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111 誰損?
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寺小屋が始まってから一か月が経過した。その夜珍しくケーンは教会の宿舎に泊まっていた。
「ポチ、聞かせてくれ!
お前、どうやって女の子たち、従わさせてるんだ?」
ジャイアンが真剣な面持ちで聞く。
彼のパーティでは、このところ女子二人が冷ややかだ。それというのも、パーティポチとの差が開いていると、彼女たちは気づいたからだ。
個人的な能力に、大きな差がついたとは思えないが、集団としての結果は明らかに違う。
具体的には、両パーティの装備の充実度。
地下五階まであるダンジョンの最奥部まで、パーティポチはすでに到達している。
装備は命に直結する。生活費は昼食以外ほとんどかからないから、パーティポチのメンバーは、稼いだ金を、計画を立て装備に投資している。
パーティジャイアンは三階まで。当然稼ぎが違う。
男子は内心不満を感じつつも、ジャイアンが怖いし、男の友情というのもある。
その点女子は、ちくちくと不平を表に現し始めた。
「従わさせてる?
違うね。
ついて来てるんだ」
ケーンはあっさりと答える。
「要するに、俺が悪いということか……」
ジャイアンは、柄にもなく落ち込む。
「それも違うね。
最近俺は、聞かれない限り何にも言ってないよ。
悪いとしたら全員が悪い。
結果が出ないのはリーダーが悪い?
そんなの言いわけだ。
自分の悪いところは反省しない。
お前自身も含めて何が悪いのか、徹底的に討論するべきだと思うぜ。
それでもわからなければ、先生に聞け。
元勇者パーティだからと言って、びびってんじゃねえ。
なんのための先生だ?」
メアリーとリンダは、聞かれない限り、一切口を出さないという方針を守り続けている。
それは生徒の問題意識を明らかにするためであり、主体的に考える習慣を植え付けるためだ。
冒険者のパーティ間は、すべてライバルだ。
他のパーティに、見返りなしで何かを教えるなどということは、まずありえない。
「なるほどな……。
勇気を出して聞いてみるか」
ジャイアンは、腕を組んで考え始めた。
「ポチ、いいか?」
ダンが真剣な目をして聞く。
「ああ、いいよ」
「寺小屋生は、恋をしちゃダメ?」
ケーンとジャイアンは、かくんとくる。
「ダメじゃないよ。誰?」
ケーンは気を取り直して聞く。
これも青春の一ページだ!
「ミント。最初はアリスがいいと思ってたんだ。
でも、あれだし」
「あれって?」
ジャイアンが聞く。
「ポチに夢中。
嫁がいる?
そんなのカンケーねえ、だそうだ。
ミントやナーラは、もうあきらめきってる。
俺にもチャンスがある。
その目で見たら、ミントのおっぱいでかいし……。
あ~、やりてぇ~!」
ケーンは初耳だった。だが、なんとなくは感じていた。アリスの気持ちに。
ダンとミント? そっちはカンケーねぇ、がケーンの発想だった。
ケーンは男友達が、基本的に作れない性格だった。
なにせ生まれてから五十年間、引きこもりの父親は除き、完全に女の中だけで生活していたのだ。
バイオレットとガーネットを女に含めるべきかは、かなり疑問だが。
性別は明らかに女だが、性格は男前そのものだから。
同じころ、夜の王宮。
夜の女王は、キキョウから報告を受けていた。
「ケーン様に、あれほど指導力があるとは思いませんでした。
見事な統率としか、言いようがありません」
キキョウは、うっとりとした目で言う。
「そんなに意外だった?」
女王は苦笑する。
「はっきり言えば、その通りです」
「考えてもみなさいよ。
ケーンが選んだ嫁は、自分で考えられる女ばかりだった。
戦闘経験に乏しい嫁も、戦闘のベテラン嫁が、しっかりサポートしてた。
周りに任せられる時は任せる。
それが最高指揮官の風格よ」
「なるほど……。
王者の器、ということですね?」
キキョウの言葉に、女王は会心の笑顔で応えた。
どうよ、私の息子! 惚れ直しただろ!
再び教会宿舎の男子部屋。
ダンの「あ~、やりてぇ~!」という心からの叫びに、他の男子は反応した。
「ポチ、お前ここで泊まらないとき、やってんだろ?」
「ほとんど毎晩?」
ジャイアンとダンが絡む。
なにせ二十四時間集団行動。やりたいさかりの彼らは、自家発電もままならず、悶々としていた。
「エッチは俺の生きがいだからな」
ケーンは正直に応える。
「なれそめは?」
「どうやって落とした?」
モブキャラ男子A・Bが聞く。
「なれそめは色々。詳しくは言えない」
「そうか、色々か……。ん?」
ジャイアンは、不穏発言であることに気づいた。
「落としてほしそうな嫁には、この一言。
俺の嫁になる?」
「ちょっと待ったぁー!
なんだか嫁が何人もいるように聞こえた」
ジャイアンが興奮して叫んだ。
「当たり前だ。何人もいるんだから。
今のところは九人?」
九人、が疑問形なのは、ヒカリちゃんを一人と数えるべきか、わからなかった。
テレサかジャンヌに憑依することが条件だから。
まあ、ゼロコンマ5×2で一人。やっぱり九人だ。
「ど、どういうことだ?」
ジャイアンの言葉に、他の男子はうなずく。
「どうもなにも、嫁が九人いるということだけど。
いや~、きつい、きつい。
まあ、今は二人妊娠初期だから……」
ドスッ、ガスッ、ボコッ!
男子は一丸となってケーンに襲いかかった。もちろん、呪いの装備をほとんど外しているケーンは、きっちり返り討ちにした。
ちなみに、「ほとんど」というのは、虚飾の兜の機能を、そっくり写した虚飾のペンダントだけは、付けたままだということ。
「一つ聞いていいか?
お前、嫁以外ともエッチした?」
顔を腫らしたジャイアンが聞く。
「ん~……。よくわかんないけど、五百人くらい?
みんな母ちゃんの手下だ。
手下は五百人だけど、俺とエッチしてない子、いるのかな?」
ケーンは、どこまでも正直な男だが、やはり男友達が作れない性格だった。
「あのさ、嫁が九人で母ちゃんの手下が五百人?
お前って何者?」
ジャイアンがあきれて聞く。
「母ちゃんはとある国の女王。
俺はSランクの冒険者だ。
嫁の九人や十人養うのなんてラクショー?
まあ、ほとんどの嫁は、勝手に稼いでるけど」
再び飛びかかろうとするジャイアンを、ヤロー三人は必死で止めた。
「なんでこの寺小屋に入ったぁ~~~!」
ジャイアン、心の叫び。
「この寺小屋を作ったのは俺だ。
お前らの飯代と先生の給料は俺が出してる。
第一期生の様子を間近で見て、次を続けるかどうか、判断しようと思ったんだよ。
俺のパーティは、もう俺が用心棒するだけで大丈夫だと判断した。
何か用がある時は、嫁の誰かが代わりを務める。
どこか間違ってる?」
ケーンは当初の動機を端折ったが、その言葉に嘘はなかった。
このまま青春寺小屋生を、続けるのも意味がないと思えてきた。もっと正直にいえば、あまりにも緩い生活にあきてきた。
それで本当の立ち位置を明かすことにした。
特にアリスの問題が生じた。
今のままのアリスを、嫁として受け入れることはできない。なぜなら、彼女は強くなって、金を稼ぐために冒険者を目指している。
そして、その素質は十分あると見てとった。冒険者の素質がないレミやメイとは立ち位置が違う。
現時点でアリスが、強者である自分や嫁と、共に行動することは非現実的だ。
ケーンはアリスが迫ってきた場合、こう告げようと思っている。嫁になるなら、寺小屋を卒業後、一年以内にCランクまで登れ。
後は責任をもって鍛え上げる。ケーンはアリスなら可能だと見ている。
「そうか、遊びじゃなかったんだ?」
ジャイアンの怒りは急速に冷めた。
「遊びだけど、誰損?」
こいつ、嫌いだ! 男子四人はどっちらけた。
「ポチ、聞かせてくれ!
お前、どうやって女の子たち、従わさせてるんだ?」
ジャイアンが真剣な面持ちで聞く。
彼のパーティでは、このところ女子二人が冷ややかだ。それというのも、パーティポチとの差が開いていると、彼女たちは気づいたからだ。
個人的な能力に、大きな差がついたとは思えないが、集団としての結果は明らかに違う。
具体的には、両パーティの装備の充実度。
地下五階まであるダンジョンの最奥部まで、パーティポチはすでに到達している。
装備は命に直結する。生活費は昼食以外ほとんどかからないから、パーティポチのメンバーは、稼いだ金を、計画を立て装備に投資している。
パーティジャイアンは三階まで。当然稼ぎが違う。
男子は内心不満を感じつつも、ジャイアンが怖いし、男の友情というのもある。
その点女子は、ちくちくと不平を表に現し始めた。
「従わさせてる?
違うね。
ついて来てるんだ」
ケーンはあっさりと答える。
「要するに、俺が悪いということか……」
ジャイアンは、柄にもなく落ち込む。
「それも違うね。
最近俺は、聞かれない限り何にも言ってないよ。
悪いとしたら全員が悪い。
結果が出ないのはリーダーが悪い?
そんなの言いわけだ。
自分の悪いところは反省しない。
お前自身も含めて何が悪いのか、徹底的に討論するべきだと思うぜ。
それでもわからなければ、先生に聞け。
元勇者パーティだからと言って、びびってんじゃねえ。
なんのための先生だ?」
メアリーとリンダは、聞かれない限り、一切口を出さないという方針を守り続けている。
それは生徒の問題意識を明らかにするためであり、主体的に考える習慣を植え付けるためだ。
冒険者のパーティ間は、すべてライバルだ。
他のパーティに、見返りなしで何かを教えるなどということは、まずありえない。
「なるほどな……。
勇気を出して聞いてみるか」
ジャイアンは、腕を組んで考え始めた。
「ポチ、いいか?」
ダンが真剣な目をして聞く。
「ああ、いいよ」
「寺小屋生は、恋をしちゃダメ?」
ケーンとジャイアンは、かくんとくる。
「ダメじゃないよ。誰?」
ケーンは気を取り直して聞く。
これも青春の一ページだ!
「ミント。最初はアリスがいいと思ってたんだ。
でも、あれだし」
「あれって?」
ジャイアンが聞く。
「ポチに夢中。
嫁がいる?
そんなのカンケーねえ、だそうだ。
ミントやナーラは、もうあきらめきってる。
俺にもチャンスがある。
その目で見たら、ミントのおっぱいでかいし……。
あ~、やりてぇ~!」
ケーンは初耳だった。だが、なんとなくは感じていた。アリスの気持ちに。
ダンとミント? そっちはカンケーねぇ、がケーンの発想だった。
ケーンは男友達が、基本的に作れない性格だった。
なにせ生まれてから五十年間、引きこもりの父親は除き、完全に女の中だけで生活していたのだ。
バイオレットとガーネットを女に含めるべきかは、かなり疑問だが。
性別は明らかに女だが、性格は男前そのものだから。
同じころ、夜の王宮。
夜の女王は、キキョウから報告を受けていた。
「ケーン様に、あれほど指導力があるとは思いませんでした。
見事な統率としか、言いようがありません」
キキョウは、うっとりとした目で言う。
「そんなに意外だった?」
女王は苦笑する。
「はっきり言えば、その通りです」
「考えてもみなさいよ。
ケーンが選んだ嫁は、自分で考えられる女ばかりだった。
戦闘経験に乏しい嫁も、戦闘のベテラン嫁が、しっかりサポートしてた。
周りに任せられる時は任せる。
それが最高指揮官の風格よ」
「なるほど……。
王者の器、ということですね?」
キキョウの言葉に、女王は会心の笑顔で応えた。
どうよ、私の息子! 惚れ直しただろ!
再び教会宿舎の男子部屋。
ダンの「あ~、やりてぇ~!」という心からの叫びに、他の男子は反応した。
「ポチ、お前ここで泊まらないとき、やってんだろ?」
「ほとんど毎晩?」
ジャイアンとダンが絡む。
なにせ二十四時間集団行動。やりたいさかりの彼らは、自家発電もままならず、悶々としていた。
「エッチは俺の生きがいだからな」
ケーンは正直に応える。
「なれそめは?」
「どうやって落とした?」
モブキャラ男子A・Bが聞く。
「なれそめは色々。詳しくは言えない」
「そうか、色々か……。ん?」
ジャイアンは、不穏発言であることに気づいた。
「落としてほしそうな嫁には、この一言。
俺の嫁になる?」
「ちょっと待ったぁー!
なんだか嫁が何人もいるように聞こえた」
ジャイアンが興奮して叫んだ。
「当たり前だ。何人もいるんだから。
今のところは九人?」
九人、が疑問形なのは、ヒカリちゃんを一人と数えるべきか、わからなかった。
テレサかジャンヌに憑依することが条件だから。
まあ、ゼロコンマ5×2で一人。やっぱり九人だ。
「ど、どういうことだ?」
ジャイアンの言葉に、他の男子はうなずく。
「どうもなにも、嫁が九人いるということだけど。
いや~、きつい、きつい。
まあ、今は二人妊娠初期だから……」
ドスッ、ガスッ、ボコッ!
男子は一丸となってケーンに襲いかかった。もちろん、呪いの装備をほとんど外しているケーンは、きっちり返り討ちにした。
ちなみに、「ほとんど」というのは、虚飾の兜の機能を、そっくり写した虚飾のペンダントだけは、付けたままだということ。
「一つ聞いていいか?
お前、嫁以外ともエッチした?」
顔を腫らしたジャイアンが聞く。
「ん~……。よくわかんないけど、五百人くらい?
みんな母ちゃんの手下だ。
手下は五百人だけど、俺とエッチしてない子、いるのかな?」
ケーンは、どこまでも正直な男だが、やはり男友達が作れない性格だった。
「あのさ、嫁が九人で母ちゃんの手下が五百人?
お前って何者?」
ジャイアンがあきれて聞く。
「母ちゃんはとある国の女王。
俺はSランクの冒険者だ。
嫁の九人や十人養うのなんてラクショー?
まあ、ほとんどの嫁は、勝手に稼いでるけど」
再び飛びかかろうとするジャイアンを、ヤロー三人は必死で止めた。
「なんでこの寺小屋に入ったぁ~~~!」
ジャイアン、心の叫び。
「この寺小屋を作ったのは俺だ。
お前らの飯代と先生の給料は俺が出してる。
第一期生の様子を間近で見て、次を続けるかどうか、判断しようと思ったんだよ。
俺のパーティは、もう俺が用心棒するだけで大丈夫だと判断した。
何か用がある時は、嫁の誰かが代わりを務める。
どこか間違ってる?」
ケーンは当初の動機を端折ったが、その言葉に嘘はなかった。
このまま青春寺小屋生を、続けるのも意味がないと思えてきた。もっと正直にいえば、あまりにも緩い生活にあきてきた。
それで本当の立ち位置を明かすことにした。
特にアリスの問題が生じた。
今のままのアリスを、嫁として受け入れることはできない。なぜなら、彼女は強くなって、金を稼ぐために冒険者を目指している。
そして、その素質は十分あると見てとった。冒険者の素質がないレミやメイとは立ち位置が違う。
現時点でアリスが、強者である自分や嫁と、共に行動することは非現実的だ。
ケーンはアリスが迫ってきた場合、こう告げようと思っている。嫁になるなら、寺小屋を卒業後、一年以内にCランクまで登れ。
後は責任をもって鍛え上げる。ケーンはアリスなら可能だと見ている。
「そうか、遊びじゃなかったんだ?」
ジャイアンの怒りは急速に冷めた。
「遊びだけど、誰損?」
こいつ、嫌いだ! 男子四人はどっちらけた。
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