改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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151 転移実験

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宇宙空母の見学会が終わり、対エルファード戦に参加する嫁以外は、ライラックに帰った。

現在艦隊旗艦の一番艦は、どんどんアンジェラから遠ざかっている。

『現在本艦は、惑星アンジェラから、8千万キロ離れました。エルファード艦隊主砲が、有効射程を越える距離です』
 一番艦主電脳が報告する。

「了解! 引き続き巡航速度を保て」
 サーシャが命じる。

「じゃ、ジャンヌ。頼む」
 ケーンが隣のシートのジャンヌに依頼。

「ラジャ! 二番艦コントロール室に、転移!」
 ジャンヌが転移魔法発動。

魔法陣の中にいた、アンドロイド五体が消えた。

「うまく転移できているといいんですが……。
私の能力、ミレーユ様に届いているとは思えない」
 ジャンヌが自信なさそうに言う。

「大丈夫だって! ヒカリちゃんが保証してくれてる。それに、ヒカリちゃんが、気合入れて作った転移魔法陣だ」
 ケーンがにっこり笑って言う。8千万キロは、かつてミレーユが、宇宙空間で転移魔法を実現させた距離だ。
全くの一発勝負で、よくやったものだと思う。

「ほな、一旦帰ろか?」
 ユリの言葉に、ケーンはうなずく。

「一番艦、月面基地に帰還」

『了解。月面基地に帰還します』
 サーシャの命令に、主電脳は応えた。
 
「帰ったら、宙船(そらぶね)にも乗ってみよう」
 ケーンが提案する。

宙船とは、かつてケンイチパーティーが使った宇宙船だ。創造神が、夜の女王のために用意していた。
本来の目的は、創造神がアンジェラを「リセット」する場合、夜の女王と眷属が、月に一時避難するための船。

創造神は、自らの守役を、他の者に任せる気はなかった。

したがって、外宇宙を飛べるほどの機能は持っていない。

ただ、やたら図体がでかい宇宙空母と比べたら、男のロマンをそそりまくるデザインだ。
大気中の航空力学に則り、スマートでかっこよくデザインされている。


「それにしてもこの船、とんでもない代物やな。
ケーンのテント並みに快適やで」
 ユリが感想を述べた。

地上並みの重力制御。空調設備。自給自足可能な自動生産ライン。
そしてなにより、この巨艦を動かしている推進力。

最高速は亜光速と言われても、ぴんとこないが、とんでもないスピードだとわかる。

 ワープ航法、というのはもっとわからないが、それは案外抵抗なく受け入れられる。
 エルファード艦の主電脳でさえ、原理がわからない「時空魔法」が、まかり通っている世界だから。


エルファード星人の、科学技術力は、想像もつかないほど発展している。
 逆にそれが災いし、エルファード星やその星の人々は、生きる活力を失っている。

 つまり、かの星の人々は、電脳たちによって、生かされているのだ。

 出発前、ケーンたちは、コールドスリープ状態の捕虜を起こし、面会した。
 ケーンの印象は、まるで彼が作ったフィギャーに、会話能力を与えたという感じ。
 感情や意思が、ほとんど感じられなかった。彼の要求はただ一つ。

「早く寝かせてくれ」

 ケーンはその言葉を聞き、なんともやるせない気持ちになった。
 
したがって、この戦いは、エルファードの電脳と、ケーンたちの戦いなのだ。
実際、この巨大空母で、起きていたのは、十人のエルファード星人だったという。

なにせ外宇宙を隔てた星から飛んでくるのだ。彼らの科学技術力をもってしても、気が遠くなるほどの年月がかかる。
そのため、交代で休眠し、時をやり過ごしている。そんな生活をしていたら、あんな感情欠落症になるのも、仕方ないかと思う。

ケーンは心から思う。母ちゃん、よく頑張ってきた!


ケーンたちは、月面基地に帰還。通信が遅れて届く距離になってわかってはいたが、アンドロイドたちは、無事転移されていた。

後は対ロボットの戦闘訓練と、作戦を効率的に遂行するため、手順を練り上げていく。それだけだ。

エルファード艦隊と、まともに対艦戦闘を行ったら勝ち目はない。だが、敵艦の内懐へ飛び込めたら、逆に負ける要素が見当たらない。

エルファード側は、対策を講じないのかという疑問があるだろう。
それはないと、断言できる。なぜなら、彼らは先遣部隊が、ケンイチたちに負けたことを知らないから。通信手段がないのだ。

また、それならなぜ、エルファードは、アンジェラに向かってくるのか、という疑問があるだろう。
偵察艦隊は、一定の距離で、通信・記録衛星を置いておく。主電脳が言うことには、惑星アンジェラを含む、有望な星系を発見したという記録は、すでにつかんでいるはずだとのこと。
三隻もの宇宙空母が行方不明になった。大規模な捜索が行われるのは必定。

その中継衛星まで、捜索の手が伸びるは最短で八年。夜の女王が、ケーンに与えた五年という期間は、余裕を持って迎撃準備が行える時間だった。
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