改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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141 ゴブ運を!

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ダンジョンチャレンジ一日目終了。正義は二階層まで踏破した。

二階層の最後の方では、かなり余裕をもってゴブリンを倒せた。

確実に実力は上がっている。正義は、そう認めざるをえなかった。

「よく頑張った。
そこに隠し扉があるな」

 ここは二階層最奥部のセーフティーゾーン。入り口への、常設転移魔法陣も備えられている。

 そこに隠し扉?

 なんたる親切仕様!

 正義は、ケーンが指差す壁面を触ってみる。変わったところは感じられないけど……。

少し押してみると……、扉が開いた。

絶対宝箱がある!

正義は勇んで飛び込んでみると……。

ゴブ、ゴブ、ゴブ……。ゴブリンだらけや~~~!


「モンスターハウス?」
 正義が振り返ったら、ケーンが、サディスティックに笑っていた。

「どうかゴブ運を」
 ケーンが手を振った。 

 非情にも、扉はしまった。

 絶対ぶっ殺してやる!

 正義のケーンへの殺意、具体的には、ゴブリンに向けられた。


 正義は最後の一頭を倒し終え、ばたりと倒れた。

 限界だ……。散らばっているおびただしい硬貨も、拾う気がしない。

 扉が開いた。

「お疲れ~!
偉いぞ!
ちゃんと生きてたな」
 ケーンは硬貨を集め始めた。

「お前、知ってただろ?」
 正義は怨念をこめてそう言った。

「もちろん! 
いい勉強になっただろ?
ダンジョンで油断するとこうなる。
高名の木登りって知ってるか?」

「なんだよ、それ?」

「木登り名人が、後進を指導した。
登る時には何も言わない。
下りるときになって、油断するな、とアドバイスを与えた。
『徒然草』のエピソードだ。
中学校の教科書に、載ってるレベルだと思うけど」

「お前、本当にこの世界で生まれたのか!」

「そうだよ。地球の知識は、ほんのちょっぴり。
お前より、ましかもしれないけどね」

 ケーンは、絶対男の友情を育めない。新たな傍証が、ここに示された。

「ほら、三十分で三分の一稼げたぞ。モンスターハウス、濡れ手にアワ説、正解?」
 ケーンが、集めた硬貨を皮袋に入れ、横たわったままの頭の横に置いた。

「前から思ってたんだよな。
濡れた手で泡を触ったら、すぐ割れるだろ?」
 正義が、ぼそりとつぶやいた。

「お前、よっぽど勉強できなかったんだな?
シャボン玉の泡じゃなくて、雑穀の粟だよ」

 正義はぐしゃりと落ち込んだ。異世界人に負けちゃったよ……。日本語の基礎知識。


 正義は、六日間のゴブダン特訓を無事終えた。

 実は、あんまり無事ではなかった。お花畑を一度見た。ラスボスゴブリンキングに、あえなく倒された。

 お花畑、たしかにきれいなところだった…じゃね~よ!

 超痛くて、苦しかったんだからね!

 だが、正義はゴブリンキングが、消えるさまを見ながら思った。

 ケーンは、ひどい師匠だ。でも、確実に俺を強くしてくれた。

「ケーン、言いたくはないが、言わせてくれ。
ありがとう」
 正義は右手を差し出した。

「言いたくなかったら、言わなくていいぜ。
なんなら、ドラゴンの討伐に付き合ってみる?」

「ドラゴンの討伐?
俺、ドラゴン討伐できるほど強くなった?」

「まさか。確実にお花畑へ行ける」

「やっぱりお前なんか嫌いだ!」
 正義は右手を引っ込めた。だが、腹の底から突き上げてくる笑いを、必死で抑えた。


「じゃあな。教会に話は通ってるから、神官は絶対パーティに加えろ」
 そう言い残し、ケーンはボス部屋の転移魔法陣に乗った。

 さて、さすがにラスボスだ。金貨がドロップしてる。

 正義は戦利品を集めて、魔法陣に乗る。高速エレベーターより、気持ち悪い例の感覚を体験。ダンジョン入り口に跳ぶ。

 ケーンの姿が見えない。

ふと気づいた。ここ、どこ?

どうやって帰ればいいんだ!


 どさっと、空から何かが落ちてきた。

 バッグだ! 多分魔法のバッグ!

 正義は空を見上げる。

 ペガサスだ! 初めて見る。

「そのバッグと中身、俺からのプレゼントだ。
食料やポーション類、ゆうべまで使ったテントも入ってる。
最後のアドバイス。
町の宿に帰るまでが冒険だぞ。
東を目指せ」
黒いペガサスに騎乗したケーンは、そう言って去って行った。

かっこいいこと、するじゃないかよ……。
 
 正義はケーンを見直した。ほんのちょっぴりだけど。


 正義は、このダンジョンから一番近い村につくまで、四日間かかることなど、その時は知る由もなかった。
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