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122 悲しみのローレン
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竜王国王宮、近衛兵詰め所。
シクシクシク……。ローレンは、仮眠室で泣いた。
昼間、ケーンの嫁、キキョウと総子に摸擬戦を所望した。
キキョウには、立会人の「始め!」という掛け声と同時に負けた。
ふっと姿が消えたかと思った瞬間、のどに刀があてられていた。
まあ、トリプルSクラスだもんね……。仕方ない、と自分を納得させた。
総子には……。完全に力負けした。ローレン渾身の一撃は、総子の刀に軽く受け止められた。
グイっと突き飛ばされ、しりもちをついた瞬間、のどに刃先があてられていた。
どうしてなんだよ! あのスリムボディーにあのバカ力!
竜人族の力に勝てる?
何を食ってるんだ!
まあ、元勇者なんだから仕方ない…と、割り切れなかった。
ローレンのプライドは、根底から崩されていた。
仮眠室のドアが開いた。ローレンは慌てて涙をぬぐう。
「ローレン、交代の時間だ」
僚友のフランクだった。
「ああ……」
ローレンは、ベッドから起き上がった。
「なんというか……、相手が悪すぎたんだ。
お前の強さは、みんな……」
フランクは、ローレンのしょげ返った様子を見て、慰めようとした。
「全然強くなんかないよ!」
ローレンは、そう言い捨てて、女王寝室の警備に向かった。
フランクは思う。ローレンは強い。男の中では……。
ぐすん……。なんか、俺まで泣けてきた。
ローレンは、女王寝室の控えの間に入った。
僚友たちは、ローレンを認め、さりげなく目を逸らした。
なんか…痛い……。ローレンは伏し目がちでイスに座る。
「ローレン、これ食ってみろよ。
ユリさんが差し入れしてくれた」
近衛副隊長、スザンヌがテーブル上の菓子盆を、ローレンの前に押す。
「なんですか?」
ローレンが、見たこともない菓子?だった。
茶褐色で、黒いゴミくずみたいなものがついている。
「おにぎりせんべい、と言ってた。
いさましいネーミングだな」
スザンヌは、「お握り」ではなく「鬼斬り」と解釈していた。こちらの者は、最初みんなそういうふうに誤解する。
薄い茶褐色は、オーガ族の、肌の色に似ていなくもない。付いている黒いくずみたいなものは、オーガ族の剛毛に、似ていなくもない。
「なんか不気味ですね……」
ローレンは手を付けようとしなかった。
「見た目は悪いけど、うまいぞ。
この塩加減、つまみに最高だろうな」
スザンヌは、おにぎりせんべいを一枚取る。
カリ…、ぼり、ぼり……。
ローレンは好奇心が湧いた。甘くはないんだ?
一枚取ってみる。
カリ、ぼり、ぼり……。思ったより柔らかい。独特の風味がある。こちらでは一般的でないしょう油味。
たしかに酒に合いそう。
「ローレン、悔しいのはわかる。
だけど、キキョウさんと総子さんは、けた違いだ。
人族と見ない方がいい」
スザンヌは慰めようとした。
ローレンの目じりから、悔し涙がほろり。全然慰められなかった。
竜族の女は、デリカシーに欠けていた。
みなさん、そっとしておいてやりましょうよ!
「ローレン、ケーンさんをどんな店に連れて行った?
なんか猫獣人をお持ち帰りしていたぞ」
スザンヌは、ローレンの生傷をいっそうぐさり。
「もちろん高級クラブですよ! 変な店ではありません」
ローレンはムキになって弁明。
「そうか……。そうだろうな……。
あんな獣人は初めて見た。
人族寄りの獣人でも、普通もっと毛深い。
かわいい女の子に、猫耳としっぽをつけてみました、的な?」
「でしょ!
超かわいいですよね!」
ローレンは、元気を取り戻す。
「お前な、惚れるんじゃないぞ。
わかってるのか?
王女様の婿殿の側室だぞ?
お前、メイサ様に惚れてただろ?
どちらにしろ、無理筋というものだ」
グシャ! 竜神族の女は、悪気なく容赦なかった。
シクシクシク……。ローレンは、仮眠室で泣いた。
昼間、ケーンの嫁、キキョウと総子に摸擬戦を所望した。
キキョウには、立会人の「始め!」という掛け声と同時に負けた。
ふっと姿が消えたかと思った瞬間、のどに刀があてられていた。
まあ、トリプルSクラスだもんね……。仕方ない、と自分を納得させた。
総子には……。完全に力負けした。ローレン渾身の一撃は、総子の刀に軽く受け止められた。
グイっと突き飛ばされ、しりもちをついた瞬間、のどに刃先があてられていた。
どうしてなんだよ! あのスリムボディーにあのバカ力!
竜人族の力に勝てる?
何を食ってるんだ!
まあ、元勇者なんだから仕方ない…と、割り切れなかった。
ローレンのプライドは、根底から崩されていた。
仮眠室のドアが開いた。ローレンは慌てて涙をぬぐう。
「ローレン、交代の時間だ」
僚友のフランクだった。
「ああ……」
ローレンは、ベッドから起き上がった。
「なんというか……、相手が悪すぎたんだ。
お前の強さは、みんな……」
フランクは、ローレンのしょげ返った様子を見て、慰めようとした。
「全然強くなんかないよ!」
ローレンは、そう言い捨てて、女王寝室の警備に向かった。
フランクは思う。ローレンは強い。男の中では……。
ぐすん……。なんか、俺まで泣けてきた。
ローレンは、女王寝室の控えの間に入った。
僚友たちは、ローレンを認め、さりげなく目を逸らした。
なんか…痛い……。ローレンは伏し目がちでイスに座る。
「ローレン、これ食ってみろよ。
ユリさんが差し入れしてくれた」
近衛副隊長、スザンヌがテーブル上の菓子盆を、ローレンの前に押す。
「なんですか?」
ローレンが、見たこともない菓子?だった。
茶褐色で、黒いゴミくずみたいなものがついている。
「おにぎりせんべい、と言ってた。
いさましいネーミングだな」
スザンヌは、「お握り」ではなく「鬼斬り」と解釈していた。こちらの者は、最初みんなそういうふうに誤解する。
薄い茶褐色は、オーガ族の、肌の色に似ていなくもない。付いている黒いくずみたいなものは、オーガ族の剛毛に、似ていなくもない。
「なんか不気味ですね……」
ローレンは手を付けようとしなかった。
「見た目は悪いけど、うまいぞ。
この塩加減、つまみに最高だろうな」
スザンヌは、おにぎりせんべいを一枚取る。
カリ…、ぼり、ぼり……。
ローレンは好奇心が湧いた。甘くはないんだ?
一枚取ってみる。
カリ、ぼり、ぼり……。思ったより柔らかい。独特の風味がある。こちらでは一般的でないしょう油味。
たしかに酒に合いそう。
「ローレン、悔しいのはわかる。
だけど、キキョウさんと総子さんは、けた違いだ。
人族と見ない方がいい」
スザンヌは慰めようとした。
ローレンの目じりから、悔し涙がほろり。全然慰められなかった。
竜族の女は、デリカシーに欠けていた。
みなさん、そっとしておいてやりましょうよ!
「ローレン、ケーンさんをどんな店に連れて行った?
なんか猫獣人をお持ち帰りしていたぞ」
スザンヌは、ローレンの生傷をいっそうぐさり。
「もちろん高級クラブですよ! 変な店ではありません」
ローレンはムキになって弁明。
「そうか……。そうだろうな……。
あんな獣人は初めて見た。
人族寄りの獣人でも、普通もっと毛深い。
かわいい女の子に、猫耳としっぽをつけてみました、的な?」
「でしょ!
超かわいいですよね!」
ローレンは、元気を取り戻す。
「お前な、惚れるんじゃないぞ。
わかってるのか?
王女様の婿殿の側室だぞ?
お前、メイサ様に惚れてただろ?
どちらにしろ、無理筋というものだ」
グシャ! 竜神族の女は、悪気なく容赦なかった。
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