改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

文字の大きさ
122 / 170

122 悲しみのローレン

しおりを挟む
 竜王国王宮、近衛兵詰め所。

 シクシクシク……。ローレンは、仮眠室で泣いた。

 昼間、ケーンの嫁、キキョウと総子に摸擬戦を所望した。

 キキョウには、立会人の「始め!」という掛け声と同時に負けた。

ふっと姿が消えたかと思った瞬間、のどに刀があてられていた。

まあ、トリプルSクラスだもんね……。仕方ない、と自分を納得させた。

総子には……。完全に力負けした。ローレン渾身の一撃は、総子の刀に軽く受け止められた。
グイっと突き飛ばされ、しりもちをついた瞬間、のどに刃先があてられていた。

どうしてなんだよ! あのスリムボディーにあのバカ力!

 竜人族の力に勝てる? 

何を食ってるんだ!

まあ、元勇者なんだから仕方ない…と、割り切れなかった。

ローレンのプライドは、根底から崩されていた。

仮眠室のドアが開いた。ローレンは慌てて涙をぬぐう。

「ローレン、交代の時間だ」
 僚友のフランクだった。

「ああ……」
ローレンは、ベッドから起き上がった。

「なんというか……、相手が悪すぎたんだ。
お前の強さは、みんな……」
 フランクは、ローレンのしょげ返った様子を見て、慰めようとした。

「全然強くなんかないよ!」
 ローレンは、そう言い捨てて、女王寝室の警備に向かった。

 フランクは思う。ローレンは強い。男の中では……。

ぐすん……。なんか、俺まで泣けてきた。


ローレンは、女王寝室の控えの間に入った。

僚友たちは、ローレンを認め、さりげなく目を逸らした。

なんか…痛い……。ローレンは伏し目がちでイスに座る。

「ローレン、これ食ってみろよ。
ユリさんが差し入れしてくれた」
 近衛副隊長、スザンヌがテーブル上の菓子盆を、ローレンの前に押す。

「なんですか?」
 ローレンが、見たこともない菓子?だった。

茶褐色で、黒いゴミくずみたいなものがついている。

「おにぎりせんべい、と言ってた。
いさましいネーミングだな」
 スザンヌは、「お握り」ではなく「鬼斬り」と解釈していた。こちらの者は、最初みんなそういうふうに誤解する。

薄い茶褐色は、オーガ族の、肌の色に似ていなくもない。付いている黒いくずみたいなものは、オーガ族の剛毛に、似ていなくもない。

「なんか不気味ですね……」
 ローレンは手を付けようとしなかった。

「見た目は悪いけど、うまいぞ。
この塩加減、つまみに最高だろうな」
 スザンヌは、おにぎりせんべいを一枚取る。

 カリ…、ぼり、ぼり……。

 ローレンは好奇心が湧いた。甘くはないんだ?

 一枚取ってみる。

 カリ、ぼり、ぼり……。思ったより柔らかい。独特の風味がある。こちらでは一般的でないしょう油味。
たしかに酒に合いそう。

「ローレン、悔しいのはわかる。
だけど、キキョウさんと総子さんは、けた違いだ。
人族と見ない方がいい」
 スザンヌは慰めようとした。

 ローレンの目じりから、悔し涙がほろり。全然慰められなかった。

 竜族の女は、デリカシーに欠けていた。

 みなさん、そっとしておいてやりましょうよ!

「ローレン、ケーンさんをどんな店に連れて行った?
なんか猫獣人をお持ち帰りしていたぞ」
 スザンヌは、ローレンの生傷をいっそうぐさり。

「もちろん高級クラブですよ! 変な店ではありません」
 ローレンはムキになって弁明。

「そうか……。そうだろうな……。
あんな獣人は初めて見た。
人族寄りの獣人でも、普通もっと毛深い。
かわいい女の子に、猫耳としっぽをつけてみました、的な?」

「でしょ!
超かわいいですよね!」
 ローレンは、元気を取り戻す。
「お前な、惚れるんじゃないぞ。
わかってるのか?
王女様の婿殿の側室だぞ?
お前、メイサ様に惚れてただろ?
どちらにしろ、無理筋というものだ」
 
 グシャ! 竜神族の女は、悪気なく容赦なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...