さ、お客さんが来たぞ。
商売の邪魔だ。行こうか!」
ケーンは、いたたまれなくなり、店から逃げるのだった。
☆ ☆ ☆
ケーンは青の森で、代表的な薬草を抜きながら説明する。
一度しか言わない、と先に断わりを入れるのも忘れていない。
四人は夢中になって薬草を探す。
「ちょっと待った~!」
ケーンはそう叫んだ。
四人はけげんに思い、ケーンに注目。
「俺になんか言うべきことはない?
リーダーも絶対じゃない。
言うべきことはちゃんと言う」
「親切に教えてくれてありがとう?」
槍使いのミントが答える。
「ちっげーよ!」
「見張りはどうするの?」
アリスが答える。
「そのとおり!
薬草採集をなめんなと言ったはずだ。
現に……」
ケーンはダンの槍を奪い取り、草むらに向かって投げた。
キャンという悲鳴があがった。
「森コヨーテだ。
この季節発情期を迎える。
やつらは普段群れで行動するけど、メスにあぶれた若いオスはメスを求めて集団から離れる。
新しい自分の群れを作るためだ。
ゆうべ備え付けの冒険者ガイド、読まなかったのか?
最低限、ダンジョンがある青の森の巻には目を通すべきだ。
それ以前に、全員が集中して薬草を採集したら、思わない敵に奇襲される可能性は常にある。
以上、イジョーに備えような」
メンバーは、笑うべきなのかわからなかったが、とりあえずまた貴重な教訓を得た。
薬草採集を終えた時、アリスは代表してケーンに提案した。ポーションを買ったため、みんなお金を使ってしまったが、パーティの資金を集めて、矢を買ってはどうかと。
ケーンは、猛烈に感動した。自分が言い出すつもりだったが、ちゃんとパーティで話し合ったらしい。
ケーンは、メンバーをほめちぎった。厳しいだけが指導じゃない。
ご褒美に、矢を二百本パーティに寄贈した。その内の百本は、耐久力アップを付与したものであること、もちろん内緒だ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる