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5 マッキンレーファミリーは、かく生き残りき
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口下手エリオス(マックという本名は、身バレ防止の意味で封印される)の、まとまらない長話を要約すれば、以下のようになる。
遠征隊は、他の開拓団が全員引き上げたことなど全然知らない。定時に前線基地へ連絡をとっても、『作戦は続行せよ』と、残されたAIが告げるだけ。
戦力はじりじりと消耗。一週間後、遠征隊の約三割が犠牲になった時点で、小隊長マック(=エリオス)の、堪忍袋の緒が切れた。
センキューの命令など、ノーセンキューだ!
事と次第によっては、ブチ殺してやる! 彼の上官は、すでに全員戦死。曹長(傭兵はいくら戦功をあげても下士官どまり)の彼が最上位だった。残存戦力をまとめ、撤退を決断した。
帰りは行き以上の消耗戦となった。装備や物資は不足しがちとなり、負傷者は増える一方。
十日目、残りの交戦可能戦力は百人足らず。周囲を強力な魔物の群れに囲まれた。部隊の最高戦力マックは、自らと小隊の部下が先頭に立ち、血路を切り開こうとした。
結果として、生き延びたのはマックと彼の恋人カリンだけ。後でわかったことだが、守りたかった他の隊員は全員玉砕していた。
傷だらけで、ぼろぼろとなったマックとカリンは追い詰められた。もうどこを歩いているのだかわからない。
急に魔物の襲撃がなくなった。ふらふらになったカリンは、力尽きて前のめりに倒れた。ところが、伸びた手に偶然触れたのが、さっきのドアだった。
この巨大「動く家」のAIは、知的生命体を、ずっと待ち続けていたのだ。
マックはこの「家」のAIから査定を受けた。AIは新たなマスターとして合格と判断した。主を得て、全機能を再開したこの「動く家」の名前は「エリオス」だと、AIは告げた。
ややっこしいので、以下マックはエリオス、「動く家」は単に「ハウス」と呼ぶことにする。
「なんと言えばいいのか……」
ルカは泣きじゃくった。言葉はつなげられなかった。
「ジャック!」
カリンは、ぽかんと様子見する息子をきつい目で見た。
「はい?」
ジャックは意味がわからない。俺、なんかヘマした?
「後は任せるから、ルカちゃんをなんとかしなさい!」
この鈍感息子、と白い目で見ながら、カリンは思う。ジャックが「陽性コミュ障」になるのも仕方ないか。
家族以外の女性を初めて見るのだから。
「ど、ど、どうすれば?」
ジャックはとまどう。
「とりあえず、部屋へ案内してあげなさい。
襲ったらダメよ。
わかってるわね?」
「そんなのわかってる!」
ジャックは、不本意という顔で応えた。彼は「嫁だからちょっとくらいいいかな?」と思っていた。
「ルカちゃんが落ち着いたら、この『ハウス』の諸機能を説明してあげなさい。
それと、この惑星の特長もね。
私たちが百年もの間生き続けた理由、最大の疑問だろうから」
「俺もそう思ってた!」
虚勢を張る、陽性コミュ障ジャックだった。
遠征隊は、他の開拓団が全員引き上げたことなど全然知らない。定時に前線基地へ連絡をとっても、『作戦は続行せよ』と、残されたAIが告げるだけ。
戦力はじりじりと消耗。一週間後、遠征隊の約三割が犠牲になった時点で、小隊長マック(=エリオス)の、堪忍袋の緒が切れた。
センキューの命令など、ノーセンキューだ!
事と次第によっては、ブチ殺してやる! 彼の上官は、すでに全員戦死。曹長(傭兵はいくら戦功をあげても下士官どまり)の彼が最上位だった。残存戦力をまとめ、撤退を決断した。
帰りは行き以上の消耗戦となった。装備や物資は不足しがちとなり、負傷者は増える一方。
十日目、残りの交戦可能戦力は百人足らず。周囲を強力な魔物の群れに囲まれた。部隊の最高戦力マックは、自らと小隊の部下が先頭に立ち、血路を切り開こうとした。
結果として、生き延びたのはマックと彼の恋人カリンだけ。後でわかったことだが、守りたかった他の隊員は全員玉砕していた。
傷だらけで、ぼろぼろとなったマックとカリンは追い詰められた。もうどこを歩いているのだかわからない。
急に魔物の襲撃がなくなった。ふらふらになったカリンは、力尽きて前のめりに倒れた。ところが、伸びた手に偶然触れたのが、さっきのドアだった。
この巨大「動く家」のAIは、知的生命体を、ずっと待ち続けていたのだ。
マックはこの「家」のAIから査定を受けた。AIは新たなマスターとして合格と判断した。主を得て、全機能を再開したこの「動く家」の名前は「エリオス」だと、AIは告げた。
ややっこしいので、以下マックはエリオス、「動く家」は単に「ハウス」と呼ぶことにする。
「なんと言えばいいのか……」
ルカは泣きじゃくった。言葉はつなげられなかった。
「ジャック!」
カリンは、ぽかんと様子見する息子をきつい目で見た。
「はい?」
ジャックは意味がわからない。俺、なんかヘマした?
「後は任せるから、ルカちゃんをなんとかしなさい!」
この鈍感息子、と白い目で見ながら、カリンは思う。ジャックが「陽性コミュ障」になるのも仕方ないか。
家族以外の女性を初めて見るのだから。
「ど、ど、どうすれば?」
ジャックはとまどう。
「とりあえず、部屋へ案内してあげなさい。
襲ったらダメよ。
わかってるわね?」
「そんなのわかってる!」
ジャックは、不本意という顔で応えた。彼は「嫁だからちょっとくらいいいかな?」と思っていた。
「ルカちゃんが落ち着いたら、この『ハウス』の諸機能を説明してあげなさい。
それと、この惑星の特長もね。
私たちが百年もの間生き続けた理由、最大の疑問だろうから」
「俺もそう思ってた!」
虚勢を張る、陽性コミュ障ジャックだった。
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